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本セミナーは、民間プログラミングサービスを運営する企業、その他IT関連のビジネス・サービスを展開する方々にご講演いただくことで、プログラミング教育という新しい分野・業界のさらなる発展を促すものです。
1日目となる17日は、午前・午後の2部制で行われ、
第一部では、情報教育支援プラットフォームELDI 寺西 隆行氏、株式会社船井総合研究所 犬塚 義人氏、株式会社ベネッセコーポレーション 大橋 一平氏の3名。
第二部では、経済産業省 菊池 龍佑氏、合同会社ドリーマーズギルド 宮城島 崇之氏、アルスクール株式会社 村野 智浩氏/福場 梨紗氏、エデュケーショナル・デザイン株式会社 脇田 真太郎氏/平塚 亜衣氏、一般社団法人プロジェクト希望 平井 一夫氏の5社7名。
合わせて8社10名が登壇しました。
モデレーターは「コエテコ」サービス責任者 沼田 直之が担当。各スクールの運営ノウハウをはじめ、情報Iが必修となった現状の課題、さらには国家事業「未踏プロジェクト」の重要性についてまで、幅広いテーマのトークが行われました。
- 1. (情報教育支援プラットフォームELDI)大学入学共通テスト「情報I」に向けた現状と課題
- 2. (株式会社船井総合研究所)プログラミング教育市場と大学情報系学部の最新動向
- 3. (株式会社ベネッセコーポレーション)『進研ゼミ高校講座』情報科コンテンツの現状
- 4. (経済産業省)未踏プロジェクト参加のススメ
- 5. (合同会社ドリーマーズギルド)マインクラフトを活用した独自カリキュラムを解剖
- 6. (アルスクール株式会社)オンラインレッスンで子供の興味を持続させる秘訣
- 7. (エデュケーショナル・デザイン株式会社)ディズニーやピクサーの作品の世界観で学ぶプログラミング
- 8. (一般社団法人プロジェクト希望)プロジェクト希望が目指す子どもたちへの感動体験
- 9. まとめ|コエテコEXPO2023春 1日目
(情報教育支援プラットフォームELDI)大学入学共通テスト「情報I」に向けた現状と課題
情報教育支援プラットフォームELDIの事務局員である寺西隆行さんからは、2025年度の大学入学共通テストから新たに「情報I」が加わる件についての現状と課題についてのお話がありました。
科目「情報I」の追加まで残り2年に迫った現在、大学入試センター側も何もしていないわけではなく、令和2年時点からしっかりと試作問題作成に取り組んできていることがわかっています。直近では令和4年11月にも3回目のサンプルが提示されていたりと、着々と準備が進んでいることは確かなようです。
試作時点の問題構成では、情報デザインや情報ネットワークなどさまざまな分野が組み込まれている一方で、やはり「プログラミング」領域が多数を占めている状況。プログラミング教育を担う学校関係者・スクール運営者の方々の負担は今後ますます大きくなっていくだろう、と寺西さんは話します。
2020年度からは小学校でもプログラミングが必修化される等、もはや「情報」を学ぶのを避けては通れない世の中になりつつあることは確か。実際に取り組む学生たちはもちろん、教育する人たちも十分に情報教育の意義・必要性を理解することが重要です。
寺西さんは「既に専門家だけでなく誰もがプログラミング(情報)をやらなければいけない・身につけなければいけない時代に差し掛かっている」と忠告したうえで、「関係各所一丸となって情報教育を普及・啓発していってほしい」と結びました。
(株式会社船井総合研究所)プログラミング教育市場と大学情報系学部の最新動向
このセッションでは、教育機関向けの経営コンサルティングを行なっている株式会社船井総合研究所の犬塚義人さんより「民間の情報・教育プログラミング教育市場および大学情報系学部の最新動向」についてお話がありました。
船井総合研究所は、昨年度開催した第1回コエテコEXPOでも、プログラミング教育市場の規模などについて発表しており、今回はその最新版という位置付けです。
冒頭では、通学制情報教育の3領域とされる「①子ども向け」「②高等教育機関」「③社会人向け」のうち、大学生までを対象とする①と②の領域の市場規模について、速報値という形で紹介されました。
子ども向け市場は安定成長を見込んではいるものの、例年に比べて成長ペースは鈍化するとの予想。対して高等教育機関(大学)に関しては、全国16もの大学に情報系学部学科が新設されるというこれまでに類を見ない動きが見られたこともあり、大幅な市場成長が期待されています。
- 子ども向け(幼〜高校生)市場
前年度199億円だったのに対し、今年度は220億円突破がほぼ確定。- 高等教育機関向け市場
前年度は1219億円。今年度は情報系学部学科が多数新設されたこともあり、大幅な成長見込み。
ただし、高等教育機関向け市場は確かに拡大しているものの、その恩恵が小中高生向け市場に反映されているかと言われれば「そうとは言えない状況」と犬塚さん。その特に大きな原因として「保護者世代の認識が追いついていない」点を挙げています。
ChatGPTの登場により少しずつ価値観が変わって来てはいるものの、まだまだ「入試に情報教育なんて必要ないでしょう」と思っている人が多いことには変わりはないのだとか。今後はそういった保護者に向けて「前時代の価値観を受け入れながらも、今の情報教育の現状を付け加える形で啓蒙していくことが重要になるだろう」との提言がありました。
併せて、情報教育に意欲的な生徒を少しでも多く集めるために「これまで以上に集客できる範囲を広げる=広商圏化をキーワードに、経営の発想を転換していってほしい」という提言も行われました。
(株式会社ベネッセコーポレーション)『進研ゼミ高校講座』情報科コンテンツの現状
株式会社ベネッセコーポレーションの大橋一平さんからは、「進研ゼミ高校講座」で情報化コンテンツを作成するうえで見えてきた、現状の課題や今後の展望について、民間教育の最前線に携わっている現場ならではの目線からお話がありました。
情報教育は必修化されたばかりで熱い業界ということもあり「どうせやるなら暗記だけでなく実習まで踏み込みたい」とのやる気を見せる大橋さん。
しかし、学習者が主体的に学ばなければいけない通信教育において、スキルを活用・発展させるための「実践的な教材」を作ることは簡単ではないとも話します。実際に、現在の進研ゼミ高校講座では、情報科で必要な知識を中心に取り扱う一問一答アプリやオンライン授業といった「スキルを覚える」ことに特化した教材しか提供できていないとのこと。
なぜ実践的な教材が思うように制作できないのか。その理由について、進研ゼミ高校講座がまさに今課題として直面している内容を4点挙げていました。
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1.子供たちがそもそも情報Iについてわかっていない
新高校1年生の約7割が、情報Iが大学入試共通テストの出題範囲になることはおろか、どんなことを学ぶ科目なのかすら知らない状態。
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2.実習をどう提供するべきかがわからない
直接生徒と接することができない通信教育で、本質的な実習を提供する方法が見いだせない。また受験というペーパーテストがゴールになっている今、子どもたちに「結局問題解ければいいんじゃない?実習いる?」と思われてしまいがち。
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3.ペーパーテスト対策にどんな問題を提供するのが適切かわからない
他教科の文章題等に該当する「思考力を問う問題」について、必修化されたばかりの情報Iに関しては「こういうものを作ればいい」といったフォーマットがない。どう出題すればいいのかもわからない。
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4.いつどの単元を提供すればいいかわからない
現状の情報Iは、学校によって高1ではなく高2から始めるところがあったり、教科書によって単元の切り方が違っている場合があったりとまちまち。進研ゼミは、学校や教科書に沿う形で提供するのが基本であるため「どの教材をどんなタイミングで提供するのが子供たちにとって最適なのか?」が定めづらい
これらの課題を払拭すべく 、今後進研ゼミ高校講座では「実習を含めたより学習効果の高いコンテンツ」を検討することはもちろん、情報教育の認知度向上を目指して「全国的な情報Iの学習状況把握」に向けても動き出していく、としています。
まだまだ黎明期でわからないことだらけである一方で、小学校でプログラミング教育が必修化され、高校でも情報Iが開始した現状について大橋さんは「一本の線がつながった。受験というゴールが見えたことで、情報教育の意義がはっきりした」とポジティブな立場を表明します。
加えて「これを機に『よりよい学習方法』について一丸となって試行錯誤していき、情報教育という業界自体を盛り上げ、広げていきたい」との展望も語られました。
(経済産業省)未踏プロジェクト参加のススメ
昨今需要が急増している「高度なITスキルを持つ人材」。その発掘・育成を目的とした国家事業である「未踏プロジェクト」について、経済産業省 情報技術利用促進課の菊池龍佑さんよりお話がありました。
未踏プロジェクトの大まかな事業内容は「産業界・学界の第一線で活躍する人たちをプロジェクトマネージャー(PM)に委嘱し、クリエイターの発掘から育成までを一貫して行う」といったもの。採択されたクリエイターは「国からの数百万円レベルの支援」「企業経営者・大学教授といったあらゆる分野のエキスパートの手厚いサポート」等が受けられる贅沢な環境に身を置きながら、自身のアイデア実現に向けて活動していくことができます。
なお現在のPMには、さくらインターネット株式会社社長の田中邦裕さん、研究者・メディアアーティストの落合陽一さんといった名だたる実力者が選出されている状況。
そのほか、未踏事業の大きな魅力として、菊池さんは以下2点を挙げました。
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合議制ではなく、PMのセンス・責任で案件が決まること
実力や実績、実現性などは問わないため、PMの心を動かすアイデアを提示することができれば、誰にでも選出チャンスがある
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個人に対する政策投資であること
企業に対しての各種補助金ですら採択がかなり難しい中、個人に多額の投資するの事業はかなり画期的
未踏プロジェクトは「未踏IT」「未踏アドバンスト」「未踏ターゲット」の3事業展開となっていますが、それぞれの補助金額は次のとおり。
未踏IT:273.6万円/件入口である「未踏IT」ですら使える活動費は最大273.6万円。「未踏アドバンスト」に関しては1,000万円を優に超えていることからも、どれだけ国として力を入れている事業なのかがわかるでしょう。
未踏アドバンスト:1,440万円/件
未踏ターゲット:360万円/件
未踏プロジェクトはこれまで2,000人超の人材を育成し、そのうち約300名が起業・事業化を実現してきました。2022年6月には、岸田政権の重要施策の一つである「スタートアップ強化」に向けた一つの方策として、さらに規模を拡大していくことも決まっています。今後は未踏事業への応募者を増加させるべく、別途「AKATSUKIプロジェクト」なるものを発足し、地方・地域に眠る未踏的人材の発掘にも力を入れていくとのこと。
未踏事業の統括プロジェクトマネージャーである竹内郁雄さんによれば、未踏人材とは「他の人が思いつかないこと、やらないことをちゃんとやる」こういった人たちのこと。菊池さんは「竹内さんが言うような心意気のある人材を、一人でも多く発掘・育成していきたい。未踏事業を通して、将来の日本を支える人材づくりを皆さんと共に進めていければ」と、思いを述べました。
(合同会社ドリーマーズギルド)マインクラフトを活用した独自カリキュラムを解剖
合同会社ドリーマーズギルド代表の宮城島崇之さんが運営するスクール「コードアドベンチャー」は、デジタル版ブロック遊びと称される「マインクラフト」をプログラミングに活かしたカリキュラムが特徴的。本セッションでは、そんな「コードアドベンチャー」の概要と、同社が実際に取り入れている入会率を上げる戦略についてのお話がありました。
民間プログラミング教室「コードアドベンチャー」は、2021年に開校したばかりのベンチャービジネス。開始数年にもかかわらず、すでに全国には136教室を展開し、4,500人程のアクティブな生徒を抱えるという、確かな実績を持っています。
教材となる動画の解説は、マインクラフトYouTubeチャンネル「ゴラクバ!」を運営するYouTuberいぬたぬきさんが担当。関連チャンネルで70万人以上の登録者数を誇っているほか、エンジニアや塾の先生としての経験もある講師にうってつけな人材であったことから、宮城島さんは「彼と出会えたことが本プロジェクト開始の一番のきっかけだった」と話します。
講演のメインには、わずか2、3年で生徒数4,500人に達するほど成長してきたコードアドベンチャーが意識している「入会に至るまでの導線と戦略」について、5STEPで解説していました。
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1.チラシでの広報
コンセプトは「とにかくわくわくするチラシ」。まずは「やってみたい!」と思える見た目が最重要。
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2.LPでの教育
保護者は「マイクラ」や「プログラミング」をほぼ知らないと想定されるため、LPではきっちり「プログラミング教室の意義」や「教材の学習内容」等を説明し理解してもらう。
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3.ステップメール
申し込み〜体験会までの空き期間でスクールへの期待値が下がってしまわないよう、YouTube動画なども交えて継続的にメールを送る。
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4.体験会
保護者の気持ち、子どもの気持ちを「不安」から「習わせたい!」に変える
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5.オファー
今入ったほうがいい理由を提示する。特典を付与したりすることでお得感を高める。
「この5STEPにおいて一番重要なのはやはり体験会」と、宮城島さんは話します。運営側の話を保護者に一方的にお話しできる機会は体験会しかないから、との理由を添えたうえで、効果的な体験会の流れについて以下のように述べています。
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1.オープニング
気持ちのいいあいさつに加えて「こういう目的でこの教室をやっています!」といった内容だけで簡潔に済ませる。なるべく子どもがプログラミングを体験できる時間を増やす。
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2.演示
保護者が入会を決める一番の条件は「子供たちの表情・受け止め方」であるため、真剣に受けている子どもの姿を見せる。もちろん教員側の姿勢も求められるため、子どもたちを必ず褒める。
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3.クロージング
プログラミング教育自体まだ新しい分野のため、実績で訴求することはできない。代わりに運営側の「こういう教育を成し遂げたい」「なぜこういったプログラミングスクールを始めたのか」といったビジョン・ストーリーを伝え、共感を誘う
今の保護者はプログラミング教育を受けてこなかった世代であるうえ、どんな教育が正解なのかもわからない、とにかく「不安」な状態。この不安にしっかりと寄り添ってあげて、スクール側から「習い事・プログラミングスクールの選び方」を定義してあげることが大切だと、宮城島さんは話します。ちなみに、コードアドベンチャーとして設定している選び方の第一基準は「子どもが夢中で取り組んでいるか」とのことでした。
宮城島さんは、現状コードアドベンチャーの集客・入会がうまくいっている最大の理由として「グループ全体で『体験会の質向上のための取り組み』を行なっているからではないか」と考察。その経験を踏まえ、体験会からの入会率を上げたいと考えている人に向けて「身近な人をお客さんにして体験会の練習を行い、FBをもらうことで改善していく、といった取り組みをしてほしい」と提案しました。
(アルスクール株式会社)オンラインレッスンで子供の興味を持続させる秘訣
「オンラインレッスンで子供の興味を持続させる秘訣〜「好きなもの」をプログラミングするための関わり方〜」のセッションでは、アルスクール株式会社の村野智浩さん、福場梨紗さんよりお話がありました。
アルスクールは「子どもたちが楽しくデジタルを学ぶ場所を作りたい」との思いの元、2017年に立ち上げられた探究型プログラミング教室です。当初は対面式のみで提供していましたが、コロナ禍を機に始めたオンライン校では、なんと1年以内の退会率0%を記録。子どもたちの興味を確かに持続させることができています。セッションでは、この実績をもとに「オンライン校を運営する中で苦労したこととその解決策」についての解説が行われました。
アルスクールの教材には、プログラミング言語「スクラッチ」を採用しています。グローバルスタンダードともいえる優秀な言語である一方で、やはりオンラインにはまだまだ最適化されていないことが多数あると、村野さんは感じていたそうです。
そこで、プログラミング部分はスクラッチをそのまま活かしつつ、学習システムや教材、作品共有ツールなどの独自機能を追加することで、オンライン教育にも対応した「アルスパーク(教育版)」なるシステムを開発。「テクノロジー」の活用により、オンライン校およびスクラッチが抱えていた以下のような課題を払拭することができたとしています。
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課題①:子供の進み具合がわかりにくい
生徒が取り組んでいる画面をリアルタイムで講師のPCへ共有する機能を追加。進捗が一目でわかるようになった。
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課題②:Zoomごしでのアドバイスが伝えにくい
コーディングの画面内にチャット機能を追加。リアルタイムで的確に指摘できるようになった
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課題③:入会初期の子の教育に付きっ切りになってしまう
動画を見ながら作品を作れる環境を整備。講師がいなくてもある程度自分で取り組めるため、より多くの生徒を一度に指導できるようになった
そのほか「子ども同士のコミュニケーションが図れない」「自己効力感を育みにくい」といった課題に対しては「オペレーション」的観点からアプローチすることで解決につなげてきた、と村野さん。例として、以下のような内容を挙げています。
- 定期で行なっている発表会において、作った作品を遊びあう時間を設定
- 生徒が作ったゲームを使って、ハイスコアを競うコンテストを開催
- 作品URLを入力するだけで、スキルを評価してくれるシステムを開発
- スキルを習得するたびに、名刺のような「認定カード」を進呈
「テクノロジー」と「オペレーション」の掛け合わせにより、アルスクールのオンライン校では、教室での指導に全く引けをとらない、非常に質の高い教育を実現していることがわかりました。
村野さんは講演の最後に「同じ志を持って活動している人たちと一緒に業界を盛り上げ、日本の教育を良くしていきたい」との思いを語りました。具体的には、子どもたちの作品を相互にシェアできる環境、講師同士での勉強会、経営に関するざっくばらんな意見交換などができる、業界活性化につながるようなコミュニティを実現したいとのことでした。
(エデュケーショナル・デザイン株式会社)ディズニーやピクサーの作品の世界観で学ぶプログラミング
エデュケーショナル・デザイン株式会社の脇田真太郎さん、平塚亜衣さんからは、同社が目指す「ジェンダーギャップ解消」に向けた一つの方策としてリリースした「ディズニー・ピクサーを活用したプログラミング」について、お話がありました。
ジェンダーギャップとは「男女の違いにより生じる格差」のこと。とりわけ、社会が男性主体に偏ってしまっていることが課題として挙げられています。ジェンダーギャップがあると、女性の社会への参画割合が少なくなってしまったり、それにより多様な意見が取り入れられず機会損失につながってしまったりと、さまざまな問題点がある状態です。
脇田さんは「海外ではすでにエリアやジェンダーのギャップを埋めるための流れが当たり前になりつつあるが、日本はまだまだ進んでいない」と危機感を示しています。事実、世界経済フォーラムより公表されているジェンダー・ギャップ指数によれば、日本の総合順位は146か国中116位と、先進国の中でも最低レベル。この現状を打破すべく、プログラミング教育事業を展開する同社が考案したのが「ディズニーを活用したプログラミングコース」ということです。
ディズニーコースは小学校低学年を対象としており「プログラミングの入り口を楽しいと思ってもらえるようにしたい」との思いで開発が進められています。教材の中ではミッキーやミニー、ドナルドといったおなじみのキャラクターが登場するため、女の子でも抵抗なく、楽しくプログラミングを学んでいけるのが魅力とのこと。
事実、未就学〜小学3年生までを対象に実施したディズニーコースの無料体験会では、全体の6割以上は女の子が参加してくれたとしています。通常の体験会では男の子が8割程度を占める場合がほとんどだといい、ディズニーを活用したことによる効果は確かなものといえそうです。
また、ターゲットとしていた女の子が楽しんでいたのはもちろん、男の子にも興味を持って取り組んでもらえたのは驚きだった、と平塚さんは話しています。「男女関係なくプログラミングを楽しめる、まさにジェンダーギャップ解消にうってつけのコンテンツになったのでは」と、手ごたえを語りました。
同社では、今回リリースしたディズニーコースをはじめ「マイクラコース」「ロブロックスコース」と、小学校低学年〜高校生まで対応する幅広い教材をラインナップしています。そのかいあって、スクールの平均継続率は5年という非常に高い数値を記録。今後も、情報Iが必修化された高校生に向けたドリルや、大学入学共通テスト「情報I」を見据えた受験対策の教材などの開発を進め、長く楽しく学習していける環境つくりを追及していくとのことです。
(一般社団法人プロジェクト希望)プロジェクト希望が目指す子どもたちへの感動体験
一般社団法人プロジェクト希望の代表理事である平井一夫さんからは「プロジェクト希望が目指す、あらゆる子どもたちへの感動体験」というテーマでお話がありました。平井さんはかつてソニー株式会社の社長兼CEOを務め、現在は同社のシニアアドバイザーに就任されています。
そんな経歴を持つ平井さんがなぜこのプロジェクト「希望」を始めようと思ったのか。その理由は「恩返し」にありました。「ソニーの社長時代からずっと、何らかの形で子どもたちの教育・福祉に携わるボランティアの仕事をしたいと思っていた」と話しています。
子どもたちにとって「体験」による学び・経験は非常に重要である一方で、経済的に恵まれていない家庭にある子どもたちは、豊富な体験を受けることができていないのが実情です。平井さんはこの「体験の格差」に強い課題感を感じ「あらゆる子どもたちが感動体験を経験できるような方向にもっていきたい」と思い立ったことから、本プロジェクトを発足したとのことです。
プロジェクト希望では、主に以下4つの柱をメインに活動を進めています。
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①子ども支援を専門的に行なっているNPOとの連携による「感動体験」の提供
認定NPOキッズドア、Learning for Allの2団体とコラボし、コンサート・ゲームスタジオ・遊園地・キャンプといったさまざまな感動体験ができる場所へ招待。資金面は「希望」が全額負担。
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②パブリックリソース財団を通じた「感動体験支援基金」の設立
全国の子ども支援団体に対して「感動体験のアイデア」に関する公募を実施。採用された団体に対して、資金面での助成を行う。福岡・沖縄・神奈川に本部を置く3つのNPO団体を採用済。
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③キッズドア・千葉大学と連携により実施する「IFUTO」プログラム
家庭の経済状況が理由で塾・IT教室に通えない女子中高生に対して、半年間IT・デザイン教育を実施するプログラムを提供。実際にTシャツをデザインしてWeb上で販売するといった実習を通して、感動体験を体感してもらうとともに、将来の職業選択の幅も広げてもらう。
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④中高生に対するセミナーの開催
各団体が集めてくれた中高生に対して、希望(平井さん)自らが登壇し、自身の経験を踏まえて「進路に対する考え方」「優先順位の重要性」「多様性」などの幅広いテーマで講演を実施。将来について考えてもらうきっかけづくりの機会を提供。
これらの活動に参加してくれた子どもたちのほとんどが、前向きに変わっていった・成長していった、と平井さんは話します。「活動の成果は非常に大きかった」と手ごたえを感じていました。
平井さんが実現したいのは「どんな環境にある子どもにも感動体験が行き渡り、子どもの可能性や能力が最大限に育まれる社会」。そのために、今後も積極的に感動体験の場を提供していくとしています。今後の活動についても「各団体とのコラボレーションを一層強くしつつ、より内容を濃く、もしくは数を増やして、さらに多くの子どもたちへ感動体験を届けたい」との意気込みを述べ、講演を締めくくりました。
まとめ|コエテコEXPO2023春 1日目
「コエテコEXPO2023春」1日目となる4月17日には、計8社10名の方々にご登壇いただき、各スクールの特徴や運営ノウハウ、さらにはプログラミング教育の現状や課題についてまで幅広くお話いただきました。小学校でプログラミング必修化、高校で情報Iが開始、大学入試共通テストに情報Iが追加と、情報・IT教育の重要度は年々増している真っ最中。そんな中、子どもたちや保護者の方々の「プログラミングやITの必要性に関する理解」がまだまだ追いついていないという現状が、実際問題として存在することは確かです。
スクールを運営する側は「まずは子ども・保護者にプログラミングを認知してもらわなければならない」こと、教育を受ける生徒側は「プログラミングはもう決して他人ごとではない」ことをそれぞれしっかりと理解して、変わりゆく時代に乗り遅れないようにしていきたいものですね。
なお、ご登壇いただいた各社からは「興味を維持するコツ」「入会率を上げるノウハウ」といった、スクール運営に役立つ情報も多数ご紹介いただきました。「民間スクールを営んでいるけれど、なかなか軌道に乗らない……」と悩んでいる方は、ぜひ本セミナーを改善の一助にしていただければ幸いです。