eスポーツの時代はここまで来た!『eスポーツ専攻』のある東京クールジャパンに話を聞く
優勝賞金が1億にも上る大規模大会が開催される海外からやや遅れをとって、日本国内でも急速にeスポーツ人口は増えています。子どもの憧れの職業でも「プロゲーマー」は、上位にランクインする「YouTuber」に肩を並べています。
ゲームを趣味としている子どもにとって、ゲームを生活の糧にするプロゲーマーは魅力のある職業です。しかし、第一線で活躍するプロゲーマーとなれる人材は一握り。子どもが「プロゲーマーになりたい!」と夢を見ても、消極的に反応してしまう保護者がほどんどかもしれません。
eスポーツ業界を拡大するために、日本国内ではeスポーツのスクールや専門学校が続々と開校しています。eスポーツがもたらすのはゲームスキルの向上だけではなく、問題解決スキルや集中力、判断力の向上にもつながるといわれています。今回は、声優・アニメ・eスポーツ専攻がある専門学校東京クールジャパン学校長の後村さんからお話を伺ってきました。
世界20ヵ国から入学生を集める東京クールジャパン

ーまず、御校はどのような分野に強い専門学校なのでしょうか。
当校は、ゲーム・アニメ・声優の分野がメインの学校です。数年前までは「Tokyo Net Wave」というスクールで、IT系に特化したカリキュラムを提供してきました。しかし、ITの活用が半ば当たり前となった現代においては、ただ「ITに特化している」というのでは、需要を満たせないのではないかという課題感がありました。そこで、それぞれの分野に特化したコースを新設することとなり、現在の東京クールジャパンが作られました。
ー御校には、外国の学生さんもいらっしゃるのですか?
はい、入学者の4割弱は留学生ですね。ゲーム・アニメの分野は日本が強いので、日本の技術を学びたい方が来られています。当校の場合は、世界の約20ヵ国から学生が集っています。ロシアやアメリカ、中東のあたりも学生が増えてきている印象です。
ー卒業生の皆さんは、どのような場で活躍されているのでしょうか。
私たちのグループ校には「東京デザイナー学院」という専門学校があり、そうしたグループ校の経歴を含めると、開校してから今年で52年目になります。ですので、卒業生の進路としては、アニメ・声優の名立たる企業にはほとんど輩出しているかと思います。
具体的なお名前は出せませんが、誰もが知っているテレビドラマのオープニングアニメーションを制作された方や、大人気漫画家の先生などもいらっしゃいます。
ー本当に有名なクリエイターさん達を多数輩出されているんですね。ちなみに、御校では、入学前から授業が受けられる「AOプレスクール」を実施されていますね。このようなシステムをとっておられる理由とは?
専門学校に入ると、高校までの授業から、内容がガラっと変わるんです。急に専門的な勉強が始まるので、学び慣れていない学生さんにとっては不安があるようです。そうした学生さんを対象に、AOプレスクールで入学前に月に1回ずつ授業を行っています。
AOプレスクールを受講して頂くことで、機器が扱えないとか、作り方がわからないという不安をなくしながら、仲間を見つけられます。AOプレスクールを利用する場合は「2.5年間」とも呼んでいます。
ー入学前に助走をつけてから、安心して入って頂く形になるんですね。
そうなんです。AOプレスクールでは、アニメの専攻ですと30秒くらいの短いものを作ったり、ゲーム専攻ではスクロールしない1画面分のゲームを作ったりします。
参加した学生さんからは、「面白かった」「時間がとても短く感じた」と仰って頂けることが多く、AOプレスクールを受講して頂く意義を感じています。
プロゲーマーチームと提携し、きめ細かい戦略的な指導を行う

編集部注:インタビュー中はマスクを着用したうえで感染対策を行っています
ーでは、いよいよeスポーツ専攻について教えてください。eスポーツ専攻は、いつ頃に開校されたのでしょうか?
eスポーツ専攻は、今年で2年目です。当校の中では若い分野で、在籍している学生はみな1期目ということになります。
ーeスポーツに対する保護者様や学生さんの期待感は、やはり高まっているのでしょうか?
ご家庭によってさまざまです。保護者様のなかには、eスポーツ専攻に子どもが進学することを反対される方もいらっしゃいます。しかし、最近は、高校でも通信制を中心にeスポーツ専攻もでき始めていますので、抵抗がない保護者様もいらっしゃいます。体感では、応援と反対が半々かなという印象です。
ー公式サイトによると、学校として提携されている寮があるそうですね。一人暮らしをさせるのは不安なご家庭が多い中で、かなりの安心材料になるのではと感じました。
はい。寮母さんもいますので、何か困ったことがあるときに相談できるのが良い面だと思っております。食事の面倒もみてくれますので、栄養が偏りがちな一人暮らしでも、保護者様にも安心して頂けるかと思います。
ーeスポーツ専攻では、プロゲーマーチームの「ZETA DIVISION」さんと提携されているとのことですが、具体的にはどのような指導を受けられるのでしょうか?
eスポーツ専攻では、FPS(一人称シューティングゲーム)の「Apex Legends(エーペックスレジェンズ、以下Apex)を中心に指導しています。このApexは、プロゲーマーチームの「ZETA DIVISION」さんがかなり強い分野なんです。同チームが蓄積してきたノウハウを生かし、ゲーム内の戦略的な部分や学生のクセを見ながら、改善すべき点を個別に指導して頂いています。
FPSはファーストパーソン・シューター(First Person Shooter)の略であり、主人公と同じ視点で操作するスタイルの3Dアクションシューティングの総称です。基本的に画面に表示されるのは主人公の体の一部(腕など)か武器のみ。主人公と視界を共有する一体感、没入感が魅力と言えます。引用:Appliv TOPICS
具体的な指導法としては、学生のゲーム画面を録画し、それをZETA DIVISIONさんに見ていただいて問題を指導する形です。瞬時の動きや判断も多いゲームですので、全員を同時に見るのはどうしても難しく、このようなスタイルで指導をお願いしています。
ー確かに。学生さんが何人も同時にプレーされると、同時に指導するのは難しそうです。
戦略を立てるときには、学生10人に対し1人の講師がつき、手厚く指導できるようにしています。eスポーツの分野を追求していきたい学生からは「勉強になる」と言って頂いています。
ーちなみに、他の専攻ではインターン制度もあるようですが、プロゲーマーチームへのインターンはあるものでしょうか?
イベント設計の企業へのインターンはありますが、プロゲーマーチームへのインターンはしていませんね。実力があるかないかは、成果を見ればわかるものかなと思っています。
eスポーツ専攻の気になる進路は?
ー現在eスポーツ専攻は2年目とのことですが、プロeスポーツ選手への道はやはり、狭き門なのでしょうか。eスポーツ選手になるにはまず、プロゲーマーチームに所属するところからスタートする場合が多いです。声優と同じような道のりですね。声優も、まずは研究生からスタートして、所属生になり、準所属、所属とステップアップしていきます。eスポーツの場合ですと、まずはゲームでの実績をみせてプロチームに所属させてもらい、成果が出たらチームメンバーになる形です。
また、eスポーツというとプロゲーマー寄りのイメージが強いのですが、最近では「eスポーツのイベントを作っていく裏方的な作業をやりたい」という学生さんも増えています。あとは実況や解説、動画配信といった分野を目指す学生さんも増えていますね。一概に「プロゲーマー」だけが道だけではないなと感じています。
ーeスポーツの大会も盛り上がっていますし、裏方の仕事も魅力がありそうですよね。
実際に、元アナウンサーの方がテレビの仕事をやめ、eスポーツの実況に移ったケースも(テレビ番組で)目にしました。eスポーツの実況はゲームの知識がないと務まらないことから、担い手が不足しがちなんです。そのため、ゲームの知識を持ち合わせているプロのアナウンサーは引っ張りだこなのだとか。
東京クールジャパンではそういった実態もカリキュラムに反映させていて、今までは1~2年次で同じカリキュラムを組んでいたんですが、さまざまな道が選択できるよう、来年から1年次でカリキュラムを分けていこうと考えています。
ーカリキュラムを分けるというのは、eスポーツで複数の分野を作るということでしょうか?
はい。具体的には、eスポーツの分野とeスポーツビジネスの分野を分けていけたらと。「プロゲーマーよりも裏方が向いているな」と感じた学生には、eスポーツビジネスの分野を選んでもらうなど、「自分が何をやりたいのか」に沿ったカリキュラムを提供できればと考えています。
ー一般論として、年齢を重ねると、プロゲーマーになることは難しいものなのでしょうか?
25~26歳を超えると、プロゲーマーはかなり厳しいといわれています。動体視力がついていかなくなると。それに加えて、eスポーツは、流行のタイトルが時代によって変わりうるんです。今はApexが人気ですが、以前はリーグ・オブ・レジェンドが広くプレイされていました。eスポーツの流れが変わると、“戦場”となるゲームを変える必要がありますので、やはり若い人の方が順応しやすいんです。
このような事情から、eスポーツは20代前半~半ばまでがプロゲーマーのピークといわれています。プロゲーマーを引退したら、マネージャー職やチームを支える仕事に移っていく形になりますね。後世を育てていく野球選手みたいな感じです。
ーでは、社会人からeスポーツ専攻に入る人は少ないのでしょうか?
そうですね。本校の場合は、社会人は多くなく、高校から目指す学生が多い印象です。あるいは、大学に入ったけれど「やりたいことではない」と中退されて、こちらに入ってこられる方もいます。
ーぷよぷよや格闘ゲームでもeスポーツの大会が増えていると思いますが、そういったタイトルを授業内で取り扱うこともあるのでしょうか?
人気のジャンルですので、学生のニーズが高まれば検討をしたいと思います。
ー授業では、ライター実践や英会話・フィジカルトレーニングなども行われているそうですが、なぜでしょうか?
eスポーツビジネスをするには記事を書く必要がありますし、配信をするにも、シナリオを文字に起こす必要があります。また、Apexの大手はアメリカになりますので、対戦時に英語での会話が必要になる場面もあります。作戦の言葉がわかるレベルの英会話が必要なんですね。こういった理由から、ライター実践や英会話の授業を設けています。
フィジカルトレーニングについては、意外かもしれませんが、eスポーツには相当な精神力と、体力が必要になるんです。
ーまず、長時間座り続けることになりますもんね。
そうなんです。体力面も鍛えておかないと、長時間集中することが難しくなるんです。ちょっと集中力が落ちたら、そこを狙われて終わりになってしまう。そこで、週に1回は、体力が身に付くようなカリキュラムを入れています。
もちろん、他コースも充実。学生の好奇心を刺激する充実した設備の数々
ーそれでは、校内をご紹介頂いてもよろしいでしょうか?6階には現在、配信ブースを準備しております。声優でYouTuberコースを作っておりまして、eスポーツ専攻も使えるようにしていきたいと思っています。
また、こちらが美術向けの教室です。アニメやゲームのデザインを作るときには、人の動きがわからないと描けないものなんです。モデルさんに来てもらって、実際にデッサンすることもありますね。

ここに貼ってあるのは、「サイダーのように言葉が湧き上がる」という映画です。卒業生が携わった作品で、校内で試写会も行いました。

それから、こちらは収録ブースになっています。飾られている色紙は、プロになった卒業生や、ブースを借りにこられた芸能人の方々のものです。プロも使用できる設備ですので、プロの方が声優ブースを借りに来られることもあるんです。たとえば、お笑いコンビ「BANBANBAN」のフリーザのものまねで有名な山本さんと鮫島さんなどがよく来られますね。鮫島さんは、当校の非常勤講師としても活動して頂いています。

ー拝見する限り、どの設備もかなり本格的ですね。やはり、環境にはこだわられているのでしょうか。
そうなんです。eスポーツには、それなりの機材と回線速度が必要になります。パソコンをはじめとした機材のスペックが低いと思うようなプレイができませんし、通信速度が勝敗を分けることもありますから、eスポーツの教室には専用の回線を引いています。
Apex Legends・VALORANT・フォートナイトなどは、多くの人とリアルタイムで対人戦をするゲームなので、フレーム単位で求められる速度が高いです。快適に遊ぶのに必要な回線速度は70Mbpsまで上がります。引用:ヒカリク
FPSをプレイする際に回線速度が速いほうが良いと言われている点は、プレイ中の情報処理に影響するからです。例えば、50Mbpsでプレイしている人は、70Mbpsで遊んでいる人と比べて情報処理が遅いため、フリーズしたり、ラグが起きる可能性があります。ラグやフリーズが、相手プレイヤーと対峙した瞬間に発生すると、撃ち負ける原因になります。


eスポーツマーケットの伸びしろは大きい!「好きなことで人生を切り開く」を実現に

ーeスポーツのマーケットは、今後どのように変化するのでしょうか。
本校がeスポーツを立ち上げようと思ったのは、当時、「プロゲーマーを育てよう」と本気で取り組んでいる学校はまだまだ少ないと感じていたためです。最先端カルチャーに特化した当校としては、eスポーツの業界を目指す学生さんをぜひとも応援したいという思いがありましたので、プロゲーマーチームとしっかりタッグを組み、本気のカリキュラムを提供できるようこだわりました。
eスポーツの今後は、まだまだ伸びていくと感じます。まだまだ「ゲーム=遊びの延長」と取られる風潮がありますが、いざeスポーツが仕事として成り立っていくことが明確になると、社会的にも変化が出てくるのではないでしょうか。
ー今後のeスポーツ業界の変化が、本当に楽しみです。それでは最後に、東京クールジャパンへ入学を検討している学生さんや保護者様へ向けて、メッセージをお願いします。
eスポーツという分野は駆け出しですが、いずれ、好きなものが仕事として成り立つことが当たり前になる時代がやってくるでしょう。「好きだけど、仕事にならないから諦める」ではなく、「好きなことで人生を切り開く・生活する」が実現していくために、今後も後押ししていければと思っております。
ーどうもありがとうございました!
専門学校 東京クールジャパンはこちら
アニメ・声優で培ってきた豊富な実績から、eスポーツ専攻の在り方を模索する東京クールジャパン。柔軟な対応力と最新鋭の設備、プロスポーツゲーマーの指導により、今後eスポーツ専攻が大きく飛躍することが期待されます。東京クールジャパンでは、全国どこからでも学生や保護者が参加できるよう、オンライン個別相談会も頻繁に開催されています。9~10月はイベントやオープンキャンパスも開かれているため、入学を検討している場合には積極的に参加してみたいですね。
「プロゲーマーになりたい!」「eスポーツ業界で働いてみたい!」と意欲のある学生を手厚くバックアップする東京クールジャパンで、eスポーツを学んでみてはいかがでしょう。
専門学校「東京クールジャパン」は、「ゲーム総合学科」「eスポーツ専攻」「アニメ総合学科」「声優学科」に分かれ、あなたの夢を全力でサポートします。「千駄ヶ谷」から徒歩3分の立地にあり、業界で活躍するプロから直接指導してもらうことができます。
https://www.cooljapan.ac.jp/ >
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