「コエテコEXPO2023秋(2日目)」レポート|AI時代に必要なプログラミング教育とは?子どもが楽しく継続できるスクール運営のノウハウは?

コエテコEXPO2023秋二日目 レポート
2023年10月17・18日の2日間、「コエテコ byGMO」はプログラミング教育サービスと課題解決などのノウハウが集結するオンライン展示会「コエテコEXPO2023秋」を開催しました。

本セミナーは、民間プログラミングサービスを運営する企業、その他IT関連のビジネス・サービスを展開する方々にご講演いただくことで、プログラミング教育という新しい分野・業界のさらなる発展を促すものです。

2日目となる18日には、

  • 東京大学大学院 松尾 豊氏
  • 経済産業省 柴田 仁志氏
  • 株式会社e-Craft 額田 一利氏
  • 株式会社IoTメイカーズ 横山 咲穂氏
  • 株式会社ローカルイノベーション 八木 誠氏
  • 株式会社しくみデザイン 中村 俊介氏
  • 株式会社エーアスクール 中川 裕樹氏
  • 鎌倉駅前プログラミング教室 for Kids 本田 耕一朗氏
  • みやじまロボットクラブ 吉田 秀人氏

の合わせて9名が登壇しました。

モデレーターは「コエテコ」サービス責任者 沼田 直之が担当。AIの進化が今後のプログラミング教育に与える影響や、これからの社会で求められる能力や民間スクールが果たすべき役割、子どもたちが楽しく継続できるスクール運営のノウハウについてまで、幅広いテーマのトークが行われました。

目次:

(東京大学大学院)AIの進展とプログラミング教育で広がる可能性


国内AI研究の第一人者、東京大学大学院の松尾 豊先生からは、AI、ChatGPTの最新動向やこれからのAI時代に必要な能力、プログラミング教育の展望についてお話いただきました。

人工知能の分野は1956年に始まり、2010年代にはディープラーニングが登場し、現在はAIの歴史において第3次AIブームと位置付けられています。さらに2023年にはChatGPTの登場で生成AIが注目されるようになり、すでに第4次AIブームと言えるほどの盛り上がりを見せています。

生成AIは以前のAIと比べて、どのような点が特徴的なのでしょうか。
以前のAIは、翻訳をやりたいのであれば、翻訳用のデータを集めて翻訳のモデルを作っていました。要約をやりたければ要約のモデル、対話がやりたければ対話のモデルを作ります。

一方の生成AIは、今までそれぞれで作っていたモデルを汎用の大規模言語モデル(LLM)1つにまとめたものです。それを使って、用途に応じて事後学習を行います。LLMは大きければ大きいほど性能が上がるため、事前学習のデータを増やしていきます。こうしてできたのがGPT-3やGPT-4であり、それを会話用に事後学習させたものがChatGPTになります。


このLLMは、インターネットやトランジスタ、エンジン、電気に匹敵する数十年に一度の技術であり、社会に大きな影響を与えるだろうと言われているそうです。アメリカの労働者の80%が影響を受け、特に高賃金の職業、参入障壁の高い業界ではLLMの影響が大きいとの予測も紹介されました。その中にはIT(プログラマ等)も挙げられているように、ChatGPTによってプログラミングの生産性も上がるだろうと松尾先生は話します。

AIの需要は今後も広がると予測される中、松尾研究室では「知能を創り、未来を拓く」のビジョンのもと、単に研究するだけでなく世界で戦える技術大国のエコシステムをつくっていくために4つの活動をしています。

  • 1. 基礎研究
    Deep Learning(特に世界モデル)を軸に基礎研究に従事
  • 2. 講義
    【大学講義】東京都内で開催し、大学(院)生が単位取得する授業、あるいは大学の教育活動として開講する各種寄付講座
  • 3. 社会実装
    【共同研究】民間企業との連携を通じ、Deep Learning領域の研究に取り組み、学問的な成果を創出する
  • 4.インキュベーション
    アントレプレナーシップ教育、起業支援、スタートアップ支援

講義の受講者は年々増加しており、2023年度は1万人を超える見込みだそうです。最近では中高生の受講者も増えているとのことでした。松尾研究室からはこれまでに19社のスタートアップが創出され、2社上場しています。中には、18歳や20歳の起業家も誕生しており、学生時代から起業家として新しい価値を社会に還元しています。

松尾先生は、現代社会で活躍する人材は「仮説思考」「デジタル」「目的思考」の3つの能力を身に付けている人だと話します。その中でデジタルの能力、プログラミングを学ぶことでPDCAが非常に速く回るようになるので、仮説思考の能力に強い影響を与えていると言います。デジタルのスキルを学び、仮説思考、目的思考を身に付けていくのがいいのではないかとのことでした。


ChatGPTの出現により、今までの仕事のやり方が今後大きく変わっていくでしょう。ただ、生成AIの登場でプログラマー不要論も出る中、松尾先生は「プログラミングは効率化されるが、今後もプログラマーの重要性は増していくだろう」と話します。「若い人にはぜひプログラミングを積極的に勉強してほしい。それによって、5年後、10年後の景色が変わってくると思う。プログラミング教育がますます普及していくことを願っている」と締めくくりました。

(経済産業省)教育DXと「未来の教室」


経済産業省の柴田 仁志さんからは、2018年度から経済産業省が取り組んでいる「未来の教室」をはじめとした施策を中心に、最新動向やこれからの教育の展望についてお話しいただきました。

デジタル化、グローバル化、急速な少子高齢化の進展など、日本を取り巻く社会環境は大きく変化してきています。そうした社会の変化の中で、求められる人材像もまた変化していると柴田さんは話します。

変化が激しい時代において、社会で価値創造を起こしていくためには「好奇心に基づいた探究力が高く、試行錯誤しながら主体的に課題解決に取り組む人材」が求められており、経済産業省の「未来人材ビジョン」でも次のように提言されています。
次の社会を形づくる若い世代に対しては、
  • 常識や前提にとらわれず、ゼロからイチを生み出す力
  • 夢中を手放さず一つのことを掘り下げていく姿勢
  • グローバルな社会課題を解決する意欲
  • 多様性を受容し他者と協働する能力
といった、根源的な意識・行動面に至る能力や姿勢が求められる。
また、未来人材ビジョンではデジタル化と脱炭素化が進展し、高い成長率を実現できると仮定した「高成長シナリオ」も示されています。その中では、「情報処理・通信技術者」「開発・製造技術者」などの労働需要は増加していくと予測されているとのことです。

未来のイノベーターを育成するためには、プログラミングを学習することが非常に重要だと柴田さん。国内事業者はIT人材の質量ともに不足している状態であることからも、プログラミング教育は日本の喫緊の課題だといえます。プログラミングによる学習をより深いものにしていくためには、小中学校から段階的にプログラミング的思考を学んでいくことが必要との見解も示しました。

経済産業省では、既存民間教育サービスの普及を目的に、2020年度から「EdTech導入補助金」「探究的な学び支援補助金」として、プログラミング教育を中心に補助を行っているとのことでした。また、学びの先進事例の創出をするため、2018年から「未来の教室」実証事業も進めています。

講演では、中学校での実証事例について紹介されました。これは、EdTechを活用してそれぞれ自分のペースで子どもたち一人ひとりに合った学びをすることによって、学びが効率化され余裕時間が生み出すことができるのではないかという実証です。効率化することで余った時間は、ロボットを使った学習などの高度な学び、教科横断的な学びに振り分けていくことができます。


また、全国の学校が探求の入り口に立てるよう、企業・大学・研究機関とともに「STEAMライブラリー」を開発。自然事象・社会課題・科学技術などの動画教材などを無償提供しています。まさに、教科横断的に多様な関心に応える授業をサポートする取り組みです。

民間事業者に対しては、学校現場へのサービス導入支援も実施しています。学校現場が初年度は無料でサービスを活用できるよう、事業者へ半額を補助する制度です。次回は未定とのことですが、EdTechなどの民間教育サービスの学校現場への展開をお考えの企業は、チェックしてみるとよいのではないでしょうか。

今までの教育は、全員同じ決められたメニューで満足してもらおうとする「幕の内弁当型」だったのに対し、これからは各個人の興味関心に合わせて多様な選択肢を用意する「ビュッフェ型」の学びに変化していくべきだろうと柴田さんは話します。

経済産業省としては、学校外での学びにも力を入れていきたいとのこと。「学校カリキュラムだけでは満たすことができない多様なニーズに応えるサード・プレイスについて、持続可能な運営モデルを実証していく」と今後の展望を述べました。

(株式会社e-Craft)embot大展覧会で「プログラミング」から「非認知能力」へ:プログラミング教育イベントの課題と気付き


株式会社e-Craftの額田 一利さんからは、2020年度の小学校プログラミング教育必修化から現在に至るまで、プログラミング教育イベントの企画・運営で感じてきた課題と、イベントリニューアルによって得られた気づきについてお話しいただきました。

ダンボールプログラミングロボット「embot」は、従来のプログラミングと違い、「つくりたいものをいきなりつくれる」ことが大きな特徴です。ダンボールを自分で組み立ててロボットを作り、モーター、ライト、ブザーをビジュアルプログラミングで動かすことができます。

「プログラミングといえば『コンテスト』だ!」ということで、embotでも子どもたちが活躍する場を作るため2019年からembotアイデアコンテストを開催しています。額田さんは、コンテストを毎年開催していると、作品のレベルがどんどん上がり、複雑なものが増えてきたと振り返ります。その背景には、受賞者の多くが「プログラミング教室に通っている」「教室で多くの時間を費やして作品制作に取り組んだ」「ビジュアルプログラミングだけでなくUnityも触ったことがある」などの理由がありました。

embotのコンテストがハイレベルになることは一見ポジティブなことのように思えます。しかし、額田さんは想定していたコンテストの方向性ではないことに違和感を感じていたと言います。

スーパーキッズプログラマーが活躍する機会は増えてきていますが、「プログラミングをやっている」「プログラミングを知っている」「プログラミングを知らない」ような子どもたちも、この先プログラミングだらけの未来を生きていくことになる、としたうえで、額田さんは「embotアイデアコンテストで活躍してほしい人たちは、後者のような子どもたち」だと話します。

embotの長所は「プログラミングスキルが身に付く」ことではなく、「プログラミングを通じて創造力を身に付ける」ことだと額田さんは考えています。

「embotは明確な基準値を競い合って勝敗を決めるのではなく、うまく数値で表現できないステキ!を大事にしたい」とのこと。そのためには大人が子どもを審査するのではなく、子ども同士で体験しあう方が良い、と考えコンテストのリブランディングを決意しました。


リニューアルに伴い、新しいイベントはコンテストではなく「展覧会」としました。子どもたちが自分のブースにembotを展示し、そこに大人も子どもも説明を聞きにいきます。コンテストではなくても達成感は必要なので、子どもたちによる投票も行い、表彰式をしているそうです。

「プログラミングはあくまで手段」だと話す額田さん。プログラミング教育イベント・サービスで大事なことは「プログラミングを通じて参加者・ユーザーに何を提供できるか。自分たちのチームやサービスの強みを見つめ直すこと」だと語りました。2023年11月には次世代機も発売されるembotに、今後も要注目です。

(株式会社IoTメイカーズ)プログラミング×幼児教育:未就学児が楽しむ授業のコツ 〜「ProgrameiQ」が取り組む、未就学児でも飽きずに楽しくプログラミングが学べるツールや指導ポイントをご紹介〜


株式会社IoTメイカーズの横山 咲穂さんからは、未就学児に向けたプログラミング授業の魅力的な企画や実践方法を中心に、実際の取り組みや成功事例をもとに授業のコツについてお話しいただきました。

同社が展開する「ProgrameiQ」は、未就学児から取り組むことができるプログラミング教室です。教室の外でも、土日祝日に商業施設のイベントで出張講師をしたり、図書館でセミナーをしたりもしています。

ProgrameiQの体験会に参加する子どもたちのうち、28%が未就学児とのこと。未就学児からプログラミング教育が必要だと考える保護者は増えてきていると横山さんは話します。

未就学児がプログラミングを学ぶメリットについて4つ挙げられました。

  • 論理的思考を早いうちから養うことができる
  • 小学校入学後にギャップが起きるのを防止する
  • 知的好奇心をより養うことができる
  • 継続しやすい習い事を増やせる

未就学児へのプログラミング教育では「集中力が続きにくい」「読み書きが難しい」「自分の考えを言語化しにくい」「パソコンに触ったことがない」の4つが課題になると言います。それに対し講師側としては、まずは「楽しい!」と思ってもらえるようなレッスン展開や、ハードルを限界まで下げ、成功体験を積んでいける環境づくりが重要であるとのことです。

未就学児が使用する教材を選ぶポイントは以下の4点。

  • 文字をなるべく使わないで済むか?
  • 理解するのが難しくないか?
  • 未就学児の口からでもしくみを説明しやすいか?
  • 自由度は高いか?

ProgrameiQでは、「Viscuit」「ScratchJr」「Springin’」などを使用しており、はじめはViscuitから取り組んでもらっているとのことでした。ScratchJrは、ループの概念を学べることが特徴。Springin’は、より複雑にプログラムを組み合わせることができるのが特徴で、シンプルなゲームから複雑なものまで作れるため未就学児から大人まで楽しめるそうです。

未就学児向けプログラミング授業の企画・実践方法についても紹介されました。

  • 1. 教材の選定
    どの教材を使用するかを考える。(全く初めてであればViscuitを選択)
  • 2. サンプルプログラムの実装
    1で決めたソフトを使って、プログラムを考える。大人であれば5〜10分くらいで作成できるような内容が良い。
  • 3. プリント作成
    文字・絵どちらでも書けるような内容にすると、読み書きができない子でも取り組みやすい。


未就学児のモチベーションをどのように保つかも課題の一つだと横山さん。モチベーションを保つために、以下のような声かけをしているそうです。

  • まずは褒める!共感・肯定はオーバーくらいがちょうど良い
    「○○を作ったんだね!」「めっちゃいい!素敵!」
  • 時間を伝える
    「30分も頑張っててすごい!あともう少し頑張ろう!」
  • 本人の意思を尊重する
    「今日Viscuitやりたくない」と言われた
    →「何かやりたいものある?」「そしたらScratchJrとSpringin’ならどっちがいい?」
  • 保護者の方を連想させる
    「お迎えに来てくれた時に見てもらってびっくりさせよう!そのためにどうしたらいいと思う?」
  • マンネリ化はさせない
    「今日はいつもとちょっと違うことやるよ!」「チャレンジ問題をやってみよう!」

同社では講師養成講座も提供しており、プログラミングが初めての方でも子どもたちにプログラミングを教えられるような講師を養成しているとのこと。また、「全国各地のイベントや授業に出張講師も派遣しているので、ご興味があればぜひ声をかけてほしい」と呼びかけかけました。

(株式会社ローカルイノベーション)共通テストにおける「情報」科目の動向と学習塾・予備校での課題と現状 〜「情報Ⅰ」に特化したEdTech教材『チエテラス』を用いた課題解決手法と導入事例を紹介!〜


株式会社ローカルイノベーションの八木 誠さんからは、2025年度から大学入学共通テストに加わる科目「情報Ⅰ」について、国公立大学の導入の現状から学習塾・予備校側が実施する対策方法をお話しいただきました。

「情報Ⅰ」が大学入試科目に加わることが決まっているものの、「保護者や生徒からはまだ不安の声は出ていない」と話す八木さん。「プログラミングの授業が始まってはいるけれども何が変わったか分からない」「きっとそんなに難しい内容じゃないから、学校の勉強だけで大丈夫」という声をよく聞くと言います。

従って、塾や予備校での「情報Ⅰ」入試対策もまだ進んでいない状況なのではないかと八木さんは指摘します。これから塾や予備校ではどのような対策を行えばいいのかという課題に対し、八木さんは現状の学校教育や保護者の現状から解説しました。

全国550校の高校「情報科」の教員を対象に行ったアンケート調査(2023年7月 特定非営利活動法人みんなのコード)では、大学共通テストに「情報」が新設されることについて、8割の教員が不安に感じているとのことです。授業時間の不足が大きな課題であること、情報科の先生は専門ではなく兼任であるケースも多いことが、不安に影響していると考えられると言います。

保護者側も、約9割は中学・高校のプログラミング教育に関して、あまり内容を把握していないという結果でした。ただ、約7割の保護者は「情報」やプログラミング教育に賛成しているという結果から、興味関心は高いことが分かります。

学校教育や保護者の現状からは、授業での対応が不足していること、受験対策に不安があることなどが分かりました。そこで、学習塾や予備校は「情報Ⅰ」の情報提供共通テスト対策のカリキュラムを提供し、学校の授業を補足していくことが重要ではないか、と八木さんは考えています。

2025年度の大学入試では、国公立の70%は必須であり、選択を含めると96%は「情報Ⅰ」を実施するとのデータも紹介されました。中には看護学部で「情報Ⅰ」が必須になっていることもあるため、「関係ないから勉強しなくていい」と考えるのは難しいとのこと。

大学共通テスト「情報Ⅰ」のポイントとして、八木さんは以下の点を挙げました。

  • 読解力
    ・本質や性質の理解
    ・ちゃんと文章を理解しているか
    ・図や表から正しく情報を理解しているか
  • 本質
    ・アルゴリズム系は、プログラム以前にロジックを立てられるか
    ・情報デザインは状況の場面を把握して解決できるか
  • 基礎知識
    ・何かしらの言語でのプログラミング経験か勉強経験
    ・フローチャートやJava検定のような問題で勉強する
    ・コンピュータのしくみ、データの表現、プログラミング・アルゴリズム、シミュレーションによる問題解決

これらを習得するためには、八木さんは「教科書だけで勉強しても、対策できるかというと難しい部分がある」と指摘します。
同社では、高校の必修科目である情報Ⅰ」に特化したEdTech教材「チエテラス」を提供しています。共通テストの点数を取ることだけでなく、プログラミングを楽しく学べる機会を提供することもコンセプトとしたサービスです。


チエテラスは生徒からの質問に対しリアルタイムでしっかり回答する点も大きな特徴。分からないままにすることなく、生徒はすぐに理解して納得することができます。また講師側には、生徒がつまいづいている状態(平均時間オーバー)をリアルタイムで通知される機能も。講師から適切なタイミングで生徒に声かけすることも可能です。

八木さんは、チエテラスを活用することで「塾経営として収益の向上やプロモーション効果だけでなく、中学校から高校に進学する際の継続率向上にも貢献できれば」と述べ、講演を締めくくりました。

(株式会社しくみデザイン)プログラミングアプリを活用した企業アライアンス事例〜プラットフォームとしてのプログラミングツール〜


株式会社しくみデザインの中村 俊介さんからは、プログラミング教育事業者が、さまざまな業種の企業とのタイアップを効果的に進める方法などを、実際の事例を通じてお話しいただきました。

クリエイターとして今まで1,500個以上の作品を手がけてきた中村さん。「つくること」こそが最高のエンターテインメントだと話す中村さんが「すべての人につくる楽しさを!そして、認められる喜びを!」というコンセプトのもと開発したのが「Springin’」「Springin' Classroom」です。

Springin’のユーザー登録数は増加し続け、現在は21万人を突破。男女比はほぼ半々で主なユーザー層は小学校中学年ですが、中高生、大人の方まで使っているそうです。

挫折率90%とも言われるプログラミングを、どうすれば感覚的に楽しく使ってもらえるかという観点で作られているSpringin’の特徴は次の4つ。

  • 1. 文字を使わないビジュアルプログラミング
    どうすれば感覚的に楽しく使ってもらえるか
  • 2. 描き味抜群のペイントツール
    気持ちよく描けることでモチベーションアップ
  • 3. 変幻自在のサウンドエディタ
    気軽に音を使えることも重要
  • 4. マーケットで作品を公開し世界中の人へ届ける
    気軽にシェアして認めてもらうことで「つくる楽しさ」を実感

自分で描いたものに動きを加えたり、それに合わせて音を入れたりが感覚的にすぐに作れることはもちろん、中村さんはそれを気軽にシェアできることが重要だと強調します。誰かにシェアすることで、褒めてもらう、認めてもらうことで作る楽しさを実感し、モチベーションにつながるからです。

そのため、できるだけ多くの人に認められるチャンスを提供することが大切だと中村さん。Springin’では、年に1回の大きなコンテストではなく、小さくても認めてもらえる機会としてスポンサーコンテストをほぼ毎月開催しています。


また、Springin’のコンテストでは、優秀作品だけでなく一次審査に通過した作品もサイトに掲載しているのも特徴だそう。一次審査に通過したことも認められた経験の一つになり、今後のモチベーションが継続すると考えているからです。

プログラミング教室でもSpringin’コンテストが活用されています。
Springin' Classroomを導入しているプログラミング教室では、「次はコンテストに出してみよう」という目標をモチベーションにして授業ができているそうです。Springin' Classroomは、基本的なプログラミング機能に加えて、さまざまな活動に使える教材や、作品を管理できるダッシュボード、共有できる学校専用のクラウド機能などが含まれています。

教材ベースで進めていくと、やることが決まっていてタスク型になってしまいがちです。しかし、プログラミングの一番面白いところは「誰がやっても、みんな違う結果になること」だと中村さん。教材ベースだけではなく、目標を決めてそれに向かってみんなで作ることができるという点で、継続的にコンテストを開催していくことは非常に価値があると語りました。

(株式会社エーアスクール)楽しみながら学ぶ『Unity短期講座』で中高生の入会・継続を後押し。プログラミング教育市場のレッドオーシャンを回避する差別化戦略。


株式会社エーアスクールの中川 裕樹さんからは、「レッドオーシャン」状態を打破するための一つの戦略として、Unityを使用したゲーム開発の短期講座を取り入れる方法をご紹介いただきました。

プログラミング教育市場は年々その規模が大きくなってきているものの、日本の子どもの人口は42年連続で減少、出生数も7年連続で減少していることから、少子化による市場のレッドオーシャン化は避けて通れない課題となっています。中川さんは「『なぜ、あなたのプログラミング教室に通うべきなのか』という差別化を図り、クオリティが求められる時代になっている」と指摘しました。

同スクールでは、生徒の中高生比率が41%と高いのが特徴です。差別化の一つの方法として「中学生・高校生向けの訴求」を挙げ、同社のUnityを活用したテキストコーディング教材に関する紹介がありました。

同スクールのUnityを用いたゲーム開発講座は、レベルに合わせて3つのコースを用意しており、ビギナーコースではビジュアルプログラミングのスクラッチと比較しながらテキストコーディングを解説している点が特徴です。

Unityの教育における課題について、中川さんは以下の点を挙げました。

  • 1から作っていくのは丁寧で楽しめるが、開発期間が長くゴールが見えづらく、モチベーションが続かない生徒がいる
  • タイプミスに起因する動作不具合で時間がとられている
  • どのくらいのレベルでどのくらい身についているのか、保護者に説明するのが難しい
  • 中高生は部活や学習塾などが忙しく、ゲームを作り終わるまでにいったん休会、もしくは退会といった生徒も一定数出ている

ビギナーズコース修了までに要する期間は、平均で1年〜1年半。同スクールでは、ビギナーズコース修了までに退会した生徒の割合は13%、特に序盤のステップ2まで修了せずに退会または休会した割合が11%ということで、ビジュアルプログラミングからテキストコーディングにステップアップする際につまずく生徒は序盤で退会してしまうことが分かりました。一方で、テキストコーディングの楽しさが分かってくると、忙しくても長く続けてくれるとのことでした。

同スクールではこの課題を解決するため、Unity講座コースの入会前に、ゲーム完成形の楽しさが体験できる「短期講座」を実施しました。


この講座では、ゲームの一部を歯抜け状態にし、数行のコードを埋めると完成できるような簡単な難易度で実施したそう。「本格ゲームをテキストコーディングで作った」という感覚が得られ「楽しい、もっとやってみたい」と思ってもらえるように体験会を設計しています。

また、「兄弟での参加や保護者の見学などコミュニケーションを重視」「短期講座受講生徒は、本コース入会時の初月月謝無料」などの工夫も行い、その結果25名が参加した体験会で16名がコース入会となったとのことでした。

短期講座での成功体験により、ゲームを1から作ってみたいというワクワク感が得られたことで、「開発期間が長くなりがちなUnityでのコース序盤での離脱を防ぎ、継続率の向上が期待できる」と中川さんは話します。

大学入試に「情報Ⅰ」が追加されることもあり、プログラミング教育市場のレッドオーシャンを回避する差別化として、中学生・高校生向けの訴求は有効だと考えられます。中川さんは「楽しく学べるUnityのゲーム開発講座を、そうした差別化の手段として活用してほしい」と述べ、講演を締めくくりました。

(鎌倉駅前プログラミング教室 for Kids)すでにレッドオーシャンとなっている子ども向けプログラミング教室において、地域で選ばれる教室づくりとは 〜「鎌倉駅前プログラミング教室 for Kids」の教室運営と事例を紹介!〜


鎌倉市内で2つの教室を持つ鎌倉駅前プログラミング教室 for Kidsの本田 耕一朗さん。同スクールは入会率7.5割、コエテコでのレビューは平均4.5点と高い評価を得ています。本田さんには、どのように地域で選ばれる教室づくりをしてきたか、そしてどのように授業や教室運営の質を追求してきたかについて具体的なノウハウをお話しいただきました。

はじめに本田さんは、スクール立ち上げ時に行っていた集客について、やってよかったこと、やらなかったことを提示しました。立ち上げ期はアナログな手法で、地道に集客していたことが分かります。

  • やってよかったこと
    駅前の立地
    スモールスタート
    自分でポスティング、校門前配布
  • Not -Todo
    テナントを借りる
    教室の名前にこだわる
    ポスティングを業者に依頼する
    ご紹介キャンペーン

ポスティングについては、業者に依頼せず自分でやることで「細かい土地勘を養うことができた」と本田さん。その経験が生徒との会話にも反映されているそうです。現在は教室運営や授業の質向上に注力できるようになり、ポスティングや校門前配布は行っていないとのことでした。教室運営のステージに合わせて施策を変えていくことがポイントになりそうです。

「紹介キャンペーン」を行っていないのも特徴だと言えます。キャンペーンではなく、授業の質を高めて生徒が楽しいと思ってもらえば自然と紹介が発生すると考えているとのことでした。

続いて、デジタルでの集客でやってよかったこと、やらなかったことは次のように挙げました。

  • やってよかったこと
    自社ホームページ、コエテコで情報をすべて公開
    体験申し込み窓口をコエテコに一元化
  • Not -Todo
    料金を隠す
    体験申し込み窓口を自社ホームページとコエテコで分ける

自社ホームページでは、料金を含めすべての情報を公開しているそうです。これは、料金を隠すことによって安心感を得られないこと、料金問い合わせのやり取りに双方の手間がかかることが理由とのこと。

また、Web集客にはコエテコも活用しています。自社ホームページに掲載している内容をコエテコにも掲載。体験申し込みはすべてコエテコ経由に一元化することで、事務作業の効率化と返信漏れなどのミスをなくしているとのことでした。

体験会は、翌月の入会者のみを募集する形で提示しています。そうすることで、決断を早めることができるとのこと。さらに特徴的なのは、無料での体験会や夏休みの体験会を実施していないことです。本気度が高い生徒が集まるため、入会率が上がると本田さんは説明します。

授業の質向上のためにやったことについても解説がありました。

  • 教材選びのポイント
    内容・カリキュラム
    説明を聞く・疑問点を解消
    自分が体験する
  • 教材だけに頼らない授業・イベント

教材は自分も体験し、「生徒が楽しめそうか」という観点で選んでいるそうです。この際の楽しさとは「fun」だけでなく「interesting」も重視しているとのことでした。

今後は、鎌倉駅前プログラミング教室 for Kidsを日本一のプログラミング教室にすることを目標にしていると話す本田さん。基本に忠実に教室を運営している様子が印象的でした。今後は「チェーン展開などで規模を大きくするのではなく、スタッフの給与水準を高くし、授業の質を向上させ、鎌倉に根付いて地域に貢献していきたい」と展望を話しました。

(みやじまロボットクラブ)2022年WRO国際大会出場!生徒がやめないロボット教室~ロボット競技会でやる気UP~ 「みやじまロボットクラブ」の競技会参加を目標としたレッスンプランの作り方やモチベーションアップの方法を紹介!


みやじまロボットクラブの吉田 秀人さんからは、受験と並行しながらもロボット教室を継続してもらえるレッスンプランの作り方やモチベーションアップの方法を実例をもとにお話しいただきました。

学生時代にロボコンへ出場し、その後プロ家庭教師として15年の実績をお持ちの吉田さん。その経験が、2012年に設立されたみやじまロボットクラブに繋がっていると言います。

現在みやじまロボットクラブでは、小学4年生から高校生のメンバー約60名が所属し、WRO(ワールドロボットオリンピアード)への参加を中心に活動しています。WROは、世界80カ国以上が参加する世界最大クラスのロボット競技会です。日本での全国大会では、地区大会を制した150チームが日本代表権をめぐって競い合います。必ず2人か3人のチームで参加することが特徴です。同クラブは、2018年に中学生部門、2022年に高校生部門の日本代表として国際競技会に参加しています。

入会は小学生のみに限定しているにも関わらず、卒業タイミングでの大会が少なく高校生になるまで続ける生徒が多いのが同クラブの特徴。ロボット教室の競合は塾やスポーツですが、それらの競合に負けることなく「6年生の卒業退会をストップさせたい」とさまざまなやる気アップ作成を実施してきたと言います。

その中で、やはり「世界」というキーワードはとても重要だと吉田さんは語ります。地方のスポーツクラブなどでも全国大会に出場することはあるので、「全国」というキーワードではあまり目立ちません。しかし「世界」となると別格になります。先輩たちが実際に世界大会に出場していることで「頑張れば実現する」と世界を目標にやる気がアップします。

ただ勝利主義でやるのではなく、負けることが大事だと吉田さん。WROは7月末に予選会があり、そこで負けた選手は8月から来年に向けて開発をスタートします。7月から冬にかけては受験期と重なりますが、負けた悔しさで火がついたことで、6年生や中学3年生もロボットの練習を続けるようになるといいます。地元のライバル、全国のライバル、世界のライバル…というように、それぞれの段階でライバルがいるので意欲が長く続きます。

継続のためには、保護者のやる気アップも重要です。「世界」は保護者にとっても分かりやすく魅力的なキーワードで、他のクラブとの差別化に繋がります。ポイントは「わが子が本当に世界大会に行けると思ってもらう」「受験に対しても良い影響があると感じさせる」ことだそう。世界大会に行く苦労や費用面もリアルにお伝えし、イメージを持ってもらっているとのことでした。「受験勉強と並行することで課題解決能力が上がる」「クラブでの取り組みは面接対策としてもメリットがある」と説明するのも効果的だと言います。吉田さんは、プロ家庭教師をしていた経験を活かして、モチベーションアップの声かけ、保護者への説明をしているそうです。

また、生徒がやめない教室づくりのポイントとして、「世界を目標にやる気アップすること」に加え、「チームとしての仲間づくり」や「自立を促す」点も挙げました。


ロボット競技会はチームで参加するので、レッスン生は仲間でありライバルです。楽しさ、悔しさをみんなで共有することが、教室を継続するポイントになります。また、自分の力で世界に行くという価値観を日頃から作り上げることで、課題解決力や自立心も育つと吉田さんは話します。これらの3つのポイントは、教室運営の大きなヒントになりそうです。

まとめ|コエテコEXPO2023秋 2日目

「コエテコEXPO秋」2日目となる10月18日は、計9名の方々にご登壇いただきました。ChatGPTの登場でますます注目されるAIとプログラミング教育への影響、現在の公立学校でのプログラミング教育の課題点や民間スクールに期待される役割などをお話いただきました。

本編終了後には「コエテコ」サービス責任者 沼田と、プログラミング教室「これからKIDS」を運営する「株式会社これから」 加藤 優花さんで、プログラミング教育の現状や今後の可能性を展望するアフタートークセッションも開催。民間プログラミング教育の現在、また業界への今後の期待などについての話がありました。

「情報I」科目の大学入試への追加が迫る中、加藤さんは「プログラミング教育を早期に実施することに対する保護者のモチベーションは高まっている」と感じているとのことでした。受験科目となることで関心が高まるというポジティブな面もある一方で、塾や予備校では「受験ハック」としての情報Ⅰ対策だけを進めるのではなく、「本質的なプログラミング教育の意義」を忘れないことも大切ではないでしょうか。

今回のコエテコEXPOでは、「プログラミング教育市場は年々右肩上がりではあるものの、少子化やスクールの増加によりレッドオーシャン化している」と話す方が多いのも印象的でした。そのような中で、今回ご登壇いただいたプログラミングスクールの方からは、他のスクールとの差別化に必要なこと、強みを活かした集客方法、小・中・高と継続していくための具体的な取り組みといったお話もありました。今後のプログラミングスクール運営にお役立ていただき、業界発展の一助となれば幸いです。
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