ドローン業界での独立を目指すあなたへ。SKYtrans 山﨑代表が語る、成功への道
今回は、SKYtrans合同会社 代表の山﨑哲生さんに、ドローンビジネスへの興味を持ったきっかけや会社設立の経緯、ドローン業界で独立を目指す方へのアドバイスについてお話を伺いました。

SKYtrans合同会社 代表 山﨑哲生さん
SNSのシネマティック動画に感銘を受け、ドローンビジネスをスタート
―山﨑代表がドローンに興味を持たれたきっかけについてお聞かせください。最初にドローンに興味を持ったのは、SNSで見たシネマティックなドローン映像がきっかけです。スマホや一眼レフでは表現できない独特の視点に魅了され、強く惹かれました。それから、ドラマや映画の中でもドローンを活用したシーンが自然と目に入るようになり、ドローンの可能性にますます興味が湧き、次第に、この興味をビジネスに活かせたらと考えるようになったんです。
ドローンビジネスに踏み出す決意をしたのには、3つの大きな理由がありました。まず、私はスマホやAIなど最先端のテクノロジーに対して、常にワクワクする性格でした。さらには前職で約5年間、コンサルティング会社で働いた経験があり、そこで培った知見を活かして、ドローンを通じてクライアントの業務効率化に貢献できると考えました。
そして、ドローン業界はまだ歴史が浅く、新しい挑戦ができるフィールドだと感じたことも大きな理由でした。他業界での成功事例を持ち込むことで、この分野でも新たな価値を提供できるのではないかと考え、思い切って挑戦することにしたのです。

―コンサルタント時代には、具体的にどのような業務を手がけられていたのでしょうか。
前職では、自動車メーカー、石油、保険会社など、さまざまな業界で組織改革や業務改善の支援を行ってきました。具体的には、クライアントの企業に常駐し、半年から1年のサイクルでプロジェクトを推進する形です。
例えば、ある生命保険会社では、保険料の請求手続きの大半が手書きの書類で行われ、チェック作業に膨大な時間と労力がかかっていました。そこで、システム会社と協力して自動化ツールを導入し、そのツールを現場で使いこなせるように社員へのトレーニングを実施するというプロジェクトに参画していました。
また、急成長するネットベンチャー企業のオフィス移転プロジェクトに参画していました。月に100名ほどの中途採用を行う企業で、増え続ける従業員に対し、本社ビル1棟では対応しきれないため、新たな拠点を作り、オフィスを移転するプロジェクトを進めました。私は社内PMOの補佐役として、各関係者の意向をまとめ、フロアレイアウトの調整など、さまざまな業務に1年ほど取り組みました。
これらの経験を通じて、どのようなビジネスにも応用できるポータブルスキル、未経験業界の全体像を把握しクライアント企業に溶け込んでいくノウハウを培うことができました。それが、現在のドローンビジネスにも活かされていると感じています。
―山﨑代表ご自身も空撮などを担当されるそうですが、ドローン操縦スキルはどのように身に付けられたのでしょうか。
SNSでドローン映像を見て「これはかっこいい!」と思った私は、その翌日に4日間の初心者講習に申し込みました。当時はまだ国家ライセンス制度の開始前でしたので、DPAの回転翼3級ライセンスを取得しました。
実際にドローンを操縦してみると、想像以上に難しく、かなり苦労しました。私が通ったスクールでは、GPSを切った状態での操縦練習や実技訓練があり、ドローンを正確に操作する大変さを痛感しました。「これは厳しいな」と率直に感じましたが、すでに費用も払っていたので(笑)、腹を括って練習に励みました。
当時は自分で映像を撮り、フリーランスの映像クリエイターとして活動してみたいという強い思いがあったので、その気持ちが原動力となりました。今では、熱意のままにチャレンジして良かったと感じています。
人脈ゼロから起業し、堅実にビジネスを成長させてきた
―ライセンス取得後は、どのような経緯で会社を立ち上げられたのでしょうか?ライセンスを取得した後は、まずフリーランスとして撮影の仕事を始めました。撮影や建設業界の経験がない中でのスタートだったので、最初は仕事を取るのに苦労しました。クラウドソーシングサービスを利用し、とにかく実績を積むことを優先していました。
その一方で、現場経験が圧倒的に不足していると感じたため、趣味としていろいろな場所で撮影をしたり、ドローンだけでなく普通のカメラも借りて撮影したり、動画の編集も自分で試してみたりと、がむしゃらにチャレンジする時期が1年ほど続きました。
特に印象に残っているのは、初めて受けた仕事で、倉庫の中と外観の撮影を依頼されたときのことです。ホームページを刷新するために、動画制作会社がドローンパイロットを探していたんです。限られた撮影時間でクライアントの要望に応えるのはとても緊張しましたが、入念な準備のおかげで満足いただけてほっとしました。
こうした下積み時代を経て、自信がついたタイミングで起業を決断しました。もともと漠然と起業の目標を立てていたので、「今だ!」と思った瞬間に踏み切ったんです。同年代の仲間からの「やってみなよ」という応援も、大きな後押しになりました。

―改めて、御社の事業内容や展開されているサービスについてお聞かせください。
現在、当社では主に2つの事業を展開しています。1つは空撮による映像・写真撮影、もう1つはスレート屋根や外壁などの点検業務です。
空撮に関しては、20~30代の若いメンバーが動画編集や撮影を担当している点が強みです。「若手を採用したい」といった企業からのご依頼が多く、若手ならではの感覚を活かした「映える」クリエイティブ制作ができる体制を整えています。
点検業務は、起業後に新たに取り組み始めた分野です。もともと空撮で関わりのあった建設会社の方から「赤外線点検はやらないの?」と声をかけられたのがきっかけで始めました。私自身も赤外線建物診断士の資格を保有しておりますので、現在は協力いただけるパートナーを探しながら、効果的な実施方法について検討を重ねています。
ドローン業界での成功と失敗から学んだこと
―起業される中で、苦労されたがあれば教えてください。一番苦労したのは、業界の「当たり前」が分からなかったことです。特にフリーランスとして始めたばかりの頃は、現場の慣習や所作に不慣れで、何度もお叱りを受けました。例えば、現場では安全を考慮して「通ってはいけない場所」が決まっているのですが、そのことを知らずに通ってしまい、注意を受けたことがあります。
また、大きな撮影現場に参加した際には、映像業界特有の言い回しが理解できず、ミスコミュニケーションが発生してしまいました。
営業面でも苦労しました。ドローン業界に参入する方の多くは、建設業や映像業からの転身で、前職の繋がりを活かして仕事を得るスタイルが一般的です。しかし、私にはそうした繋がりがなかったため、営業はゼロからのスタートで非常に大変でした。

―心に強く残っているエピソードはありますか?
海外の映画撮影に関われたことです。フィリピンの映画撮影チームから依頼を受け、ドローンでの撮影を担当したんです。現場スタッフはほとんどフィリピン人で、英語でのやり取りが飛び交う中での撮影でした。この仕事をしていなければ、絶対に立ち会うことのなかった経験ですね。
俳優さんのスケジュールが押してしまい、ほぼぶっつけ本番で撮影に臨むことになったのもハラハラしました。担当したのは1〜2カット程度でしたが、監督さんから「よかったよ」と言っていただけたのが、とても印象に残っています。
これからドローンビジネスを始める人へ
―さまざまなご経験を積まれてきた山﨑さんですが、これからドローン業界で独立を目指す方に向けて、必要なスキルや知識、資格などの具体的なアドバイスをお願いします。まずは、スピード感を持った対応が重要です。迅速な返信やお見積もりの提出など、レスポンスの速さは信頼に直結しますので、特に意識しています。これは独立を考える方にもぜひ身につけてほしいスキルです。
また、営業力も必須です。いくら技術や資格を磨いても、仕事がなければ売上は立ちません。お客様に価値を伝え、仕事を獲得するための営業スキルは、独立する上で欠かせない力です。とくに空撮の仕事は単発案件が多いので、お客様と定期的にコミュニケーションを取り続けることを意識しましょう。暑中見舞いや年末年始の挨拶を送るなど、小さな工夫でお客様に思い出してもらえることがあります。
ドローン業界に特化した話としては、新製品や新しいソフトウェアの体験会や見学会に積極的に参加することも心がけましょう。たとえ遠方でも、なるべくイベントには足を運び、最新の情報をキャッチすることが大切です。ビッグサイトで開催される「Japan Drone」のような業界イベントはもちろん、日頃からメディアを通じて業界の動向やトレンドをしっかり把握することが成功への鍵となります。
2024年6月5日〜7日までの3日間、千葉県の幕張メッセにて、ドローンに特化した国内最大規模の展示会「Japan Drone 2024」が開催されました。「さあ、次の時代へ ON to the NEXT ERA」をテーマに、大きさや用途がさまざまなドローンの展示をはじめ、キーパーソンによる講演を実施。本記事ではJapan Drone 2024の様子を詳しく紹介します。
2024/07/01 10:53
初期投資の観点から言えば、良い機材やソフトウェアを揃えることが重要です。ハード面とソフト面の両方を充実させると、できることの幅が広がります。とくに、アマチュア機材だと電波干渉や伝送力の弱さが問題になることが多いので、送信機は特に高品質なものを選ぶべきです。
とはいえ、業界の先輩方の話を聞くと、「赤外線搭載のドローンに300万、400万を投資したものの、仕事がなくて困った」というケースもあるようです。まだ売上が安定していない段階での大きな初期投資はリスクも伴うため、バランスを考えながら進めることが重要といえるでしょう。
―「今後こういうことをやってみたい」という展望があれば教えてください。
会社としては、弊社Webサイトに掲げている「頼りやすいドローンビジネスパートナーになる」という目標を実現したいと考えています。テクノロジーを誰でも気軽に使える社会を目指し、まずはドローンをもっと身近なものにしていくことに貢献したいです。
個人としては、まだ客観的には経営者というよりもフリーランスの延長線上のような結果しか出ていないので、まずは経営者としてふさわしいレベルまで成長したいですね。
どの仕事にも苦労はつきもので、決して楽な仕事はありません。ただ、業界の変化をダイレクトに感じられるドローンビジネスは、ワクワクに満ちています。災害現場でのドローンの活躍や法規制まわりの変化など、ダイナミックな変化を楽しめる方ならドローン業界はきっと肌に合うはずです。同じような志を持った方と、いつか一緒に仕事ができる日を楽しみにしています!

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