(取材)大分県×福島県がドローンでコラボ!自治体連携の最先端を行く両県に「自治体」×「ドローン」の可能性を聞く

福島県×大分県がドローンで協力 自治体連携の最先端について聞く
ドローン先進県である大分県と福島県。2022年12月に行われた「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO in 九州(福岡)2022」では、両県がタッグを組んで共同出展を行いました。異なる自治体同士が協力関係を結ぶことのメリットと今後の展望について、連携を主導したおおいたプラットフォームXROSSの秀嶋 良昭氏と公益社団法人福島相双復興推進機構 広域実証フィールド課長の政木 隆史氏にうかがいました。

左から、政木氏、秀嶋氏、箙氏(兵庫県NIRO)、遠藤氏(相双機構)

官と民の間に立ち、ビジネス推進を強力に支援

――まずは両団体についてそれぞれご紹介いただけますでしょうか。
 
秀嶋:大分県はこれまでも、ドローン領域に注力してきました。機体やソリューションの開発に加え、ドローンビジネスの定着化を目指し、サービス事業者と利用者をつなげるドローンビジネスプラットフォーマー事業を開始。大分県の補助事業として官民が協業して2020年からつくりあげてきたのがドローンサービスの総合案内提供サイト「おおいたドローンプラットフォームXROSS(クロス)」です。
 

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クロスの運営は県内のドローン関連企業4社からなるコンソーシアムが県からの支援を受けて行っている形です。注力しているのは、事業者と利用者双方にとって役に立つコンテンツを構築すること。たとえば事業者のサービスそのものを組み直す支援をしたり、サービスに対して適切な金額を設定して見積もりまで自動で出るようにしたりと、ワンストップでサービスを提供できる仕組みをつくりました。
 
事業者がサービスを提供する上ではさまざまな雑務が発生しますが、クロスの活用によってその手間をかなり低減することができます。
また、いまは私たちが率先して、事業者の仕事を受注できるよう営業支援も行っていこうとしています

政木:福島相双復興推進機構(相双機構)は、東日本大震災からの復興を目的として発足した団体です。福島県東部に位置する「相双地域」は福島第一原子力発電所事故の後、住民の避難を余儀なくされました。
 
相双機構は、帰還する住民の方々による事業・なりわいの再開生活再建の支援が活動の中心ですが、
この地域は震災・原子力事故で失われた基幹産業を新たに創出する必要に迫られています。

そこで国家プロジェクトとして立ち上がったのが、「福島イノベーション・コースト構想」です。
この中で重点分野の一つである「ロボット・ドローン」の成長可能性に着目し、
相双機構としてもドローン産業の福島への定着・発展に向けてさまざまな支援を行うこととなりました。



――両団体が知り合われたきっかけを教えてください。 
 
政木:きっかけは2022年6月に幕張で開催された「Japan Drone2022」でした。相双機構としては初出展でしたが、
「福島全体の『強み』を発信すること」、「攻めたデザインで注目を集めること」をねらいとしたブースを設計しました。
それが秀嶋さんの目に留まってお声がけいただいたんです。
 
秀嶋:そうでしたね。ドローンの世界にいると、「福島県」の名前がいろいろなところで出てくるんですよ。ソフトでもハードでも多くの事業者が福島に集結している。ずっと気になる存在ではあったのですが、九州にあるわれわれからしてみると、気軽に行けるところではありません。
 
そんな中で展示会に行ったところ、福島県が会場のど真ん中に行政っぽさが全くないド派手なブースを出していたわけです。これはいいチャンスだと思い、忙しそうにされていた政木さんの手が空くのをじっと待ち、挨拶させていただきました。
そしたら政木さんの方から「ぜひ何か一緒にやりましょう」と言ってくださったのがきっかけです。
月曜日に電話がかかってきて「木曜日に大分に行っていいですか」っていうこともありましたよね。非常にアクティブなんです。
 
――行動が早いですね。クロスのどういった点が魅力だったんでしょうか。 
 
政木:福島の事業者は、数は多くてもそれぞれがバラバラに動いている状況で、「福島の事業者が業界全体に影響を与えている」という印象がなかったんですね。Japan Droneに出展したのも、福島のブランディングを行うことが狙いでした。

一方で、私にももともと、「大分県のクロスってすごい」という思いがあったんです。クロスはすでにビジネス実装に至っていて、
一番驚いたのが、サービスの価格を提示していることでした。すばやくマッチングできる環境が整っており、私たちのずいぶん先を行っていると感じていました。
 
そんな存在の方から近づいていただいたわけですから、名刺交換したときには心の中でガッツボーズしましたね。

官民連携が必要であるとはよく言われますが、その二者を円滑に結び付けてビジネスを推し進められる環境の構築を促進するのがお互いの立場。設立の背景は違えど、その役割が同じなので話が弾んだんです。

共同出展で起きた化学反応 

「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO in 九州(福岡)2022」での共同出展ブース。
当日の様子は下記の公式youtubeからもご覧いただけます。

YouTube  

「Japan Drone / 次世代エアモビリティ EXPO in 九州 (福岡) 2022 (2022.12.6-7)」@福岡国際会議場 「福島相双復興推進機構」と「大分県ドローン協議会」による共同出展の様子です。 A Joint Exibition with Fukushima and Oita at "Japan Drone 2022 in Kyusyu", Dec 6-7 @Fukuoka-pref.

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―――それで「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO in 九州(福岡)2022」で共同出展することになったんですね。どちらからお声がけしたんでしょうか。 

政木:福島からです。6月に続き9月の神戸のドローンサミットでもお会いして、次は九州で展示会が開催されるということで「何か一緒にやりませんか」とお声がけしました。
 
イベントや展示会に出ると、必ず新しい化学反応が起きます。ただ、九州で福島のドローン事業者を紹介できる機会はなかなかありません。いきなり乗り込んでいったとしても、「なんで福島?」と違和感を持たれてしまうかもしれません。
そこで、地元九州の大分県と連携することで、「大分ではこういうモデルがあります。東北では福島にこのようなモデルがあります」と打ち出せると考えたんです。
 
またそもそも、異なる自治体同士が手を携えて出展すること自体もあまり例のないことなので、注目を集めるのではないかと思いました。それで時間のない中で両県の県庁や事業者を巻き込み、事業者の紹介のほか、リーフレット作成やパネルディスカッションなどを行うことになりました。
 

――誘いを受けたとき、秀嶋さんはどう思われましたか。 

 
秀嶋:もともと、クロスは展示会向きではないと思っていたんです。ただ政木さんの熱い想いに押され、前向きに検討することに……。結果的には展示会に出るメリットや今後創出すべき成果を見つめ直すきっかけになったので、非常によかったですね。
 
――そのメリットとは。 

 
秀嶋:クロスは「事業者は大分県内に限る。利用は全国どこでもOK」という前提のもと開発・運営を進めてきました。ただし、本当のプラットフォームという意味では、全国に広げてはじめて成り立つものだと課題を感じていたんです。
 
ただ、そのハードルは高く、現状のシステムのままで大分の外に広げるのは難しい。そこで展示会に来られている行政の方などと意見交換し、ヒントをもらいたいと考えました。
 
想定していなかったメリットもありました。これまで私たちは展示会でさまざまな事業者のブースを回り、クロスの紹介を行っていました。それが今回「公の場で認められたサイト」として出展したおかげで、興味を持っていただける企業があちらからやってきてお話することができたんです。
 
――相双機構としては、共同出展してみていかがでしたか。 
 
政木:大分と福島の連携が深まったと感じています。お互いの担当者の顔がわかり、「今後どうしていきましょうか」という話がスムーズにできるようになったことは大きな収穫です。
 
また連携以外の部分で感じたのは、ビジネスフィールドの広がりです。初期の展示会では、ドローンメーカーに注目が集まりがちでした。ただ今回は部品メーカーやサービス提供を行っている事業者などさまざまな企業が出展しており、私たちも多岐に渡る意見交換ができました。「私たちには敷居は高いかな」と思っていたような大手企業からのお声がけもあったんです。
 
ドローン産業を本当に地域に根付かせるために、どうやって社会全体に実装していくかの示唆は得られたと考えています。

日本を変える自治体連携 


――今後はどのような展開をお考えでしょうか。 
 
政木:広域連携を行っていくためには、私たちが積極的に調整して道筋を作っていくことが求められていると考えています。点と点ではなく、面と面で結ぶ。その中身はまさにここはこれから設計していくところですが、それぞれの地域での取り組みをどう水平展開していけるかが課題です。
 
重要なのは、お互いの地域と事業者にとってWin-Winの関係であること。持続的に利益を確保できる戦略なのかを慎重に検討しなければなりません。クロスから学べることは本当に多い一方、福島から提供できる価値は何なのかを、いま改めて考えているところです。
 
また具体の話で言えば、大分のciRobotics社が開発した、ドローンの性能を実際に飛行しなくても計測できるドローンアナライザー」の全国展開にも貢献できるのではと考えています。
 

(取材)ciRobotics株式会社|『ドローンアナライザー』開発企業に聞く、安全・安価な性能評価の仕組みとドローンの未来

ドローンによる防除サービスやドローンスクール事業など、ドローンに関する幅広い事業を手がけるciRobotics株式会社。同社は大分県産業科学技術センターと共に、ドローンを実際に飛行させなくても機体の性能を測定できる「ドローンアナライザー」の開発を進めています。ドローンアナライザーの仕組みや求められる理由について、同社代表の小野俊二氏と同センターの主幹研究員下地広泰氏にうかがいました。

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ドローンアナライザーは、今後ドローンが普及する上で必要となってくる点検作業のキラーコンテンツになると考えています。現状、このドローンアナライザーが納品・稼働されているのは福島のロボットテストフィールドだけなんですね。この大分と福島との連携も、全国に波及させていきたいです。
 
秀嶋:クロスは県内の事業者のサービスをコンテンツに落とし込んでいますが、いまは私たちが一社一社の企業を訪ね、時間をかけてサービスの組み立てから原稿の修正まで行っている状況です。

でも全国展開するとなると、とてもじゃないですが同じことはできません。ですので今後は、全国どこの地域でも簡単に運用でき活用できるシステムにしていかなければならないと考えています。
 
全国モデルを構築する上で、現行の大分モデルのシステムを簡略化し、どう見せ方を変えて出していくのかといったところで、ぜひ政木さんを始めとする相双機構の力と知恵を借りたいですね。

 

――大分と福島が連携することで、日本のドローン業界にとってはどのような影響があるのでしょうか。 

 
秀嶋:福島と連携をしていくことで、必ず他の自治体が動きやすくなります。他の自治体が興味を示してくれたとき、「それは福島とやってます」と前例を示せば、「ならうちも」と手を挙げやすくなりますよね。その意味で、今回の共同出展はすごく意味のあるものでした。

大分は、今後も県を挙げて福島との連携を推進していくつもりです。今回の連携は、まさにこの国のドローン産業が羽化する第一歩だと考えています。
 
政木:ドローンに関する規制は国ごとに違うので、海外の好事例を日本で展開できるかと言うと難しいですし、逆もまたしかりです。ですが、日本であれば同じ環境下でビジネスができます。自治体ごとでバラバラに取り組んでも、日本の産業としての競争力強化にはつながりません。連携することが重要です。空はつながっているわけですからね。


今回の出展の際につくったリーフレットには、日本全体の地図の中で福島と大分を彩り、線でつなげた図をデザインしました。
将来的には、この地図を全部塗りつぶしたい。大分と福島の連携は、その一歩だと思います。
 
「福島ドローン」「大分ドローン」が「ジャパンドローン」になり、海外に輸出できるようになれば、国を支える産業になる可能性もあります。まだまだ課題は多いですが、試行錯誤しながら全国の自治体、民間が連携していくことが、日本のドローン産業の未来につながっていくはずです。
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