今回は、そんなNEST LAB.の体験授業をレポートします。授業を見ているだけで、子どもたちや先生の「好き」が伝わってくるような活発な内容でした。同校のこだわりが詰まった授業の様子を、ぜひご覧ください。
NEST LAB.とは?
NEST LAB.は、「好きを究めて知を生み出す」をテーマに掲げた、小~中学生対象のオンライン研究スクールです。講師を務めるのは、プロの研究者や開発者たち。経験豊富な講師陣が子どもたちの好奇心に応え、一人ひとりが持っている才能や能力を引き出します。
用意されているコースは、新しいテクノロジーで課題解決に挑戦する「ロボットAIテクノロジー専攻」、身近な科学からサステナブルを考える「サステナブルサイエンス専攻」、未知の世界に挑戦する行動力を養う「ビジネスアントレプレナー専攻」。
さらに小学生低学年向けの入口として、五感を活用して自然や生き物と親しむ「ワンアースネイチャー専攻」と、ものづくりの基礎に触れる「ナレッジエンジニアリング専攻」も新たに加わりました。
基本的に1回60~90分の授業が毎月2回行なわれ、2年間で基礎から応用までステップアップしながら学びを深めていきます。オンラインスクールなので参加者は全国各地、さらには海外からも。同じ分野に興味を持つ仲間たちと一緒に試行錯誤しながら「好き」を伸ばせるはずです。
今回は、ロボットAIテクノロジー専攻の体験授業を取材させてもらいました!
NEST LAB.代表 藤田大悟さんにお話を聞きました
体験授業の前に、NEST LAB.代表の藤田大悟さんにお話を聞きました。そこからロボティクスだけではなく、バイオテクノロジーやアグリカルチャーなどにキーワードを広げていき、現在の「NEST LAB.」の形になりました。ミッションは、「好きを究めて知を生み出す」。小中学生でも好きなことを徹底的に究めることで、新しいものを生み出せる場を作りたいと思っています。
プログラミング教育への課題感がきっかけなんですね。現在の指導のこだわりにもつながっているのでしょうか。
私たちは、教材としての学びではなく、素材から学ぶことが重要だと考えています。そのため、キットなどを使うのではなく、一からものづくりを体験してもらいます。また、同時に物理法則もしっかり学ぶことで、子どもたちが自由度の高いものを作れるようになっていきます。
親会社の株式会社リバネスは、教育の会社ではなく、科学技術を世の中に活かすための研究開発を行なっている研究者が集まった会社です。NEST LAB.においても、教育のための教材ではなく、社会の役に立つものにつながるような学びにこだわっています。
今回の体験授業でも、出来合いの教材を渡して組み立ててもらうのではなく、一から素材や接着方法、バランスなどを試行錯誤してもらいます。そうしなければものは作れませんからね。子どもたちが苦戦しながらも完成させる様子が見られるのではないでしょうか。
今回取材させていただくロボットAIテクノロジー専攻は、どのような点が特徴ですか。
そして2年目では、プログラミングを加えて動きを制御したり、さらに発展させてAIを取り入れたりします。AIの仕組みを理解して扱えるようになり、画像認識して自動で分別するようなオリジナルロボットを開発してもらうのです。
つまり1年目はものづくりの仕組み、2年目は頭脳の部分を学んで最終的にオリジナルのロボットを開発するのですが、実は大学院生レベルの内容になっているんですね。子どもだからといって上限を設けずにどんどんチャレンジできる場を用意している点が、ほかにはあまりない特徴だと思います。
ハイレベルな内容なのですね。そんな授業を行なう講師の方はどのような方々なのでしょうか。
講師や授業のレベルは高いですが、ハイレベルな子どもじゃないと付いていけないというわけではありません。心配される保護者の方もいらっしゃいますが、基本的に初めて学ぶ子どもたちを対象にして丁寧に授業を進めています。子どもたちはみんなレベルが高いですから。興味や好きという気持ちがあれば、確実にステップアップできるので、安心してほしいです。
これまでNEST LAB.で学んだ子どもたちの、成果や進路について教えてください。
また、文字を書くのが苦手な障害や忘れっぽいという「苦手」を持ちつつも、プログラミングが得意で、自分自身の原因と解決方法を研究していた方もいましたね。3Dコンテストで受賞したり孫正義育成財団に採択されるなど活躍し、最近は書籍も出版しました。
ほかにも、小学生が研究者と一緒に科学論文を提出するなど、さまざまな場面で活躍している卒業生がいますよ。
NEST LAB.で学んだことを活かして活躍している子どもたちがたくさんいるんですね。NEST LAB.の今後の取り組みや目標を教えてください。
NEST LAB.では、新しく「ワンアースネイチャー専攻」と「ナレッジエンジニアリング専攻」を設けました。小学1~3年生向けに、自然・生き物やものづくりへの感覚を身に付け、そこからさまざまな分野への興味につなげてもらいたいという考えです。
好きという気持ちこそが全ての原動力で、好きなことを活かして社会に貢献すれば仕事にもつながります。天井を作らずに徹底的にやりきって、失敗を恐れずに好きを究められる子どもをどんどん育てていきたいですね。その結果として、世の中はもっと良くなっていくのではないかと思っています。
体験授業をレポート!身近な材料でホバークラフトを開発
それではさっそく、体験授業の様子を見ていきましょう。今回の体験授業では、身近な材料を使ってホバークラフトの開発に挑戦。参加したのは、小中学生の6人です。講師を務めるのは、石神工平先生。「ロボットを作るのが大好きです」と自己紹介し、これまで手がけたロボットをみんなに見せてくれました。ロボット好きの子どもたちが集まっているだけあって、興味津々な様子が画面越しでも表情から伝わってきます。
「どんなロボットかわかるかな?」と石神先生が質問すると、「ソーラーパネルで動かしているロボット!」と即答。さらに「どこで動くと思う?」と聞くと、「月!月面!」と鋭い答え。正解は「火星探査機を模して作ったロボット」だそうで、惜しい!
さて、体験に入る前に、まずは授業のお約束を確認。
「くふうする」
「あきらめない」
「とりいれる」
3つの約束をスライドで示した石神先生。「キットではなく、一からものをつくる楽しさを体験してほしいです。うまくいかないこともあるかもしれないけど、そこからが成長するチャンス。自分で工夫して、どうすればうまくいくのかを考えてください。ちゃんと人の話に耳を傾けて、良いところは取り入れてね」と呼びかけます。
ところで、みんなはどんなロボットが好きなの?
水で動くロボットアームと六本足のロボット!
塩水で動くクモのロボット!
ロボットコンテストに出たよ~!
「いろんなロボット、いろんな形がありますよね」と応える石神先生。老人ホームなどで使われているというアザラシ型ロボット「パロ」を紹介しました。
かわいいですよね。材料は何でできていると思いますか?
ロボットだから、電気回路は入っているよね。
外側は布とかなんじゃないかなあ。
ポイントは、材料を使い分けているところです。材料とそれをどう組み立てるのかを考えてみてね。
タイヤがなくてどうやって動いているのかというと、滑っているんです。物と物が触れ合ったときに物が動かないようにする力を『摩擦』といいます。摩擦が少なくなると、ものが滑りやすくなります。摩擦を減らすには、地面と物の間に何かがあればいいんです。じゃあ、ホバークラフトの場合は、地面との間に何が挟まることで滑りやすくなるでしょう?
風かな?
そうだね、風が入ることで空気の薄い層が入り、滑りやすくなるのがホバークラフトの仕組みです。それじゃあ、どうやったら空気を入れられるかな?
プロペラで浮かせる!
そう。プロペラの力で空気を吹き出すんだけど、じゃあプロペラはどうやって動くのかな?このプロペラの特徴や気付いたことを教えてください。
羽根がねじれる感じで曲がってる!
ななめになっているから、空気を押す?
その通り。このひねりがあることによって風を下に押し出し、プロペラが上に上がる力を受けます。
扇風機とかも同じ仕組みですか?
ヘリコプターみたいな重いものがなんでプロペラだけで飛んでいるの?
最初の工程は、プロペラ作りから。工作用紙に切り込みを入れて、プロペラの形に折っていきます。
プロペラはひねりが命。上手く切ってひねれば性能が良くなります。何回も曲げると紙が柔らかくなって弱いプロペラになっちゃうよ。慌てないでね。
プーリーという部品に両面テープをしっかりと貼り付けてモーターに取り付け、電池ボックスに単三電池を入れると……
「ブ~~~~~ン」
モーターが動きました!それぞれの画面から、低いモーター音が聞こえてきます。子どもたちも「おぉ~!動きました!」と歓声を上げています。
モーターが動かせたところで、次は本体を作っていきます。ここで、ポイントとなるのは材料のお話。
「電池の力で浮かせるためには、材料に工夫が必要です。そこで、今回はウレタンを使います。ウレタンは近くで見るとたくさん穴が開いていて、99%が空気なのでとても軽いんですよ」と石神先生が説明すると、子どもたちはウレタンをまじまじと観察していました。
穴の開いた2枚のウレタンを貼り合わせるのですが、少しコツがあるようです。
「できるだけ平らにすることが大切です。テープで隙間ができないように気を付けて、必ず平らな机の上において重ねてね」
本体ができたら、プロペラが穴の中央に来るようにモーターと組み立てます。スイッチを入れると……
浮いてます!すげ~!
カッターは必要な分だけ刃を出して、のこぎりのようにギコギコしません。体の正面で、手前に向かって引くと真っすぐきれいに切れます。道具の扱いを間違えるとけがにつながります。上手な使い方を覚えると安全でキレイに作れますよ。
あれ?動きません……
下に向かって風が出ている?歪んでいたり曲がっていたりしないかな?
あ!電池を真ん中にしたら動きました!
完成後は、同じ仕組みを使って高校生が作ったホバークラフトも紹介。こちらはすごいスピードです。
モーターを足したり形を変えたりと、ここからいろいろ自由に改造してみてください。もっとすごいものを作ってみたいという気持ちになったら、私たちと一緒に研究して新しいものを作っていきましょう!
授業後、石神工平先生にお話を聞きました
体験授業を終えて、子どもたちの反応はいかがでしたか。
オンライン授業を行なう際には、どんなことを心がけていますか。
NEST LAB.の授業では、子どもたちにどんなことを学んでほしいですか。
保護者の方から寄せられた感想
体験授業の後、参加した子どもたちの保護者の方々から感想をもらいました。制作は簡単すぎず、ちょうど良い難易度だったようです。授業や内容には興味を持って楽しめました。
終始楽しく活動をさせていただき、感謝いたします。
子どもがロボットに興味を持っているのですが、科学全般や工学に縁のない親としては、子どもの将来のために何をしてあげられるのかをいつも悩んでいます。
こういった活動に参加させていただき、子どもが興味を持った分野への知識や関心を深められることが本当にありがたいです。
なかなか家庭では教えられない知恵がいっぱい詰まっているように感じました!
同じ「好き」を持った仲間と興味を深めよう!
体験授業を見ていると、参加した子どもたちと先生がみんな「ロボット好き」だと伝わってきたのが印象的でした。全員が初対面でオンラインという壁があるにもかかわらず、一体感のある活発な授業が展開されていたのは、同じ「好き」を持った仲間同士だからこそではないでしょうか。また、「一からのものづくり」にこだわっているということで、仕組みや素材の選び方、組み立て方のコツ、道具の使い方まで、ものづくりで必要な工程を一通り学べる内容です。先生の手元が大きく画面に映っているので細かい部分もわかりやすく、丁寧に教えてくれますよ。
体験授業は各コースで行なっていますので、興味がある方は参加してみてはいかがでしょうか。
まず、NEST LAB.を立ち上げた背景や教育理念について教えてください。