(取材)Skydio社の自律飛行技術とNTT Comがドローン業界を革新する!NTT Comのキーパーソンにうかがいました

(取材)Skydio社の自律飛行技術とNTT Comがドローン業界を革新する!NTT Comのキーパーソンにうかがいました
NTTコミュニケーションズ株式会社は、自律型ドローンにおいて世界をけん引する米国ドローンメーカーのSkydio, Inc.(以下Skydio社)と資本・事業の両面で提携し、ドローン活用を推進しています。

国内最大手の通信事業者であるNTTドコモグループはなぜ Skydio社製のドローンを選び、どのような事業を展開しているのでしょうか。同社のプラットフォームサービス本部にてドローン事業を担当する田仲秀行氏、石川泰典氏にうかがいました。

同社提供

安定飛行と障害物回避に強みを持つSkydio社製ドローン

――“通信事業者”のイメージの強い御社ですが、なぜドローン事業に注力しておられるのでしょうか。 
 
田仲:ドローンと通信は切っても切り離せない関係にあります。また、参入を決めたときはまだ開拓されていない領域でもありました。そこでNTTドコモグループの持つ通信技術の強みを生かし、社会基盤になりうるポテンシャルを秘めたドローンの領域で安全・安心なソリューションビジネスを展開していこうと考えました。
 
――御社ならではの強みを教えてください。
 
田仲:12月にドローンの有人地帯における補助者なし・目視外飛行が法制度上可能になると、衝突や混信といったリスクがより高まります。そんな中で安全性を担保するため、高い通信技術を持つ弊社が参入することは意義があることだと思っています。
 
また、私たちは実際に通信鉄塔の点検にドローンを活用してきた実績があります。自社のノウハウを基に、お客様に安心してご利用いただける環境を提供できることは大きな強みになっています。
 
――御社の中では、具体的にどのような場面でドローンを使用しているのでしょうか。 
 
田仲:点検分野のほかには、農業分野でも使用していますね。たとえば北海道では農研機構の委託を受け、てん菜の病害虫を見つける取り組みを行っています。ここでは、ドローンが撮った画像をAIが解析し、肉眼では見えづらい病害を検知するといった、NTTドコモのR&Dの力を用いたソリューションを提供しています。

また東京都の「東京ベイeSGプロジェクト」先行プロジェクトにおいて「空飛ぶクルマ、ドローン」を事業テーマとして提案し、11月に弊社が代表事業者として採択されております。ドローンの活用はもちろん、ドローンのさらに先の社会を見据え、取り組みを進めています。
 
――Skydio社のドローンを使用されていますが、同社のドローンの優れている点を教えてください。 
 
田仲:私たちが扱っているSkydio社のドローンは、「Skydio 2+」「Skydio X2」の二つです。どちらの機体も、コアとなる技術はSkydio Autonomyと呼ばれる自律飛行技術です。
 

田仲:「自動飛行技術」「自律飛行技術」は、文字こそ似ていますが、その内容は大きく異なります。自動飛行はミッション通りに飛んでいく飛行です。想定外の状況には対応できないため、たとえば航路に障害物があるとそこで飛行が止まってしまうこともあります。
 
一方、 Skydio社の自律飛行技術を活用すると、障害物があったとしてもドローンが自律的に回避して飛行を続けます。これを実現したのが、機体の上下に六つ取り付けられた魚眼レンズカメラです。このカメラによって360度にわたって死角がなくなり、3次元空間を正確に認識できるようになりました。
 
自律飛行技術と魚眼レンズカメラは「Skydio2+」と「SkydioX2」両方に共通していますが、「SkydioX2」では赤外線やサーマルカメラを搭載しており、夜間飛行や熱源感知も可能な機体となっています。

――一般的なドローンでは、障害物を回避するのは難しいのでしょうか。
 
田仲:このサイズのドローンでは難しいです。私たちがSkydio社をいち早く見つけて出資し、提携したのも、その卓越した技術ゆえです。
 
Skydio社のドローンの特徴的な点は、機体の前の部分では下にプロペラが、後ろの部分では上にプロペラが付いていることです。魚眼レンズに移り込まないように設計されたものですが、非常にユニークな形です。

NTTコミュニケーションズ株式会社 プラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部門 ドローンサービス部門 主査 田仲 秀行氏

顧客のフェーズに合わせた「三つのサービス」と「二つのパッケージ」

――御社で提供しているサービスについて教えてください。
 
石川:弊社では、お客様の活用方法や期間のご要望に合わせ、①技術検証②運用検証③販売の三つのサービスを提供しています。すでにお客様が購入を決められているときにはシンプルに③販売となりますが、お客様の中には「一度試してみてから買うかどうか決めたい」と考える方も多いんです。
 
そこで、購入の前にドローンを試せるサービスとして①技術検証と②運用検証を提供することにいたしました。このうち技術検証は、ドローンを飛行させる場所だけをお客様に用意してもらい、私たちがドローンを飛行させて有用性の検証を図るもの。一方運用検証は、2ヶ月間機体を貸し出し、お客様自身で評価・検証していただくサービスとなっています。
 
私たちの強みの一つは、米国のSkydio社で訓練を受けたSkydio Master InstructorによるSkydio社の認定講習をパートナーを通じて提供している点にあります。これができるのは国内で私たちだけです。Skydio社の機体は非常に優れたものですが、万能というわけではありません。「何ができて、何ができないのか」をしっかり伝えることは販売者の責任だと思っています。
 
――撮影や巡回にドローンを使用したい場合のパッケージサービスも提供しておられます。 
 
石川:撮影に特化した「かんたんデータ取得パッケージ」と、巡回業務に特化した「どこでも巡回パッケージ」の二つを提供しています。先ほど説明した技術検証であれば、お客様の要望に応じて飛行から撮影、飛行結果の取りまとめまで細かくサポートしますが、「かんたんデータ取得パッケージ」では撮影だけを支援します。
 
「どこでも巡回パッケージ」は、設備や建設現場などでドローンに巡回業務を任せたいと希望しているお客様向けのものです。自社で開発した巡回用の飛行検証スキルを活用することで、通常の自動飛行より精度の高い飛行が可能になります。飛行してみて初めてわかる課題を確認していただくためのパッケージです。

NTTコミュニケーションズ株式会社 プラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部門 ドローンサービス部門 石川 泰典氏

 
――「飛行させて初めてわかる問題」とは。

石川:たとえば建設現場ですと、大きな音が発生しているため、作業員がドローンの飛行に気付かない場合があります。そうなれば人と衝突してしまう恐れがあるため、飛行ルートや時間帯を注意深く検討する必要が出てきます。場合によっては「この時間帯は飛行をやめた方がいい」と判断するケースもあります。
 
――Skydio社のドローンは実際どのような分野で使われているのでしょうか。 
 
石川:一番使われているのは橋梁などの点検分野ですね。また最近では、巡回分野での活用も注目されています。

Skydio社のドローンは障害物回避機能などの性能を生かし、屋内や狭い場所でも活用できます。他社製のドローンの中にはGPSが途切れると動きが不安定になる機体もありますが、Skydio社のドローンは六つのカメラで自分の位置と周辺の障害物との位置情報を確認しながら飛行するため、GPSが入らなくても安定的な飛行が可能です。
 
たとえば建設現場では、工事の過程を記録する必要があります。これまでは人が撮影してきましたが、この作業は負担の大きいものです。万が一撮影を忘れてしまうと、建設が進んでしまうので後で撮ることもできません。そこでドローンを活用することで、漏れなく安全に、かつ効率的に記録することができます。
 

田仲:GPSが入らない環境での飛行は高度な操縦技術を必要とするため、スキルの高いパイロットでないと飛行できない状況が生まれてしまいます。そうなれば、結果的に社会実装の進みが遅くなります。一定の訓練さえ受けていれば誰でも安全に使える環境を整備することは、ドローンの活用を進める上でも重要だと感じています。
 
石川:経営者からすると、機体の安全性が高まることで外注しなくても社員が操縦できるとなれば、コストの面から見ても魅力的です。このように、ドローン活用にはさまざまな可能性とメリットがあるのです。
 

同社提供

NTTドコモグループの技術を生かし、ユースケースを蓄積する

――Skydio社のドローン活用を広げるために、御社では今後、どのようなことを行っていきますか。
 
田仲:これまで人が行けなかった、あるいは行くのに苦労していた場所で安全性を確保しながら業務を遂行できるのは、Skydio社のドローンを活用する大きなメリットの一つです。
 
ただ、導入してもそのままでは機体を使いこなせず、なかなか実装まで広がらないケースがあることもわかってきました。そのため、いまは「こういった使い方があるよ」と率先してユースケースを共有しながら、活用イメージを互いにふくらませていくための講習に注力しています。
 
理解を広める手段としてはほかにも、国土交通省が公表している「点検支援技術性能カタログ」にSkydio社のドローンを活用した点検手法を掲載しています。このカタログを読めば、どのように点検すればいいかがわかるので、多くの事業者に活用してほしいですね。
 
――ドローンの社会実装が進むためには、どのような課題があるとお考えでしょうか。また、その課題に対して御社はどのように対応していかれますか。 
 
田仲:ドローン業界はまだ黎明期にあります。いまは「4Kの映像が撮れる」や「自動飛行ができる」といった点ばかりがフォーカスされがちですが、実際のユースケースはこれから蓄積していく段階です。 私たちもリスクを負いながら積極的にチャレンジし、ユースケースを積み上げていきたいと考えています。
 
自動飛行はいまどんどん実証から実装段階へと進んできていますが、目視外飛行はまだまだこれからの領域です。この領域を活用するには技術の進化も必要です。NTTドコモグループはこれまでもLTEの上空での利用などを進めてきましたが、来るべき未来に向けて技術開発にも力を入れていきます。
 
また、実際にドローンに触れる機会を増やすことにも注力しています。具体的には定期的に全国各地でデモ会を開催しており、ドローンでどのようなことができるのかといったイメージを掴んでもらっています。
 
石川:ドローンは法律の移り変わりも激しく、導入に抵抗感があるお客様も一定数いらっしゃいます。私たちにはLTEのサービスやドローンの講習などいろいろな試みを仕掛けていくことで、世の中の人々のドローンへの苦手意識を払拭していく役目が課せられていると自負しています。
 
また、変化が大きくて困るのであれば、私たちもサポートしていきます。そのようなサポートの領域でも先頭を走る立場にいたいと思っています。
 

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――最後に、ドローンの活用に向けたメッセージをお願いします。

 
田仲:私自身これまでドローンを用いたさまざまな提案をしてきましたが、お客様からは「いままで見えなかった部分が見えるようになった」「業務が劇的に効率化した」といった声をよく頂きます。特にこの1年、実証実験レベルで終わっていたものが、ドローンの進化と浸透によって次のステップに繋がっていくケースが増えています
 
Skydio社のドローンは、自律飛行技術という大きなブレークスルーを起こしました。あとは私たちがお客様に対して使い方をしっかりフォローし、社会実装につなげていくことが大事だと思っています。
 
石川:私たちがドローンの拡販を進めている理由は、ドローンの活用がお客様の「便利」につながるからです。近年では、点検や高所作業などの危険な作業をドローンに置き換えることで安全性を確保するお客様が増えてきています。これまでできなかったことができるようになり、新しい挑戦に踏み出せる可能性もあります。
 
建設の業界などでは人手不足の状況が続いています。今後ますますIT化やDX化が求められていく中で、ドローンを活用して業務の効率化を進め、働き方改革にも貢献していきたいと思っています。そのためにも私たちは、ドローンの良さを真摯に伝えていくつもりです。  
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