数多くの検定と似て非なるのが「プログラミング英語検定」。プログラミング能力そのものではなく、「プログラミングに必要な英語力」を測る検定です。2021年9月からは、高校生向けの「プログラミング英語検定ジュニア」が始まりました。
プログラミングに必要な英語力とは何でしょうか。そもそも、なぜプログラミングと英語をかけあわせた検定が開発されたのでしょうか。
プログラミング英語検定を開発したグローバリゼーションデザイン研究所の代表・西野竜太郎さんに伺いました。
著書は『アプリケーションをつくる英語』『ITエンジニアのための英語リーディング』など。
「プログラミング英語検定ジュニア」とは?
グローバリゼーションデザイン研究所が開発・運営する検定資格。プログラミングで求められる英語力を測定するのがねらい。プログラミング英語検定のジュニア版で、主に高校生を対象としている。ちなみにプログラミング英語検定には、専門学校生や大学生を対象としたベーシック試験と、社会人を対象としたアドバンスト試験がある。
試験はオンラインで受験可能。受験申し込みは以下のURLより。
https://progeigo.org/
プログラマーに必要な英語力を身につけ、情報Iの授業への苦手意識をなくす
ープログラミング教育が必修化することになって以来、数多くの民間検定試験が誕生していますが、「プログラミング英語検定」のように、英語とプログラミングをかけ合わせた検定は珍しいと思います。なぜ、このような形式の検定を開発されたのでしょうか。「プログラミング英語検定」を開発したのは、プログラマーの英語力を高めたい、海外で活躍できるプログラマーが増えてほしいという想いがあったからです。
私は10年ほど前、アンドロイドのアプリを開発していました。当時はアンドロイドの黎明期だったので、英語で書かれた技術資料しかありませんでした。苦労しながら開発したアプリは世界で100万回以上ダウンロードされましたが、ユーザーが増えてくると、英語でユーザーサポートをしなければいけなくなったんです。
この経験から、私は、「これからは、世界に向けて簡単にアプリを公開できる時代になる。すると、プログラマーに英語力が求められるようになる」と感じたんです。そこで、プログラマーの英語力を高める活動をしたいと思い、その一環としてプログラミング英語検定の開発に着手しました。
ーなるほど。2021年9月からは、高校生を対象とした「プログラミング英語検定ジュニア」を開始されましたが、ねらいは何でしょうか。
ねらいは二つあります。
まず、高校生の段階で、プログラマーに必要な英語力を身につけていただくことです。検定という形で明確な基準を示すことで、卒業後にプログラマーになる人や、進学してプログラミングを学ぶ人の役に立ちたいと思っています。
そして、2022年度から必修となる「情報I」の授業で、高校生がつまずかないようにサポートできればと思っています。プログラミングでは、関数名や変数名を英語で書かなければいけませんし、画面に表示される英語のエラーメッセージを読み取らなければなりません。プログラミングの授業なんだけども、英語力も求められる。そんな状況が間近に迫ってきています。
しかも、英単語を知っていればよいのかというと、プログラミングには「独特の英語」が使われることが多く、一般的な英語力だけでは対処できないシーンも多数あります。ですから、英語が得意な高校生でも、プログラミングで使う英語が理解できない可能性があるんです。
ー独特の英語というのは、たとえばどのようなものでしょう。
たとえば、プログラミングでは、主語が頻繁に省略されます。
【例】
Failed to save the file. ファイルを保存するのに失敗しました。
※主語「The software」を省略
Save this file? このファイルを保存しますか?
※「Do you」や「Do you want to」を省略
「主語の省略」は、文法書の最後で軽く説明されている程度のもの。高校生がいきなりこんな文章を見ると、戸惑ってしまうと思います。
情報の授業なのに、英語でつまずいたらもったいないですよね。そこで検定をとおして、高校生にプログラミング特有の英語をスムーズに理解できるようになってほしいと考えました。
「語彙」「読解/文法」からリーディングに特化して出題
ープログラミング英語検定ジュニアの具体的な内容は。プログラミング英語検定ジュニアは、「語彙」と「読解/文法」の二つのカテゴリーで構成されます。語彙の配点が9割ほどありますので、ほとんどが語彙問題ですね。
語彙は、弊社が公開している「プログラミング必須英単語600+」から出題されます。
この「プログラミング必須英単語600+」は、1200万語を超えるプログラミング関連資料(ソースコード、APIリファレンス、マニュアルなど)から英単語を選出し、レベル別に分類したものです。
また、プログラミング英語検定ジュニアでは、「ベーシック300」と「前提英単語100」の400語から出題します。
出題形式は、四択問題です。
「読解/文法」では、リーディング問題を出題します。例えば、ソフトウェアに表示されるメッセージの意味を四択で答える問題です。
特徴的なのは、英語の試験であるにもかかわらず、リスニングやスピーキングの問題は出題しないことです。なぜなら、プログラミングで求められるのは、「英語を読み取る力」だからです。
ー検定の結果は、どのようにフィードバックされるのでしょうか。
ジュニアの場合は、結果を合否では測りません。得点に応じて、A〜Eの5つのグレードで結果を出します。
- A:100〜80点
- B:79〜70点
- C:69〜60点
- D:59〜50点
- E:49〜0点
※ベーシックやアドバンストでは合否が判定されるとのこと
学習教材を無料で公開!
ープログラミング英語検定ジュニアの受験勉強は、どのように行えば良いでしょうか。プログラミング英語検定ジュニアの学習教材は、全て無料で公開していますので、基本的には公式サイトで公開している学習教材を使って勉強していただけたら充分です。
語彙は、「プログラミング必須英単語600+」のうち、「ベーシック300」と「前提英単語100」を勉強していただければと思います。読解/文法は、こちらのテキストで対策できます。
ー教材を無料で公開しておられるとは!勉強するハードルがグッと下がりますね。
先ほどお話ししたとおり、私どもは「世界で活躍できるプログラマーが増えてほしい」という想いで検定を開発しています。ですから、学習に関する部分はできる限り無料でご提供しようと考えています。なにぶん無料でご覧いただけますから、直近で受験を考えていない方にも、ぜひ試しに教材を読んでもらいたいですね。
より高い英語力が求められるベーシック/アドバンスト試験も
ーちなみに、プログラミング英語検定のベーシックやアドバンストは、どのような検定ですか。ベーシックは主に専門学校生や大学生、アドバンストは社会人や職業プログラマーを対象としています。ベーシックもアドバンストもジュニアと同様に「語彙」「読解/文法」で構成しており、四択問題です。ただ、配点の割合がジュニアとは異なり、読解の配点がより高くなります。
語彙は「プログラミング必須英単語600+」から出題します。ベーシックは「ベーシック」の300語から、アドバンストは「ベーシック」と「アドバンスト」の600語から。
読解/文法では、ジュニアよりも長い英文を読み解く問題を出題しています。APIリファレンスの一つのクラスの説明や、マニュアルの中の一段落から丸ごと出題することもありますから、長文を読む力をつけておく必要があるんです。
同じくアドバンストでは、英単語を並び替えて英文を作成する「英作文」のような問題も出題します。つまり、ベーシックやアドバンストでは、より高い英語力が求められると言えます。ベーシックやアドバンストを受験する方は、公式テキスト「プログラミング英語教本」で勉強いただければと思います。
英語力に合わせてベーシックやアドバンストにも挑戦できる
ープログラミング英語検定ジュニアは、高校生以外の方、たとえば中学生などでも受験できますか。受験できます。語彙の約半分は中学校卒業までに習いますので、中学生でも背伸びすれば受験できるのではないでしょうか。
ただ、受験の前提として、プログラミングに関する初歩的な知識が必要になります。変数や関数、APIリファレンスなどがどのようなものかを理解していることが望ましいですね。
ーなるほど。ちなみに、高校生がベーシックやアドバンストを受験することはできますか。
できます。実際、アドバンストに合格した中学生や高校生もいます。逆に、社会人がジュニアを受験しても問題ありません。
高校生だからジュニアを受けなければいけない、社会人だからアドバンストを受けなければいけないといった定めはありませんので、ご自身の英語力に合わせて、受けていただければと思います。
オンラインでいつでも受験可能
ープログラミング英語検定は、どこで受験できますか。検定はオンラインで実施しているので、PCがあればどこからでも受験できます。
公式サイトで受験チケットを購入すると、メールでチケット番号が送られてきます。その番号を受験用ウェブサイトで入力することで、ご自宅で受験できます。
ー受験したいときにいつでも受験できるんですね。受験回数の上限はありますか。
回数に上限はありません。何度でも受験していただけます。
ちなみに、複数回受験する場合でも、受験するたびに問題が変わりますので、まったく同じ問題が出ることはありません。「問題を覚えてしまう」と心配しなくても大丈夫ですよ(笑)。
他の検定を補完する役目を果たしたい
ープログラミングや英語関連の検定は、他にもたくさんあります。その中で、プログラミング英語検定が優れている点は。プログラミング英語検定は、他の検定と競合するのではなく、むしろ他の検定を補完する役目を果たしたいと考えています。今後は他のスクールや検定と協力し、教育プログラムの作成などに活用できたら嬉しいですね。
ちなみにプログラミング英語検定は、団体受験も可能です。団体受験では受験料が割引になるほか、団体代表者が試験結果の一覧を確認できます。プログラミングスクールで試験を実施し、その結果を達成度の確認や進級試験に活用いただくこともできますよ。
プログラマーには英語力が必須。ぜひ学習教材のダウンロードを
ー本日はありがとうございました。最後に、これからプログラミング検定ジュニアにチャレンジする生徒にメッセージをお願いいたします。プログラマーには、英語力が必須です。しかも、日常英会話やビジネス英語とは異なる「プログラミング特有の英語力」が求められます。検定を通して、プログラミング特有の英語力を伸ばしていただきたいです。
プログラミングに必要な英語力をつけておくことで、情報の授業に自信を持って臨めるのではないでしょうか。その結果、受験してくださったお子さんがプログラマーとして世界で活躍するなど、将来の可能性が広がると嬉しいですね。
先述のとおり、学習教材は無料でご提供していますので、まずは学習教材を気軽にダウンロードしていただければと思います。
—ありがとうございました!
「プログラミング英語検定」公式サイトはこちら
プログラミング英語検定、および、プログラミング英語検定ジュニアの公式サイトはこちら。教材は無料でダウンロードできますので、ぜひ一度ご覧になってみてくださいね。https://progeigo.org/