技術力だけじゃない!『RoboRAVE』で育つ「根気・粘り・チームワーク!」

技術力だけじゃない!『RoboRAVE』で育つ「根気・粘り・チームワーク!」
アメリカ発祥の「RoboRAVE(ろぼれいぶ)」は、今後、日本でも参加者が増えると期待されるロボット大会です。今回は先日大阪で行われた『RoboRAVE大阪大会 2019』の模様をレポートします。

日ごろの練習の成果を試すチャンス!

RoboRAVEには、小学校3年生から高校3年生までの2名以上からなるチームなら誰でも参加できます。

この日の大会には、関西を中心に38チームがエントリーしました。

中学校のロボットクラブや、民間のロボット教室から参加しているチームも多くRoboRAVEは日ごろの練習の成果を試す機会にもなっています。

この日行われたのは「a-MAZE-ing(アメージング)」と「Line Following」の2競技です。それぞれの競技は、小学生部門と中高生部門に分かれて行われました。

会場は窓から大阪城が臨める追手門学院大手前中・高等学校


会場には朝早くから子どもたちが集まり、開会式前から熱心にロボットの調整に取り組んでいました。

教育の一環としてRoboRAVEに参加している学校やロボット教室も多い


粘り強さが試される!『a-MAZE-ing(アメージング)』

まずご紹介するのは、「a-MAZE-ing(アメージング)」です。板を組み合わせたコースから外れることなく、どこまで走り抜けられるかを競います

参加できるロボットの条件は「完全自律型」であること。リモートコントローラーなどで遠隔操作することはできません。

しかも、ロボットにはラインセンサーなどの外部センサーを使うことが禁止されているんです! 

センサーも使わないで、こんなクネクネしたコースをいったいどうやって進むんでしょう??

大会当日に発表されるコース。完走するのはかなり難しい。


昨年から競技に参加しているお子さんによれば、「何秒進んだら、右に何秒間回転する!」など、細かい条件をひたすらプログラムするのだとか。

それでも狙った通りに動くとは限らず、ロボットがコースから外れて悲鳴を上げるお子さんが続出です。

複雑な中高生コース。急角度のカーブなど難所が続く。


1回のチャレンジは2分。時間内なら何度やり直してもかまいませんが、スタート位置にロボットを戻してから再スタートしなくてはなりません。

コースには得点が付けられており、直線や曲り角を通過するごとに得点が入ります。得点は加算式ではなく、2分間の走行のうち最も高い得点を採用します。

制限時間内であれば、何度やり直してもよいということで、コースから外れると素早くスタート地点に戻って、制限時間ギリギリまでチャレンジしている姿が印象的でした。

少しでも長い距離を走らせるために、プログラムを変えてみたり、複数のロボットを代わる代わる使ってみたり、みんな真剣です。

参加者の中には自作のオムニホイールロボットでチャレンジする子も。


あらかじめ秒数でプログラムしていても、左右のモーターの出力は乾電池の減り具合によって、その時々で変化します

コースのコンディションにもよるため、同じ数字を入れておいても、いつでも同じ距離を走ったり、同じ角度を曲がったりできるとは限りません

一つひとつの条件を丁寧にクリアしていくしかなく、まさに根気との闘いです。

大人でも根を上げてしまいそうですが、この競技の意義をRoboRAVE Japanのディレクターを努める、株式会社ダイセン電子工業の田中宏明社長はこのように語ってくれました。

田中氏:RoboRAVEが目指すのは、ロボットを始めたばかりのお子さんでも出場、活躍できる大会です。

『a-MAZE-ing(アメージング)』では、センサーを1つも使いませんからプログラム自体は簡単で、初心者でも参加しやすい競技です。

しかし、センサーが使えない分だけ、思い通りにロボットを動かすのは難しくなります。ロボットを置く位置を少し変えるだけでも、動きは変わってしまいますからね。

コース発表は大会当日なので、子どもたちは2時間程度の調整を行うだけで試合に挑みます。

たった2時間でも丁寧に調整を行って完走する子もいるんですよ。この大会を通して、子どもたちには慎重に、また集中してものごとに取り組む機会を与えたいと思っています。

RoboRAVE Japanのディレクターを努めるダイセン電子工業の田中社長


田中氏:「石川県加賀市では、2015年から毎年11月に国際大会を開催しています。

加賀市はプログラミング教育の一環としてRoboRAVEを取り入れており、来年には日本で初めてとなる『RoboRAVE世界大会』も開催します。

今年の世界大会は中国で開かれ、世界21カ国から2000人の参加がありました。

といっても、日本ではRoboRAVEは始まったばかりで、まだ競技人口が少ないこともあり、11月の国際大会には、RoboRAVEの地方大会に出場や、講習会を受講していれば、誰でもエントリーする事ができます

わたしの考えでは、試合を勝ち抜いた子どもだけが国際大会に行くよりも、できるだけたくさんのお子さんに海外の子どもと触れ合う機会を与えることのほうが、意義があるのではないかと思います。

子どもにしてみれば、国際大会に出て海外の人に触れたという経験や自信が次へのモチベーションになりますからね。

また、練習会を兼ねたオープン大会も設けて、たくさんのお子さんがチャレンジできる機会を増やしたいと思っています。大会に出ることは練習のモチベーションになります。

RoboRAVEは初心者でも楽しめるように、難易度をあえて低く抑えた競技作りをしています。

子どもたちにはRoboRAVEをきっかけにして、いずれは『RoboCup』や『WRO』などの本格的なロボット大会へも挑戦してほしいと考えています。

そのためにも、たくさんのお子さんにRoboRAVEに参加していただき、ロボット競技の楽しさを広めたいと思います。

自らマイクを握って大会を盛り上げる田中ディレクター



慎重さとユニークな発想が問われる競技『Line Following』

2つめの競技は『Line Following』です。

スタート地点から黒いラインをたどりながら、運んだピンポン玉を「TOWER」に移した後、再びスタート地点まで戻るという競技です。制限時間内に運んだピンポン玉の数が得点に加算されます。

ラインをたどってピンポン玉を運ぶ競技『Line Following』


この競技ではラインを正確にたどるのはもちろんのこと、なるべく多くのピンポン玉を運べるようにロボットを設計しなければなりません

欲張って荷台を大きくすれば、ロボットの安定性が悪くなって途中で転んでしまいます。

また、TOWERに着いたら自動でピンポン玉が流れ込むような仕組みにしておかねばならず、どのチームもアイデアを凝らしたロボットで競技に挑んでいました。

家にあるモノを使って、車体を軽くするように工夫した荷台。


安定、かつ速いロボット作りが求められる


ピンポン玉を卵に見立てて、ロボットをニワトリに仕立てたチームも。



RoboRAVE名物 ピンポン玉カウントマシーン


参加者の中には、競技の途中にトラブルでロボットが動かなくなり、泣き出すお子さんもおられました。

それでもチームメートとともに必死で修理を行い、みごと入賞を果たして最後には笑顔を見せていました。

RoboRAVEでは、長くロボットに携わっている子が必ずしもよい成績を修められるわけではありません。コースや乾電池の減り具合などのちょっとしたことで、成績は変わってしまいます。

もともとRoboRAVEとは「Robots Are Very Educational(ロボットは教育に向いている)」から付いた名前だそうです。

単純なルールでありながら、根気や集中力、チームワークなど、生きていく上で大切なことを身につけることができる、まさに教育的な側面の強いロボット大会なのです。

得点によって決定される順位は優劣をつけるためではなく、子どもたちの粘りや根気に与えられる称号なのだと感じました。

次回の大会から「SumoBot challenge」が加わることが発表された。


大会の最後には恒例の掛け声を行い、「1,2,3、WAW!」とみんなでコブシを高く掲げて、次回の大会に向けて気合を入れていました。

11月には石川県加賀市で毎年恒例の国際大会が行われます。

RoboRAVEはロボットに制約がなく、LEGOやα-エクスプローラーはもちろんのこと、Arduino などを使った自作のロボットでも出場することができます。

ロボットを始めたばかりのお子さんでも参加しやすい大会ですから、ご興味のある方はぜひこちらのサイトをチェックしてみてください。



■取材協力■

ダイセン電子工業 代表取締役社長 田中宏明 | モノづくりの街・大阪から世界へ

赤に白字の基板に電池ボックスが載ったシンプルなロボットカー『α-Xplorer 』。ロボカップジュニア創成期から、子どもたちに愛されるロボットを作り続ける『ダイセン電子工業』田中宏明社長にお話を伺いました。

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・追手門学院大手前中・高等学校

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