(取材)NTT東日本が高校生向けにドローン特別授業を実施!地域のデジタル人材育成サポートに取り組む

(取材)NTT東日本が高校生向けにドローン特別授業を実施!地域のデジタル人材育成サポートに取り組む
NTT東日本(東日本電信電話株式会社)は日本のインフラを担う企業として、多くの自治体・企業・団体に対し、積極的にIoTを啓蒙し、人材育成に取り組んでいます。その取り組みの一つとして現在力を入れているのが、ドローンです。グループ企業全体で400名以上のドローンパイロットを抱える同社は、その強みを活かし、全国の自治体や学校にドローンの魅力と可能性を伝えています。

今回は、NTT東日本の原野雅之さん(千葉西支店設備部長)、金木美幸さん(千葉西支店設備部エリアコーディネート担当)、味澤薫さん(千葉事業部設備部サービス運営部門運営企画担当)の3名に、千葉県の市川工業高校で実施した講義内容を中心に、同社のドローン事業に対する取り組みや、今後の展開についてうかがいました(所属は取材当時)。

(左)千葉事業部設備部サービス運営部門運営企画担当 味澤薫さん
(中央)千葉西支店設備部エリアコーディネート担当 金木美幸さん
(右)千葉西支店設備部長 原野雅之さん

日本のインフラを担うNTT東日本だからこそ、ドローンの利活用を進めたい

――御社では、ドローンをどのように自社業務に活用されているのでしょうか。

味澤薫(以下、味澤):
NTT東日本では、2012年より有事の際の被災状況を把握するためにドローンを活用しております。また、自社設備である鉄塔や橋梁の定期点検などにも、ドローンを導入しました。

弊社では、約400名のドローンパイロットを有している強みを活かし、地域のニーズに応えてドローンの活躍の場を広げる取り組みを進めています。


――台風や地震などの災害が発生した際にドローンで現状確認をしているとのことですが、今まではすべて手作業で行っていたのでしょうか?

味澤:
以前は、被災した箇所にすぐには入れなかったため、道路の整備が終わってからでなければ状況を見に行くことができませんでした。その作業をドローンに置き換えることで、スピーディな復旧作業が可能になりました。災害からの復旧に着目したのは、日本のインフラを担う弊社だからこその視点でしょう。

――点検や復旧作業にドローンを導入することへの課題を、どのように解決されたのでしょうか。

味澤:
弊社が橋梁や鉄塔の点検にドローンを導入し始めてからまだ2、3年ですので、今でも手探りで進めています。しかし、ドローンの性能が格段に上がったおかげで、クリアできた問題もあります。以前はドローンを何かにぶつけてしまう事故事例がよくありましたが、今はほとんどの実機に自動制御システムがつき、衝突を未然に防いでくれます。このように、技術の進歩に助けられつつ、事業を進めております。

ドローンの持つ、地域課題解決の可能性

――御社が千葉県立市川工業高校で、ドローンを活用した特別授業を実施した背景について教えてください。

原野雅之(以下、原野):
私は採用活動で地元の工業高校にうかがうことがよくあります。工業高校では、卒業後に地域で活躍できるような生徒の教育に注力されています。そこで、弊社にも人材育成のために何かできることはないかと、教員の方々にICT技術講習をいくつか提案いたしました。そのなかで市川工業高校さんが選んだのが、ドローンだったのです。

学校側には、「学校では最先端技術までは教えられない」という課題があったそうです。一方生徒たちは、エンジニアが一体何をしているのかということに非常に興味を持ってくれています。そこで実際に我々がドローンを飛ばしているところを見ていただいたり、学術的な基礎をお伝えしたりできればと考え、ドローンの特別授業を計画いたしました。

――御社は新潟県長岡市でも同様の取り組みをされていますが、なぜこのような活動をさまざまな地域で行っているのでしょうか。


金木美幸(以下、金木):
弊社は全国の高校、高専にICT技術の体験会を実施しております。長岡工業高校でも、NTT e-Drone Technology社と共同で、ドローンに対する知見や技術をお伝えする実習をいたしました。その他自治体や一般企業を対象にしたDX体験会も実施しています。

それぞれどんな講習をするかは、地域のニーズを探りながら決めていますが、なかでもドローン活用は地域活性化に直結する技術です。少子高齢化による労働力不足が深刻化する地方では、施設設備の点検や農業、災害時の調査などに必要な人材が足りず、ドローン導入による解決が急務となっています。

そこで、私たちの本業である通信業務に加えて、D-shootというドローンを活用するチームを社内に結成し、さまざまな業界でお役に立てるような取り組みを進めています。

最近ですと、千葉県の電気工事工業組合という団体にドローンのお話をさせていただいたところ、非常に興味を持って話を聞いてくださったんです。電気工事工業組合とドローンがどう繋がるのだろうと、深く話を聞いてみたところ、実は太陽光パネルの点検について問題を抱えていることがわかりました。

設置してからもう数十年経っているので劣化が始まっていて、調子が悪いところが出ると必ず人の手を介して確認しなければならないそうです。ドローンを導入することで、人の手を介さずに確認作業ができることに、非常に期待を寄せていただきました。

次々飛び出す子どもならではの発想を、次のイノベーションに|市川工業高校での実演授業

――市川工業高校への授業は、どのような内容だったのでしょうか?

味澤:
まずはドローンに関する基本的な法規制やルール、基礎知識の部分を解説し、その後にNTT東日本のドローン利活用事例についてご紹介いたしました。

法規制やルールの説明から入ると、生徒たちが退屈に感じてしまうのではと思うかもしれませんが、これは事前に教員の方々と話し合ったうえで組んだプログラムです。生徒がこの実習が終わった後に、すぐに外でドローンを飛ばしては困ります。そのため、「まず、ドローンの飛行にはルールがあることを伝えてほしい」という先生方の要望を取り入れ、このような構成にしました。

座学の後には、自動航行、自動追従、3Dスキャンによる3Dモデリング用の自動撮影、この3つを生徒の皆様に体験していただきました。自動撮影では先生にモデルになっていただきました。先生の周りを自動航行させながら撮影したときには、とっても盛り上がりましたね。

講義後のアンケートでは、「新鮮で楽しい授業だった」、「就職先を選ぶ幅が広がった」という嬉しいお言葉をいただいています。また、ドローンの活用方法については子どもならではの豊かな発想に、こちらも驚かされました。上空版のGoogleマップを作るだとか、警察の代わりにドローンが犯人を追跡するなど、イノベーションを刺激するようなアイデアがたくさん生まれました。


原野:
弊社はいろんな先端技術関係のイベントを開催していますが、やはりドローンは一番人気があります。

たとえばプログラミングだと、何を作っているのか完成したアプリを見なければわかりません。しかし、ドローンは見ただけでわかる。何かが空を飛ぶって、見ているだけでもわくわくしますからね(笑)。

グループ全体で400人以上のドローンパイロットが、それぞれの地域課題を解決

――今後御社として、高校への授業以外にどのような取り組みを実施することを予定されていますか?

味澤:
現在はさまざまな自治体で、防災フェアのようなイベントを月に1回程度実施しています。地域の小さなお子様や家族連れの方々にドローンに親しみを持っていただける、よい機会になっております。直近ですと、千葉商科大学を会場として行われた「防災フェア」の一環として、ドローンについて解説いたしました。


――今後御社では、ドローンを通じたデジタル人材の育成を通じ、日本社会全体にどのような変化をもたらしたいとお考えでしょうか。

原野:
私は、ドローンはあくまでもツールにすぎないと考えています。ドローンを使って何ができるのかということが、今はまだ世間に浸透していません。

そのうえで、私たちはドローンというツールに大きな可能性を感じています。ドローンと何かを組み合わせれば、きっと大きなイノベーションが起こせるはずです。私たちが中心となり、ドローンを用いて地域に貢献できるようなイノベーションを起こしたいと考えています。

味澤:
弊社の強みは全国各地に現場第一線で活躍している社員がいることです。ドローンパイロットも、NTT東日本グループとして400名ほど在籍していますので、それぞれの地域の課題解決にドローンを活用していきたいと思います。

金木:
弊社の本業である通信事業だけでなく、ドローンはあらゆる分野で活躍できます。ドローン事業を進めることで、弊社がその活躍の一端を担えるよう、さまざまな分野でドローン利活用の可能性を広げていきたいと考えております。


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