2020年4月から小学校の英語教育が本格的に始まっています。英語の教科書も作られていて、小学5年生から中学校、高校への一貫した英語教育がスタートしました。大きな変化は、5、6年生の英語が成績がつく教科になったことです。成績がつくとなると、親としては子どもがどれぐらいできるのか、どんな英語が小学校で教えられているか気になりますね。小学校の英語教育で教えられている英語は、どのようなレベルの英語なのでしょうか。
小学校では慣れ親しませることが目的
友人から次のような相談を受けました。「1年生の娘が近所の英会話教室へ行きたがっているのよ。お友だちが行っているから一緒に行きたいって。でも、英会話教室へ入れなくても小学校で英語が教えられているんだから行かなくてもいいかなと思うんだけど…。うちは上2人がピアノとダンスを習っていてね、娘が3人いるから月謝にも悩むし、どう思う?」
近年、小学校の英語教育に対しての期待が大きく、学校で習うから英語は習い事で通わせなくてもいいと思う保護者も多いかもしれませんね。しかし、小学校の音楽や体育の授業でプロのピアニストやプロのサッカー選手が育つわけでもありません。同じように、小学校の英語教育だけでバイリンガルには育ちません。
小学校の英語教育では、英語に慣れ親しませること、コミュニケーション能力を育てることが目的です。2020年度から小学校では3~4年生は週1回、5~6年生は週2回のペースで英語を学んでいます。1、2年生は各小学校の裁量で、英語に親しむ時間が設けられていて、年に数回ほど英語の先生が来てくれます。
小学校英語の学習時間は少ない
公立小学校で習う英語の学習時間の表を見てください。学年 | 学習時間 | 授業回数 |
3年生 | 26.25時間 | 45分×35回 |
4年生 | 26.25時間 | 45分×35回 |
5年生 | 52.5時間 | 45分×70回 |
6年生 | 52.5時間 | 45分×70回 |
合計 | 157.5時間 | 45分×210回 |
3、4年生で各学年26.25時間(45分×35授業)、5、6年生で各学年52.5時間(45分×70授業)と、ごくわずかです。また、1、2年生で英語に触れる時間は学校によって変わります。ゼロ、または、多くても各学年26.25時間(45分×35授業)です。
小学校の英語の授業は以前に比べて多くなっていますが、4年間の学習時間が157.5時間の公立小学校だけの英語ではなかなか話せるレベルまでにはいきませんね。
5、6年生で習う単語数は、約600語
2020年度現在、5、6年生が使っている教科書は、4技能(聞く、話す、読む、書く)を学べるよう設定されています。小学校の英語教科書は全部で7種類ありますが、一番多く使われている「NEW HORIZON Elementary」(東京書籍)の内容を例に、子どもたちが習っている内容を簡単に紹介しましょう。
5年生の教科書(Unit2)には、「When is your birthday? (誕生日はいつですか)」「My birthday is November 7th(私の誕生日は11月7日です)」のような質問と答えの英会話が設定されています。子どもたちがこの英会話をするためには、月名と日にちの英単語の学習が必要ですね。さらに、このユニットでは、「What do you want for your birthday? (誕生日には何が欲しいですか)」の質問に対し、「I want a red T-shirt (赤いTシャツが欲しいです)」と、子どもが考えて表現するような答え方も学びます。
このように、子どもたちは2年間に英会話Q-A表現を約30種類と関連単語を約600語学びます。
小学校の英語で身につく力
学習時間数と語彙・表現の少なさで、小学校の英語では話せるレベルまではなかなかいきません。しかし、その一方で、英語教育がスタートしてから確実に成長しているのが「英語を聞く力」です。教科書や音声教材はネイティブ英語が使われていて、授業では、まとまった英語を聞いて、意味を理解する機会が増えています。また、小学校には英語圏以外の国からやってきた外国人の先生たちもいて、子どもたちはいろいろな発音の英語を聞いています。小学校の英語教育では、英語はWorld Englishes(世界で使われる英語)という考え方なので、フィリピン出身の先生がいたり、ケニア出身の先生がいたりします。
子どもたちは、外国人の先生を通して少し発音が異なる英語もあるということに気づくのです。小学校の教育は全人教育なので、英語教育を通して育つ人間力、世界観、人間観察力、コミュニケーション力を大切にしています。子どもの目を通して育つ心が一番大切ですね。
小学校の英語 弱点は多人数
教科になったので、これまで課題だった教材と指導者については徐々に解決されています。学校にはデジタル教材などの十分な音声教材がそろってきました。今後は教科担任制も進みますから徐々に英語を教える専門の先生も配置されるようになっています。しかし、一番の弱点は多人数であることです。これはどうしようもありません。1クラス30~40人ですから教室でできることは限りがありますね。一般的に語学の教育は6人ほどの少人数が理想的です。
家庭でも英語に親しむ時間が大事
理想は子どもが自転車に乗れるようになるイメージです。自転車に乗るのは感覚が大事ですね。何度も転びながら、乗る練習をくり返しているうちに何となくバランスを取れるようになります。英語の学習もセンスを育てることは同じです。早く始めて着実に英語力を身につけるには、子ども自身が「英語が好き、楽しい」と思って学習を継続することが一番大事です。小学校で習う英語以外に家庭でできることは、子どもが英語に触れる時間を増やすことと、楽しいくり返しのインプット&アウトプットで語彙と表現を増やすことです。
まとめ
1.小学校の英語教育の目的は、英語に慣れ親しむことです。2.小学校4年間の学習時間は、まだまだ少ないです(157.5時間)。
3.小学校の英語は、いろいろな英語に親しむ(World Englishes)という考え方です。
4.小学校では、英語教育を通して育つ人間力、コミュニケーション力も大切です。
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