全国網羅で実現するドローンソリューション|KDDIスマートドローンパートナーズが描く遠隔運航の未来
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今回お話を伺った方
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KDDIスマートドローン(株)ソリューションビジネス推進3部 部長
入柿 雅一氏2016年、映像制作会社で責任者としてドローン事業拡大に従事。以降、現場での経験を重ねながら業界の発展に携わる。現在はKDDIスマートドローン株式会社にてソリューションビジネス推進3部の部長を務め、代理店・取次店を通じたプロダクト提供と全国展開を推進している。
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ドローンビジネスは今、大きな転換点を迎えています。従来の「現場で操縦する」スタイルから、ドローンポートを活用した「遠隔運航」へ。そして単独事業者の限界を超え、全国規模のネットワークで課題解決に挑む時代へ――。
KDDIスマートドローン株式会社が展開する「KDDIスマートドローンパートナーズ」は、まさにこの変革を体現する取り組みです。
今回は、このパートナーズ制度を立ち上げたKDDIスマートドローン(株)ソリューションビジネス推進3部の入柿 雅一部長に、制度の真価と、ドローンポート・上空電波(4G LTE)を活用した次世代サービスについて詳しく伺いました。
全国114社のアライアンス構築「地方での孤軍奮闘から生まれたパートナーズ構想」

KDDIスマートドローン(株)ソリューションビジネス推進3部の入柿 雅一部長
編集部:まず、入柿部長ご自身の役割と、KDDIスマートドローンパートナーズ制度を立ち上げた背景について教えてください。
入柿氏:私は2016年4月、ローカル放送局の映像制作会社でドローン事業の責任者に就いたことから、この業界に携わることになりました。KDDIスマートドローンには約2年前にジョインし、現在は新設されたソリューションビジネス推進3部(代理店や取次店を介して弊社のプロダクト提供をおこなう)で部長を務めています。
パートナーズ制度を立ち上げた背景には、実は私自身のこれまでの実体験があります。地方で孤軍奮闘しても限界があり、さまざまな面で苦労を重ねました。
それでも、多少うまくいって全国展開できるようになり上京して事業発展に励みましたが、やはり1社で満足のいくビジョンは見出せず、もどかしい経験をしたのです。
編集部:その実体験が、今回の制度設計に活かされているのですね。
入柿氏:業界のトップランナーとして自社で突き進むのも良いのですが、私は「単独企業で全国展開する」のではなく、地域の実力を兼ね備えた企業と連携しながら共に成長していくべきだという強い信念を持っています。
全国各地の企業が持つ「現場力・地域ネットワーク・専門ノウハウ」を核にして、弊社の通信基盤・共通商材・営業支援を提供することで、1社では容易ではない「全国網羅型ドローンサービス」を一緒に実現したいと思っています。
今の業界フェーズを考えると、協力・協業する方が断然早く市場を成長させられると確信しているのです。
編集部:では、現在のパートナーズ制度の進捗状況はいかがでしょうか。

入柿氏:先の発表では58社の企業様とアライアンスを構築できましたが、今回第2期の募集をおこない56社が加わり、合計114社となりました。これは文字通り全国を網羅する体制構築が完了したと言えます。
編集部:具体的な成果も出始めていますか?
入柿氏:はい、既に各社様との様々な事案が活発に動いています!傾向としては、やはりドローンポートを活用した遠隔運航サービスの展開がかなり増えていることと、上空電波(4G LTE)の活用が進んできています。参画企業様からは「自社だけでは展開できなかったことが、KDDIスマートドローンパートナーズに参画したことで実現ができ、売上に直結しています。」と嬉しい言葉を頂いています。
これまでは、「自社では取り扱っていないメーカーの機体で販売できない」とか、「点検はおこなえるが測量はできない」、「映像制作はおこなっているが物流はおこなえない」など、全てのソリューションに対応することはハードルが高かった。
それで案件を取りこぼすのは非常に勿体ないですよね。
このパートナーズであれば、数多くの経験豊富な仲間で構成されており、ご相談いただいた案件は、ほぼ対応できると言って過言ではないと思います。
KSDパートナーズの始動を発表!「KSD CONNECT 2025」のレポートはこちら
2025年5月29日、大手町三井ホールで開催された「KSD CONNECT 2025」では、KDDI松田社長による全国1000ドローンポート構想の発表から、58社による協業体制の始動まで、業界の将来を見据えた発表が相次ぎました。本記事では、パートナーズセッションの内容を中心に、イベントの様子をレポートします。
2025/07/24
ドローンポートと上空電波(4G LTE)が拓く遠隔運航時代の到来

Skydio Dock for X10
編集部:次世代のドローン運用において、ポートや上空電波といった技術がキーワードになっていますが、具体的にどのような変化が起きているのでしょうか。
入柿氏: 今、業界は大きな転換点にあると感じています。ドローンを現場に持参し飛ばしていた時代から、ドローンポートやドックと言われるものを設置し遠隔で運用するフェーズに移行しています。もちろん業務によっては、これまでの運用は引き続き必要ですが。
Skydio(スカイディオ)のSkdyio Dock for X10もそうですし、DJIのDock3もそう。AUTELなど他社も追いかけて来ています。
今の旬なワードとしては「ドローンポート(ドック)」「上空電波(4G LTE)」「遠隔運航」ですね。
編集部:実際の運用状況はどうなのでしょうか。
入柿氏: 現在、弊社の遠隔運航フライト実績数は7,500回を超えています。私たちが実際に複数箇所でドローンポートを使った遠隔運用を始めているのは、セキュリティが確保された場所です。事例もたくさんリリースしていますが、プラントの敷地内や工事現場の敷地内といったところですね。
第三者が立ち入らないエリアでの運用が中心で、一般生活圏にドックを置いて街中をドローンが飛ぶという段階にはまだ至っていません。
ただ、海外を見ると状況はかなり違います。
先日、弊社のメンバーがSkydio本社へ行った際、屋上に15台のDock for X10が設置されていて、同時に複数のドローンが飛び交っていたそうです。
しかも、運用していたのは僅か2人だったとのことです。すでにアメリカでは、日常的なインフラとして、ドローンが活用されているのです。
また、私も数日前に中国の深圳に行きましたが、大勢で賑わう大型ショッピングモールの3階テラスから高層ビルが立ち並ぶビジネス街へ、ドローンが飛び交いランチを運んでいるのを目の当たりにしました。実際に見ると本当に感動かつ衝撃的でした。
編集部:日本でも同様の展開は期待できるのでしょうか。
入柿氏:現時点では海外を追いかけている状況ですが、日本でも積極的に活用される日は、そう遠くないと考えています。
技術的には十分可能ですし、社会実装に向けた準備を着実に進めているところです。
編集部:インフラとして日本中でドローンが活用されるにあたっては、上空のモバイル通信における課題があるかと思います。その解決策についてお聞かせください。
入柿氏:今まではWi-Fi通信でプロポを機体に繋げて現場で飛行していたものが、上空電波(4G LTE)により、全国どこにいても遠隔運用できるようになりました。
とはいうものの、「電波が繋がらない場所がある」というご意見も実際にあります。
山奥にある鉄塔、ダムや砂防堰堤といったところ、また災害が起きた時に行くような場所では、電波が繋がらないケースがあります。
しかし、そういった場合はスターリンク(衛星通信)を使えば大まか解決します。

KDDIがCMしているように、スターリンクの直接通信によって「空が見えれば繋がる」ことができるようになってきた。スターリンクはドローンのインフラ活用に大きく貢献すると考えています。
通信インフラ企業であるKDDIとしては、これまでのモバイル通信に加えて、衛星通信を活用することで、広範囲のエリアをカバーできるというのが大きな強みになります。
そして、これからドローンポートを全国に配置していくビジョンを持って進めているわけですが、ここでもパートナーズの存在が重要で、活きてきます。
東京の会社が単体でやるのではなく、全国にパートナーズがいることで、各地にポートを置いて通信で繋ぎ、遠隔運航できる体制が構築できている。このスケールの大きさは、KDDIスマートドローンパートナーズの強みだと考えています。
編集部:サポート体制という面でも、パートナーズの存在は重要なのですね。
入柿氏:その通りです。何か不具合が出た時に、東京から遠方地域に新幹線や飛行機で向かうようではロスも多く大変です。
しかし、全国にパートナーズがいれば、たとえば「北海道ですか?では近くのパートナー企業がすぐ駆けつけますね」という体制が取れます。
遠隔運航時代が本格化した際、既に我々は全国にバックアップ体制を敷けていることになります。やはり地元の事業者としての地域とのつながりは外せません。
KSDパートナーズについて詳しい情報は「KDDI SmartDrone PARTNERS」へ!
地域課題に応える具体的ドローンソリューション「熊対策から災害支援まで」

編集部:制度・法整備や現場運用など、実際に取り組む中で直面している課題について教えてください。
入柿氏:現場運用面での課題としては、サービスの品質維持とノウハウ共有の浸透が挙げられます。せっかく全国展開するならば、どこで使われても一定レベルの品質を保たねばなりません。そのための教育・研修制度の整備をしっかり行うことが不可欠だと考えています。
制度設計上では、「拠点間の重複参入」や「契約の見直し・切り替え」も運用上配慮すべき点です。
実際、制度には「47都道府県すべてにパートナーが配置できるように」「実績により座組から入れ替える可能性あり」といった条件も掲げており、選抜性・見直し可能性を入れて制度に緊張感のある設計をしています。競争の原理を利用し、実力主義で各社の士気向上=成長も支援したいのです。
編集部:品質担保の取り組みについて、もう少し詳しく教えてください。
入柿氏:現在、弊社が活用している各種資料の共有、クローズドの勉強会や講習をおこなったり、最新機種をいち早く触れるデモ会を開催したりして、パートナー企業のレベルアップや情報のアップデートに取り組んでいます。
編集部:パートナー企業と共に取り組んでいる具体的な事例はありますか。
入柿氏:一例としてパートナー企業には、上空電波用のSIMを無料で貸し出し、実際に活用してもらうことで利点を実感してもらっています。知識や経験が得られ販促に有効となるだけでなく、皆様に紹介できる事例を作って頂くことで、弊社にとってもプラスとなります。現場の生の声が集まり共有できるのも良いですね。
またその他では、最近社会問題になっている熊の出没対策。地上から熊を探すのは危険を伴いますし、かといって近くでドローンを飛ばせば操縦者自身が襲われるリスクがあります。
そこで、遠隔運航で安全な場所から熊の生息状況を把握したいという相談があり、運用の検討を行っています。また、スキー場での遭難者捜索にドローンを活用したいという声もあります。雪山での人力捜索は困難を極めますから、上空からの効率的な捜索が期待されています。
さらに海岸では、ライフセーバーによる監視をドローンでサポートする構想もあります。上空から広範囲を監視するだけでなく救命具を運び届けることで、より迅速な救助活動が期待されています。
編集部:地域ならではの課題が見えてくるのですね。
入柿氏:その通りです。海があるところ、雪山があるところといった地域特有のニーズは、その地域のパートナーでないと見えてきません。
ニーズはあるが「ドローンポートを持っていない」「上空電波(4G LTE)回線の契約が行えていない」といったハードルがあった案件でも、パートナーズの座組があれば「一緒にやりましょう」とすぐに動き出せる。これは全国ネットワークを組んでいるからこそ実現できることですね。
社会インフラとしてのドローン「1,000拠点ドローンポート構想と業界の未来」

編集部:今後1〜3年で注力したい領域と、その戦略についてお聞かせください。
入柿氏:特に注力したいのは、インフラ点検、災害対応、警備監視です。これらは、ドローンならではの強みが発揮でき、かつ社会課題との接点が深い分野です。

パートナーズによる拠点配置を強化し、各地域で「その地域を知る企業」と手を組んで事業を展開する体制を築く。共通商材の標準化、スマートドローンソリューション(アウトソーシング)、機体販売、スマートドローンツールズ、アカデミー講習など、弊社側が提供できる「サービスパック」を整えて、それを全国パートナーが扱いやすくします。
そして、ユースケース共創とマーケット創出、つまりパートナーと一緒に地域の課題を起点にソリューションを形にしていきたいと願っています。
また、通信技術を活用した新しいドローンサービス、リアルタイム映像伝送、遠隔操作支援などを共同で開発していきます。
編集部:5Gや衛星通信、ドローンポートなどの新技術を活用した社会実装に向けて、どのようなビジョンを描いていますか。
入柿氏:ドローンを「社会を支えるインフラ」として全国に実装することをめざしています。
先日プレス発表もおこないましたが石川県での大規模実証を皮切りに、ドローンポートと通信(4G LTE・衛星)さらにAIを組み合わせて、平時から有事まで使える「どこでも飛行10分でカバーできる」体制を作る、これが中心的なビジョンです。
石川県には既に4箇所設置済みですが、このあと30箇所まで増設し県内をカバーしていきます。着々とその他地域との話も進めていて、将来的には全国1,000箇所にドローンポートの配置を目指します。
その際には、全国にいるパートナーズの役割は大きな意味を成してくるでしょうね。
編集部:パートナー企業や自治体との連携において重視している点、協業の理想像についてお聞かせください。
入柿氏:重視しているのは「相互補完」と「共創成長」です。まず参画のハードルを下げるため、初期費用・年会費は一切いただいていません。安心して参画できる仕組みが重要だと考えています。
パートナー企業が得られるメリットは大きく3つあります。
1つ目は、KDDIスマートドローン商材を自社製品として扱えること。2つ目は、ノウハウ・営業支援・ヒト・モノといったバックアップを受けられること。3つ目は、優先的に新製品の勉強会やデモ会に参画できるなど知見を得られることです。
編集部:理想とする協業の形はどのようなものでしょうか。
入柿氏:地域企業が持つ現場実装力と、KDDIスマートドローンが提供するプラットフォーム・通信基盤、この2つが組み合わさることが理想です。
パートナーが安心して参画し、共に成長し続けられる支援体制を整える。その結果として、全国網羅の信頼できる、圧倒的かつ強固なドローン組織体。これが私たちのめざす協業の姿です。
普通、ドローン事業者同士は競合関係にありますよね。それが一体となって取り組めるのは、KDDIスマートドローンというプラットフォームがあるからこそ。
しかし、どちらが上とか下ではなく、良い意味でお互いをうまく利用する関係だと考えています。自社が持ちえないものを、有効的に補填し合い強みを増すことで、お客様が抱える課題をしっかりと解決に導く。これが叶うのが、このパートナーズの魅力です。
そして、参画していて良かったと思って頂けるよう様々な施策を皆様と仕掛けていきたいと思っています。参画頂いている各社と協力し、お客様がKDDIスマートドローンパートナーズなら安心だと言って頂けるものに成長させたいです。これだけの企業が集まっていますし、ワクワク楽しい展開もアリですかね。

編集部:最後に、これからドローン導入を検討する企業・自治体、あるいは業界関係者に向けてメッセージをお願いします。
入柿氏:ドローンはまだ先端技術の域を出ないとも言われていますが、我々の肌感としては、いよいよ実務・実装のフェーズに入ったと感じており、そのポテンシャルは計り知れません。
これから本格的にドローンを活用していくにあたり、どの企業と組んでいくかは大きな格差が生まれるのではと思います。
弊社は、これまで培った豊富な経験を持ち、さらに今回、全国100社を超える企業からなる「KDDIスマートドローンパートナーズ」を構築完了しました。まだまだこれからではございますが、着実に成長できていると感じています。
これからさらに地域を巻き込みながら、社会価値を生むサービスを一緒に創っていきたい。通信基盤と商材・教育基盤・支援力を持つKDDIスマートドローンとともに、未来の空のインフラを構築しませんか?
\\次世代のドローン事業、始動。今すぐチェック!//
空の産業革命はもう始まっている!

ドローンが空を飛ぶ光景が「非日常」から「日常」へ。その転換点は、もう目の前まで来ています。
防犯、災害対応、インフラ点検。社会を支える必要不可欠なインフラとして、ドローンが当たり前に活用される時代が始まろうとしています。
その最前線で、全国114社のネットワークを構築し、通信技術とドローンポート、そして地域の力を結集したKDDIスマートドローンの挑戦は、日本のドローン産業の未来を切り拓く原動力となるでしょう。空の産業革命は、すでに動き出しています。
\\チャンスはここから↓//
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