株式会社RISE|農薬散布時間が10日⇒30分に!テクノロジーの力で果樹農家の負担減に貢献

株式会社RISE|農薬散布時間が10日⇒30分に!テクノロジーの力で果樹農家の負担減に貢献
深刻な担い手不足に直面する日本の農業。とくに果樹農家では、高齢化と労働負担の問題が喫緊の課題です。中でもみかんや梅などを栽培する中山間地域での果樹栽培は、その地形的特性から作業効率の向上が難しく、新規就農を妨げる要因の一つともなっています。

こうした果樹園農家をドローン活用で支援するのが株式会社RISEです。同社ではドローンによる農薬散布を行っており、山の斜面を使った広大な農地でも短時間で農薬を散布できる機体を活用して、業務効率向上に貢献しています。

従来は技術的に難しいとされていた、ドローンによる果樹園への農薬散布を実現したRISEの取り組みや実証実験の反応などについて、同社代表の長濱 寛氏・専務取締役の樋川 眞治氏に話を伺いました。

株式会社RISE 代表 長濱 寛氏

行政向けの案件に特化し、防災協定を締結

――ドローン業界への参入の経緯と、事業立ち上げ時の取り組みをお聞かせください。

長濱:

私はもともと自動車販売の仕事をしていたのですが、2020年ごろにドローンの存在を知り、事業への可能性を感じたことが参入のきっかけです。

当初は300万円を超える高額な初期投資が必要でしたが、再構築補助金を活用してドローンを購入したことで、新たな事業をスタートさせることができました。その後は建物診断士の資格も取得し、独学で技術を磨きながら赤外線を使用した外壁調査をスタートしました。

――現在の事業内容について教えてください。

樋川:

現在は外壁調査・漏水調査・農薬散布を主な事業としています。「ドローンを使えばこんなこともできるよね」という形でどんどん領域を広げていき、カラスなどの害鳥駆除や建物外観の3D撮影なども請け負っています。

2020年当時はドローンに対する理解が浅かったため、最初に始めた外壁調査もなかなか受注に結びつきませんでした。

そのため大手企業との競争は避けて行政向けの営業に注力することにしたのですが、その戦略が実を結び、堺市や狭山市、和泉市などの市町村と防災協定を結ぶことができました

災害時に大規模停電が発生しても、赤外線カメラを搭載したドローンなら暗闇の中でも被災者の探索や状況確認ができます。こうしたドローンの良さを、これからも広めていきたいですね。

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株式会社RISEと災害協定を締結|大阪狭山市ホームページ

令和3年10月4日、市は株式会社RISEと「災害時等におけるドローンを活用した応援活動に関する協定」を締結しました。 (1)災害発生現場等の被災状況の把握 (2)被災者の捜索 (3)物資の運搬 (4)市が実施する防災啓発事業及び防災訓練並びにドローン活用のための人材育成への協力 (5)その他市が必要と認めるドローンによる調査

株式会社RISEと災害協定を締結|大阪狭山市ホームページ

https://www.city.osakasayama.osaka.jp/sosiki/bousaibouhan/4/4/5642.html >


――現在複数の機種を保有されていると伺いましたが、使用されている機材について詳しく教えてください。

長濱:

主力となるのは果樹園専用機のEAビジョンです。他にもMatrice 300RTK、Mavic 2 Enterprise Advanced、AC101などを用途に応じて使い分けています。

特にAC101は米の散布に適しており、多くの実績がありますが、競合も多いのが現状です。そのため、果樹園という新しい分野にシフトすることを決めました。

優れたセンサー&独自の散布技術で、作業時間と負担を大幅に短縮

――果樹園向け農薬散布ドローンについて、特徴と運用方法を具体的にご説明いただけますか?

長濱:

EAビジョンは従来の農薬散布用ドローンとは一線を画す性能を持っていますが、特に優れているのは搭載されているセンサー技術です。EAビジョンは、高性能センサーにより山の斜面でも木との距離を一定に保てるため、ムラなく農薬を散布できます


長濱:
飛行時間は最大15分程度で、夜間飛行用のLEDも装備されています。虫や害獣が活発な夜間の散布にも対応できる可能性があります。EAビジョンは従来のドローンと異なり、事前の測量作業が不要なのも大きなメリットですね。

樋川:
EAビジョンの最大の特徴は、50ミクロン以下という極めて微細な霧状の農薬散布が可能な点です。これは特許技術で、他社の機体では実現できていません。

XAG JAPANやAgras T25といった機種でも農薬を散布すること自体は可能ですが、EAビジョンほどの微細な散布はできないんです。

散布方式も革新的で、霧状にした農薬を下に向けて噴射し、プロペラの風を利用して巻き上げることで、葉の裏側まで薬剤を行き渡らせる仕組みとなっています。

薬剤タンクは30リットルまで搭載可能ですが、重量が増えるとバッテリーの持続時間に影響するため、現場の状況に応じて適切な搭載量を判断していますね。

1回のフライトで3回程度の散布が可能で、その都度薬剤の補充とバッテリーの交換を行うという形で運用しています。

――実際の運用での課題や農家の反応はいかがでしたか?

樋川:

最初は和歌山のみかん農家との実証実験から始めました。従来は1町2反(約12,000㎡)を10日かけて行っていた散布作業が、ドローンを使うことでわずか30分程度で完了できるようになりました。

操作も簡単で、Googleマップでポイントをマークするだけでルートを設定でき、より正確な散布が必要な場合はRTK(リアルタイムキネマティック)* を使用して現地を歩きながら詳細なルートを設定することもできます。
* 高精度な位置情報をリアルタイムで提供する技術。「相対測位」と呼ばれる測定方法のひとつ。

現在は、散布効果の検証を慎重に進めています。農家さんと協力して、来シーズンから本格的な実証実験を行う予定です。また当社は代理店としても活動しており、部品供給やメンテナンスのサポート体制も整えています。部品は長くても1週間半程度で供給が可能ですね。

長濱:
急斜面での作業では、とくに農薬散布は大きな負担となっています。作業は重い薬剤を背負い、防護服を着用して行うため熱中症のリスクも高く、実際に命を落とす方もいます。


農薬散布は年に5〜6回ほど行うのですが、このような過酷な労働環境が離農や耕作放棄地の増加につながっているのが現状です。

実際に現場を回っていると、「この山一帯が耕作放棄地になった」という話をよく耳にします。行政も課題として認識しており、ドローン導入への期待は高まっています。

実運用への取り組みを進め、農業を若い世代にも魅力ある産業に

――果樹園での農薬散布における課題や、今後の展望についてお聞かせください。

長濱:

現状では航空防除用として認可された農薬の種類が限られており、とくにみかん以外の果樹への展開を考える際の課題となっていますね。また農薬散布に関しては法律との兼ね合いもあるので、ここは慎重に判断しなければなりません。

樋川:
今後はEAビジョンの販売代理店として、販売だけでなく、メンテナンスやサポートも含めた総合的なサービスを提供していきたいと考えています。

技術面では、夜間飛行能力を活かした新しいサービスの開発も検討しています。夜間は虫や害獣が活発で風も弱いため、散布に適した条件が揃うのです。今後は実証実験を重ねながら、実運用に向けて安全で効果的な散布方法を確立していきたいと考えています。

――今後の事業展開について、どのようなビジョンをお持ちですか。

長濱:

まずは農家の方々の労働負担を軽減することを目指しています。その手段として、ドローンの販売だけでなく、請負散布のサービスも展開していきたいと考えています。

将来的には複数のチームによる一斉防除体制を構築し、効率的な農薬散布サービスを提供したいと思います。

樋川:
こうしたサービスは近畿地方、特に和歌山県を中心に事業を展開していく予定です。

大阪は価格面の課題もあり、他の地域に比べてドローンの普及がやや遅れています。しかし私たちは単なる調査や散布だけでなく、その先の修繕や営農指導まで視野に入れた総合的なサービスを提供することで、新しい価値を生み出していきたいと考えています。

若い人が農業に参入しやすい環境を作り、農業の担い手を増やしていくことが私たちの使命です。技術革新により農作業の負担を軽減し、若い世代にとって魅力的な産業として農業を再定義していきたいと考えています。
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