コロナの影響でプログラミング市場に変化が到来|コエテコセミナーレポート
本セミナーでは「コエテコ」サービス責任者 沼田 直之がモデレーターを務めました。
登壇者には、株式会社船井総合研究所 北村 拓也氏、株式会社アフレル 豊嶋 貴秋氏、檜山 桐子氏 、キッズ・プログラミング株式会社 岡田 哲郎氏にお話しいただきました。
セミナーでは、withコロナ・afterコロナの時代を見据えたプログラミング市場の動向や、各教室や企業の取り組み事例についてご紹介いただきました。
本記事では、セミナーの様子をレポートいたします!
今回のセミナーの登壇者の紹介
まず、「コエテコ」サービス責任者 沼田 直之が、今回のセミナーを開催した経緯を説明をしました。
普段、コエテコの運営を通じ、多くのプログラミングスクール、教材メーカー、関連事業と情報共有をする機会があります。
その中で、スクールの方々にとって少しでもお役に立つことができるのではないかと思い、今回のセミナーを実施することとなりました。
今回のセミナーでは、3組の登壇者により、コロナウイルスの影響を受けてのプログラミング教育市場、オンラインでの教室運営のノウハウ、実際のプログラミングスクール運営についてご講演をいただきます。
コロナウイルスの影響を受けてのプログラミング教育市場(船井総合研究所)

最初のセッションは船井総合研究所 マーケティングコンサルタントの北村氏。
「スクール経営におけるコロナの出口戦略とは?」というテーマで、お話いただきました。
コロナウィルス拡大により、オンラインでの授業のニーズ増加
まず、北村氏はコロナウィルス感染拡大時の各企業の対応パターンには以下の3つがあると分析しています。- 完全休校パターン
- オンライン授業移行×クオリティ低い
- オンライン授業移行×クオリティ高い
さらに、コロナウィルスの感染拡大により、プログラミング教室に休会増加、新規減、売上減、オンラインニーズ増加などの影響があったようです。
特に、オンラインニーズ増加に関しては、関係各所でアンケートを取ったところ、回答者の50%がオンライン授業を許容し、20%がオンライン授業を希望しているという結果になったとのこと。
目の前の生徒数の最大化を意識
次に、このようなコロナウィルスの影響を踏まえなくてはならない時代だからこそ、目の前の新規生徒数の最大化が重要という話がありました。特に、すでに入会している内部生の学習状況や心理状況のケアが重要とのことです。
新規の生徒を獲得することも重要ですが、内部生を大切にすることでほかのスクールへの乗り換えを防ぐ必要があります。
現在は春戦線で入会しなかった層が動き始めているので、8~9月までに過去最大級のキャンペーンを検討すると良いそう。
しかし、コロナウィルスを警戒している層は一定数いるのでオンライン教育は必須となるでしょう。
重要なのは、「なぜ、今からプログラミングの学習を始めなくてはいけないのか」という根拠を明確化し、内部生や外部生に説明できるようにしておくことだそうです。
withコロナ時代における第2波に向けた対策

コロナウィルスの第2波を見据えた対策についても紹介いただきました。
まず、前述した部分でもありますが、体験イベントや説明会を含め8~9月までにスケジュールをしていくことが重要。
今年の秋から来年の春まで新規顧客獲得が難しい可能性があるので、早め早めに動くことが必要となるそうです。
さらに、オンライン教育の品質向上は必須です。
コロナウィルスが長期化する可能性が高く、第2派が発生してからオンライン授業が中途半端な品質だと退会につながると予測されるそう。
オンライン授業には、対面式の授業と同様の教育を提供するのではなく、オンラインならではの付加価値が必要となります。
アンケートを取り、満足度調査・課題の明確化をしておくと良いという話もありました。
afterコロナを見据えたビジネスモデルの創造を
また、コロナウィルス収束後の「afterコロナ」を見据えたビジネスモデルを創造することが推奨されます。今回のセミナーでは以下の2つのモデルが紹介されました。
まずは、リアル×オンラインのハイブリットモデルです。対面式の授業とオンラインの授業を組み合わせることで、教育効果や付加価値を高め、既存商圏のシェア率や商圏を広げることにつながります。
次は、オンライン教育モデルです。既存のコンテンツをオンライン化することで、各地域で流行っている企業が全国商圏化する可能性があります。
このようなビジネスモデルの登場により、品質の低いスクールが淘汰される可能性があります。
ここから先、半年~1年ほどで業界における力関係の大きな変化が到来するのではとのことです。
プログラミング教育業界のこれから
プログラミング教育業界のこれからについてもお話がありました。まず、コロナウィルスの影響により、プログラミング教育市場自体が縮小しているわけではなく、教室からオンライン、教室から教材などと市場の中身に変容が起きていると捉えると良いそうです。
また、リモート・デジタル分野の重要性が浸透することで、今後加速していくことが予測されるとのこと。
現在は実施の障害などもあって一時的に低迷していますが、今後普及していく可能性はあるそうです。
船井総研としてのサポート

最後に、船井総研としての各事業者へのサポートの案内がありました。
スクールの活性化、オンライン教育モデルの創造、と目的別のサポート体制を用意しているそうですので、興味のある方はぜひ問い合わせをしてみてください。
オンラインでの教室運営のノウハウ(株式会社アフレル)
続いては株式会社アフレルより、豊嶋氏、檜山氏にお話しいただきました。
コロナウィルスを機に積極的な活動を

プログラミング教室には、この機会にオンラインの授業を提供する積極的な活動を行うことを提案していました。
オンライン系のサービスをリアルに近づけようとするのではなく、オンラインならではの別の価値を提供することが重要だそうです。
例えば、オンラインを活用し、人気の先生の授業を提供する、チューターでフォローを行う、短時間の授業で接触回数を増やすなどの活動が可能です。
ほかには、高額なマンツーマン指導やオンラインを利用した集客などが挙げられます。
女の子の生徒をどう獲得していくか

今回は、例として女の子に寄り添ったコンテンツをつくる取り組みについて紹介いただきました。
プログラミング教室には、男の子の生徒さんが圧倒的に多いという背景があります。
本来は、プログラミングは男女関係ない勉強ですので、女の子に寄ったコンテンツ作りを提案していただきました。
以下の3点がポイントになるようです。
①ネットでは女の子が親しみやすいデザインを起用このようにターゲットをしぼることにより、「私には難しそう」から「私にも出来そう」という印象を持たせることが期待されます。②女の子限定の体験会
- ピンクや淡い色を使った壁紙のサイト
- 女の子モデル起用
③女性が対応
- 参加者は母と娘、女子友達
- お菓子や写真スポットを用意
- 女性スタッフによるオンライン相談会
さらに、女の子が継続して通いたくなる演出も重要となります。

①教室をサードプレイスにまた、質疑応答の中で補足があったのですが、女の子らしさのイメージを押し付けるという話ではなく、あくまでも女の子をターゲティングとしたコースが1つのコースとして存在してもよいという考え方でのコンテンツ作りの目線が重要となります。ほかのコースと並行しつつ考えていくのも良いとのことです。
例えば、季節の花やインテリアを置くといった演出を通して、教室のイメージを我慢、訓練所、お勉強部屋といったものから、かわいい、楽しそう、娘を預けても大丈夫などへと変えていくことを意識してみてはどうでしょうか。
②課題をときめくストーリーに
例えば、課題に対して「ケーキ屋さんに寄ってお友達と一緒にウインドウショッピング」などのストーリーを与えるだけで、プログラミングを楽しく感じる女の子が多くなります。
③コンセプトチェンジ
クリエイティブ、創意工夫などの新しい入口をつくってあげることで、入りやすくする。
教室運営で生かしてほしいポイント
さらにコンサルティングの立場から、教室運営で生かしてほしいポイントをお伝えいただきました。まずは、教室・ブランドのメッセージを発信し続けること。
全員に刺さるようなメッセージである必要はなく、クラスに1名の共感づくりを意識するだけで、教室運営は可能となります。
続いて、体験学習については、子どもを対象にするという常識からやめてみることを提案いただきました。
親はほかの習い事と比べてプログラミング教室で何をやるのかを想像しにくいので、親にも体験をしてもらうことで、経験上10%は入会率アップにつながるそうです。
今後のイベント

実際のプログラミングスクール運営の立場から(キッズ・プログラミング株式会社)

最後にキッズ・プログラミング教室の岡田氏に「コロナ期間中の教室運営と今後」というタイトルで発表いただきました。
実際のコロナウィルス影響期間中の開校状況

まず、実際に小中高等学校の臨時休校から緊急事態宣言の解除まで、コロナウィルスの影響が大きかった期間中の、スクール運営の経験をお話しいただきました。
休校中には授業ができないので、YouTubeに公開していたチュートリアルの動画をメールで共有したり、質問をメールで受け付けて回答する取り組みをしていたそうです。
そのほかの取り組みとして、指導要項に沿ったeラーニングを開発し、スクール生には無料提供しました。
オンライン移行へのハードル かわりにeラーニングを利用

キッズ・プログラミング では、ロボットを貸し出して実施する対面式での授業が主流であったこともあり、すぐにオンライン授業に切り替わることは困難でした。
オンライン授業が難しいと考えた主な理由としては、以下の3点だそうです。
そこで、キッズ・プログラミングではオンライン授業の代わりに、自社制作のeラーニングを生徒に提供していきました。
- 幼児・低学年の子どもが集中できるのか
- ロボットを扱う授業はどうするのか
- オンライン授業で授業料をいただいていいのか
結果として、6月1日時点の退会者は引っ越しや中学受験などの理由がある生徒も含めて4人、休会生は10人にとどまったそうです。
さらに、新規入会者が11人出てきたとのことで、休校期間に検討していた層ではないかと考えているとおっしゃっていました。
国や東京都の支援策などの利用

アルバイトを雇っていることもあり、雇用調整助成金を活用したという話もありました。
6月からの教室運営ではコロナウィルス対策を

コロナウィルスの影響が落ち着き始めた6月からの教室運営についてもお話しいただきました。
生徒に対しては37度以上あったら授業を振替とする、入退室の際にアルコール除菌を行うなどの一般的な感染症予防対策をとっているとのことです。
また、教室は出入口を常時開放してパーティションを設置し、1テーブル1~2人で授業を開催するなどの、工夫もしています。
さらに、授業ごとに教材を消毒する、空気清浄機を稼働させるなどの配慮も行っています。
今後の運営
最後に今後の教室運営の方針についてお話いただきました。下記の対応を新たに実施することを考えているとのことです。①オンライン授業の開始
スクール生向けにオンライン授業を週に1回のペースで始める予定
②eラーニングのレッスンの充実
下記のような特長のレッスンを追加する予定。
- 小学校プログラミング教育指導要領が学べる
- ロボット音声のレッスンや教師用ガイドがあり、小学校や学習塾の教材にオススメ
- 基本的にはパソコンとタブレットを使用するレッスン
質疑応答
その他、セミナーの中ではさかんな質疑応答がなされました。セミナー中に答えられず、後日回答をいただいたものもありますので、以下で紹介いたします。
株式会社アフレルへの質問
コロナ前後でプログラミング学習すべき内容に変化はないか?
プログラミング学習の内容自体には変わりないが、子ども同士の交流や協働学習をどう行うか工夫が必要になるとのことです。プログラミング学習自体は個人でも可能ですが、協働学習は新しい学習指導要領でも強調されているように、表現力やリーダーシップ、協調性といったスキルを身につけるために有効な学習方法です。
お子様の年齢にもよりますが、コロナ禍で教室に集まれない場合は、オンラインで繋いで意見交換の場を用意する方法をオススメしているそうです。
保護者限定での体験会・説明会の事例があれば教えてほしい
アフレルとしては、体験会・説明会の保護者の参加率や満足度を高める方法として、下記をオススメしているそうです。■内容について
すでにやられているかもしれませんが、「なぜプログラミング教育が必要なのか」を知っていただくために子ども達が大人になった時の環境の説明をすると良いです。
特に、子どもたちが大人になった時の社会では、エンジニアはもちろん、エンジニアじゃなくてもプログラミング、データ、AI等に関するスキルは必要になることを強調する必要があります。
※現時点で全ビジネスパーソンに必要なスキルの中にAI要素が含まれており、一部の大手企業は全社員向けIT/AI研修を取り入れています。
(関連記事:AI時代の新常識。リテラシーを学ぶ「AI研修」は全社員におすすめ)
さらに、体験教室はお母様のみの体験会、お子様と親御様の体験会、お子様のみの体験会の3種類をご用意して募集するのがオススメとのこと。
特に生徒のお母様に「プログラミングは難しくない」、「楽しい」ということが体験できると伝えることを推奨しているそうです。
■時間帯について
お母様にご参加いただく場合はお子様が学校から帰られる前の平日11:00~や13:00~、母子体験の場合は16:00~/17:00~の時間帯がオススメであるそうです。
また、お子さまと保護者の体験会の場合は、土曜日に行うのが良いとのことです。
株式会社船井総合研究所への質問
オンライン授業の場合、家庭のネットワーク環境が重要になってくると思うが、現在PCを持っている世帯は全体の何%くらいになるのか知りたい
「総務省発表のデータでは、2017年では「約75%」となっておりますが、両親が仕事で使用するなどのシチュエーションも想定されるためスマホやタブレットによる受講も一定数あったように思われる」とのご回答をいただきました。保護者限定での体験会・説明会の事例があれば教えてほしい
子ども向けの場合は子どもが体験、その間、保護者が説明会というパターンはありますが、保護者のみでの体験会・説明会については事例として把握していないとのことです。7月~9月において効果的だと思われるプロモーション・広告手法について考えられるものがあれば知りたい
兄弟をはじめとする紹介が重要になります。そのため、普段より強いキャンペーンを実施し、ロイヤリティが高い顧客からの新規生徒獲得が最重要になることが予想されるとのこと。
さらに、コロナウィルスが発生していないエリアでは紙媒体・WEB上での新規獲得も生まれているため、生徒数を保つ上では例年並み~例年以上に販促活動を行うことが大切になるそうです。
ある程度の操作ができる子ではなく、上手くいかない子の場合に説明が難しいことがあると思うが、どういったやり方があるのか教えてほしい
「分散通学や終息期間中にやり方を指導しておくことが可能性として考えられる」との回答をいただきました。さいごに
オンラインの開催でしたが、関心の高い内容ということもあり多様な立場からの議論が深まるセミナーとなりました。コロナウィルスの影響を受け、プログラミング教室市場においてもオンラインの授業の運用方法を意識しなくてはならない時代が到来しています。
また、オンライン授業が普及したからこそ、対面の授業と差別化して付加価値をつけた高品質なサービス展開が求められていきます。
コエテコでは、今後もプログラミング教育に関する最新の情報を発信し続けていきます。
教室掲載や取材のご相談なども、ぜひお気軽にご相談ください!
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