(取材)ロボッチャ®ジャパンカップ2023|白熱した試合展開の中で触れるインクルーシブ社会とSTEAM教育の世界

ロボッチャ®は、パラスポーツの「ボッチャ」をロボットで競います。
ロボット×STEAM×ダイバーシティが学べる、新しいテクノロジースポーツ「ロボッチャ®」、なんだか面白そうですね!


本記事ではたくさんの写真と共に、ロボッチャ®大会の様子をレポートします。大人も子どもも性別も関係なく、みんなが一緒になって楽しめる素敵な大会です。ぜひご覧ください。
ロボッチャ®とは

- パラスポーツ「ボッチャ」を1/10サイズにしロボットで対決
- スポーツとSTEAM教育を融合
- スポーツ/STEAM/インクルーシブ、「興味の入口」は3つ
ボッチャはヨーロッパで生まれたパラリンピック正式種目のひとつです。青と赤のボールをそれぞれ6球ずつ投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして、白いジャックボール(目標となる球)にもっとも近づいた方が勝ちとなります。

コートは1250mm×600mm。基準球となる白いジャックボールは先行のチームが投げて試合開始となる。ジャックボールがコートから出ると、「田(クロス)」に置いて試合再開となる。
ロボッチャ®はこの競技の「投げる・転がす」をロボットが行います。競技コートとボールはボッチャの10分の1サイズ。ロボットの機能とプログラムをどう組むか、そして対戦相手との戦略の攻防もゲームのポイントです。

競技の面白さはもちろんですが、ボッチャを通じてインクルーシブ社会(性別や人種、社会的な地位や障がいの有無などの属性によって排除されることのない社会)やダイバーシティ(多様性)に触れられること、同時にロボット製作やプログラミングを組み合わせて学ぶことで、最新のテクノロジーやエンジニアリングが学べる点が大きな特徴となっています。
ロボッチャ®ジャパンカップ2023

天井の高い、広い体育館に足を踏み入れた途端に、思わず上着を脱ぐほどの熱気にあふれていました。なにしろ、会場にはずらりとコートが並び、あちこちで熱戦が繰り広げられているのですから!

ロボットが転がしたボールの行方をじーっと見つめる選手たち
会場を見渡すと、小学生ペアもいれば、社会人らしきペアもいます。
制服姿の女子ペアが歓声を上げて跳び上がっていたり、パーカーをはおった10代の男の子がフードをぐいっと顔を隠すようにかぶったかと思うと「う~!」と唸っていたり、みんな夢中になってプレイしています。
取材班も大急ぎで競技フィールドへ向かいました。まずは、ロボットの調整などを行っているエリアを見ていきましょう!
ロボット調整エリアも熱気むんむん!
広い体育館は、ひな壇になったところが観客席で、ここもほぼ保護者や関係者たちで埋まっています。真ん中には競技フィールド。手前には今回の出場者によるプレゼンテーションポスターが展示されたスペースや協賛企業のブース、「人間 対 ロボット」で5分の1サイズのボッチャをプレイできるゾーンなどもあります。一番奥にあるのが、各チームがロボット調整などを行うピットのようなスペースです。

各チームに割り当てられたスペースでロボットの準備や調整を行う

どうやら作戦会議中のようです、がんばって!

元気いっぱい、笑顔満開!
大会はまずリーグ戦による予選からスタートし、各リーグで勝ち上がったチームはトーナメント方式の決勝に進みます。ロボットを調整している男の子に「調子はどうですか?」と聞いてみると、「他のロボットがみんなすごいからビックリしている」と答えてくれました。
チームで真剣に話し合っているところもあれば、小学生らしきペアはあちこちのロボットを偵察中。
ロボットの性能もさることながら、ゲームは戦略も必要。「作戦は秘密です」そう話してくれた女の子は、ニコッと笑顔を見せてくれました。
試合開始前には、「よろしくお願いします!」と互いに大きな声で挨拶。スポーツマンシップも重視するロボッチャ®では、互いに切磋琢磨し、レベルアップをめざした真剣勝負が繰り広げられます。では、予選大会の様子も見てみましょう!
予選大会もヒートアップ

真剣な視線の先には相手チームの青いボールが。微妙な位置取りで結果が変わってくる。

選手たちの分身でもあるロボットを見つめるふたり。

同じ学校の生徒さん達が集まって熱い応援。祈るようにコートを見つめる女の子たち。
予選大会で印象的だったのは、たとえば「高校生」vs「小学生」といったように、年齢や性別に関係なく、さまざまなチームが対戦していたことです。
ロボッチャ®は、優勢に見えたチームが相手の次の一球でゲームが一転するエキサイティングなゲームです。
赤いボールがジャックボール(白い目標球)にピッタリついて「おお、このチームが勝ちかな」と思うと、次には相手のチームの青ボールが赤ボールに当たって、その場所にすべりこんでいくこともあります。

それぞれのボールの位置によっては「壁」になることも。
ゲームの後半戦になると有利な状況を維持するために、わざとボールをフィールドの手前に飛ばして、相手がボールを投げづらくする場面も!
狙ったところにロボットが思い通りにボールを投げたり転がしたりするとは限りません。どうボールを配置していくかを限られた時間内に考察しながら戦略をたてる面白さもあり、見る側も十分に楽しめるところがいいですね!
決勝戦に密着!BOSS BURGER3 VS 麹町学園女子中学校Aチーム

観客席からもモニターで試合はよく見えるが、やはり近くで応援したくなる。
広かった競技フィールドも決勝トーナメントが進むと、ひとつずつコートが片付けられ、ついに決勝戦のための「ファイナルコート1面」のみが残りました。予選大会から勝ち上がってきたのは、BOSS BURGER3と麹町学園女子中学校Aチームです。
「熱い試合にしたいです!」と意気込みを語ってくれたBOSS BURGER3です。

BOSS BURGER3
そして「そんなに経験がないのでちょっと緊張もしていますが、相手の特徴をとらえて頑張りたいと思います」と話してくれた麹町学園女子中学校Aのおふたりです。

麹町学園女子中学校A
さぁ、まずは先攻・後攻を決めるジャンケンです。すでにここから双方のチームに大声援が送られていました。

ジャンケンにも思わず力が入ります!

BOSS BURGER3は教育版レゴ® マインドストーム® EV3でロボットを製作

一方、麹町学園女子中学校Aはレゴ® エデュケーション SPIKE™ プライムによるロボット

見えづらいが白いジャッジボールにわずかに近いのが赤ボール。ここからが勝負!

短い時間内で判断するのが難しい。
なんと決勝戦はタイブレークに!延長戦は3球ずつ、持ち時間は120秒とさらにスリリングな展開になりました。
そして……

ガッチリ握手したBOSS BURGER3!
36チームの頂点にたったのは、BOSS BURGER3です!
麹町学園女子中学校Aチームも惜しかったですね。それにしても手に汗握るゲーム展開で、勝負がついた瞬間にはわぁっと大きな歓声があがり、素晴らしいプレイを見せてくれた両チームに惜しみない拍手が送られました。
他のブースものぞいてみよう
「ボッチャ」をロボットと対決してみよう

5分の1サイズコートのブースで体験できるのが、ロボットと人間が対決する「ボッチャ」です。人間とロボット、どちらが正確に投げられるのか!? 子どもたちも興味津々で楽しそうにプレイしていました。
(株)モバイルインターネットテクノロジー(MIT)ブース

MITは、Mind Render(マインドレンダー)をはじめとする、さまざまなモバイルアプリケーションやサービスを展開している会社です。今回のブースでは、さまざまなロボットや段ボールで製作できるVRなどが体験できました。休憩時間には多くの子どもたちがゲームにチャレンジしていましたよ!
プログラミング教育の高度化が進むなかで、「拡張性があり、中高生の興味を引く教材」として注目されているのがMind Render(マインドレンダー)です。この記事では、Mind Renderを授業に取り入れている聖光学院 数学科教諭の名塩隆史(なしお たかし)先生にお話を伺うとともに、聖光学院で行われた「情報講座」授業の様子を取材。全国屈指の進学校における先進的なIT授業の様子をぜひご覧ください。
2024/11/06 10:16
「ロボッチャ®ジャパンカップ2023」大会結果

優勝 BOSS・BURGER 3

気合十分、最初から最後まであきらめずに戦い抜いたBOSS・BURGER 3。さまざまな大会経験豊富なふたりが優勝を獲得!
準優勝 麹町学園女子中学校A

ふたりでずっと話し合いながら、時に堅実に、時に大胆にプレイしていたのが印象的な麹町学園女子中学校Aのふたりです。おめでとう!
3位 7&i girls

優勝したBOSS・BURGER 3に惜しくも敗れた7&i girlsもがんばりました!
3位 カバおシスターズ

準優勝の麹町学園女子中学校Aにポイントを取りながらも惜敗したカバおシスターズ。ぜひ次をめざしてがんばってくださいね!
特別賞・スポンサー賞
特別賞 実生~MISYO~

育伸社賞 MaruShun

MIT賞 麹町学園女子中学校C

プレゼンテーション賞 Harayaman RED

「大会を終えて」岡本弘毅理事による講評
岡本弘毅(NPO法人子ども大学水戸理事長・株式会社エデュソル代表取締役)理事が、最後に講評を行いました。今日は白熱した試合ばかりで、いいショットをたくさん見ることができました。ロボッチャ®はチームワークも大事ですし、ロボット・プログラミング以外にも総合的な力が必要なゲームです。岡本理事長は忙しい合間にコエテコの取材にも応じてくださり、メッセージを寄せてくださいました。
社会は大きく変化しています。これさえやっておけばよいということはありません。テクノロジーを通じてより良い社会を創る志を持って、これからもがんばってください。
ロボッチャ®は、場面がどんどん変わっていきます。状況に応じて、戦略を変える、プログラミングを変える、ロボットの駆体を変える、瞬時に最適化していく対応力が磨かれます。岡本理事長、ありがとうございました!そして36組のチームの皆さん、お疲れ様でした。
またボッチャがそもそもパラリンピックの正式種目であるように、ロボッチャ®を通じて、さまざまな人と知り合い、世の中の多様性に触れてほしいと願っています。ワクワク楽しく学びながら、社会の課題はどこにあるのかを自ら見つけて、それをテクノロジーとチームワークで解決していく力を育んでもらえたら嬉しいです。
次の試合でまた、お会いしましょう。
ライターコメント
ボッチャの魅力と、ロボットやプログラミングのテクノロジーと、さらにスポーツ競技のマインドを組み合わせた「ロボッチャ®」を初めて間近で見ることができました。ゲーム構成の面白さもあり、子どもから大人まで、どんな方でも夢中になれる要素が詰まった競技です。「テクノロジーの力によって、誰もが生きやすい社会をみんなでコラボレーションしながら作り上げていけるように」という岡本理事長の言葉が印象に残っています。
さぁ、あなたもロボッチャ®を体験してみませんか?親子で大会参加、なんてチャレンジも楽しそうです!
Amazonギフトカードプレゼント中!
あわせて読みたいガイド
RECOMMENDこの記事を読んだ方へおすすめ
-
(取材)タミヤロボットスクール メカニックコース全国大会2022年秋|あの熱い戦いが帰ってきた!
2022年10月2日(日)、タミヤロボットスクール メカニックコース 全国大会がFinGATE KAYABA(東京・茅場町)にて行われました。北は青森、南は福岡からの参加があったという...
2024.11.06|夏野かおる
-
(イベントレポート)コエテコジュニアプログラミングフェス2023「夏休み最後の大イベント」をレポート!
2023年8月20日、渋谷フクラス「GMOインターネットグループイベントスペース」にてコエテコジュニアプログラミングフェス2023が開催されました。プログラミング初心者でも楽しめるワー...
2024.11.06|大橋礼
-
(取材)VIQRC第3回ジャパンカップ2024|STEM教育と国際交流〈VEXロボティクス〉大会レポート
VIQRC第3回ジャパンカップは、YSE(一般社団法人青少年STEM教育振興会)により2024年3月に開催。競技会では、Innovation First Internationalが開...
2024.11.06|大橋礼
-
ロボットは遊びじゃねえ!大人も叫ぶぜ!タミヤロボットスクールフェア
2019年3月9日・10日、GMOインターネットグループ社内にてタミヤロボットスクールフェアが開催されました。メカニックコース全国大会と合わせ、ロボットプログラミングワークショップもオ...
2024.11.06|夏野かおる
-
(現地取材)WRO2022 in ドイツに密着!日本選手の活躍を写真でレポート
2022年11月17日〜19日、WRO(ワールド・ロボット・オリンピアード)の国際大会がドイツで開催されました。大会には73の国と地域から365チームが参加。前回、密着取材を実施した「...
2024.11.06|夏野かおる