Japan Drone 2025 展示会レポート「社会実装が加速するドローンの現在地」
-
今回お話を伺った方
-
GMOグローバルサイン株式会社 取締役 / CTO室 室長
浅野 昌和氏2019 年1月 ― 現在 GMOグローバルサイン CTO室 室長として、世界8 拠点にまたがる認証基盤開発とエンジニアリング組織を統括。2023 年から同社取締役を兼務し、プロダクト戦略と研究開発をリードする。 2020 年 GMO Developers Day 2020 で「グローバルサインのワールドワイドな多拠点開発」を解説し、分散開発とセキュリティ高度化の事例を共有。 2021 年 国土交通省・経産省主導「空の移動革命に向けた官民協議会」に参画し、空域モビリティの通信・制御セキュリティ指針策定に携わる。 2023 年以降 Japan Drone/Japan Robot Week など業界主要展示会で、ROS 2 やドローン通信の暗号化・認証技術に関する講演を多数実施。
-
-
監修者
-
コエテコドローン責任者
柴垣 泰2001年GMOメディア株式会社に入社後、営業責任者を経てドローン関連の新規事業開発を担当。コエテコ・ドローンの事業責任者として全国100校以上のドローンスクールを取材し、業界動向を深く把握。国土交通省や有識者への取材を通じて、ドローン・ロボティクス分野の最新トレンドと事業者の情報に精通。E.R.T.S産業用無人航空機操縦技能認定を保有。幅広い人脈を活かしてドローン関連企業・自治体・教育機関をつなぐ橋渡し役を担い、業界の発展に努めている。
-
本記事では、注目を集めたブースや企業を取り上げ、ドローンの「今」と「明日」そして「未来」がわかるJapan Drone2025の模様を、現地取材をもとにレポートします。
Japan Drone 2025〜未来の技術から日常の現実へ〜

今年の展示会では、従来の空中ドローンに加え、水中・陸上ロボットとの融合、災害救援への本格実装、そして私達の暮らしにドローンが浸透しつつある様子が顕著に現れていました。
この状況は、ドローンが「未来の技術」から「生活インフラ」へと変貌を遂げていることを実感させる内容です。
特に印象的だったのは、各企業が単なる技術展示から一歩進み、具体的な社会課題解決への取り組みを前面に押し出していたことです。
ここからは、展示の中でもひときわ存在感を放っていた3社をご紹介していきます。
Japan Drone 2025で注目された最新ドローン技術と企業動向

docomo sky「セルラードローンで飛行範囲が飛躍的に拡大」

ドローンサービス部門第二グループ第三チーム担当課長の田仲秀行氏
NTTコミュニケーションズのドローンサービス部門であるdocomo skyのブースでは、セルラー通信(携帯電話回線を利用した通信)に対応したドローンの実用化が大きな話題となっていました。
ドローンサービス部門 担当課長の田仲秀行氏は、「セルラードローンに対応したことで飛行できる範囲が広がり、用途の可能性も大幅に拡大しています」と展望を語りました。
また、リリースされたばかりの優先制御技術について、「上空LTE通信における“パケット優先制御”によって、伝送されたカメラ映像を一部絞り、くっきりとクリアな映像になっています」と田仲氏が説明するように、遠隔地での映像確認の品質向上が図られています。

これにより、レベル3.5(第三者上空での目視外飛行)といった高度な自動飛行において、離れた場所から鮮明な映像を確認することが可能になりました。
docomo skyでは、建設・プラント・水道施設など幅広くサービスを提供しており、Skydio X10を用いた河口堰の点検、ダム等の管理についてもすでに活用事例があります。

SkydioX10とドローンポート(Skydio Dock forx10)
田仲氏は「Skydio X10とドローンポート(Skydio Dock forx10)の組み合わせ、Wi-FiとLTEの両方を使用することで、福島県昭和村で無人巡回させることにも成功しています」と語り、ネットワーク構築支援も含めたdocomo skyの強みに触れ、今後の展開への自信を示しました。
産業用ドローンの本格展開には、通信インフラやクラウド技術との連携が欠かせません。
通信インフラとの連携という点で、全国規模のネットワークを持つ通信キャリアの動きは注目されており、中でもNTTコミュニケーションズ株式会社の取り組みは、今後の業界動向を左右する存在の1つとなりそうです。
NTTコミュニケーションズが目指す、仲間とともにつくりあげるドローンのプラットフォームについてお聞きしました。
2025/05/26
エアロセンス 災害救援の切り札「AS-H1」初公開

左:エアロセンス代表取締役社長 佐部浩太郎氏 右:技術開発部統括部長の鈴木康輔氏
エアロセンスのブースでは、災害救援用の新型VTOL機(垂直離着陸機)「AS-H1」が初公開され、大きな注目を集めていました。第一種型式認証を申請中のこの機体は、国のプログラムとして開発された災害対応用ドローンです。
技術開発部統括部長の鈴木康輔氏は開発の背景について、「内閣府が主導する国策プログラムの一環として、災害対応に特化したドローンの開発に取り組んでいます。長時間飛行が可能で、重量物の運搬もできる機体をめざし、開発と改良を積み重ねてきました」と説明しました。
間近で見ると、その大きさに驚きますが、一方でこの機体だからこそ「耐風と防水性能も強化され、横風20m/s の雨天時の悪天候でも安定した飛行が可能」であるという説明にも納得がいきます。

AS-H1の性能は従来機を大幅に上回ります。
- ペイロード(積載重量):従来の1kgから13kgへと13倍に増加
- 航続距離:50kmから最長250kmへと5倍に延長*
エアロセンス代表取締役社長 佐部 浩太郎氏は、
「1kg程度の積載しかできなかった従来機では、物流への活用は困難とされていましたが、AS-H1は13kgの積載が可能で、2リットルペットボトル6本を運搬できます」
「天候に左右されにくく長距離飛行も実現し、垂直離着陸型のためエリアの制約も少ないことから、物流ビジネスや災害時等の物資輸送での用途開拓が現実的になります」
と、社会実装への意欲を語りました。
海外製が多い市場の中で、国産メーカーの代表的なVTOLドローンとして大きな期待が寄せられており、ブースには常に多くの見学者が詰めかけていました。
エアロセンス株式会社代表・佐部浩太郎氏は、かつてソニーでエンターテインメントロボット「アイボ」を開発した、AIやロボティクスの第一人者です。 技術開発への情熱をもう一度呼び起こし、空飛ぶロボットの開発に乗り出した佐部氏に、日本の災害対策をDXするドローンの開発と活用、そして未来への展望について、お話をうかがいました。
2025/05/21
ブルーイノベーション 公共インフラ点検でドローンが主役に

ソフトウェア開発を強みとするブルーイノベーションでは、公共インフラ点検分野でのドローン活用が本格化していることが報告されました。
同社の熊田貴之社長は業界の変化について、「1つ大きいのは、公共インフラがやっぱり動き出したということですね。今まではガイドラインの中でも人による目視というのが基本でしたが、今回それをドローンで代替することが認められました」と説明しました。

特に陥没事故におけるドローンの活用は注目され、下水道点検分野では、従来の人力による目視点検からドローンを使った点検への移行が加速しています。
「国からも本格的にこういった新しい技術を使って公共インフラの点検の精度を高める、スピードアップして使いなさいという指示が出たので、積極的にドローンを使い出すという流れになってきています」と業界全体の方向性を語りました。

同社では空中ドローンだけでなく、地上走行ロボットも含めた統合ソリューションの提供を開始しています。
「ドローンだけでは限界があるので、さまざまなハードデバイスをソフトウェアに統合させた形でソリューションを提供していく方針で、特に電力会社との連携を深めています」
「ハードウェアとソフトウェアを統合したソリューションを提供していきます。ドローンだけでなく、無人搬送車やロボットなど幅広い機器を組み合わせ、1つのサービスや業務システムとして連携させるインテグレーション技術が当社の強みです。今後もぜひご期待ください」
終始和やかで笑顔を絶やさない熊田社長でしたが、その表情には確かな自信と、ドローンが社会で広く活用される未来への強い意欲が表れていました。
ブルーイノベーションのドローン点検ソリューションのサービス詳細・導入実績などポイントを紹介!コエテコドローンナビは、ドローンサービスの比較・活用サイトです。サービスの比較、効果的な利用法、ドローンを最大限に活用するための情報を一元化し、無料で資料ダウンロードが可能です。提供会社:ブルーイノベーション株式会社
https://coeteco.jp/dronenavi/services/266 >
GMOが描く「陸海空」統合ロボティクス時代

GMOインターネットグループのブースでは、従来の空中ドローンの枠を超えた「陸海空」統合型のロボティクス展示が注目を集めていました。
特に目を引いたのは、ブース内に設置されたプールでの水難救助デモンストレーションです。人命救助ドローンがパラシュートと浮き輪を投下する実演は、多くの来場者が足を止めて見入る光景が印象的でした。

ちょっと小柄ながら働き者!
また、身長約130cm・体重約35kgの小型ヒューマノイドロボットが来場者に資料を配布する光景は、近未来的でありながら「ロボットの人材派遣」が現実味を帯びていることを実感できた瞬間です。
さらに、今回初めて導入されたドローン操縦シミュレーターは、朝から体験待ちの行列ができるほどの人気を博していました。

GMO GlobalSign CTO室長の浅野昌和氏
GMO GlobalSign CTO室長の浅野昌和氏は、「おかげさまで朝から皆さん体験待ちの行列ができるぐらい好評いただいています。アンケートでもリアルで驚いたという反響をだいぶいただいているので、手応えを感じています」と語りました。
ドローンパイロットをめざす方や企業向けに開発された最新のVRシミュレーターは、国家資格試験のコースを再現し、事前練習として最適な環境。また、インフラ設備点検業務もリアルに体験可能とのこと。
「ドローンの操縦経験がない方でも体験できる」という言葉を信じて、コエテコドローン取材班から、まったく経験のないライターも列に並び、体験してみることになりました。
VRシミュレーターに、ドローン操縦未経験のライターが挑戦

あまりの下手さにスタッフも思わず苦笑い……
VRゴーグルを装着した瞬間、視界が一変しました。目の前には錆もリアルな古い倉庫があり、赤や緑のコーンが下方に見えています。
手にしたプロポ(ドローンを操縦するコントローラー)は実際の現場で使用されるものと同じ形状・機能のため、ボタンの感触や重量感まで本物そのものです。

VRで見ると、空間の感覚がよりリアル。

実際にドローンのうなるような音も響き、没入感がすごい!
さっそくドローンを発進させようとレバーを軽く動かしたつもりなのに、ドローンは予想だにしない方向へ急上昇したかと思ったら急降下。
慌ててレバーを戻すと、今度は倉庫の窓に激突しそうに。「あ、ちょっと待って!」と思わず声に出してしまうほど、まるで本当に自分の機体が暴走しているような感覚です。
ドローンがどちらを向いているのかもわからず、画面の中で機体がふらつく度に、自分の体も無意識に傾いてしまいます。
スタッフに「右に行きたい時は...」「高度を上げる時は...」と教わり、本来は八の字飛行をする予定でしたが、ともかく四角を描くように飛んで、無事にドローンも着陸。

シミュレータは分析機能等も充実。
VR(仮想現実)ゴーグルを装着してのドローン操縦体験は、実際に体験してみると想像以上にリアルで、高度な操縦技術を習得する前の訓練ツールとしての可能性を強く感じさせるものでした。
従来のシミュレーターと異なり、実際のドローンの挙動を忠実に再現している点が高く評価されており、今後の操縦者育成における重要なツールとなることが期待されます。
企業での導入やドローンスクールなどへの普及が進めば、ドローン人材育成の入門段階が格段に容易になり、結果としてドローンの未来を支える人材育成という重要な課題の解決に大きく貢献するでしょう。
「空の産業革命」を担う存在として注目を集めているドローン。社会でドローンを活用するための取り組みが官民一体で進められ、ドローンの活躍の場が広がる一方で、通信データの改ざんや情報漏えいなどのセキュリティリスクも懸念されています。GMOグローバルサインCTO室 室長の浅野昌和氏に、ドローン普及にともなうリスクやドローンのセキュリティ対策についてお聞きしました。
2025/05/21
日常にも社会課題にも「広がるドローンの"当たり前"」
Japan Drone 2025は、ドローン業界が技術開発フェーズから本格的な社会実装フェーズへと移行していることを明確に示す展示会となりました。この変化の背景には、技術の成熟だけでなく、法規制の整備や社会の受け入れが進んだことがあります。特に「レベル4飛行」(有人地帯での目視外自動飛行)が可能になったことで、実証実験にとどまっていた活用が商用サービスへと広がる転機となりました。
来年の展示会では、今回発表された技術がさらに実用化され、より多くの分野でドローンが"当たり前のツール"として活用されている姿を見ることができるでしょう。
RECOMMEND
この記事を読んだ方へおすすめ-
(イベントレポート)Japan Drone 2023|空飛ぶクルマ『HEXA』の展示も。ドローン業界の最新テクノロ...
2023年6月26日〜28日の3日間に渡り、幕張メッセにて開催された日本最大級のドローン展示会「Japan Drone 2023」。 イベントには、ドローンに関する製品やサービスなど...
2024.04.01|大森ろまん
-
(イベントレポート)Japan Drone 2024|ドローンの社会実装が加速!防災・点検・物流の最新事例が集結し...
2024年6月5日〜7日までの3日間、千葉県の幕張メッセにて、ドローンに特化した国内最大規模の展示会「Japan Drone 2024」が開催されました。「さあ、次の時代へ ON to...
2024.07.01|大森ろまん
-
【自治体初!】千葉県いすみ市で大型物流ドローンを活用した講習を実施
2025年3月、千葉県いすみ市では、災害時に効率的にドローンを活用できるよう、市職員4名が大型物流ドローンの操縦技術を習得するための講習を受講しました。 今回はその様子をコエテコドロ...
2025.05.26|コエテコ byGMO 編集部
-
(イベントレポート)『女性ドローンパイロットリアル交流会イベント』ドローン業界の女性活躍を応援
2023年10月31日、ドローン情報サイト「コエテコドローン」は女性ドローンパイロットを応援する『女性ドローンパイロットリアル交流会イベント』を開催しました。業界で活躍する4名の女性パ...
2025.05.26|大森ろまん