(取材)NTTコミュニケーションズが目指す、仲間とともにつくりあげるドローンのプラットフォームとは?

(取材)NTTコミュニケーションズが目指す、仲間とともにつくりあげるドローンのプラットフォームとは?
通信事業者最大手のNTTドコモグループ 。2018年にドローン事業ブランド「docomo sky」を立ち上げ、NTTドコモグループが持つネットワーク技術やビジネスの知見を駆使してドローンの活用を進めてきました。2022年7月のNTTドコモグループの法人事業の統合により、ドローン事業は、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下 NTT Com)が提供しています。NTTドコモグループがドローンビジネスに参入する理由今後目指すべき世界について、NTTコミュニケーションズ株式会社 プラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部 ドローンサービス部門長、柏 大(かしわ・だい)氏に伺いました。

ドローンを世界の社会基盤に

NTTコミュニケーションズ株式会社 プラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部 ドローンサービス部門長、柏 大(かしわ・だい)氏


――まず、NTTドコモグループがドローンビジネスに参入した理由を教えてください。
 
一つはドローンが、NTTドコモグループが注力している5GやIoTといった領域と非常に親和性が高い点です。これからレベル4飛行が解禁され、ますますドローンの活用領域が広がっていく中で、ネットワークの重要性はさらに増していくと考えています。
 
もう一つは、取り組む意義の大きさです。ドローンは、今後より便利になっていく世界の社会基盤になりうるもの。 人による危険作業、高所作業リスクを減らせますし、省力化に資するので少子高齢化による人手不足対策としても有効です。 日本だけでなく、世界にも大きな影響を与えるソリューションの提供を目指しています。
 
――これまで、どのような流れでドローンビジネスを展開してこられたのでしょうか。 
 
2016年にNTTドコモグループの一事業として始め、2017年には中期戦略2020「beyond宣言」において「安全で先進的なドローンサービスを展開する」と発表しました。2018年には「docomo sky」という事業ブランドを立ち上げ、本格的にさまざま分野での社会実装に踏み出しました。

報道発表資料

中期戦略2020「beyond宣言」を策定しました。

報道発表資料

https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2017/04/27_00.html >


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NTTコミュニケーションズでは、Skydio社よりリリースされるアップデート内容や新たなソリューションの価値創造に向け、アメリカ以外では日本初含む4名 (日本最多) が在籍するSkydio Master Instructorを中心に性能検証を実施しております。 Skydio社ドローンの特徴の1つにジンバルが上下90度駆動することが挙げられます。特に上部90度に駆動させることで橋梁下などに入り込んだ

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https://www.docomosky.jp/ >


 2020年には米国発のドローンメーカーであるSkydio社と協業し、同社の自律飛行型ドローンの提供開始。あわせて株式会社NTTドコモ・ベンチャーズを通じた出資も発表。2021年にはLTEモバイルネットワークを使用するドローン専用の「LTE上空利用プラン」のサービス提供を始めています。

NTTドコモの無人航空機(ドローン)専用料金プラン「LTE上空利用プラン」 | docomo sky

無人航空機(ドローン)をWi-Fiエリア内だけではなく、モバイルネットワーク上でも利用できるようにした専用料金プラン「LTE上空利用プラン」がはじまりました。農業や物流、災害対策など、さまざまなシーンで活用可能です。

NTTドコモの無人航空機(ドローン)専用料金プラン「LTE上空利用プラン」 | docomo sky

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2022年7月からはドローンビジネスをNTT Comに移管し、いまに至ります。このように少しずつ着実にラインナップを揃え、環境を整えてきたのです。
 
――いま、多様な業界からドローンビジネスへの参入が相次いでいます。そんな中で、御社が発揮できる強みについてお話しください。
 
まずはモバイルネットワーク技術。上空でのモバイルネットワーク使用はまだまだこなれていないので、現状ではなかなかドローンの安全・安心な飛行が難しい状態にあります。いくら機体の性能がよくても、安定した飛行のためには電波を発信する側も電波の強さを調整する必要があります。そこで、できるだけ効率的・安全にドローンを運用していくために、弊社のネットワーク技術のバリューを発揮していくことが求められています。
 
また、ドローンが撮影したデータの活用の面でも貢献できると考えています。今後、ドローンが撮影することが当たり前になっていく世界では、取得したデータをAIを使って分析し、異常を発見したり、業務DXに活用したりするなど展開の幅もぐっと広がっていくはず。そこでは弊社のクラウドやIoT基盤とのシナジー効果が期待できます。

パッケージでサービス展開 


――現在取り組まれている代表的な事業をご紹介ください。
 
いま特に力を入れているのは、点検分野農業分野です。点検に関しては、もともと自社内にも点検を必要とする設備が数多くあり、知見を蓄積してきました。基地局鉄塔の点検には2017年からドローンを活用しており、2020年には「AIサビ検知」といったサービスも展開しています。
 
このように自社の持つノウハウを、橋梁や道路といったインフラをはじめ、さまざまな分野の点検に活用しています。3次元構造物の撮影やインフラ設備の接近した撮影・飛行など、人では難しいような業務の遂行や、異常の発見といった点で、非常に成果を挙げています。
 
農業分野では、異常が起こる予兆の発見にも注力していますね。たとえば農地に発生した害虫を放置していると一気に数が増え、甚大な被害をもたらすことがあります。また、数が増えてしまうと駆除作業も大変です。
 
いま農家さんは雨の日も風の日も自分の目で見て回っていますが、それだとどうしても膨大な手間がかかる上、見落としも発生しがちです。そこでドローンの出番です。

ドローンとAIを組み合わせることで、肉眼ではわからないような小さな異常の予兆もほぼ確実に見つけることができます。 害虫の発生を完全に抑えることは難しいのですが、被害は最小限に抑えられます。場合によっては、ドローンを使ってピンポイントに農薬配布を行うことも可能です。
 
こう言うとすぐにでも開発可能なサービスに聞こえるかもしれませんが、実用に至るまでにはさまざまな苦労がありました。そもそも実際に「手を打たなければいけない予兆とは何か」を把握するのもすごく大変な作業。技術者が現地に赴き、農家の皆さんや専門家と一緒になって進めてきました。
 
このように、泥臭い経験を一つずつ積み重ねて、みなさんに喜んでいただけるようなサービスをつくり上げているのです。 いまはクラウドデータを基にした、生育状態に応じて最適な作業を提案するシステムの開発を進めています。
 
――腰を据えて事業成長に取り組むことができるのは大手ならではですね。
 
そうですね。もちろん短期的な収益も大事ではありますが、「日本の農業を変えるんだ」との情熱を持ちつつ、ある程度長期的な視野から腰を据えて見守れる体力があるのは強みと言っていいかもしれません。


――2021年11月、「docomo sky セルラードローン(*1)パートナープログラム」を開始されました。このプログラムの詳細を教えていただけますか。 
(*1)NTTドコモグループが商標登録したモバイルネットワークを利用したドローンの名称

セルラードローン | ドローンビジネス docomo sky

モバイルネットワークを活用した新たな利用シーン・サービスの創出に向けてパートナーの皆様と連携しております。

セルラードローン | ドローンビジネス docomo sky

https://www.docomosky.jp/cellular-drone >


弊社はこれまでも、社会課題の解決に向けさまざまなサービスを創出してきました。その上でさらなる展開を推進するための「仲間づくりの場」として立ち上げたのが、このプログラムです。さまざまなサービスを提供してるパートナーと一緒に事業開発に取り組むことで、より多様なシーンで活用してもらうことを目指しています。
 
docomo sky セルラードローンパートナープログラム

 このプログラムにより、弊社が一社で提供できる範疇のサービスを超えて、日本が抱える課題のソリューションを提供できるようになります。弊社からはモバイル関連の支援のほか、営業やプロモーションにおいても支援を行っています。
 
――具体的にはどのようなサービスを展開しているのでしょうか。 
 
二つの分野で展開を進めています。一つが医薬品の配送。機体や通信プランの提供はもちろん、セルラードローンの研修や賠償責任保険、飛行レポートの作成まで、一連のサービスをパッケージにしてサービス提供しています。
 
新型コロナウイルスの影響もあり物流の重要性が増す中、特に過疎地などの人口の少ないところでより求められているサービスです。いまは配送機能だけですが、ゆくゆくは遠隔医療の機能も付加していきたいですね。
 
もう一つは広域災害対策パッケージ。これは広域災害が発生したとき、ドローンを活用して被災状況や必要な対策を把握するためのソリューションです。多拠点へリアルタイムで映像を中継できるので、的確な状況把握や迅速な指示を行えます。防災訓練で活用していただいているケースもありますね。
 
もちろん、配送でも広域災害対策でも、いま確立されているシステムのすべてをドローンが取って代わろうとしているわけではありません。「どちらかが使えなくてももう片方は使える」となれば、より安心できますよね。現行のシステムと補完する形で、より強固な社会基盤を構築していきたいと考えています。

パートナーと一丸となって業界を盛り上げる 


――社会基盤の構築を目指す上で、いまどのような課題があるのでしょうか。  
 
大きくは①機体②運行管理③インフラ整備④技術者の四つが課題として挙げられます。
 
まず①機体では、安全に安定的に飛べる機体がますます求められています。誰でも使えるようにコストも下げていかなければならないでしょう。
 
②運行管理では、自律飛行する複数のドローンがぶつからないように運行させる仕組みが必須です。そのためにはドローン向けの通信を最優先で構築していく必要もありますね。制御システムや、補償の仕組みもセットで考えなくてはいけません。
 
③インフラ整備には、たとえばドローンの発着場といった物理的な設備もですし、交通ルールや違反したときの罰則といったドローンの円滑な運用を支える仕組みの整備といった意味合いもあります。これには規制や法律も絡んでくるので、企業だけではなく国とも協力していくことが重要です。
 
④ドローン技術者は全く足りません。さらに、ネットワークの技術も兼ね備えた技術者は本当に少なく、圧倒的に不足しているのが現状です。これから10倍、100倍、1000倍くらいの数の技術者が必要となってくるでしょう。

ドローンを運行するためにはさまざまな知識が求められます。ドローンを作るために必要な電気回路の知識はもちろん、 ネットワークなどの周辺の知識も併せて習得している技術者であれば言うことはありませんね。
 
――今後、どのような形で社会に貢献していきたいと考えているのでしょうか?
 
弊社が目指すのは、空を活用した新しい社会基盤づくりです。これは一社で独占的に進めるのではなく、できるだけオープンな形で仲間を増やし、みんなで業界を盛り上げていかなければならないと考えています。弊社が培ってきたネットワークや自動運転のようなソフトウェアの知見もどんどん公開して、パートナーのみなさんの力を借りながら磨き上げていきたいですね。
 
ほかには、2025年に開かれる大阪・関西万博では「空飛ぶクルマ」の導入が検討されていますよね。私が子どものころ憧れていた「自動車が空を飛ぶ」世界の実現がすぐそこまでやってきている。そんな近未来的な世界の実現にも貢献していきたいと考えています。

――これまでの日本企業は自社だけで技術を独占する手法が主流でした。御社がそのやり方を取らず、他社と共に進めていこうとされているのはなぜでしょうか。
 
ドローンにとどまらず、現代はものすごいスピードで世の中全体が変わってきています。いろいろなものがネットワークで繋がり、世界中にすばらしい技術を備えた人やモノが拡散している。このように複雑な世の中では、囲い込みは意味をなしません。 自分たちができることを出し合ってスピーディに新しいものをつくり上げ、業界を盛り上げていきたいと思っています。
 
いまビジネスの世界ではエコシステムやオープンコラボレーションといった手法がさかんに取り入れられていますが、ドローンの世界でも同じです。他社の方々にも、一社だけで何を提供できるのかを考えるのではなく、提供したいソリューションを実現させる上で、必要に応じて弊社を使ってもらうという発想を持ってもらえたらと思いますね。
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