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(対談)学習指導要領「情報」有識者・鹿野利春×プログラミング能力検定協会代表・飯坂正樹|プログラミング教育の価値〜その成果をどう測るか〜

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学習指導要領の改訂により、2020年度からは小学校でプログラミング教育が必修化しました。続く2021年度からは中学校での「技術」分野の内容拡充が行われ、今年度(2022年度)からは高校で「情報Ⅰ」が必履修化されています。

さらに、2024年度からは大学入学共通テストにおいて「情報」が新設。大学入試という重要な場面でプログラミング能力が問われることとなり、生徒だけでなく、保護者としても「どのような対策をすれば良いのか」と不安に思うところでしょう。

今回はそんな「情報」の試作問題をもとに、公教育×民間教育それぞれの立場から、情報活用能力の育成について議論を展開。学習指導要領の改訂に携わった鹿野 利春氏、「プログラミング能力検定」の代表を務める飯坂 正樹氏が考える“情報活用能力の向上に欠かせないモノ”は、いったい何なのでしょうか?


高校で「情報Ⅰ」スタート。新学習指導要領「やっと全貌が見えた」

鹿野:京都精華大学メディア表現学部 教授の鹿野と申します。最近では一般社団法人デジタル人材共創連盟(デジ連)の代表理事も務めております。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

飯坂:株式会社スプリックス プログラミング事業部長、プログラミング能力検定協会 代表の飯坂です。本日は、公教育に長らく携わってこられた鹿野さんから貴重なお話をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

さっそく本題に入ります。本日のテーマは「プログラミング教育の価値〜その成果をどう測るか〜」ということで、小学校でのプログラミング教育必修化から2年が経ち、今年度の4月からは高校でも「情報Ⅰ」が必修化しましたけれども、ここまでの歩みを振り返っていかがですか。

鹿野:「いよいよ本格的に始まるな」という感想です。ただ、「プログラミング教育の必修化」と捉えるのは、学習指導要領のインパクトをいささか過小評価しているかもしれません。

というのは、学習指導要領が本来めざすのは、小中高を通して、全教科・科目で情報活用能力を育むことだからです。その考えのもと、小学校では「プログラミングを活用する体験」、中学校では「技術・家庭分野のさらなる拡充」、高校では「情報Ⅰ」でより専門的な情報活用能力を学びましょうという分担が行われたわけですね。

その意味では、高等学校での「情報Ⅰ」がスタートして初めて全体像が見えたというのか、「やっとここから始まる」感覚があります。民間事業者としてはいかがでしょう?

飯坂:学習指導要領の改訂は、私たち民間事業者にも大きなインパクトを与えました。私どもはかねてより学習塾を運営してまいりましたが、プログラミングの必修化が決定された2018年ごろからは、保護者様から「プログラミングに関する講座はないのですか?」とお問合せをいただく機会がグッと増えました。

そのようなニーズを受け、当社はもちろん、他社様からもさまざまなプログラミング講座が展開され、プログラミング教育に特化したスクールも多数がオープンしたのを記憶しています。これほどまでに市場が大きくなったのは、保護者様が「期待」だけでなく「不安」を抱いた結果かもしれません。

鹿野:保護者世代にとってプログラミングは馴染みがない分野ですからね。それでもなお必修化したのは、プログラミングを学ぶメリットが大きいからです。

メリットというのは、必ずしも「プログラミングで何かを自動化する」ような実利だけではありません。

プログラムは、正しい指示を出せば正しく動き、間違った指示を出せば間違った結果が得られます。そんなプログラムに親しむことで、論理的思考力の育成や、試行錯誤のプロセス(PDCAサイクル)の体得につながるのではないかというのが、公教育におけるプログラミング教育の必修化が意味するところなのです。


飯坂:プログラミングを学ぶメリットは「コーディングスキルの習得」だけではない、というのは非常によくわかります。ただ、そのメリットが保護者様にしっかりと伝わっているかというと、数値化しづらい能力であるがゆえに、課題もあるように感じております。

というのは、民間プログラミング教育の黎明期(2018年ごろ)ですと、「必修化するから、とりあえず学ばせておこう」とか、保護者様ご自身がエンジニアで、「自分自身がITスキルに助けられたから、この子にも身につけてほしい」というようなケースが多かったです。

ところが、そこから4年経つと、「目に見える効果を感じられない(何のために学ばせているのか分からない)」という不満をお持ちのご家庭が増えてきました。

もちろん、「子どもが不満を感じたときに、論理的に説明できるようになった」などの効果を感じるご家庭も多々あります。しかし、やはり他の教科に比べて「成長の見える化」が難しく、学習を継続していただく上での課題になっているのが正直なところです。

「情報Ⅰ」は盛りだくさん?統計やデータ活用の内容が強化

飯坂:ここからは具体的に「情報Ⅰ」の内容を見ていきましょう。


出典:文部科学省 高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材(本編)


飯坂:それぞれを詳しく見てみますと、プログラミングはもちろんのこと、デジタルリテラシーがあり、ネットワークがあり、データ活用があり……と、学習範囲がかなりの広範囲にわたっているように見受けられますね。

鹿野:確かに、こう見てみると盛りだくさんに見えるかもしれません。ただ、冒頭で申し上げたとおり、これらは実は、小中で学んできたことの延長線上になっているんです。

たとえば、小学校では統計の内容が強化されました。いっぽう中学校ではデータ活用を数学で学びます。つまり、高校でいきなりこれだけのことを学ぶわけではないんです。

飯坂:統計やデータ活用は、今や社会に欠かせない素養だということですね。

個人的には、情報モラルの内容が盛り込まれているのが素晴らしいと感じました。インターネット上でのコミュニケーションが当たり前になった時代において、情報モラルは「知らない人についていってはいけない」と同じくらい大切な知識ですよね。

鹿野:そうですね。しかも、情報モラルに関しては、単に定義を暗記するだけでは不十分だとも感じます。音楽や映像の世界にサブスク(月額制)モデルが登場したように、文化のありかたは時代によって変わるからです。

変化の激しい時代だからこそ、定義だけに捉われるのではなく、「この権利は何のために定められているのか」という根本の考え方を身につけていただくことで、自ら判断し、場面に応じた適切な行動を取れる大人になってもらいたいですね。


飯坂:ただ、そこまで深く指導するとなると、指導者の側にもふさわしい資質が求められますね。とくにコンピュータ関連の専門知識などは、「指導できるか不安」という教員も少なくないのでは。

鹿野:その不安ももちろんありますが、私が懸念しているのは、学校の内容では飽き足らず、よりレベルの高い内容に興味・関心を持つ児童・生徒をどう伸ばしていくかです。

学校のカリキュラムは35人〜40人に均質な教育を届けるように作られています。これに関しては、公教育として責任を持って指導しなければなりません。

いっぽうで「どんどんプログラミングを学びたい」という子のニーズにどこまで答えられるかというと、限りある授業時間で実現できること・できないことはあります。

そのせいで子どもの向学意欲が損なわれるようなことがあれば、国としても大きな損失です。民間事業者の皆さまには、まさにこの部分をサポートしていただきたいと考えています。

飯坂:おっしゃる通りですね。公教育と民間事業者、それぞれにできることを分担し、多方面から児童・生徒の学習をサポートしていきたいところです。

大学入学共通テスト「試作問題」は良問ぞろい。ただし慣れは必要

飯坂:「情報Ⅰ」に続いて、ここからは先日(2022年11月9日)公開された大学入学共通テストの試作問題を見ていきましょう。まずは鹿野さん、試作問題の完成度についてどう思われますか。


鹿野:非常にバランスがよく、良問ぞろいですね。第1問などは、知識問題でありながらも思考力を問う内容となっています。

たとえば情報デザインの分野にしても、先行して公開された「サンプル問題」では知識を確認する意味合いが強かった。いっぽう試作問題では「何を基準にデータを整理しているのか?」という、情報デザインの本質を問うような深い設問となっており、問題のクオリティが高まったように感じます。

「サンプル問題」で出題された情報デザインの問題


「試作問題」で出題された情報デザインの問題


飯坂:路線図や口コミサイトなど、普段子ども達が目にする身近なデータを扱っているあたりも興味深いですね。「日常生活でデータを活用してほしい」という、作問者のメッセージが読み取れるような気がしました。

続いて第2問《A》では、二次元バーコードの仕組みが出てきます。これはなかなか、難しいですね。

鹿野:そうですね。二次元バーコードもまた、子ども達にとって身近な題材ですけれども、教科書には載っていません。そのため問題では、まず仕組みについてくわしく解説し、そのうえで思考力を問う流れとなっています。

考える過程においては、データ量が増えれば二次元バーコードの大きさも大きくなることや、復元率を高めるためには冗長性が必要なことを把握しなければなりません。問題を発見・解決する一連の思考を問われる点で、非常に良い問題だと感じました。


飯坂:その次の、第2問《B》もおもしろいですね。「文化祭の出店」をテーマに待ち行列をモデル化し、シミュレーションする内容です。

鹿野:この問題は、難易度のバランスが良いですね。前半部分は比較的やさしく、資料を正しく読み取れれば解けるはずです。

対する後半では、ロジックを組み立て、シミュレーションをする思考力が問われますので、「データに基づいた判断」のプロセスにどれだけ親しんでいるかが解きやすさを左右するでしょう。

飯坂:そして、いよいよ第3問はプログラミングの内容です。こちらはどうでしょう、日頃から保護者様とお話ししている感触では、そもそも心理的に抵抗があるというのか、「難しそう」と感じてしまう子も多いのでは。

鹿野:まず、問題文が長いですからね。落ち着いて読めば解けるようにうまく設計されていますけれども、プログラミングに慣れていないと、見た目にひるんでしまう子がいるかもしれません。

ただ、ひとつ付け加えると、言語能力の育成は他の教科・科目でも重視されているところです。そのため「情報」に限らず、すべての問題が比較的長文になっています。

ですから、長い文章を落ち着いて読み解き、ロジカルに考える習慣は、早めにつけておいたほうが良いでしょう。

飯坂:具体的な中身を見てみましょう。ここでは「上手な払い方」をテーマに、小銭のやり取りが最小になるようなアルゴリズムを考え、プログラムで実装していく流れが問題になっています。

この問題、私も解いてみたのですが、正直なところ、プログラミングに慣れていないと戸惑う部分があるかもしれません。逆に、プログラムでの実装に慣れていれば、「ここをループ(繰り返し)させよう」などと直感的に把握できるような気がします。


鹿野:おっしゃる通りですね。第3問は、「プログラムを実際に動かす経験をどれだけ積んだか」が解きやすさに影響しやすい問題です。

机上で勉強するだけでなく、簡単なものでも良いのでプログラムを書いてみて、正しく動くように試行錯誤する訓練を積んでおくことが大きな助けとなってくれるでしょう。

飯坂:そして、最後の第4問は統計の問題ですね。範囲としては数学Ⅰの、データ分析のあたりでしょうか。

鹿野:そうですね。ただ、箱ひげ図等は中学校の数学で学ぶため、既習範囲にあたります。その意味では、「小中高で学んできたことの集大成を問いますよ」という作問者の意思表示ともとれるでしょう。

入試対策に欠かせない「到達度をはかる基準」

飯坂:ここまで、「情報」の試作問題についてひととおり確認してきましたが、入試に向けた対策をするにはどのような学びが必要でしょうか?

鹿野:一般的な試験対策として小中高の既習範囲をおさらいするのはもちろん、私としては、定期的に学習内容の定着度をはかることが有効ではないかと考えます。

体力の向上を考えてみてください。効率よく能力を向上させるには、単に一生懸命トレーニングをするだけではなく、定期的に成長をはかる必要がありますよね?

記録が伸びていればモチベーションが上がり、さらなる成長につながりますし、まったく効果が上がっていないことがわかれば「やり方を見直そう」と考えられます。せっかくの努力を確実な結果につなげるためには、定期的に学習効果を確認することが欠かせません。

ただ、プログラミングの能力をどうはかるかは難しいところです。というのは、高校「情報Ⅰ」では、どのプログラミング言語で学ぶかは各校の自由に任されているからです。

つまり、プログラミングの考え方や処理を本当の意味で理解していなければ、「Pythonのコードは暗記しているが、JavaScriptはさっぱり分からない」ような子どもが出てこないとも限りません。

だからこそ、「どの言語にも共通する基本概念をどこまで理解しているか」を正しく評価する方法が求められます。

飯坂:プログラミング能力の測定とフィードバックは、私たち民間事業者にとっても重要なトピックです。貴重なお金と時間を割いて民間スクールに来てくださる保護者様、そして子ども達自身の能力向上に貢献するには、客観的で正確な指標が欠かせません。

そこで私たちは、プログラミング言語によらず、同一の基準でプログラミング能力を評価するための共通参照枠「CFRP(Common Framework of Reference for Programming Skills)」を策定いたしました。

CFRPの全体像

CFRPより「レベル5」を抜粋



飯坂:CFRPは、私たちプログラミング能力検定協会が2020年12月より実施してきた「プログラミング能力検定」を通して得た実践知と、スプリックスが積み重ねてきたノウハウによって策定された、汎用的、かつ詳細な共通参照枠です。

児童・生徒はこの枠組みのもと、ビジュアルプログラミングを想定したレベル1から、テキストによるプログラミングを想定したレベル6まで無理なく成長していくことができます。各レベルで求められる能力が具体的に示されているため、鹿野さんがおっしゃったような、定期的な学力の点検にもふさわしい参照枠ではないかと考えております。


鹿野:これは素晴らしいですね。ここまで詳細かつ妥当な評価の軸を定めるのはずいぶん大変だったのではないかと推察いたします。

さらに言えば、「レベル」という形で到達度が示されているのも良いですね。「レベル○になれた!」という実績は自信につながり、学習意欲を後押しします。これはまさに、経済産業省が提唱する「デジタル人材の育成」にもつながる試みです。

飯坂:そのように言っていただけて光栄です。私どもは民間事業者ではありますが、子ども達の情報活用能力を高めることで将来の道を拓く助けになりたい気持ちは公教育と軌を一にします。今後も民間の立場からこの国の未来に貢献していければと考えておりますので、なにとぞご期待いただければ幸いです。


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