発表するのはLITALICOワンダーで学ぶ、幼稚園の年長さんから高校生までの子どもたち。でもこのフェスでは、子どもから大人まで会場にいるみんなが主役です。今回は、先日行われた「ワンダーメイクフェス5」の様子をレポートします。
観客からのフィードバックがモノづくりの原動力に
今年2月、東京の日本科学未来館で第5回「ワンダーメイクフェス」が、2日間にわたって開催されました。作品を発表した子どもさんの数はなんと680人!見に来てくれたお客さんは8500人を超え、会場はどこも活気であふれていました。さらに、フェス当日は会場からTwitterやYouTubeでライブ配信も行われており、6500ものアクセスがあったそうです。ワンダーメイクフェスでは、会場にいるみんなが主役。力作を発表する子どもたちはもちろんのこと、来場された保護者の方やお客さんもみんなが楽しめるよう、いろいろな工夫がされていました。
そのひとつがこちらの「観客フィードバックシール」。「ナイスアイデア」「ナイステクニック」「ナイスデザイン」「ナイスユーモア」の4種類のシールが会場のあちこちに置かれており、お客さんたちは「これいいな!」と思った作品やポスターに、自由にシールを貼っていきます。
保護者が子どもたちに接触することや、競技に口をはさむことが認められないコンテストなどと違い、ワンダーメイクフェスでは誰もが制作者と触れ合い、作品を評価することができます。お母さんやお父さんはもちろん、おじいさんやおばあさん、小さなお子さんも、積極的に作品を楽しみながら、制作した子どもたちといろんな意見を交わしていました。
フェスで身につけたプレゼン技術で、みごと大学に合格!
今回のワンダーメイクフェスで、ひときわたくさんの子どもたちに囲まれていたのが、クリエイターネーム「LEGOマスター」こと、高校3年生の大古場睦(おおこば さとし)くんです。LITALICOワンダーの教室に通うようになって、大きく成長したという睦くんとお母様にお話をうかがいました。――LEGOで作った精巧なロボットの動画を出展していますね。
睦くん:ロボットはすべて僕のオリジナルです。ロボットを少しずつ動かしては写真を撮る、という動作を繰り返して、コマ撮りしたものをつなげて動画を作っているんです。箱を重ねて高さを調整したりなど、撮影は試行錯誤の連続でした。
睦くん:以前はタブレットを手で持っていたので手ブレがひどく、なかなかスムーズな動きが再現できなかったのですが、母がディスプレイを固定できるような器具を見つけてきてくれて、それで思い通りの動画に仕上げられるようになりました。場面に合わせた音楽もネットで探してきて加えています。作業はどれもたいへんだけど楽しいですね。
――作品はどのように思いつくのですか?
睦くん:雑誌や本、テレビのアニメなどで見たロボットを参考にして、頭の中でアレンジしながらLEGOブロックで形にしていきます。
――今日の展示への反響はいかがでしたか?
睦くん:たくさんの子どもたちが見に来てくれましたが、たいへんでした(笑)! 発表開始時間の前から集まってくれたのですが、小さい子の中には作品で遊びだす子もいて、制止するのに苦労しました(笑)。昨日はちょっと緊張して寝られなかったんですが、こうやってたくさん反響があると、がんばって作ってよかったと思いますね。
――教室にはいつから通っているのですか?
睦くん:LITALICOワンダーと出会ったのは高校生になってからです。
――小さい頃はどんな遊びが好きでしたか?
睦くん:小さい頃からずっとLEGOですね。家には数万を超えるパーツがあると思います(笑)。
お母様によれば、睦くんはこれだけ多くのLEGOブロックをパーツごとにきちんと分類してあって、どこになにがあるかを完全に把握しているそうです。小さい頃、人と接することがあまり得意ではなかったという睦くん。LEGOでモノを作ることは得意でしたが、それを発表する機会はほとんどなく、自分を表現することも苦手だったそうです。
睦くんが変わるきっかけとなったのが、LITALICOワンダーとの出会いでした。作ったものを発表する場が得られただけでなく、みんなに褒められたり、喜ばれたりすることで、だんだんと自分に自信がついていったそうです。
また、フェスなどでプレゼンテーションを行うことで発表もうまくなり、「人を引きつける発表ができるようになった!」と、学校の先生もその成長ぶりに驚いたそうです。
――EV3の作品も作っていますね。
睦くん:LEGOでのロボットプレゼンを始めたのはLITALICOワンダーに通い始めてからです。昨年のフェスでは、リモコンで動く作品をEV3で作って出展しました。プログラミングも好きですね。
――作ったものはフェス以外でも発表しているのですか?
睦くん:最近はインスタグラムに作品を投稿しています。大勢の人が見てくれますし、海外からも多くの反響があるんですよ。それから、学校の文化祭でも動画を上映して、ずいぶん喜んでもらえました。
――作ったロボットはすべて家に飾ってあるのですか?
睦くん:いや、壊して新しいのに作り変えるんです(笑)。LEGOのいいところは作り変えることができるところですね。壊れてもすぐに直せますしね。
――来春から大学生だそうですね。
睦くん:推薦入試で美術系の大学に合格しました。入試の面接では自分の作った動画や、今までのLEGO作品を収めたアルバムを持参して自己アピールしました。緊張しましたけど、作品を作った背景とかを説明して、よいプレゼンテーションができたと思います。
――これからどんなものを作りたいと考えていますか?
睦くん:今まではLEGOパーツを使って作品を作っていましたが、大学生になったらオリジナルのパーツを作ってみたいと思っています。3Dプリンターを使って少しだけ作ってみたことがあるのですが、なかなか難しいんですよ。オリジナルのパーツを使った作品で、より独創的な作品を仕上げてみたいですね。
睦くん:それから動画を撮るのも好きなので、映像技術も高めていきたいと考えています。もっと勉強して、CG(コンピュータグラフィックス)を使った作品も撮ってみたいですね。
――将来はどんな職業に就きたいと考えていますか?
睦くん:ずばりオモチャ屋さんです。自分で考えたオリジナルのオモチャやフィギュアなども、お店に並べることができたらいいなと思っています。
LITALICOワンダーと出会ったことで、自分の才能を大きく開花させた睦くん。ICT技術やプレゼン技術だけでなく、心も大きな成長を遂げ、この春からは新たなステージへと旅立ちます。好きなことをどこまでも追及して、自分の活躍できる道へと邁進していく姿勢には感心させられました。
これからのますますの飛躍を期待しています。
睦くん、お母様ありがとうございました!
自分に合った方法を選べるから、堂々とプレゼンできる!
ワンダーメイクフェスでは発表の形式もさまざまで、ポスター発表、演壇での口頭発表、お客さんと直接対話しながらの展示など、子どもたちは自分に合ったプレゼンテーションの方法を選ぶことができます。LITALICOワンダー広報の矮竹(わいちく)さんによれば、「お子さんの中には緊張しやすい子もいるし、お客さんと会話を楽しみたい子もいます。子どもたちの個性はさまざまだからこそ、一人ひとりの子どもにふさわしい発表方法を選べるようにして、みんなの個性が発揮できるようにしています」とのことでした。
「どうぶつ将棋」ゲームを考案したのは小3のクリエイターネーム「パルキア」くん。将棋の駒の動きを参考にして、対戦型のゲームを考案したそう。
モノづくり大好きという「コハム」さん。クリスマスの小人さんを自分でデザインして、3Dプリンターで出力。背景などもデザインしてクリスマスらしい動画を仕上げました。
ペットボトルを荷台に乗せると走り出す「お手伝いロボット」。前方のハンドではコップを掴むこともでき、注目の的でした!
クリエイターネーム「SERA」制作の「格闘ロボ」。連続で繰り出すパンチと、闘いに挑むロボットの表情が独特で、「試したい!」というお客さんに囲まれていました。
クリエイターネーム「シュガシュガ」くん制作の「スピログラフ」。絵を描くロボットを作ってみたかったそうで、数値を変えるといろんな模様が表れる様子は、いつまで見ていても飽きません。左右の腕それぞれに数値を変えることができ、どんな模様が表れるのかワクワクします。
クリエイターネーム「サクサクパンダ」くん制作の「ステアクライマー」。長いアームを生かして器用に階段を上っていく様子には、大人も子どもも驚きの声を上げていました。
「花粉症はいやだ!」というゲームのポスター発表。たくさんのフィードバックシールをもらっていました。「ナイスユーモア」のシールがたくさんありました。
今回のフェスでは、生徒さんたちのデザインしたグッズを販売する試みも行われ、Tシャツやステッカーなど、ステキなデザインの商品がたくさんありました。期間内、お客さんはQRコードでアクセスしてサイトから購入できます。売上は日本科学未来館に寄付するそうです。
「未来プレゼンホール」で行われたプレゼン発表。大人でも緊張しそうなこの舞台で、たくさんの観客を前に、みんな堂々と発表していました。
小2の「Yurirakkuma」さんは、ゲーム「魔法のケーキ屋」で、みごとデザイン賞に輝きました。
口頭発表では、お客さんは「フィードバックシート」を上げて作品を評価します。反応が一目でわかるから、子どもたちのやりがいにもつながります。
会場からはライブ配信もあって、こちらにもたくさんのアクセスがあったそう。
まとめ(編集部から)
「みんなが主役」のIT×ものづくり発表会『ワンダーメイクフェス』。生徒さんの発表以外にも、ロボットやゲームなどを来場者が楽しめる企業ブースもあり、会場はどこも大賑わいでした。このフェスでは、賞がいくつか設けられてはいるものの、必ずしも優劣をつけるためではありません。お客さんから得たフィードバックこそが、それぞれの作品への評価であり、子どもたちにとっては次のモノづくりへの原動力になるのでしょう。
LITALICOワンダーでは「ワンダーメイクフェス」を定期的に開催しています。ぜひ次回は、会場に足を運んでこの熱気を感じてください。
取材協力
LITALICOワンダー