一度ハマったら抜けられない…? バレエ母の世界へようこそ!~第1回~

一度ハマったら抜けられない…? バレエ母の世界へようこそ!~第1回~

【第1回】娘と共にバレエの扉を開いた母たち


昔も今も、女子にダントツ人気の習い事といえば、やはりクラシック・バレエ。「子どもにバレエを習わせたい」と意欲的な人が多い一方、「レッスンが厳しそう」「お金がかかりそう」と懸念する声もよく聞きます。実態を知るため、バレエに通わせた経験がある先輩ママ10人に、根掘り葉掘りお話を聞きました。バレエは知れば知るほど奥が深く、一度バレエの沼にハマると、親子ともに抜けられなくなることも…(もちろん個人差あり)。バレエ教室を選ぶ時にチェックすべきポイントは何か。先生、衣装の準備、費用など、バレエ母の体験から詳しくご紹介します。母親の目線から見た、子どもの「バレエ教室のリアル」を3回に分けてお伝えします。

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日本のバレエ教室の歴史は90年以上

日本で初めてバレエ教室が誕生したのは、いつだかご存じですか?
昭和2(1927)年、場所は神奈川県の鎌倉七里ガ浜。ロシアから亡命したバレリーナ、エリアナ・パブロバ(Eliana Pavlova)という女性が開いたスタジオが第一号といわれています。エリアナのレッスンはとても厳しかったそうです。ここで薫陶を受けた門下生たちは、その後の日本バレエの先駆者となりました。

それから90年以上の歳月を経た今、日本のバレエ教室数は約4640件、生徒数はなんと約36万人もいます(2016年昭和音楽大学バレエ研究所『バレエ教育に関する全国調査』より)。生徒の数と習える場所の数を見れば、日本は世界的にも立派なバレエ大国といえるでしょう。みなさんの住む地域にも、どこかしらにバレエ教室があるのではないでしょうか。

バレエ教室の生徒の多くは小学生女子、最近では「大人のバレエ」がブームで成人女性も増えています。先生も女性が圧倒多数で、バレエ教室の世界は、いわば「女の園」といっていいでしょう。

始めたきっかけは「かわいい」「憧れ」「近所」

今回、お話を聞いた保護者の方も10人全員が母親、しかも「娘さんを教室に通わせた」方ばかり。
まずは、いつどんな風に親子でバレエの扉を開いたのか、きっかけについて聞いてみました。

「娘がバレエを始めたのは4歳。保育園の行き帰りに教室の前をよく通ってました。かわいい女の子たちが出入りする様子を偶然見かけ、娘が『私もやりたい!』と。じゃあやってみる?と気軽なノリで始めました」
「うちも4歳でした。幼稚園のお友だちから『一緒に見に行こう』と誘われて。最初の教室は娘がいやがったけど、何件か見学しているうちに、ある一人の先生にはまってしまって。そばで見てわかるぐらい、スーッとひきこまれていきました」

「うちの子は3歳。保育園の友だちが通う教室の発表会に行ったら『かわいいから私もやりたい!』とスイッチが入り、友だちと同じ教室に…」

なるほど、やはり、あのバレエ特有の髪型や華麗な衣装に目を奪われる女子が多いのでしょう。
そのほかのきっかけは、「自分がバレエを長年習っていてメリットを実感していたから」「私も子どもの頃習ってたけど、上手く踊れなかったから憧れていた」という声も。

ユニークな理由では、「私が昔からバレエ漫画にハマってたから」「仕事で会ったモデルさんたちがバレエ経験者で、みんな姿勢がきれいだったから」「バレエに憧れていた私の母から『○○ちゃん(孫娘の名前)はバレエやらないの?』と何度も勧められたから」という声もありました。

世代を超えて脈々と続く女たちの「美への憧れ」が、娘の習い事選びに影響することもあるのですね。

「体験レッスンで相性チェック」がおすすめ

教室選びの方法を聞いたところ、二手に分かれました。
「たまたま見つけたところでパッと決めた」即決派と、「何件か体験して比べて決めた」慎重派。家から通いやすかったり、友だちが先に習っていたりすると、体験レッスンなしで即決することもあるようです。

しかし、どんな習い事でもそうですが、バレエ教室は実にさまざま。お友だちには合う教室でも、わが子に合うとは限りません。体験レッスンのチャンスがあれば、ぜひ一度は受けることをお勧めします特に先生との相性は、その後のお子さんのバレエライフに大きく影響します。体験レッスン時に、先生や教室の雰囲気を目で見て確かめた方がいいでしょう。

小さい子どもでも、教室との相性が肌でわかることがあります。あるバレエ母からは、「娘を連れて何カ所か体験したのに、反応がいまいちだった。ところが、ある教室に行ったら、レッスン中に私の方を振り向いてひそかにグーサイン。娘が気に入ったので、そこに決めた」という声もありました。子どもの直感は侮れません。

バレエ教室のカラーは「先生が全て」

日本のバレエ教室は、75%が個人経営といわれています。個人経営の場合、主宰する先生の経験や考え方、人間性などが、教室全体のカラーを大きく左右します。

バレエ教室や先生は、実際どんな様子なのでしょうか? 
まずは、先ほどの「娘がスーッと先生に引き込まれた」という先輩ママの話から。

「私は恥ずかしながら、バレエはお遊戯の延長程度だろうと誤解してました。ところが娘の先生は、有名な国際コンクールの元セミファイナリスト。クラシックの基礎に忠実で、気品のあるバレエを踊る実力派。娘がすっかり引き込まれ、一気に先生にのめり込みました。あれは運命の出会いでしたね」

「先生は有名バレエ団の出身で、指導歴20年のベテラン。スタイル抜群で、後ろから見たら20代に見える。上達させようとする熱意がすごくて指導が厳しかった。耐えられない子は次々に辞めていった」

「うちの教室は、地元で何十年も続く老舗。有名バレエ団の出身のおばあちゃん先生と、さらにご高齢のおじいちゃん先生がいる。バレエに一生を捧げたバレエ仙人のよう。『私たちの伝統の踊りを守る』というプライドを感じる

「娘の先生は、教え方がすごくうまい。生徒一人ひとりの成長を見て、やる気が出るように声かけをしてくれる。厳しく言った方がいい子には厳しく、ほめた方がいい子にはほめる。保護者にもめちゃくちゃ親切。ママたちと『なんていい先生なんだろう』と言い合っている」

なるほど、やはりバレエの先生は、いろんな方がいらっしゃいます。みなさんバレエへの愛にあふれ、全力で指導に当たっている様子です。

時にはブラック(?) なバレエ教室も

一方で、こんなブラック(?)なバレエ教室もあるようです。

「娘が以前通ってたバレエ教室はひどかった。先生は50代独身女性のお嬢さま育ち。プライドが高すぎて、納得いかないことがあると保護者にもヒステリックにキレる

通う回数が少ないと、先生からあからさまに差別される。『週2回のレッスンでは話にならない。5回は来ないと発表会の役を別の子に替える』とまでいわれた。『共働きで送迎が難しい』とやんわり断ったら、『お子さん置いてどこで働いてるんですか?』と冷ややかに言われた。子どもが差別されたら気の毒なので、無理やり回数を増やしました」

「レッスン中は『子どもが集中できないから』という理由で、親は一歩も教室に入れてもらえない。お迎え時は暑くても寒くても、親は外で立ったまま待たされる。先生の気分次第でレッスンが1~2時間延長されることもあって困る」

「うちの教室は、バレエでケガをすると、決まった整形外科クリニックを紹介される。しかも車か電車じゃないと通えない距離。発表会の時に、そのクリニックの院長が客席にいた。あれはいったい何だったんだろう?」

もちろん、こんな教室はごくごく一部(であることを願います)。納得いかないことがあっても、子どもがお世話になってる立場として、なかなか苦情を言えないもの。「先生ともめたら、うちの子が不利になるのでは…」と、ぐっとガマンしてしまうこともあるようです。

どのぐらい大変? バレエ道具の準備や身支度

子どもの習い事について回るのが、毎回の送迎、そして、こまごまとした身支度のサポートです。バレエ教室では、練習着のレオタード、白タイツ、室内で履くバレエシューズなどを自前で用意するようにいわれます。バレエの技術をある程度身につけ、身体的な条件がきちんと整った段階で、バレエシューズからトゥシューズ(ポワント)に履き替えます。

バレエ教室あるあるは、あのお団子をアップにした髪形「シニヨン」。バレエ母たちからは「慣れるまで結構大変…」という声が目立ちました。

「私、不器用でシニヨンがうまく結べなくて、バレエ用品店でやってた講座に駆け込みました。ちゃんと2000円ぐらい払って習いました

「うちの教室は、シニヨンにしなくてもゴムでしばってさえいればOK。結ぶ時間がないまま来た子は、ボランティアで教室に手伝いに来てる高校生や大学生のお姉さんたちが結んでくれるので、とても助かってます」

「子どもは成長が早いので、レオタードも白タイツもシューズもすぐに小さくなってしまう。タイツはやぶけやすいので消耗品だと割り切る。専門店で買うと高いので、ネットで安いものを探すことも…」

「バレエシューズは1足3000円ぐらい、トゥシューズ(ポワント)になると値段が倍ぐらいになる。トゥシューズを履く時に必要なゴムやリボンの縫い付けは親の仕事

「トゥシューズのつま先を、私が毎回太い糸でかがって補強してます。太い針と糸を使うので力が要るんですよ。レッスン回数が増えてくると、トゥシューズをすぐ履きつぶしてしまう。大人の靴が何足も買えるぐらいお金がかかります

バレエ母たちは、お裁縫の悩みも大きいようです。苦手な場合の解決策としては「実家の母に頼む」「同じバレエ教室のママ友に教わる」「YouTube動画を見る」という人も。「私もYouTube先生に何度救われたことか…。でも、ネットがなかった時代はどうしてたんだろう?」という疑問の声も出ました。

バレエ母たちのお裁縫は、発表会の時期に最大のピークを迎えます。「母さんは~夜なべ~をして~♪」とつい口ずさみたくなりそう。

レッスン代はいくら? リアルなお財布事情

バレエでいちばん気になるのが、やっぱり金銭面。
月謝は、地域や教室により開きがありますが、週1回だと7000円~1万円、週2回で1万~1万5000円、週3回で1万5000~2万円程度が相場のようです。
教室によっては、一般クラスとは別にコンクール出場を目指すクラスがあり、一般クラスより月謝が高く設定されていることもあります。そのほか、施設管理費、保護者たちによる後援会費が別途徴収される場合もあります。

「うちの教室は、発表会が近くなると先生からレッスンを増やすように言われます。週2回では上達が追いつかず、週4、5回が当たり前になり月謝も跳ね上がります。こんなに毎日バレエ漬けでいいの?と疑問に思うぐらい…」

「うちの教室は良心的で、何度も通いたい人向けに上限金額が決まっている。週3回以上はいくら増えても上限を超えない」というところもあります。

発表会が近づくと、通常の月謝に加え、出演料、衣装レンタル代、先生やゲストへの謝礼、チケット代などの経費がかかります。教室により程度の差はありますが、「発表会になると、福澤諭吉先生が羽根がはえたように飛んでいく…!」というのがバレエ母たちの実感のようです。

子どもは必死で練習を重ね、親も必死でサポートし、ようやく迎えた晴れの舞台。

ところが、その発表会になると、バレエ母たちにさらなる苦難がやってくるのです。
発表会はどのぐらい大変なのか? そして福沢諭吉先生はさらに何人必要なのか…?

詳しくは、第2回「バレエ発表会編」に続きます。

先輩バレエ母たちの話を踏まえて、子どものバレエ教室を選ぶ時のチェックポイント
  • 入会前に、できる限り子どもに体験レッスンを受けさせる。
  • できれば複数の教室を比較する。ママ友の口コミも超重要。
  • 先生の経歴、指導方針、教室運営上のポリシーを把握する。
  • 毎回のレッスン時に、身支度がどのぐらい必要かを確認する。
  • 週のレッスン回数、将来は何回まで増えそうかを確認。
  • レッスン中の親の見学は可能か。NGの場合は待機場所を確認。
  • 入会金や月謝以外の費用を必ず確認。特に「発表会」の費用。

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