ドローン手形を展開するのは、熊本県でドローンに関する事業を行う株式会社コマンドディー。ドローン手形のほかにも、空撮の請負やドローン導入のコンサルティングなど、ドローンに関わる幅広い事業を手がけています。
今回は、コマンドディー代表の稲田悠樹氏に、ドローン手形を始めとする事業内容や地域貢献への思いなどをお聞きしました。
練習をしたいけど、絶景で、現場に近い環境で飛ばしたい!ドローンを飛ばした後色々な場所を巡りたい!そんなドローンパイロットの想いを叶える場所です。1日で、指定された場所を、自由に行き来しながら飛ばすことができます。
この記事をdronetegata.com で読む >「スマートフォンの次はドローン」可能性を感じ事業をスタート
ーーコマンドディー設立までの経緯と、ドローンに関する事業を始めたきっかけを教えてください。2015年にフリーランスとしてドローンの事業を開始し、2017年に法人化してコマンドディーを設立しました。現在はドローンに関わる幅広い事業を行っています。
前職は携帯会社に勤めており、iPhoneが発売されたころからスマートフォンの普及率が8割ほどになる時期まで身を置いていました。新しいテクノロジーの流行り始めから普及するまでの流れを業界で見ていたんです。
スマートフォンがある程度普及した段階で、「次に普及しそうなものはなんだろう」と考えたときに出会ったのがドローンでした。当時はドローンに関する情報はほとんどなく、現在と違ってインターネットで検索しても出てこないような状況でした。だったら自分でやってみようということで、事業を始めたのがきっかけです。
当時は現在ほど産業活用の話は聞かなかったので、ドローンの映像に興味を持った部分が大きいですね。当初の事業は空撮に加えて、ドローンに関するブログなどの記事執筆も行っていました。情報が全くなかったので、自分で新しい機体の使い方や性能などを試して発信していたんです。
ーーそこからどのように事業を広げていったのでしょうか。
大きい企業や自治体などと取引が増えていくにあたり、個人事業主から法人化を決めました。事業内容は引き続き空撮と執筆に加え、DJI社の機体の納品や講習、コンサルティングなどにも広げていました。映像をきっかけにさまざまなドローンに関する相談やニーズに応えていった形です。
地元の熊本県で2016年に発生した熊本地震は、私自身にとって大きな転機になりました。被災当時にはさまざまな現場の撮影を行いましたし、身近な人も被災しています。地元のつながりでさまざまな撮影の要望をいただいたのですが、それぞれの困りごとに応じた解決方法は多岐にわたりました。
ドローンはあくまでも手段の一つです。例えば、集落の裏山が崩れそうで不安なのでドローンで撮影して役場に提出したいという、日々の不安を解消するためのデータがほしい場合や、研究のために地面の断裂のつながりを調べる際に上空からの写真がほしい場合など、さまざまな目的を持った方がいます。それぞれに「このようなデータ、このような撮り方が良いですね」というように、目的に応じた解決方法を提供することの必要性を感じました。
ーー熊本地震のお話がありましたが、災害時のドローン活用についてお聞かせください。
熊本地震のほかに、令和2年7月豪雨でも現地で撮影を行っています。やはり災害時にドローンを活用したいというご相談は近年増えていると感じます。ただ、災害時に使おうと思ってもいきなり使えるわけではなく、日常的に使って慣れておかなければいざという時に使えません。将来の災害時に備えたいというご相談であっても、「では日常でどのような用途で使っていきましょうか」というお話になります。
「ドローンが災害時に役立つ」という社会からの期待は大きくなっていますが、大きなくくりで語られることが多いですよね。災害時におけるドローンの活用と一言でいっても、災害が起こる前の防災の話と、災害が起きてすぐの人命に関わる話と、復旧・復興のための一次のデータ取りの話と、その先の工事のための話などがあって、それぞれの段階でクライアントや求めるデータの取り方、質も異なります。
災害に役立てるといっても、それぞれの段階に応じた備えや訓練、発注とデータ取得をどのような枠組みで行うかまで突っ込んだ話が必要だと思いますが、そのような議論はあまり見る機会がないように感じます。ここを具体的に細分化して明確にしないと、実際に災害が起きた時に有効に活用できないのではないでしょうか。
「ドローン手形」1日定額・複数箇所のドローンフィールドで飛ばし放題!
ーーコマンドディーの事業内容について教えてください。基本的にドローンに関するご相談を幅広く承っています。ドローンを使う方が年々増えているので、一般的な撮影というよりは特殊だったり難易度が高かったりと、ある程度こだわった撮影のご相談が増えていますね。
空撮や点検に加えて、自治体や企業がドローンを導入するサポートも担っています。ほかではあまりみない特徴としては、物を選んで納品するところで終わるのではなく、実際にドローンを使う現場で「どうすれば持続的に運用していけるのか」という部分も含めて提供することが多いです。
現場を基本としていて、経験則に基づいた仕事を心がけています。逆に言うと、私自身が経験のないことについてはお断りしているケースもありますね。例えると、インターネット上で見ただけで行ったことのない飲食店を人に勧めたくないという感覚です。自分が実際に経験したことを提供するのが仕事上の信用ではないでしょうか。
ーー熊本県で展開している「ドローン手形」についてご説明いただけますか。
1日定額で複数箇所のドローンフィールドを飛ばし放題になるサービスです。2017年10月に「南小国ドローン手形」がスタートし、2022年8月には新エリアの「阿蘇ドローン手形」、法人向けの「阿蘇ドローン手形BIZ」がオープンしました。
南小国町に最初のドローン手形をオープンしたのですが、弊社の関連法人と南小国町が2017年に「ドローンを活用したまちづくりに関する協定」を結びました。その当時ドローンスクールを卒業したけど、現場で飛行した経験がなく、近い環境で飛行の練習をしたいニーズがあると思っていたのが、ドローン手形のきっかけでした。
南小国ドローン手形 | ドローン手形 【多数の絶景ロケーションで空撮しよう】
練習をしたいけど、絶景で、現場に近い環境で飛ばしたい!ドローンを飛ばした後の疲れた体を温泉で癒したい!そんなドローンパイロットの想いを叶える場所です。1日で、指定の5箇所(展望台、観光施設グラウンド、廃校跡地、公園、観光地)を、自由に行き来しながら飛ばすことができます。
この記事をdronetegata.com で読む >ドローンを始めたい人やドローンスクールを卒業した人にとって、飛ばす場所の確保はハードルが高いんです。一方で南小国町側としては、黒川温泉という温泉地があって夕方以降に訪れる人は多い反面、日中に滞在するコンテンツが少ないという観光面の課題がありました。ドローン手形は日中滞在型のコンテンツにもなりますし、撮影した人がSNSなどで地域の魅力を発信してくれればPRにもつながります。このように町側のニーズとドローンユーザー側のニーズが合わさって、ドローン手形のサービスが始まりました。
南小国ドローン手形では6か所、阿蘇ドローン手形では2か所を自由に周遊できます。また、阿蘇ドローン手形BIZは200ヘクタールという国内最大の規模で、東京ドーム約40個分の広さがあります。縦方向に2.5キロ、横幅が最大800メートルという細長いフィールドになっていて、往復で5キロの距離を確保できるため長距離のテスト飛行にも適しています。これまでにドローンレースの練習会や企業の製品デモ会、コミュニティのイベント、開発中の機体のテスト・実証実験など幅広く活用していただいております。
阿蘇ドローン手形BIZ|日本最大のレンタルドローンフィールド
阿蘇ドローン手形BIZは、約200haを超えるドローンレンタルフィールドです。長距離飛行の実証実験、ドローンレースの練習・大会、デモ会や講習会など様々な用途でご利用いただけます。
この記事をasodronetegatabiz.studio.site で読む >ーー地域と密接に結びついたサービスだと思いますが、地域への思いをお聞かせください。
少子高齢化はどこの地域も同じように抱えている課題なので、ドローンやロボット、IoTなどを活用することで少しでも地域の苦労を減らしたいと思っています。阿蘇の草原は大きな観光資源であり、阿蘇の魅力を伝える撮影の仕事をたくさんさせていただきました。その恩返しとして、ドローンという新しい活用方法を通して少しでも地域の環境保全につなげたいと思っていて、ドローン手形の売り上げの一部は地域に還元する仕組みになっています。
ドローンは新しい技術だからこそ、地元の方に受け入れてもらうための配慮や工夫はしていますね。難しい表現を使わないようにしたり、実物を見て触ってもらったり、先方のメリットをしっかり提示したりといった、基本的ですが相手に喜んでもらえるような誠実なコミュニケーションを心がけています。
阿蘇の草原は実はほとんどが私有地なのですが、勝手にドローンを飛ばして撮影している動画もたくさん見受けられます。その問題もあってドローンに対してあまり良いイメージを持っていなかった方もいるのですが、しっかり良い関係性を築き、少しずつご理解いただけていると思います。
阿蘇は行けば行くほどほかにはない風景だと感じます。これほど大きな草原はほかにありません。阿蘇エリア全体は山手線の倍ほどの面積があるんですよ。唯一無二の風景をこれからも守っていきたいですね。
飛ばして楽しい&地域の経済効果も踏まえ「ドローン手形」を拡大したい
ーー今後の展望についてお聞かせください。
やはりドローン手形の場所を増やしていきたいですね。実は熊本県以外の自治体からも何件かご相談がありましたが、ドローンを飛ばせればどこでも良いというわけではありません。飛ばす人が楽しい場所、そして地域の収益のバランスが取れる場所、という観点が重要です。
そこを考慮した上で相互にメリットがあるフィールドを増やしたいとは思っているのですが、私の中の基準を超える場所がなかなか見つからないのが現状です。ドローンユーザーの方が喜んでくれますし、地元にも経済的な効果が期待できるサービスなので、引き続き展開していきたいと思っています。
また、ドローンのユーザー数は非常に増えているので、ドローンユーザーの知識や技術もどんどん向上していくはずです。私自身も後れを取らないように、プロフェッショナルとしてよりスキルアップしていく必要があると感じています。