本大会を主催するアーテックは、ロボット・プログラミングの教材開発やプログラミングスクールを展開しており、日本の子どもたちが世界のデジタル化に遅れを取らないよう、さまざまなサポートも行っています。
今回は株式会社アーテック取締役 東京支社長 森田さんと法人事業部 次長 内野さんに、大会の狙いや日本におけるプログラミング教育の課題について、くわしくお話を伺いました。
競技会の予選会も始まります。アーテックロボや大会に関心のある方、また、学校現場で役立つ情報も満載ですので、ぜひ自治体や学校の先生方もご覧ください。
UNIVERSAL ROBOTICS CHALLNGE 国際ロボット競技会とは
競技部門 | ロボット競技部門 | アイデアコンテスト部門 | シミュレーションロボット競技部門 |
対象 | 小学生 中学生 |
小学生 中学生 |
小学生 中学生 |
開催方法 | 予選はオンライン 決勝大会はリアル開催 |
オンライン投稿 | オンライン一斉開催 |
使用教材 | アーテックロボ アーテックブロック |
アーテックロボ アーテックブロック |
ロボットシミュレーター |
テーマ | ブロック積み上げコンテスト | SDGs13:気候変動に具体的な対策を | SDGs13:気候変動に具体的な対策を |
小・中学生のための国際ロボット競技会は、2023年大会ですでに7回目を迎えるロボット競技会です。
大会は3つの部門に分かれています。
- ロボット競技部門
- アイデアコンテスト部門
- シミュレーションロボット競技部門
ロボット競技部門とアイデアコンテスト部門は、アーテックロボとアーテックブロック等を用いた作品が対象となります。
シミュレーションロボット競技部門は、ご自宅のパソコンなどで使用できるシミュレーションソフトをダウンロードし、チュートリアルにそって学びながらプログラムをし、レースで競います。
大会にはアーテックが運営するプログラミング教室の生徒さんだけでなく、どなたでも参加できます。個人での参加や、学校から数人のグループで参加しているチームもあるそうです。
UNIVERSAL ROBOTICS CHALLNGE 国際ロボット競技会とは?
この時は関西圏の教室のみで規模も小さかったのですが、お子さまの成長をしっかり見ることができると保護者さまがとても喜んでくださいました。また、発表会で得たさまざまな体験はお子さまにとって大きな糧になると感じました。
そこで、わたしどもで独自のコンテストを開催できないかと本格的に検討することになったという経緯があります。
――当初はレギュラー部門、アドバンス部門と分かれていて、2019年からアイデアコンテストが始まっていますね。
森田さん:アイデアコンテストではテーマをもとに作品を作るのですが、子どもたちの発想は大人の想像をはるかに超えてきます。
数年前の大会におけるアイデアコンテストのテーマは「安全なまちづくり」でした。大人からすると防犯などが浮かぶと思うのですが、除雪ロボットや安全対策用踏切ロボット、落下物収集清掃ロボットなど、実に多種多様なロボットが集まりました。
あるお子さまは、「歩きスマホ防止ヘルメット」を製作しました。頭の上にブロックで作った仕組みをかぶり、スマートフォンを使いながら歩いていると、かがんだ姿勢にセンサーが反応して警報音が鳴る仕組みです。「歩きスマホは危険」という問題を実際に作品に反映している点に驚きました。
子どもたちはシャープに世の中を見ているし、社会問題をきちんと捉えているのだと改めて気づかされた出来事でとても印象に残っています。
――2023年は、3部門での競技が行われました。簡単にご紹介していただけますか?
森田さん:ロボット競技部門は競技に徹しています。ですから点数ではっきり結果が出るようになっています。ロボット競技なので、基本的にはモノをつかんで移動させるとか、積み上げることが中心になりますね。
アイデアコンテストはテーマにそった作品で、独創性・技術力・デザイン性を競います。
そして、バーチャルロボットカーをプログラミングで動かし、制限時間内に定められたミッションをクリアしながら3つのステージを走破させ、獲得した点数を競うのがシミュレーションロボット競技です。
シミュレーションロボット競技は、アーテックロボがなくてもソフトをダウンロードし、プログラミングができるようになっているので、ご自宅のパソコンで誰でも参加できるようになっています。
UNIVERSAL ROBOTICS CHALLNGE を通じて子ども達が得るもの
大会を通じてお子さまはどんな力を得られるとお考えですか?
体全体で悔しさも喜びも表現する子どもたちの「一生懸命さ」、それだけ夢中になる時間を体験できること自体が、非常に貴重ではないかと思っています。悔しさから必死になる、仲間との連携も深まる。いろいろな意味で成長する機会になっているのではないでしょうか。
大会の特徴として、海外からの参加者が多いことがあると思いますが、国際交流という面ではいかがでしょうか?
もちろん言語も違いますから、話は通じません。しかし、同じルールで同じ競技をすることで、言葉はうまく通じなくてもロボットを見せ合うとか、ちょっとしたことで、子どもたちはつながりますね。
2024大会予選も始まります。教室に所属していなくても参加できますから、ぜひチャレンジしてください!
教材開発を通して学校教育をサポート。自社でプログラミング教室の運営も
プログラミング教育をすべての子どもたちに!
大会ではさまざまな国の子どもたちと共にプログラミングやロボット技術のスキルを競います。
非常に高度なIT・プログラミング教育を行っている海外の国もあるそうですが、日本におけるプログラミング教育の立ち位置についてはどうお考えでしょうか?
論理的思考、プログラミング的思考、課題解決力……これらを子どもたちにどう学ばせるかは、現場の先生方にとって悩ましい問題です。プログラミング教育の指導経験がない。これまで自分も受けたことがない教育を小学生に行うのは本当に難しいことです。
私どもはプログラミングスクールを運営してきましたし、教材開発を通じて実績やノウハウも蓄積されていましたから、先生方への研修にも積極的に関わらせていただきました。
実際に、自治体でアーテックロボを導入してくださったところは、子ども達がロボットの授業を大いに楽しみ、その反応をもとに先生方もさらに工夫した授業を展開する、とても良い流れになったと伺っています。
昨今ではScratchやViscuitのような無償で利用できるビジュアルプログラミングも浸透してきて、少しずつプログラミング教育は前進しています。ただ、詳しい先生方もしくは、支援員の配備、教材の購入等、環境が整っているかどうかで格差が生じてしまうという懸念はまだ解消されていません。
プログラミングをしっかり基礎から教えることに関しては、準備万端とはいえないです。国がめざす、プログラミング教育の理想的な環境や指導と、実際の教育現場は乖離している状態と言わざるを得ません。
アーテック社ではその溝を埋めるべく、先生方への研修を行ったり、低価格のロボット教材レンタルキットを用意したりしています。そうすることで、学校に通うすべての子どもたちが等しくプログラミングを楽しく、しっかりと学んでほしいと願っています。
――教材の提供を通して、先生方へのサポートも含め、限られた予算しかない自治体・学校現場の課題解決をしているのですね。
森田さん:プログラミングの知識がなくても先生が授業をしやすい教材の開発、自治体が購入しやすい価格帯のロボット教材を作っていくというのは、常に私たちの課題でもあります。また、プログラミング教育のテキストを公式サイトで無料配布もしていますので、ぜひ役立てていただきたいですね。
「自考力キッズ」「エジソンアカデミー」とは
御社が運営するプログラミングスクール「自考力キッズ」「エジソンアカデミー」についても教えてください。
- パズル
- ロボット
- プログラミング
テックブロックを使う「パズル」では、図形/空間認識・集中力が身につきます。「ロボット」ではモーターやギアを使い、創造力や表現力を伸ばします。そして「プログラミング」は、論理的思考力や問題解決力を育むカリキュラムとなっています。対象は主に小学校低学年ですね。
「ロボット」から例を挙げましょう。子ども達はまず、テキストどおりに見本を作ります。たとえば、モーターを使った押し相撲ロボットなどです。
ロボットができたら、押し相撲で対戦します。すると子ども達は、ブロックの組み立て方によってロボットの動きが変わることに気づきます。この気付きをもとに、「どうしたら勝てるかな?」と仕組みを考え、試行錯誤しながらロボットの改造を重ねていく。この自発的な学びこそが、自考力キッズの魅力です。
小学校3年生〜を対象とするエジソンアカデミーでは、より本格的なロボット作りに取り組みます。
モノを動かすための仕組みについて学び、その仕組みをどうプログラミングで制御するかをトライ&エラーを繰り返しながら組み上げていきます。
プログラミングには、指示ブロックを組み合わせるビジュアルプログラミングを用います。「変数」「関数」「リスト」などプログラミングの基礎をしっかり学べる内容となっています。
アーテックの教材をきっかけに「その先へ」どんどん追究してほしい
今後のプログラミング教育支援について、なにかビジョンはありますか?
内野さん:アーテックロボには、モノづくりの楽しさに夢中になれる魅力があります。一方で教育現場からは、「配線や基板の使い方が難しい」「詳しく教える時間が足りない」「プログラミング制御を学べる、もっとシンプルな教材がほしい」といったご要望もいただいていました。
そこで新たな「アーテックリンクス」は、ブロックをつなげるだけで配線が完了する仕組みとし、何のセンサーやパーツかがひと目でわかるよう色分けしました。「アーテックリンクス」を使えば、IoT領域でのモノづくりが簡単に体験できます。今後も教育現場の声に耳を傾け、必要とされる教材を開発したいと思っています。
森田さん:何かに興味を持つ“きっかけ”となる教材をご提供することをアーテックでは大事にしています。
興味を持った結果、子ども達がより本格的なツールに手を伸ばしたり、調べ物をしながらオリジナリティあふれる探究活動を始めたり。そんなふうに子どもたちが、先へ先へと伸びていく“きっかけ”となる教材をこれからも開発してまいります。
新製品「アーテックリンクス」は格安でレンタルできる
教育現場の声から生まれたプログラミング教材「ArTeCLinks(アーテックリンクス)は、「簡単でわかりやすい教材がほしい」「生徒に手軽に提供できる教材がほしい」という要望を実現した、レンタルパッケージです。
教材のレンタルは、480円(生徒用ワークシートと教師用テキストの基本セットを4人に1台の場合)という手ごろな値段からスタートできるそう。詳しくはこちらからどうぞ。
競技会にチャレンジしてみませんか?
最後に、競技会について興味を持ったお子さまや保護者さまに向けてメッセージをお願いします!
IoTやAIも一般化が進み、プログラミングに取り組むハードル自体は低くなっています。とにかく興味があるものに触れてみよう、やってみよう、と応援したい。そして、自由な発想でコンテストに参加してほしいです。
競技会は教室に所属していなくても、個人でも学校の仲間同士でも参加できますし、参加費も手頃です。最初の予選はオンラインでご家庭から参加できますから、ぜひチャレンジしてください!
そもそも、大会が開かれるようになった“きっかけ”について教えてください。