「コエテコEXPO2023春(2日目)」レポート|子どもの興味を惹くコンテンツ・カリキュラム作りの秘訣とは?AIの登場により業界はどう変化する?

「コエテコEXPO2023春(2日目)」レポート|子どもの興味を惹くコンテンツ・カリキュラム作りの秘訣とは?AIの登場により業界はどう変化する?
2023年4月17・18日の2日間、「コエテコ byGMO」はプログラミング教育サービスと課題解決などのノウハウが集結するオンライン展示会「コエテコEXPO2023春」を開催しました。

本セミナーは、民間プログラミングサービスを運営する企業、その他IT関連のビジネス・サービスを展開する方々にご講演いただくことで、プログラミング教育という新しい分野・業界のさらなる発展を促すものです。

2日目となる18日は、以下計9名の方々にご登壇いただきました。

【登壇者一覧】
株式会社KEC Miriz 冨樫 優太氏株式会社これから 有川 紘記氏株式会社サーティファイ 大橋 崇也氏株式会社エーアスクール 中川 裕樹氏Nozomiプログラミング&Webスクール 仲沢 浩則氏アドバンスデザインテクノロジー株式会社 高橋 寛樹氏江崎グリコ株式会社 川本 佳希氏株式会社エス・エー・アイ 近藤 隆氏株式会社アントレキッズ 太田 可奈氏

モデレーターは「コエテコ」サービス責任者 沼田 直之が担当。各社が運営するスクール・提供するサービスの特徴や実績に関する話題をはじめ、プログラミング関連の検定試験の実情や、巷で話題のAI(ChatGPT)への対応など、1日目よりもさらに踏み込んだ内容で展開されました。

(株式会社KEC Miriz)「プロクラ」の高い集客力を支える技術


株式会社KEC Mirizの冨樫優太さんからは、同社が運営するプログラミング教室「プロクラ」が高い集客率を維持し続けている技術とノウハウについてのお話がありました。

プロクラは、奈良県でNo.1の売上・生徒数を誇る学習塾「株式会社KEC」のグループ会社が運営しているスクールです。生徒数は前年比で約1.74倍と、目覚ましい伸びを記録。ここ2年で5〜6倍程度生徒数が増えたとも話しており、プロクラの集客率の高さがわかります。

なぜプロクラは集客に強いのか?」という疑問に対して、冨樫さんは4つのポイントを紹介します。

  • 1.教材力
    日本初のプロマインクラフターであるタツナミシュウイチさんが、教材・カリキュラムのメインとなるマインクラフトの「ワールド」作成を担当。マイクロソフト認定教育イノベーターのMVPを2度受賞した経験のある安藤昇さんが監修。

  • 2.支援力
    詳細マニュアル付きの保護者説明用スライドや、教師向けの継続的な勉強会、マーケティングプランの進捗確認用の定例会議など、手厚い支援体制を完備。目標達成に向けて二人三脚で推進。

  • 3.組織力
    KECグループは、1教室あたりの平均生徒数を伸ばし続けている企業。その経験から、教室を増やすのではなく「一店舗当たりの生徒数を増やす」ことに焦点を当てた仕組み・ノウハウづくりに長けている。

  • 4.帰属力
    店舗との併修率が高いプロクラ自身はもちろん、その他併塾に力を入れている企業が勉強会のような形でノウハウを提供しあえる環境を整備。KECグループがメインで運営している学習塾に、プロクラからどう帰属させるかを徹底的に考えたうえでカリキュラムを構築している。

そのほかプロクラでは「チラシの校門前配布」にも力を入れており、ある加盟校では「配布数300枚に対して80名(8.9%)が申し込んでくれた」とのデータも出ているのだとか。これだけ反応率を高めて生徒を集められる理由としては、3つのノウハウがあると話しています。

  • 1.ABテストを繰り返す
    Aのチラシと、イラストや文言を変えたBのチラシ、どちらの反応がいいのか?を徹底検証する。直営校が複数あることを活かして、場所ごとにテストを行なう。

  • 2.反応が良くなる声かけワードを探す
    生徒の手にチラシが渡らなければそもそも申し込みにつながらない。どんなワードなら子どもたちが反応し、チラシを受け取ってくれるのか?を探求。プロクラなら「「プロマインクラフターのタツナミシュウイチさん」「マイクラ」など。

  • 3.紹介システムの構築
    紹介特典ではなく、授業を受けるだけで周りに紹介したくなるようなシステムを構築。教材自体に「ワクワク」を詰め込んでいるため、受講生が自分の学校に教材を持っていけば、自然と周りの友達も惹きつけられる。いかに子供たちに『楽しい』を波及・伝播できるかを考え抜く。


これだけ優秀な集客率・生徒数を誇るプロクラですが、冨樫さんによれば開校当初は1か月に20人くらいしか生徒のいない状態で非常に苦しかったのだとか。そこから、今回紹介したような改善を何度も何度も繰り返してきたことで、直営校の生徒だけで234名を抱えるスクールにまで進化してきたとのことです。

プロクラの理念として「子どもたちに10年先・20年先も役立つものを届けたい」というものがあるものの、プログラミングを学んだからと言ってみんながみんなエンジニアになるとは正直思っていない、と冨樫さんは話します。

「プロクラを通じて『ものの考え方』『社会に出て何か壁にぶつかったときの乗り越え方』といった、人生において重要なさまざまなことを学んでいける。そんな教育サービスであり続けたい」との思いを抱いているようでした。

(株式会社これから)探究学習とプログラミング学習の融合


株式会社これからの 有川紘記さんからは、同社が運営する「プログラミング教育×探究学習」が特徴の新しいオンラインスクール「これからKIDSオンライン」をもとに、探究学習の重要性やコンテンツの作り方についてのお話がありました。

同サービスがプログラミングに探究学習を組み合わせた目的として、有川さんは「『プログラミング』というキーワードではあまり興味を持たなかった子どもたちに対して、プログラミングの楽しさを知ってもらいたかったから」と話します。実際、探究学習という別の切り口で紹介したことで、当初20%程度を見込んでいた体験会参加後の継続入会率が「54.2%」という非常に高い数値を記録しているのだとか。
体験申込数:94名
体験参加数:72名(申込数比76.6%)
体験継続数:39名(参加数比54.2%)
国として「Society5.0(経済発展と社会的課題の解決を両立する未来社会)」を目指していることもあり、教育現場はこれまでの「学歴社会」から、学習を継続する力が求められる「学習歴社会」に移り変わっていくと言われています。その流れで、自ら課題を見つけてその課題を解決する「探究学習」が重要となってきていることに目を付けたのが、同サービスとのことです。

探究学習で重要な「自分で課題を見つける力」を養うためには、当たり前を疑うことが重要だと有川さんは話します。そこで同サービスでは、身近にある物事に焦点を当ててとことん「なぜ?」を追及していく、探究型のコンテンツを考案したとのこと。

例を挙げれば「音楽に合わせて打ちあがる花火はどういう仕組み?」「お寿司屋さんで、注文したものが自動で間違わず届くのはなぜ?」といったところ。このような「プログラミング」に少なからず関連しているテーマを設定することで、探究学習を進めるうちにプログラミングへの興味も創出できるのだと言います。

講演の中では、同社が「プログラミング×探究学習コンテンツ」をどのように作っているのかについても、4STEPで解説していました。

  • 1.テーマ決め
    「子どもが興味をもつ・探究したくなる」を念頭に置き、テーマを選定

  • 2.マインドマップで深堀りする
    決めたテーマに関連するキーワードを、とにかく思い当たるだけ書き出す。その後、書き出したキーワードに対してとことん「なぜ?」を追及し、テーマを深堀していく。

  • 3.プログラミングでの学習方法を決める
    用いる言語はスクラッチ。現実世界の実際のプログラミングをスクラッチで完全再現することは難しいため、一部簡略化しつつ実施。
    授業はプログラミング能力検定を模したような選択形式で進める。自主的に手を動かして実習をしたい人に対しては、講座内容の復習・発展を含む「チャレンジワーク」も用意。

  • 4.教材に伏線回収を織り込む
    ただ授業するだけでは生徒・講師ともに「達成感」が感じられず、興味につながりにくい。第1回目で学習したことを、ほかの回に別の形で登場させるといった「伏線」を設けることで、子どもたちの「知ってる!」「見たことある!」が生まれ、達成感につながりやすくなる。


有川さんによれば「コンテンツ作りで一番重要なのは『マインドマップ』だ」とのこと。子どもたちの興味を惹きつける内容に仕上げることも、先述した「達成感につながる伏線回収」を織り込むことも、マインドマップがなければ始まりません。数か月かかることもある非常に大変な作業ではあるものの「コンテンツを作りこむうえではぜひ丁寧に取り組んでほしい」と話しました。

なお講演の最後には、同社が提供する自動集客ツール「AdSIST」についても紹介がありました。AIが広告の配信媒体から広告文まで提案してくれるツールで、広告代理店を挟まないため手数料が抑えられる点も魅力とのこと。集客での悩みを抱えている方がいたら、利用を検討してみるのもいいかもしれません。

(株式会社サーティファイ)「人生初めての検定」で何を子どもたちに提供できるのか


資格試験の主催団体である株式会社サーティファイの大橋崇也さんからは、同社が実施しているジュニア・プログラミング検定」の成功事例・不成功事例についてお話がありました。検定の役割や価値を考えるきっかけになれば、としています。

ジュニア・プログラミング検定が始まったのは2016年。実際にプログラミング言語「スクラッチ」を使って、問題文に書かれた仕様を満たしたプログラムを時間内に作成する、という実践形式の検定試験です。主に以下3つのスキルを評価するものとしています。

  • 問題文を理解して使用に沿ったプログラムを作成する能力
  • 他社が作ったプログラムを理解し修正できる能力(上位2級種のみ)
  • 自由な発想とそれを表現し説明する能力(アレンジ問題)

実際に本検定をカリキュラムに組み込んでいるスクール運営者の方からは、以下のような多数の「成功事例」が寄せられているとのこと。

  • 成功事例①:ゴール・目標としての設定に活用
    スクールのゴールに「ジュニア・プログラミング検定」を位置付けたところ、今まで計画して何かを進めるといった経験のなかった生徒から「計画して実行すればどんなことでもできるんだという自信がついた」との声をもらえた。

  • 成功事例②:検定合格による成功体験
    合格証をもらった時に感極まって涙してしまう生徒もいるほど、検定試験が感情を揺さぶる経験・成功体験をするいいきっかけになっている。

  • 成功事例③:確かなプログラミングの力がつく
    検定受験を通して「子どもたちにスキルが身についていることが形になって見える」と保護者からも好評。講師側としても、検定に向けた講座をカリキュラムに取り入れたことで、スクールのクオリティが向上した。

一方、本検定試験は7年以上も主催していることもあり、やはり「今一つ」といった声があるのも事実、と大橋さんは話します。今回は事例紹介で省かれがちな「不成功事例」についても、包み隠さず紹介されました。

  • 不成功事例①:目標として押し付けてしまう
    ジュニア・プログラミング検定を目標として講座を進めていたこともあり、受験を希望しない生徒に対して押し付けるように進めてしまった。

  • 不成功事例②:子ども自身の検定への興味が引き出せない
    教室自体がプログラミング検定に積極的ではなかったこともあり、アピールが足りていなかった。その結果、入会後2~3年通っていて、高学年になった生徒に「受験しますか?」といっても、もう響かない状態。

  • 不成功事例③:最上位級合格以降の学習目標・意義の設定
    最上位級に合格したことで次の目標を失ってしまう生徒が多い。中には保護者のほうが検定取得を目的化してしまっていることも。最上位級を取得したら「もうスクラッチは極めた」と思い込んでいる保護者もいる。

  • 不成功事例④:保護者や指導者の先走り・期待大
    本来、生徒本人の意思で検定受験を決めているが、保護者の強い希望により、本人の意思を無視して受験を決めた例があった。その生徒のモチベーションはやはり下がってしまった。


これらの事例を総合的に見て、大橋さんは「プログラミングを学び続ける意義や目的、検定取得後の在り方などは、やはり検定受験だけではフォローできない。指導者・保護者の支援が必要な領域だ」と話しています。

スクールに検定試験を取り入れている運営者の方々にとって、本講演の事例は決して他人ごとではなく、共感される部分も多いのではないかと思います。大橋さんは「検定試験は決して万能ではない」としたうえで「不成功につながった事例もしっかり受け止めて共有することで、今後のプログラミング教育の在り方について皆さんと考えていきたい」と結びました。

(株式会社エーアスクール)テキストコーディングのプログラミング講師育成方法


株式会社エーアスクールの中川裕樹さんからは、スクラッチなどのビジュアルコーディングに比べてハードルが高いと思われがちな「テキストコーディング」の重要性と講師の育成方法についてのお話がありました。

高校での情報I必修化、大学入試共通テストに科目「情報I」追加など、プログラミング教育は中高生に向けた高いレベル・クオリティが求められる時代になってきています。当然ながら教える側もそれ相応のスキルが必要になりますが、中川さんによれば「そういった講師はまだまだ不足している」とのこと。

同社ではその課題を解消すべく、積極的にテキストコーディング教材の作成・講師の育成に取り組んでいます。しかし、最初はやはり不安が多々あったとのことです。

  • 経験のない講師には難しすぎて、教えられないのでは?
  • 生徒が楽しんでくれないのではないか?
  • すぐに何かを完成させることができるビジュアルプログラミングと違い、テキストコーディングは長期戦。飽きてしまうのでは?

これらの不安は「いざ走り出してみるとほぼ感じられなかった」と中川さんは話します。「講師育成において大事なのは『教える(Teaching)』より 『導く(Coaching)』こと。答えを教えるのではなく、解決策を提示するという意識をしっかりと講師に持たせるようにした」と、成功の要因も語られました。


講演の中では「実際どのように講師を育成してきたのか?」という疑問に関する、具体的な事例を交えた解説もありました。

  • 事例①.プログラミング経験のない文系大学生
    まずはスクラッチ(ビジュアルコーディング)のレッスンを担当してもらう。
    並行して、レッスンで使う教材をもとにテキストコーディングの自宅学習をやってもらう。
    1か月程度で徐々にレッスンに入ってもらい、2か月目には専任の講師まで成長。

  • 事例②.学生時代に少々プログラミング経験のあるパソコン教室講師
    プログラミングの素養はあると判断し、コーチングをメインに指導。
    コーディングスキルは、教室の空き時間にコツコツ自学を進めてもらう
    こちらも1か月経過後くらいから徐々にレッスンに入ってもらい、2か月目には専任に。

  • 事例③.プログラミング経験豊富な理系大学生
    プログラミングの知識は十分だったため、コーチングの仕方のみ指導してほぼ即戦力に

経験がある人はもちろん、まったく経験のない人でもビジュアルコーディングから徐々にプログラミングに慣れていくことで、2か月もあれば講師として参画していけることを、実績として示しています。なお現在は講師を「集める」から「育てる」という考えにシフトし、同社が運営するパソコン教室の講師を、プログラミング教室の講師に育成していっているということです。

レッスンにテキストコーディングを組み込むのは、開発環境の整備・講師の教育など大変なことが多々ある一方で「中高生向け教室の需要が増していく中での『差別化』につながる」と中川さんは話しています。「まずは『テキストコーディングは難しい』という先入観を払拭してほしい。コンピュータと人間の双方に理解できるように開発されているから、必ずやればできる。ぜひ臆せずトライしていただきたい」との思いを述べ、講演を締めくくりました。

(Nozomiプログラミング&Webスクール)「答えを教えず日本一失敗させる」プログラミング教育 運営のコツ


『答えを教えず日本一失敗させる』プログラミング教育」というキャッチーなタイトルで講演を始めたのは、Nozomiプログラミング&Webスクールを運営する仲沢浩則さんです。同スクールは、2017年1月に仙台市初となる「子ども向け専門プログラミングスクール」として開校。2022年時点での累計生徒数は323名にも上っています。宮城県で行われているプログラミングコンテストを中心に、数々の大会で受賞した経験もあるとのこと。

このような輝かしい実績を実現している理由・ノウハウについて、仲沢さんは「」と「」の2つの観点から説明されました。

「プログラミングスクールの質を高めるにはどうすればいい?」という疑問に対して仲沢さんは「教えなければいい」という驚きの回答。というのも、教えてしまうと子どもが自分で考える時間が少なくなり、子どもの成長機会を奪うことにつながってしまうからだと言います。

教えなければ、子どもが自分で考える時間も増え、論理的思考力も身に付き、自力で解けたときの達成感も味わえる…このように「子どもが自分でどんどん成長していくサイクル」が自然と出来上がることに。結果として保護者の満足度も上がり、スクール全体の質につながるのだと、教えない指導方法のメリットについて語りました。

もちろん、中には失敗を怖がってしまい、自分でなかなか行動できない子どももいます。そこで仲沢さんは「失敗したら褒められる」環境を構築し、失敗しても良いという風土を醸成。教室全体を「失敗しても褒められるんだからどんどんチャレンジしよう!」という空気に持っていったとのことです。


また、一般的にスクールというのは「量(生徒数)が増えると質が落ちる」と思われがちです。仲沢さんもこれは認識している一方で「子どもたちが自分で考えて自分で解けるようになれば、量が増えても質は落ちない」と話します。そして、質と量を両立するうえでは、講師は「Teacher(指導者)」ではなく「Coach(伴走者)」にならなければいけないと指摘します。

同スクールでは「教えない」という独自の指導方法を採用していることもあり、多数質問が寄せられると想定した仲沢さん。自らQ&Aを作成し、回答を提供していました。

  • Q1.「全く教えるな」ということ?
    試行錯誤する土台はしっかりと作ってあげることが重要。基礎学習は徹底すべき。

  • Q2.教えなければ楽?
    決して放置しているわけではない。授業中は子どもたちによく目を配って、適宜その子に合ったヒントを提供したりと、一人ひとりに本質的に寄り添った教育をしている。

  • Q3.教えないと進まない子もいるけれど、どうすれば?
    「自分で考える領域を少しずつ増やしてあげる」という発想をもつ。はじめは9教えて1しかできないような子でも、段階的に2、3できるように成長させていけばいい。

  • Q4.教えないと保護者から手を抜いているように思われる?
    7年スクールを運営している中で、保護者から手を抜いてると言われたことは一度もない。スクールの内容や教え方について、入会時等にしっかり保護者に説明しているから。

  • Q5.質を継続的に高めるには?
    スクールのお客様は子どもではなく保護者。徹底的に保護者の満足度にこだわることが重要。例えば保護者向けアンケートに忌憚ない意見を記載してもらい、スクール運営に反映していく等。

現在の日本においてIT人材の不足感は年々高まっており、およそ9割の企業が「IT人材が足りていない」と感じている状態です。仲沢さんはこの現状を鑑みて「プログラミング教室を運営する人同士「競合」ではなく「仲間」として、お互いに手を取り合って、市場の活性化・IT人材の発掘といったことに尽力していくのが大事なのでは」との考えを述べています。

(アドバンスデザインテクノロジー株式会社)カリキュラムで見えたプログラミング教室の在り方


プログラミング教室「ぽてっく」を運営する、アドバンスデザインテクノロジー株式会社の高橋寛樹さんからは「退会率を下げるのはカリキュラムだ。 〜カリキュラムで見えたプログラミング教室の在り方〜」というテーマでお話がありました。退塾する生徒を少しでも減らすための「カリキュラムの重要性」について説いています。

同スクール独自の特徴は「生徒のアイデアをカリキュラム化する」という点。教室自体で学習する内容をあらかじめ用意しておくのではなく、生徒からの「こんなことができたらいいのになぁ」という声に耳を傾け、それに合わせてカリキュラムを作りこむのだと言います。

カリキュラムに取り組むうえで使用していくのが、以下2つの教材。同社はハードウェアに精通した会社ということもあり、その技術をふんだんに活かしたオリジナル教材となっています。

  • COSMO Editor(コスモエディター)
    スクラッチのようなビジュアルプログラミング言語を採用した、ブラウザ上で動作するエディター。ワンタッチでテキスト(コード)表示に切り替えられる機能も搭載。後述するオリジナルのマイコンにプログラミングすることも可能。

  • COSMO Pico(コスモピコ)
    先述したCosmo Editorからプログラミングすることで、さまざまな動作を実現できるマイコン。計8個のコネクタを搭載する優れた拡張性が特徴。各種センサーやディスプレイ・モーターなど、さまざまな機能を実装できる。

カリキュラムとなるアイデアのテーマは「ライフハック」。生活の中で感じるちょっとした不満や悩みを発言してもらい、講師陣やエンジニア総出でカリキュラム化に取り組むとのことです。実際にカリキュラム化したアイデアの例として「自動ごみ箱開閉システム」や「お菓子食べ過ぎ防止マシーン」などが紹介されていました。


「ライフハックのアイデアをカリキュラムにする」という授業形式をとることで、生徒自身はもちろん保護者にもいい影響を与えるサイクルができた、と高橋さんは話しています。

  • 子ども(生徒)
    自分が学習し実現したものによって、身の回りの生活が便利になっていくという体験を実感できる

  • 保護者
    教室から持ち帰ってきた作品を実際に目で見たり日常で使ったりしていく中で、子供の成長を直に感じることができる

このように「生徒を中心に考えたカリキュラム」で展開しているかいあってか、保護者向けに実施したアンケートでは約9割が「退塾しようと思ったことはない」と回答したとのこと。実際、ぽてっくは開校5年で退塾者わずか6名。うち4名は中学受験のために一時的に退塾しただけで、高校生になったらまた入塾したいと言っているそうです。

退会率の低さが確かな実績として出ていることからも、高橋さんは「カリキュラムがしっかりしていれば退塾者は減らせる」と結論付けています。

なおぽてっくは、Cosmo EditorとCosmo Picoを活用したオリジナルカリキュラムをもっと知ってもらいたい・使ってもらいたいとの思いから、パートナー募集を開始したとのこと。ツール代などの初期費用はかかってしまうものの、Cosmo Editorは学習できる内容が随時追加されていく「オンデマンド機能」を搭載していることもあり、そのまま自社の教材に組み込むことも、生徒への宿題に活用することもできるとしています。

結びには、塾経営者や講師の方々に対して「AI/IoT時代で戦っていく子どもたちに、私たちが持っている知識・技術を伝授していきませんか」との思いを投げかけました。

(江崎グリコ株式会社)ポッキーを並べるプログラミング教育「GLICODE」の成果と展望


江崎グリコ株式会社の川本佳希さんからは、同社の人気商品である「ポッキー」を活用したプログラミングアプリ「GLICODE(グリコード)」について、活動のきっかけやこれまでの成果、今後の展望等のお話がありました。

同社は創業理念に「ココロとカラダの健康に寄与したい」という思いを掲げています。GLICODEは、この理念をそのまま引き継いだ「プログラミング教育を通じて子どもたちの知的健康に貢献したい」という考えから誕生したとのこと。これまでは「キャラメル」×「おもちゃ」でこどもの健やかな成長を目指してきた中で、新しいサービスでこれと等しい貢献ができないかと考えたときに「ポッキー」×「プログラミング」の組み合わせが浮かんだと言います。

GLICODEは、オリジナルキャラクター「ハグハグ」にポッキーで命令(プログラム)を出し、泣いている子どものところまで誘導するといったゲーム性を持つプログラミング学習アプリです。スマートフォンやタブレットへのインストール型を採用しており、年長〜小学2年生くらいまでを対象としています。

GLICODEの中では、プログラミングの基礎となる以下3つの知識を学ぶことができるとのこと。

  • 順次処理…一個ずつ処理が進むという概念    
  • 繰り返し…ある動作を繰り返す処理    
  • 条件分岐…条件が発生したときに違うプログラムが実行される

GLICODEの活動意義について川本さんは「あくまで入門・入口のソリューション。プログラミングに対する子どもたちの拒否感をやわらげ、プログラミング的思考に触れられるようにするための一つの提案」と話しています。

また、GLICODEでは小学校中〜高学年に向けた「GLICODE MAKER」なるシリーズも展開中。自分でステージを作成したり、友達と共有したりする機能が搭載されているほか、組まれたプログラミング(ポッキー)をもとにステージを推測するといった発展的な使い方も可能で、論理的な考え方が自然に身につくとしています。


川本さんによれば、GLICODEは「一般認知はまだまだ低いアプリだが、教育現場のほうではすでに幅広く使われている・紹介してもらっている状況」とのこと。実際どのように活用されているのか、いくつか事例を提示していました。

  • 小学校の教育用端末のプリインストールアプリに選出
  • 総務省・経産省・文部科学省が出しているプログラミング情報サイトなどでの紹介
  • プログラミング用教材や書籍への掲載・紹介

実際に導入している小学校等からも好評で「『グリコ』や『ポッキー』といった馴染みあるものが教材になっているおかげで、子どもたちの集中力が各段に上がっている」といった声も多数届いているとのことです。

GLICODEは授業用教材のコンテンツパック・説明用の映像コンテンツなど、内容が非常に充実しているにもかかわらず、ホームページにて完全無料で公開中。どんなふうに授業を進めるかといった「指導案」や、実際にGLICODEを活用した「授業の参考映像」といった、先生方に向けたフォロー資料もしっかり用意されています。「ぜひ気軽にダウンロードして、使い心地を試してみてほしい」と話しました。

川本さんは講演の最後に「本格的に教育現場でGLICODEを使い始めていただいている今、現場へのフォローをますます強化していきたい」と、今後の展望を示しています。具体的にはGLICODEの改修に力を入れていくようで、ポッキーやポッキーカードがなくても取り組める「タッチモード」の搭載、教育現場で使われることの多い「Chrome OS」への対応などを検討しているそうです。

(株式会社エス・エー・アイ)AI時代を生き抜くために子どもたちに必要なプログラミング教育


このセッションでは、個別指導に重きを置いたプログラミングスクール「Swimmy」を運営する株式会社エス・エー・アイの近藤 隆さんが登壇。「AI登場によりビジネスや教育の現場はどう変わっていくのか?」「それに対してスクールはどんな教育を提供していくべきなのか?」といった内容についてお話がありました。

ニュースなどでも頻繁に取り上げられており、日に日に注目度を高めているAI「ChatGPT」。商品レビューやブログ記事といった文章生成をはじめ、カスタマーサポートのチャットbot、プログラミングのコード自動生成など、すでにあらゆる場面で活用されているのをご存じの方も多いはず。

そんなAIの台頭が身近に迫ってきている世の中の動きに付随して、プログラミングの需要もますます高まっている状況だ、と近藤さんは話します。AIに仕事を奪われるのではなく、AIを活用できるエンジニア・プログラマーが求められる時代になってきているとのこと。

ただし、もちろんAIの登場でコーディングの負荷が減ったことは事実。「ノーコード」や「ローコード」といった考え方が主流になってきている、とも話していました。
  • ノーコード
    プログラミングを行なわず(コードを記述せず)に、アプリやソフトを開発する方法
  • ローコード
    多少のコーディングを必要としながらも、難しいところはツールで補いつつ開発していく方法
ノーコード・ローコードを活用することによって、開発スピードが飛躍的に向上することはもちろん、プログラマーではない人でもあらゆるサービスを開発することが可能に。これまでコスト等の観点からエンジニア・プログラマーの確保が難しかった中小企業・スタートアップ企業にとって、AIは追い風となるとしています。


また、AIはプログラミング業界だけでなく、教育現場にも大きな変化を与えると予想されています。「AI時代を生き抜くために、子どもたちにはどんなプログラミング教育を提供すればいい?」という悩みに対して、近藤さんは以下3つの例を挙げていました。

  • 1.実体験型STEAM教育
    科学(Science)技術(Technology)工学(Engineering)芸術・リベラルアーツ(Arts)数学(Mathematics)をただ教えるだけではなく、実際に子どもたちに体験させることが重要。自分で考える力・課題解決力・想像力を養う必要がある。

  • 2.AIを使いこなすITリテラシー教育
    非常に優秀なAIも、正しい活用方法を理解していなければ無用の長物。自分の考え、アイデアを実現するためのツールとして、AIをどのように使っていくのかをしっかり教育していく。情報セキュリティやモラルといった、安全に使うための知識も必須。

  • 3.テキストコーディングの教育
    AIが書いてくれるコードが100%正解とは限らない。提示されたものに対して「これは本当に自分が作りたかったものなのか?」と疑いにかかるためにも、基本となるテキストコーディングは学んでおくべき。コーディングスキルがなければAIが出してきたコードが正しいかどうかすら判断できないうえ、修正を施したり、改良を加えたりすることもできない。


AIを使いこなせる人材に育成していくためには、既存手法のままでは不十分であり「教育方法・カリキュラムを大きく変更する必要が出てくるかもしれない」ということがわかります。近藤さんも「未来の日本を担う子どもたちのために、『未来のプログラミング教育』を他スクールや教育関係の方々と共創していきたい」との思いを述べました。

ChatGPTのようなAIは、業務の効率化などのために使う「手段」であって、一発で答えを導きだすような「目的」を求めるものではない、ということをよく理解したうえで付き合っていく必要があるでしょう。

(株式会社アントレキッズ)真のアントレプレナー教育を提供するアントレキッズの挑戦


株式会社アントレキッズの太田可奈さんからは、同社が運営する子供向けプログラミング教室「アントレキッズ」の特徴やこれまでの実績についてお話がありました。

アントレキッズはただプログラミングを学ぶスクールではなく、その名前にも含まれている通り「アントレプレナーシップ教育」が根底にあります。起業家精神を養うことを目的としたカリキュラムを組んでいる点が大きな特徴です。

アントレキッズの教育では「未来を描く力を育むサイクル」として、「知る→選択する→経験する→学ぶ」の4STEPを大切にしている、と太田さんは話します。

  • 自分の未来の選択肢を広げるためにも、まずは地域にどんな魅力があるのか、どんな仕事があるのかを「知る
  • 得た知見から自分の未来を創造し、多数あるカリキュラムの中からやりたいものを自主的に「選択する
  • 実際に架空会社を設立して、起業とはどういうものかを「体験する
  • 年2回決算発表会を開催。自分の言葉でアウトプットすることで、経営の流れを「学ぶ

この中でもアントレキッズならではの魅力といえるのが「体験する」のパート。起業や会社設立体験ができるだけでなく、事業の進捗具合によって独自通貨「エンターコイン」を獲得できるという、さながら本当の会社経営のような仕組みを取り入れているのです。子どものうちから社会の仕組みについて学んでおくことで、ビジネスへの興味・関心を持つことにもつながるのだと言います。

またアントレキッズは、プログラミング教室を展開する一方で「コンテンツクリエイター」であるという一面も。さまざまな企業、小学校、地方自治体等に対して、カリキュラム・コンテンツ・イベントのプロデュースを積極的に行なっています。特にイベントコラボが得意で、人気ゲーム「桃太郎電鉄」とのコラボカリキュラムを用いたイベントでは、600名以上から申込が殺到したのだとか。


そのほかにも、地域の交流センターの活性化を目的に実証実験を行なったり、リユースショップ「BOOK・OFF(ブックオフ)」の事業紹介CMを制作するカリキュラムを構築したりと、アントレキッズはとにかくコラボ実績が豊富です。その理由として太田さんは「フランチャイズパートナーやコラボ企業には、ただの『コンテンツの売り手・買い手』ではなく、『一緒に未来を歩み続けられる』『地域の教育の底上げをしたい』という思いのある人たちが集まっているから」と話しています。

アントレキッズでは、同社プログラミング教材のモニターをはじめ、コラボしたい企業・地方自治体、その他フランチャイズなども随時募集しているそうです。起業家育成を目標とする「アントレプレナーシップ教育」に関心のある方、アントレキッズの活動内容に興味が沸いた方は、教育現場や地域全体の活性化に向けて、手を取り合ってみるといいかもしれません。

まとめ|コエテコEXPO2023春 2日目

「コエテコEXPO2023春」2日目となる4月18日は、計9名の方々にご登壇いただきました。各スクールの特徴や実績に関する話題をはじめ、教育現場・プログラミング業界ともに注視しているAIの存在と今後の対応方法、さらにはプログラミング関連の検定試験のリアルな実態についてまで、多岐にわたってお話いただきました。

本編終了後には「コエテコ」サービス責任者 沼田と、プログラミング教室「ロボ団」を運営する「夢見る株式会社」代表 重見彰則さんで、ログラミング業界への展望に関するアフタートークセッションも開催。民間プログラミング教育の変遷や現在の市場規模、また業界への今後の期待などについての話がありました。

10年以上前からプログラミングスクールを運営してきた重見さんから見ても「プログラミングの需要は日に日に高まっている一方で、やはりまだまだ認知が追い付いていない状態」とのこと。大学受験という一大イベントにまで「情報I」が追加される今、小・中・高すべての子どもたちとその保護者に対して、ChatGPTといった流行のキーワードも足がかりに、しっかりと「プログラミング・情報教育の重要性」の理解を促していく必要があるでしょう。

今回登壇いただいた方々の講演からもわかる通り、あらゆる企業が「プログラミングは必要なんだ」ということを伝えようと模索している最中です。国までもがIT人材の確保に尽力している状況をよく理解して、教育に携わる方々で一丸となり、時代の変化に立ち向かっていきたいところですね。
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