(取材)長崎県企画部デジタル戦略課|全国から事業者・自治体が集まる長崎県の取り組みについて聞く
ながさきデジタルDEJI-MA産業メッセ2023は、盛況のうちに無事終了致しました。 ご来場者数は以下の通りです。 合計:3,858名 ご来場、誠にありがとうございました。 開催にあたりご尽力頂きました関係各所の皆さまには心より御礼申し上げます。 令和5年7月31日:「ながさきデジタルDEJI-MA産業メッセ2023」の特設サイトがオープンしました! ...
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今回は、長崎県企画部デジタル戦略課の井手潤也課長と松本祥生課長補佐に、ドローン活用に向けた取り組みや課題、今後の展望についてお話を聞きました。
(右)井手潤也課長、(左)松本祥生課長補佐
長崎県でのドローン活用の取り組みについて
ーー企画部デジタル戦略課が設立された背景や主な業務内容を教えてください。井手氏:
以前は企画部次世代情報化推進室という名前でしたが、2022年度に現在の企画部デジタル戦略課という名称に変わりました。もともとは総務部情報政策課に所属する班として地域の情報基盤の整備・支援などを担っていましたが、産官学連携で地域のDXを引っ張ることを役割として新しく企画部に作られた部署です。
松本氏:
業務内容を大まかにいうと、県内のデジタル化を担う部署です。おもに県庁内や市・町のデジタル化・DXの推進を管轄し、県内外の民間企業とも連携して取り組んでいます。
ーー長崎県でドローンの利活用を進めることになったのはなぜですか。
井手氏:
長崎県は、離島が県土の4割を占めるなど、移動や物流に課題を有する地域が多いという地理的な特徴があります。民間企業による五島列島での事業展開なども進んでいるように、ドローン活用の可能性はほかの地域に比べて大きいといえるのではないでしょうか。
豊田通商株式会社の100%子会社として誕生した「そらいいな株式会社」は2022年、長崎県南西部に浮かぶ五島列島でドローンによる日用品・医薬品の配送を開始しました。試験飛行開始から約1年で440回ほどの飛行を行い、累計航続距離も約2万1000kmを記録。実際に配送を行う中で見えてきた課題やドローン物流の展望について、同社のヘッド・オブ・オペレーション(配送統括責任者)、土屋浩伸氏にうかがいました。
2024/10/29 14:51
そのため、空飛ぶクルマや自動運転を含めた次世代モビリティの活用には力を入れていくべきだと考えており、県としても積極的に取り組んでいます。
ーードローンの利活用を進める中で、課題はありますか。
井手氏:
庁内の各分野や各部局でドローン活用の意識に差があり、行政としてまだ十分な推進施策が打ち出せていないと感じます。
松本氏:
『ドローンを使って何ができるのか』ということについて、県民の理解があまり進んでいないように思います。庁内における理解も同じように、何ができるのか、どのくらいのコストがかかるのか、誰が扱えるのかといった具体的な内容が知られていない点が課題ですね。
周知不足解決に向けた施策の1つとして、9月にはドローンサミットを開催しました。県民のみなさんがドローンを見て、触れて、知る機会を作れたのではないかと思います。今後はもっときめ細かに県民のみなさんがドローンに親しんだりドローンの活用を後押しするような施策を検討中です。
ーードローンを導入することで、地域社会においてどのような影響・効果が現れることを期待していますか。
井手氏:
長崎県には、本土と直接交通が結ばれていない二次離島もたくさんあります。先行事例として五島列島で物流事業が展開されていますが、もっと日常的に広い範囲で必要な物資を輸送できるようになればすばらしいですね。人の生活をより豊かにするような活用が広がっていけばと期待しています。
松本氏:
ドローンには物流のほかにも幅広い用途が考えられます。さまざまな産業でドローンの活用を広げ、業務効率化などにつながればと思います。また、災害時の活用などについても今後県として検討していきたいですね。
長崎県におけるドローンの活用事例
ーー長崎県ではどのようなドローンの活用事例がありますか。松本氏:
先ほども話が出ましたが、民間企業が五島列島でドローンによる物流を実施しています。医薬品の輸送については固定的なルートがあり、すでに社会実装がなされている段階です。最近では実証実験的に日用品なども運んでいるようで、県内でもかなり知られている事例といえます。
また、コロナ禍には諫早市のトランスコスモスタジアムで、ベンチのアルコール消毒にドローンを活用しました。人力での作業と比べ、なんと98%の業務効率化に成功しています。ドローンによる効率化を示すような事例となりました。
ーーご紹介いただいた事例において、今後の課題や展望などはありますか。
松本氏:
五島列島での医薬品・日用品の輸送は、現在は五島列島を拠点として島内に展開する形で運用しています。しかし、ドローンサミットで行なわれた実証実験では、長崎市内までの片道100キロの輸送に成功しました。今後は配送ルートが広がっていくことに期待していますし、県として可能な支援を続けていきたいですね。
「第2回ドローンサミット」は9月8日、五島列島の福江島(長崎県五島市)から長崎市の工業団地まで約100㎞の海上
https://dronetribune.jp/articles/22881/ >
第2回ドローンサミットについて
ーーサミット開催の目的や背景について教えてください。松本氏:
次世代モビリティを導入することで地域の課題を解決したいという思いを持っていて、2022年に兵庫県で開催された第1回ドローンサミットに参加しました。その際に関係事業者や自治体が一堂に会して情報共有や意見交換を行なう場としてのサミットの意義を感じ、国の関係省庁の方々とも意見交換させていただいた結果、今年のドローンサミットを長崎県で開催できることになりました。
ーーサミットでは、どのような内容の講演や体験会が行なわれたのでしょうか。
松本氏:
基調講演では、ドローンという言葉が定着する前からドローンを扱っていた長崎大学の山本郁夫教授に登壇していただいたり、久留米工業大学の麻生茂特別教授に空飛ぶクルマのお話をしていただいたりと、九州という枠組みで組み立てることができました。
またトークセッションでは、例えば国内でドローン物流に取り組んでおられる企業様や空飛ぶクルマの開発をされている企業様、海洋県長崎らしく海上や水中でのドローン活用をされている団体様など、多くの関係事業者の皆様にご登壇していただきました。加えて約20の自治体・国関係機関の皆様にご登壇いただき、各地域での事例や構想を議論いただくなど、非常に内容の濃い、素晴らしいトークセッションをお見せできたと思っています。
体験会も、国内最長距離である片道100kmのドローン物流のチャレンジは注目を集め、可能性を感じられるような体験会になりました。また、災害時にがれきの下にいる人の体温を感知して被災者を発見したり水を届けたりするデモンストレーションや、会場付近の海で無人船の自動航行なども行なわれました。企業のみなさんの協力によって非常に先進的な体験会を長崎で実現できたことは、私たちとしても本当にありがたかったです。
ーー登壇者・参加者からの反応や、開催を終えてのお2人の感想をお聞かせください。
松本氏:
出展者のみなさんからは、『来場者が予想以上に熱心に事業内容を聞いてくれた』という声がありました。登壇者の方からは『他分野とのパネルディスカッションなどもあっておもしろかった』などの感想を頂いています。国・各自治体のみなさんや企業のみなさん、登壇者のみなさんのおかげでイベントを成功させることができて、とても感謝しています。
井手氏:
一般の方々にもたくさん来場してもらえました。来場者にアンケートを取ったのですが、地方ではなかなかドローンなどの最先端技術に触れる機会がないこともあり、『地方での開催がうれしかった』という声や、『ドローンなどを間近で見る機会があって楽しかった』という声を頂いて、開催して本当によかったなと感じました。
力を入れて取り組んできた仕事がなんとか盛況に終わり、自分自身の思い出にも残りましたし、意義のあるイベントにすることができたのではないかと思っています。
未来への展望
ーードローン技術を活用した今後の計画や展望について教えてください。松本氏:
技術面でも制度面でも、将来的なドローン活用の余地はまだまだあると感じます。五島列島での物流のような先進事例がブレイクスルーとなり、チャレンジングで有効な取り組みが県内で生まれていけばいいなと思います。
井手氏:
今後もドローンをはじめとした次世代モビリティ活用に向け、一歩踏み出してできることからやっていこうと、来年度予算に向けて一生懸命考えているところです。行政として県内の産業や地域課題の解決など、県民の皆さんの豊かな暮らしに役立つドローン活用を進めていきたいですね。
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