(体験レポ・後編)農業用ドローンの操縦者資格は取れるのか?|Skylink Japanのドローンスクールにコエテコドローン編集部が潜入!
しかし、いざ携わるとなれば、気になるのがその実態ですよね。
資格を取るには、どのくらいのお金と時間がかかるの?
ぶっちゃけ、稼げるの?
SkyLink Japanは、人手不足や高齢化など深刻な問題がある日本の農業現場にドローン活用でソリューションを提供する会社です。2014年にドローン販売事業を開始し、2023年3月に農業ドローン散布事業者養成スクールを開校。スクールでは半年間かけて超実践的なプログラムを受講でき、一人前のオペレーターとして散布作業ができるようになるのだとか。同社の西村啓司さんに、詳しくお話を伺いました。
2023/09/05 22:48
高性能レーザスキャナ(LiDAR)や超高解像度カメラなどの先端技術とドローンを組み合わせ、社会課題の解決を目指すSkyLink Japan (株式会社WorldLink & Company)。この記事では同社執行役員・CTO ソリューション統括事業部 事業部長の渡辺一生氏に、ドローンソリューションの現状と今後の展望についてお聞きしました。
2024/04/01 04:15
この企画では、5日間の教習+3日間の実践研修の全貌をお伝えし、ビジネスチャンスの実態に迫るとともに、知っておくべき実践の厳しさも忖度なしでお届けします!

一番右の、不審者みたいなのが夏野です

頼むぜ、コエテコ編集部のエース・駒井!
資格取得にチャレンジした、コエテコ編集部メンバーを紹介!
GMOメディア(株)の社員。
本人いわく「適当な性格」だが、それがかえってドローンの操縦練習をスムーズにしている面も。
ドローンどころか車の運転もほぼ未経験。
アクションゲームも下手くそだが座学だけは得意。
夏野の愉快な仲間たち1号。
ドローンは未経験だが、ゲームが得意で操縦もめきめき上達する。
夏野の愉快な仲間たち2号。
カメラマンとして参加。
Skylink Japanの農業ドローン散布事業者養成スクールとは?
今回、お世話になるのは2014年からドローン販売事業をスタートし、農業や点検、測量などの分野でソリューションを提供しつづけてきたSkylink Japanの農業ドローン散布事業者養成スクールです。SkyLink Japan マルチコプターフライトスクール(運営:株式会社WorldLink & Company)のカリキュラム(座学・知識、対象(受講資格・条件))、料金(受講料・諸費用)、取得できる免許・資格や特徴など解説。
https://coeteco.jp/drone-school/schools/skylinkjapan >
Skylink Japanのドローンスクールの特徴は、なんといってもその超実践的なカリキュラム。具体的な流れをかいつまんで説明すると、

Skylink Japanのドローンスクール受講の流れ。(日付は2023年3月〜スタートした場合を想定)
- まずは農業用ドローンの「オペレーター認定証」を取得
- 京都府・美山町で実散布を模した実践実習
- 実際の散布チームに加わる
このようなステップを踏むことで、独り立ちできるドローンパイロットへと育っていきます。

しかも注目すべきは、最後の段階である実散布では、きちんと「仕事」として報酬が支払われること。
報酬は出来高制のため、得られる金額はスキルや稼働時間によりますが、可能な範囲で稼働すれば受講料の一部をペイできるのだとか。どうしても高額になりがちなスクールの受講費用が少しでも押さえられるのは、とても魅力的ですね。
いよいよ実技試験。目指すは「2分3秒」以内
こうして実技試験がやってきました。Skylink Japanの試験では、以下の13項目について技能が問われます。このうち採点対象となるのは「散布にかかる時間」「散布量」「着陸にかかる時間」の3項目で、70点以上で合格となります。基本的な操縦スキル
- ホバリング(空中での静止)
- ヘリポートへの正確な着陸
- 着陸にかかる時間(35秒以内、以降1秒ごとに-1点)
枕地散布のスキル
- 枕地飛行において高度3mを保って飛行すること
- 枕地飛行において散布幅(5m)を保持すること

ドローンがオペレーターに接触しないよう、最初だけオペレーターに対して平行に散布することを「枕地散布」と言います
本線散布のスキル
- 散布時の高度維持
- 散布速度
- 散布幅の保持
- 散布エンドラインの横幅ズレ
- 散布エンドラインの縦幅ズレ
緊急時対応
- 散布装置の吐出停止/フェールセーフ動作
散布精度
- 散布にかかる時間(2分3秒以内、以降1秒ごとに-1点)
- 散布量(21a=1680g(±250g)、以降100gごとに-5点)
なかでも厳しく問われるのが、散布精度。散布スピードがそのまま稼ぎを左右するドローン農業では、すばやく・的確に農薬を散布するスキルが必要とされます。
どれだけ正確に散布できてもスピードが遅ければ稼げませんし、反対に、どれだけすばやくても農薬が撒けていない/撒きすぎることは許されません。
雑な散布で農薬が余ってしまうと、病害虫を防除できていないことになります。かといって撒きすぎれば、食の安全を脅かすことにもつながりかねません。
さらに言えば、農薬はけっこう高価なので、必要のない量を散布すると利益率が下がります。
「必要な量を必要なだけ、スピーディに撒く」。これが農薬散布の極意だそうです。
なんとか2分14秒まで縮めましたが、これ以上削るとなると、かなりの熟練度が必要とされそうです。

ゲーム経験を生かし、繊細な操縦スキルを発揮する駒井。夢の「2分3秒」を目指します!
試験のチャンスは3回あります。
3回挑んで、もっともよい点数を評価対象とします。頑張ってください!
なんとか2分3秒の壁を越えたいですね!

適切な量を散布できたか、はかりで計量してもらいます。ドキドキ……
やってきた筆記試験。コエテコ編集部は自信アリ?
ドキドキの技能試験が終わり、次は筆記試験です。操縦スキルはぼちぼちのコエテコ編集部(とくに夏野)でしたが、1週目同様、筆記試験には自信アリ。選択式の問題を、迷うことなく解いていきました。
問われるのは、関連法規や適切な散布方向、農薬ラベルの読み方などでした。
どれも先生方が丁寧に教えてくださった知識ばかりなので、しっかり学習すれば心配ありません!
後日、オペレーター認定証が届きました!
こうして農村を後にした3名+カメラマン高月。東京の住まいに戻って慌ただしく過ごしていると、無事にオペレーター認定証が届きました!
やった〜!

「受かったとき用の素材、撮っときましょう!」と勇み足だった駒井。ちゃんと素材が使えてよかったです
ドローンを飛ばしたこともなければ、農業に携わったこともない超・初心者のコエテコ編集部。そんな3名が無事に資格を取得できたのは、分かりやすく丁寧に指導してくださった先生方のおかげです。
とくに夏野は操縦が下手くそでご迷惑をおかけしましたが……
最終的には、認定証をいただくことができました!先生方、ありがとうございます!

稼げる金額は人によりますが、たくさん稼動すればその分、スクールの費用もペイされていく仕組みです!

俺たちの冒険はこれからだ!
ちなみに…認定証の写真は、入会時のものです!
1点だけ、ごくしょうもないことを付け加えさせてください。というのも、オペレーター認定証の写真は、入会時に提出したものが印刷されるのですが……そこに思いが至らなかった夏野、あろうことか室内で適当に自撮りした写真(すっぴん)を送ってしまいました。なんということでしょう。
まったく盛れていない写真が認定証に印刷されますので、みなさんはぜひ、写りのよい1枚を送るようにしてください。やっちまったぜ……。
ドローン農業「ここが気になる!」Q&A
というわけでここからは、ドローン農業についての気になるポイントをQ&A方式でお伝えします!※免責事項※
このQ&Aはあくまでも、コエテコ編集部が体験しながら感じたこと(主観的な情報)と、スクールの先生から伺った情報に基づいています。
実際の業務においては事情が異なる部分も多々あることが予想されますので、最終的にはご自身の責任において判断してください。
ドローン未経験でも、ドローン農業にはチャレンジできる?
できます!ただし、決して「甘い話」はありません。
むしろ、難しいのは「そのあと」。農業は自然を相手にする仕事ですから、オフィスワークとは勝手が違います。仕事があるのは農業適期(春〜初秋ごろ)だけで、収入は完全出来高制。経費や人件費もかかります。いわゆる会社勤めを中心に就業されてきた方だと、不安定な生活にストレスを感じてしまうかもしれません。

実習中は梅雨だったため、グラウンドが泥んこになった日もありました。雨の日には散布ができないので、まさに「晴耕雨読」の生活になります
反対に、夏野のように会社勤めをしたことがない方(フリーランス)なら、過度に心配する必要もありません。営業努力が必要なのはどのようなフリーランスにも共通しますし、仕事の季節が決まっている分、「夏に稼いで、冬は旅にでも出るか〜」なんて生活も可能です。
運良く大型の圃場と契約できれば、1ヶ月の売り上げは数百万円にも及ぶそうです。
初期投資はどのくらい必要?
場合によります。機体を購入する場合は200万円〜かかりますが、レンタルも◎。
※機体本体、充電器、バッテリー3本を購入するベーシックなパターンを想定。
株式会社NTT e-Drone Technology(以下、NTTイードローン)は、自社で設計開発製造している農業用農薬散布ドローン「AC101 ...
https://www.nttedt.co.jp/post/ac101-pricedown-20230313 >
どのくらい本格的に参入するか分からないし……という方は、Skylink Japanでは機体の貸し出しも行っていますので、まずはレンタルから始めるのも手。そのほか、タイミングによっては補助金等も利用できる場合がありますので、詳しいことはスクールにたずねるのがよいでしょう。
農薬散布用ドローン『AC101』レンタルサービスについて 国産農薬散布用ドローン『AC101』(NTT e-Drone Technology製)のレンタルサービスを開始いたしました。 AC101オペレーター認定証をお持ち [...]
https://skylinkjapan.com/solution/agricultural-solutions/agri-rental/ >
ドローン農業には、女性でも参入できる?
できます!実際に、女性だけの散布チームも活躍中です。
- 10〜15kg程度のものを持ち上げる筋力と、そこそこの握力
- 宿泊環境
AC101の機体重量は7.6kg。そこにバッテリーと農薬(最大8L)が載りますので、両手で15kgほどを持ち上げる力があればOKです。難しければ、農薬を他のメンバーに持ってもらうなどして分担すれば良いでしょう。
夏野が一番苦労したのは、アームの締め付けでした。握力が9kgしかないので……
ただそれも、滑り止めつきの手袋(園芸用)を使えばそこまで苦にはなりませんでした!

チャラついた爪でAC101のアームを締め付ける夏野
もうひとつ気にしておきたいのが、宿泊環境。何度かお伝えしている通り、圃場の近くにビジネスホテルがあるとは限りません。女性ならではの体調の問題も考えると、フルで車中泊は厳しいと感じる方もいるかもしれません。逆に言えば、そこが気にならない女性なら、男性と比べて著しく不利なところはなさそうです。
ちなみに夏野、実習に向かうにあたり、化粧品はもちろん、洗顔料も保湿ケア用品もすべて家に忘れました。「ま、肌断食ってことで」で済ませられる粗雑な性格で良かったです。

不審者ルックなら紫外線も怖くない!
ドローン農業を専業にすると、どんな生活になるの?
1日/1年のスケジュールはこんな感じだそうです。
実際に教習でも、プロポ(コントローラー)の動きが怪しくなったことがありました。
スマホと同様、暑すぎる環境は電子機器には向きません……。
-
朝4時
- 所定の場所に集合、現場へ移動
-
朝5時〜10時
- 農薬散布
-
朝10時〜14時
- 翌日の作業場所を下見。圃場のルーティング等、必要な打ち合わせをして解散
専業にする場合、ちょうど季節を追いかけるように、日本列島を北上しながら散布をしていくことが多いようです。
九州、関西、北陸、東北……と移動していって、北海道まで撒き終わったらシーズンが終わります。
ドローン農業で稼ぐには、どうすればいい?
大切なのは効率+経費削減です!
- なるべく広い(一括して撒ける)圃場の契約を獲得する
- 近い地域でたくさんの契約を獲得し、移動時間を減らす
などの営業努力に加え、「円滑なチームワークで、無駄な時間を減らす」ことが欠かせません。
実際に、メンバー間での揉め事が原因でチームが解散することは決して珍しくありません。
それだけならまだしも、連携が取れなかったせいでドローンが墜落した事例も……。ドローンパイロットとして絶対に起こしてはならない事故です。
結局人間関係に行き着くのは、農業に限らず、フリーランスあるあるですね。

風通しの良さが売りのコエテコチーム。先生からも「このチームはかなり成績がいいですね」とお褒めの言葉をいただきました
圃場を獲得するためには、どんな営業努力をすれば良いの?
Skylink Japanからの紹介、軽トラで農業を行脚、BBQ中の農家さんに突撃……など、十人十色です。
そのほか自力での営業としては、軽トラにドローンを積んで農道を走り、農家さんの前でデモンストレーションをする(水などを散布する)ことで契約を獲得したり、「BBQをしている農家さんがいたので、直接お話ししにいった」なんてエピソードもあるそう。
先生いわく、「手堅くやるなら親戚筋など、地元から始めるのがおすすめ」だといいます。自宅 or 実家から通える範囲なら、宿泊費用もかかりません。
今のところは、「これ!」という営業ルートは確立していないそう。
Skylink Japanの卒業生同士で交流するなどして、効率の良い営業方法を開拓していくのが良いかも知れませんね。
Skylink Japanのみなさま、本当にありがとうございました!

Skylink Japanのドローンスクールはこちら
今回、お世話になっているSkylink Japanのドローンスクールについて、詳細を知りたい方はこちらのボタンから詳細ページをご覧ください。SkyLink Japanは、人手不足や高齢化など深刻な問題がある日本の農業現場にドローン活用でソリューションを提供する会社です。2014年にドローン販売事業を開始し、2023年3月に農業ドローン散布事業者養成スクールを開校。スクールでは半年間かけて超実践的なプログラムを受講でき、一人前のオペレーターとして散布作業ができるようになるのだとか。同社の西村啓司さんに、詳しくお話を伺いました。
2023/09/05 22:48
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