「1ステージごとに意味がある」──トイオ・プレイグラウンド コマンド 中山プロデューサーが語る"学びの設計”
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今回お話を伺った方
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toio™(トイオ)ファウンダー、企画・開発
中山 哲法氏2006年よりソニー株式会社にてカメラの組み込みソフトウェア開発に従事し、USBやWi-Fi、Bluetoothなど通信領域を中心に経験を積む。現在は「トイオ・プレイグラウンド コマンド」の開発に携わり、教育現場の声を取り入れながら、子どもから中高生までの学びにつながる教材を設計する。プログラミングの本質を、遊びを通じて自然に理解できる体験づくりを追求している。
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ロボットトイ「toio™(トイオ)」のコアキューブ(以降、キューブ)が、カードを並べたマットの上を走る──。
ソニー・インタラクティブエンタテインメントが2024年に発売した「トイオ・プレイグラウンド」は、パソコンもタブレットも使わずにプログラミング的思考を体験できる教材として、幼保園から学童、プログラミング教室まで幅広く導入されてきました。
そして今、シリーズの第3弾となる発展版の新商品が登場します。
その名も「トイオ・プレイグラウンド コマンド」です。

トイオ・プレイグラウンド コマンド
トイオ・プレイグラウンド コマンドは、既存の「置くだけで動く」体験を継承しつつ、コマンドカードによる本格的なプログラミング学習を実現した意欲作です。
今回は、開発を主導した中山プロデューサーに、企画の背景から設計思想、現場での手応えまでを語っていただきました。
本製品は、アフレル主催の新商品発表会でも発表され、多くの教育関係者の関心を集めました。展示会全体の様子や他の教材については、以下のレポート記事で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
【新商品発表会レポート】教材の"次の一手"が続々登場──MATRIX・ILLUMME・レゴ® CS&AI・トイオ・プレイグラウンド コマンドが描くプログラミング教育の新地平

トイオ・プレイグラウンド コマンドを開発した中山プロデューサー
トイオ・プレイグラウンド コマンドが開発された背景|前作からの改善ポイント
── 「プレイグラウンド コマンド」は、既存シリーズの何を継承し、何を変えようとした商品ですか?中山氏:出発点は大きく2つありました。
1つ目は、既存のトイオ・プレイグラウンドに対する現場の声です。
私たちは、「カードを置くとキューブが動く」という体験をプログラミングとして提供していました。
しかし、塾や学校の先生、親御さんからは、Scratchやテキストベースのプログラミング(PythonやJavaScriptなど)と「少し違って見える」と言われていたのです。
実際には、「場をプログラミングするか、振る舞いをプログラミングするか」の違いでしかなく、本質はどちらもプログラミングです。
しかし、一般的なプログラミング体験とは少し異なるものとして受け取られていました。
そこから、「ビジュアルプログラミングやテキストプログラミングにスムーズに接続できる体験を提供したい」と考えたのがきっかけです。

カードで動かす体験は、一般的なプログラミングとは違うものに見られていた
2つ目は、過去にtoio本体セットを使ったカード型プログラミング製品を開発した際の反省です。
当時の製品にはいくつか課題がありました。
toio本体セットを別途用意した上に、コンセントへの接続も必要で、学校や塾といった教育現場では取り回しに煩雑な部分がありました。
また、カードも見つけにくく片付けにくいという問題があり、現場での運用負担は小さくありませんでした。
さらに、同梱のブックのステージ数は50ほどにとどまり、クリアしきってしまうとそれ以上遊べなくなります。ステージを動的に生成する仕組みもなく、遊びの広がりにも限界がありました。
こうした点をまとめて解消するため、今回の企画を立ち上げました。

──一般的にロボット製品は1年以上かかると聞きますが、今回のスケジュールはいかがでしたか?
中山氏:最初に上司から話をもらったのが約10か月前でした。そこから約2か月間、試作と検討を重ね、「これだ」と思える形にたどり着いたというのが大まかな流れです。
通常は1年ほどかかるところを、比較的短期間で商品化できた印象があります。
短期間で進められた理由としては、社内外から多くの意見を取り入れながら開発を進めてきた点が大きいと感じています。
議論を重ねたことで、限られた期間の中でも一定の確信を持って世に出すことができました。
トイオ・プレイグラウンド コマンドとは?開発の想いや企画の柱

── ご自身のバックグラウンドは、トイオ・プレイグラウンド コマンドの設計にどのように影響していますか。設計思想のルーツを教えてください。
中山氏:私は2006年にソニー株式会社へ入社し、カメラの組み込みソフトウェアエンジニアとして開発に携わってきました。
そこでは、USBやWi-Fi、Bluetoothといった通信領域の実装を中心に、ソフトウェアエンジニアとして経験を積んできました。
文部科学省の『プログラミング教育の手引(第三版)』では、小学校では順次・反復・分岐の3つが示されています。一方で、ソフトウェア開発の現場の実感としては、この3つだけで学びを終えてしまうのはもったいないと感じていました。
そこで本製品では、中学校の「技術・家庭」や高校の「情報Ⅰ」も視野に入れ、論理演算やマルチスレッド、双方向通信といった概念についても、段階的に体験できるよう設計しています。
小学校で無理に教える必要はありませんが、概念としてはそれほど難しくないので、中高への接続をシームレスに設計したかったんです。

トイオ・プレイグラウンド コマンドを操作する中山氏
──トイオ・プレイグラウンド コマンドの企画の柱について、詳しく教えてください。
中山氏:トイオ・プレイグラウンド コマンドの企画の柱は、大きく分けて4つあります。

1つ目は、 画面を使わず簡単プログラミングできることです。
コマンドカードを並べて、キューブで読み取るだけでプログラム登録が完了し、スタート地点に置くだけでキューブが動き出します。
迷路のゴールを目指す体験の中で、プログラミングの基本要素と論理的思考を育めるようにしました。

2つ目は、遊んで学べるプログラミングブックです。
ステージを自分で一から作ると時間がかかるので、ブックの中にはすでにステージが印刷されています。
文部科学省のガイドラインに準拠した設計で、基礎から発展まで学べる仕様です。

3つ目は、カードを置くだけで作成できるステージです。
ブックを終えた子どもが自分で作る段階に進めるよう、シンプルなマス目模様のマット1枚が同梱されています。
さらに、レゴブロックなどと組み合わせて壁やゲートを置けば、物理的な立体ステージも構築可能です。

4つ目は、教育現場で活用できる追加教材としての役割です。
小学5年生の算数で扱う「多角形描画」をカードで体験できるコンテンツをはじめ、先生の授業準備や生徒の理解を助ける副教材を順次追加していきます。

── 監修体制についても教えてください。
中山氏:プログラミングブックは福井大学の先生方に監修いただいております。
加えて、福井大学附属の小学校で研究授業(テスト授業)をさせていただきながら、一緒に作り上げてきました。
──福井大学附属小での研究授業で、印象的だったエピソードはありますか?
中山氏:私たちは当初、1時間でブック1を終えられる想定で教材を渡しましたが、なかには短時間で終え、2冊目に進むお子さんもいらっしゃいました。
一方で、1冊目の最後でじっくりと考え込む子もおり、学習の進み方には個人差がありました。
子ども一人ひとりの違いにも対応できた点は、設計として良かったと感じています。ブックの最後には、「自分でステージを作り、隣の子に解いてもらう」アクティビティを用意しているため、早くクリアした子も次の挑戦に自然と進める構成になっています。
今後は学習現場において、教師はファシリテーターとしての役割が求められると思いますが、そうした考え方にも合致する授業形態を実現できました。
すべてのステージに意味がある|消化試合が1つもないと言い切れる構成
──ブックの学習構成についても教えてください。中山氏:ブックは5セット構成となっており、1〜4は小学校1〜4年生を対象としています。
5は中学・高校への接続を意識した上位編で、「物足りなさ」を感じる層にも対応できる内容です。近年は塾や放課後サービスでプログラミングを学ぶ子どもも増えており、学習経験のある子どもにも応えられる位置づけとしています。

5セット構成のブック(5冊目が上下巻に分かれるため実質6冊)

ブックの中身
ブックの中には、文部科学省の「プログラミング教育の手引(第三版)」に沿って、順次・反復・分岐を基本に、関数・乱数・論理演算・マルチスレッド/双方向通信といった概念まで、段階的に組み込んでいます。
──「1ステージごとに意味がある」と伺いました。具体的に教えてください。
中山氏:すべてのステージに、それぞれ明確な意図があります。
たとえば、ブック1(順次①)では、最初のステージを「カードと同じ向きでまっすぐ進んで1枚でゴール」にしています。
というのも、既存コンテンツの最初のステージは「カードが横向きなのに、キューブは上向きから始まる」という設計で、間違える子どもが多かったんです。
今回は、
- まず1枚でゴールする
- 次に2枚使ってゴールする
- 縦向きならどう変わるか確かめる
- 右向き・左向きも試す
- 縦横の組み合わせも試す
……というように、学習曲線に沿って段階的に構成された、無駄の無い設計です。

| ブックナンバー | 内容 | 学習要素 |
|---|---|---|
| ブック1 | きほん(順次①) | 順次処理(前進、旋回)、迂回 |
| ブック2 | いろんなゆかと くりかえし(順次②/反復①) | 繰り返しによる反復、外乱 |
| ブック3 | くふうしてとく くりかえし(反復②) | 関数による反復、タスクの設定 |
| ブック4 | じょうけん(分岐) | 条件分岐、乱数、論理演算 |
| ブック5-1 | 2台で協力(マルチスレッド) | マルチスレッド、2台連携 |
| ブック5-2 | 2台で通信(双方向通信) | 双方向通信、リアルタイム制御 |
if文も同じで、「if文というスキルを覚えましょう」では子どもに響かないので、"if文を使わないと解けないステージ"を設けました。
たとえば「回転床」というギミックを置くと、黒い矢印のどちらかにランダムに向きが変わります。
if文を使わないプログラムでは解けないため、「だからif文って必要なんだ」と納得して学べる設計になっているんです。
設計のこだわり|toioならではの強みで子どもでもストレスなく遊べる
──ハードウェアのこだわりも多いと伺いました。「toioならではの強み」を具体的に教えてください。中山氏:ハードウェアのこだわりは大きく2つあります。
1つ目は、絶対位置座標を使った制御です。

ブック上のキューブ
マットには絶対位置の情報が印刷されていて、キューブはどこにいるか常に分かる仕組みになっています。
toioのようにここまで正確な位置検出と制御ができるものは、研究用などの高額な機材がほとんどです。我々はそれを一般的な販売価格で市販のロボット教材として実現しています。
2つ目は、使いやすさへのこだわりです。
たとえば、カードを多少ラフに置いても正しく読み取れるよう設計しており、キューブは中心を通るように補正しながら動きます。そのため、子どもが多少適当に並べた場合でも、プログラムとして成立するようになっています。
また、カードを斜めに置いた場合でもまっすぐ前に進むよう制御されており、多少のズレや障害があっても、中心に補正して走り直す仕組みを取り入れています。

多少ラフにカードを置いても、正しく読み取りながらキューブが動く
さらに、2台のキューブは置くだけで接続される設計です。コンソール機器がないため本来は直接接続が必要ですが、その操作も含めて「置くだけでつながる」体験になるよう、細部まで作り込んでいます。
使うのは子どもたちなので、多少のズレや扱いのラフさがあっても問題なく動くようにすることで、ストレスなく扱えるよう工夫しています。
これは、toioならではの強みだと考えています。
──2台連携でどのような遊びができるのですか?
中山氏:接続自体は置くだけで完了します。
そのうえで、ターンが同期していたり、相手の座標をリアルタイムで交換していたりするので、
- 片方のキューブが動いたら、もう片方が連動して動く
- お互いの向きを追いかけ合う
- 2台が協力しないとクリアできないステージを作る
などの遊び方ができます。
複数台のロボットを連携させる仕組みは、市販の教材ではあまり多くありません。
その中で本製品は、複数台でも動きがズレることなく、安定して同じ動作を再現できるよう設計しています。
1台でも、2台でも、どちらでも違和感なく動くように、社内の多くのメンバーから意見を取り入れながら作り込みました。
──カードにもこだわりが詰まっていると伺いました。
中山氏:カードはアクションカード(片面)9種32枚と、コマンドカード(両面)13種60枚、合計92枚が同梱されています。
カードは裏表で異なる動きが設定されており、関連する動きをセットで使えるようになっています。
たとえば、「前に進む」の裏が「後ろに下がる」、「右を向く」の裏が「左を向く」といった具合です。

プログラミングの本質は繰り返しや関数化にあります。
子どもが「あれ、このステージ、さっきと逆だな」と気付いた瞬間にカードをひっくり返せば同じ構造で解ける仕組みで、関数の再利用を体感的に学べます。
また、検索性も上がりました。
以前は「真っ白の裏」のようにひっくり返すまでどれか分からないカードもありましたが、両面に色情報を入れ、一瞬で見つけられるようにしました。
プログラミング教室さんの運用でも、時間短縮に直結する工夫です。
さらに、カードの"抜き方"にもこだわっています。
カードは紙を機械で抜くので、どうしても並べやすさ/並べにくさが出てしまいます。
そこで、よく使うカードの組み合わせはきっちり止まりやすく、あまり使わない組み合わせは優先度を落として設計しました。
見えない使いやすさの改善を、抜き方のレベルからやっている、ということですね。
──トイオ・プレイグラウンド コマンドの拡張性・エコシステムについても教えてください。
中山氏:toioコアキューブのソフトウェアは、スマートフォンからファームウェアアップデートが可能で、買った後も機能を拡張できます。
また、弊社よりライセンスを取得すれば他社からも関連製品を発売できる設計になっており、サードパーティ展開にも開放しています。
たとえば、あるキャラクターを使った展開をしたいという要望があれば、かなりスピーディに対応できる汎用性があります。
さらに、我々自身も無償のコンテンツをどんどん展開していく予定です。
開発者・中山プロデューサーから読者へメッセージ

笑顔でこだわりを語ってくれた中山氏
中山氏:「どの学習レベルの子でもうまく授業を終えられるように」「先生がファシリテーターとして動きやすいように」という視点で作り込んだ教材です。
学校や塾、ご家庭のいずれでも、無料ダウンロードできるステージ集やブックのお試し版から気軽に試せるので、まずは触っていただきたいと思います。
そして、現場で実際に使ってみて「もっとこうしたい」という声をぜひ聞かせてください。
プログラミング教室さんの独自カスタマイズや、学校ごとの運用に合わせた展開も、今後広げていきたいと思っています。
まとめ ── "楽しさ"と"学習曲線"を両立させた新定番
今回のインタビューで特に印象に残ったのは、中山氏の「1ステージごとに意味がある」という言葉でした。if文を「覚える」のではなく、「使わないと解けない」状況を通じて必然性から理解させる設計。そして、カードの裏表で関数の再利用を体感させる工夫。
子どもの学習曲線を丁寧にケアした設計思想は、まさにソフトウェアエンジニア出身である中山氏ならではの視点が詰まったものでした。
希望小売価格3,980円(税抜)という手の届きやすさ、パソコン・タブレット不要という現場運用のしやすさ、そして中学校技術科の「情報」や、高校の「情報Ⅰ」への接続まで見据えた拡張性。
低学年から本格プログラミング学習の入り口として、教室運営者・教育関係者にとって有力な選択肢となりそうです。
すでにtoioが多くの学校・教室で導入が進んでいることからも、その実用性の高さがうかがえます。
「遊び」と「学び」を自然につなぎ、次のステップへと導く教材として、今後さらに活用が広がっていきそうです。
トイオ・プレイグラウンド コマンド 商品情報

トイオ・プレイグラウンド コマンド
| 製品名称 | トイオ・プレイグラウンド コマンド(toio™ PlayGround Command) 製品型番:TQJS-00102 |
| 発売日 | 2026年5月14日 |
| 発売元 | 株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント |
| 希望小売価格 | 4,378円(税込) |
| 対象人数/年齢 | 1人以上/6才以上 |
| 内容品 |
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| 公式サイト |
https://toio.io/titles/pg-cmd.html |
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