ロボットに託した熱い想いを感じてほしい!二足歩行ロボット大会「ROBO-ONE」に行ってきた!

ロボットに託した熱い想いを感じてほしい!二足歩行ロボット大会「ROBO-ONE」に行ってきた!
一般社団法人「二足歩行ロボット協会」が主催する「ROBO-ONE(ロボワン)」は二足歩行ロボットの大会です。この大会に出場できるロボットの条件は、「2本の脚、2本の腕、胴体、そして頭」があること。今回は、先日、兵庫県神戸市バンドー神戸青少年科学館で行われた第34回ROBO-ONEの模様をレポートします。

転んだっていい! 不屈の精神で起き上がれ!

古くは鉄人28号、鉄腕アトムやマジンガーZ、ガンダムだってみんな2本足のロボットです。人間と同じように2本の足と手を持つロボットは、いつの時代もみんなのあこがれです。

とは言うものの、機動性や安定性を考えると2本足というのはまったく理想的ではありません…。どうせなら足は3本、いや4本あったほうが便利で安定するし、そもそも長い足よりもタイヤやキャタピラのほうが動きやすい…。でも、そんなことを言うのはナンセンスというもの! 困難だからこそ挑戦したくなるんです!

二足歩行ロボットはいつの時代もみんなのあこがれ!


2002年から行われている「ROBO-ONE」は、そんな二足歩行ロボに熱い想いを寄せる人たちが集う大会です。総数121のチームがエントリーした今大会のメイン競技は「リングでの格闘技」。参加者自らが製作したロボットを、自律操縦、またはワイヤレスで遠隔操作しながら試合を行います。

でも、その前に参加者は予選を突破しなくてはなりません! 幅90センチ長さ4.5メートルのレーンを1分以内に完走するのが予選突破の条件ですが、これがなかなか難しい!! そもそも2本足のロボットをまっすぐ歩かせるのは、簡単なことではありません

何度転んでも起き上がれば試合は続行できますが、レーンから落ちれば失格です。慎重になりすぎれば時間切れになるし、早すぎればバランスを崩して転んでしまうこともあるので、皆さんなかなか苦戦しています。

決勝に進むには完走が条件。でも、レーンから落下してしまうロボットも


安定して歩くためには、両足の裏を地面に付けたまま「すり足」で歩くほうが楽なのでしょうが、ROBO-ONEのロボットは1センチ以上足を上げて前後左右に歩けることが条件になっているため、レーンに設けられた段差を超えて進まなくてはなりません。しかし、このわずか1センチの段差がなかなか超えられないのです! 

わずか1センチの段差を超えることも、二足歩行ロボットにとっては大きな試練なのだ!



そんな中、目にもとまらぬ俊足で駆け抜けたロボットがこちらの「Frosty」。ゴール付近で転倒してしまい、なんとか起き上がろうともがいたものの、あえなく落下…。残念ながら完走にはなりませんでしたが、今大会最速記録、みごと技術賞に輝いていました!


手に汗握る白熱の決勝トーナメント!

決勝は、八角形リング上でのロボット1対1の格闘技です。3分1ラウンド制で、「ノックダウン」または「ダウンの数」によって勝ち負けを決め、トーナメントにより優勝を競い合います。

決勝はリングでの1対1の戦い。ROBO-ONEでは攻めの姿勢が求められる。


そもそもROBO-ONEの目的は、「ロボットの楽しさ」を多くの人に広めること。そのため、競技ではエンターテインメント性も重視されています。試合の勝ち負けも大事ですが、それ以上に技のみごとさや、積極的に攻撃する姿勢が求められ、観客も真剣な闘いに思わず引き込まれます。

みごとパンチが入って、相手のロボットが倒れれば「ダウン」


パンチや投げ技などで、相手のロボットを倒すのが「ダウン」です。3回のダウン、または、ダウン後に10カウントで立ち上がれない場合には「ノックアウト」となり、倒したほうのロボットが勝ちになります。


出場者のほとんどが大人や高校生という中で、ひときわ目立ったのが台湾からきたチーム「Dagon Worrier」です。ロボット名「Rule the World」を操縦している子は、なんとまだ6歳! 最年少ながら、みごとな操作で大人相手に互角に戦っていました。ロボットが大好きな彼のために、ロボット製作ができる先生をお母さんが見つけてくれたそうで、その先生とチームを組んで出場しているのだそうです。

台湾から来た「Dragon Worrier」。はにかみながらも上手な英語でインタビューに応えてくれた。


Doragon Worrierは健闘の甲斐あって、デザイン賞、そしてダイナマイザー賞を獲得しました。ROBO-Oneは海外でも盛り上がりをみせており、台湾や韓国など、主にアジアの国々でも開催されています。

本大会では少ないながらも女性チームも参戦していました。東京から来られたというチーム「まじかる☆マリオネット」さんは、第3回大会から30回以上も出場しているそうです。

「まじかる☆マリオネット」さん手作りのロボット「茉莉花」。ヘルメットをかぶって、いざ出陣!


「もともと『人形が歩いたら楽しいだろうな~!』と始めたので、あえてキットなどは使わずに、人形を改造して作っています。こうやってオリジナルを作るのが楽しいんです。もともとプログラマーで知識はあったのですが、ロボット作りは試行錯誤。

バランス調整をする以前に、まず、がっちりとした機体を作ることのほうが難しいですね。ROBO-ONEに来て皆さんのロボットを見るのはとっても参考になるんです。今日は予選突破できませんでしたが、次回もまたチャレンジします!」と、お話ししてくれました。

そして、並みいる強豪を打ち負かし決勝戦に勝ち進んだのが、チーム「千葉工業大学文化会総合工学研究会 皆川」のロボット「Typerion」です。ここまで勝ち上がってきたものの、すでにロボットは満身創痍…。なんと、決勝戦で片腕がとれてしまうという前代未聞のアクシデントに見舞われ、惜しくも準優勝に終わりました。

腕がとれてしまうというアクシデントもロボット格闘技ならでは。


ROBO-ONEではロボットが転んだり、床にたたきつけられたりすることを前提に、いかに丈夫な機体を作れるかが勝因になります。片腕を失ったTyperionでしたが、あえて棄権はせず、最後まで勇ましい戦いを見せてくれました!

地元、神戸科学技術高校からも多くのチームが出場。大健闘していた。


ロボットの無限の可能性を信じて、ROBO-ONEはまだまだ進化する!

この日行われた競技は、重量3キログラム以下のロボットによる格闘技のみでしたが、「ROBO-ONE」には、これ以外にもさまざまな競技があります。大会の最後には、西村輝一理事長から2020年開催予定のROBO-ONEの世界大会についての説明と、エキシビションがありました。

ROBO-ONE世界大会では、格闘技の他にも剣道や徒競走が行われ、さらに「ROBO-ONE床運動」として、アクロバティックな動きを競い合う種目が追加されるとのことです。そしてこの日は、トップレベルのロボットによるエキシビションが行われました。


この動画ではいとも簡単に演技しているように見えますが、私たち人間が逆立ちするのと同じことで、ロボットにとってもバランスをとることは決して簡単なことではありません。まして片手倒立など、人間でもなかなかできないでしょう!

食い入るようにロボットを見つめる子どもたち。次のROBO-ONEを背負うのはキミたちだ!


この日は大人から子どもまでたくさんの人が訪れ、会場は興奮と熱気で包まれました。小さなお子さんたちは最前列に座り込んで、カッコいいロボットたちの一挙手一投足に熱い視線を向けていました。

競技の解説者を務めた岡本正行さんは、ロボットイベントを開催する団体「ロボットゆうえんち」の代表者。岡本さんも小さい頃にテレビで見たロボットに夢中になったのがきっかけで、ロボットに携わる仕事に就いたんだとか。この大会を見たことをきっかけに、将来、ロボットやITの分野で活躍する子どもたちが、この中からもきっと現れることでしょう。

今回の「ROBO-ONE」では小中学生のファイターはほとんどいませんでしたが、前日に行われた軽量級の「ROBO-ONE Light」では、たくさんの小学生が活躍していたそうです。
ROBO-ONE Lightは大会規定の市販の二足歩行ロボットで出場できることから、小学生でも気軽に参加することができます。ご興味のある方は、ぜひホームページをチェックしてみてください。

まとめ(編集部から)

安定性、機動性には「難あり」といわれる二足歩行ロボットですが、その形態が人と似ているからこそ作り手の思い入れも深く、また観客も、まるで人のスポーツの試合を見ているような気分で、夢中になって応援したくなるのでしょう。

人にとっては当たり前の動きをロボットが苦労して行っているのを見ると、「ヒトってすごいんだなあ」と、あらためて感じさせられました。その反対に、ロボットでなければできないような動きもたくさん見ることができ、人とロボットがお互いに不足している部分を補いあえば、すばらしい未来になるだろうな、と期待もさせてくれました。

次回、9月に神奈川県で行われるROBO-ONEでは、完全自律型の競技「ROBO-ONE auto」も開催されるそうです。お近くの方、ご興味のある方は、ぜひ会場でロボットたちの熱い戦いをご覧になってはいかがでしょうか。


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