Roblox教育の最前線――プログラミング新時代のデジタル教材活用事例を徹底レポート
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今回お話を伺った方
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エデュケーショナル・デザイン株式会社 代表取締役
脇田 真太郎氏青山学院大学卒業。在学中に英国リーズ大学ビジネススクールへ留学し、国際的なビジネス視点を培う。NPO法人ETICを通じ、スタートアップで約10ヶ月間のフルタイムインターンを経験。卒業後は外資系広告代理店WPPグループにて、Microsoftなどグローバル企業のマーケティング戦略を担当。2013年、エデュケーショナル・デザイン株式会社を設立。
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株式会社私塾界 代表取締役
山田 未知之氏2005年、教育サービス業界専門誌「月刊私塾界」の発行に携わり、2012年より現職。全国約2,000の学習塾を取材・支援し、業界動向の発信に加え、研修やセミナーを通じて経営・運営支援を行っている。
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Roblox Japan Developer Relations 本部長
Jun Tsuji氏ソニーのPlayStationの部署などを経て、Googleゲーム部門にてPartner Engineeringでグローバル統括職を担当する。現在はRoblox Japan Developer Relationsの本部長として国内外の開発者コミュニティをリードしている。
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2025年12月18日、学習塾を中心とするスクールビジネス事業者を対象に、Roblox教育をテーマとしたオンラインセミナー「1日1億人以上が利用する「Roblox」を使う、子どもの創造性を育むプログラミング教育」が開催されました。
登壇したのは、Roblox Japan Developer Relations 本部長の辻氏、株式会社私塾界 代表取締役の山田氏、そしてエデュケーショナル・デザイン株式会社(デジタネ)CEOの脇田氏です。
世界的に利用されるRobloxが、プログラミング教育・創造性教育・STEAM領域でどのように活用され始めているのか。本セミナーで共有された、Roblox教育導入の背景から現場での運用ノウハウまでの内容を客観的にレポートします。
「1日1億人以上が利用する「Roblox」を使う、子どもの創造性を育むプログラミング教育」概要

本セミナーでは、1日あたり1億人以上が利用するゲームプラットフォーム「Roblox」を教育に活用する取り組みについて、最新の動向や現場での活用事例を共有することを目的に開催されました。
学習塾をはじめとする教育事業者や、教室運営に関わる関係者を対象に、Robloxの現状や教育分野での可能性、運用の考え方などについて、多角的な視点から展開された議論の模様をご紹介します。
開催概要
開催概要は以下のとおりです。- 開催日:2025年12月18日(木)
- 時間:13:00〜14:30
- 形式:オンライン開催
- 参加費:無料
- 主催:エデュケーショナル・デザイン株式会社
当日は、Roblox Japan Developer Relations 本部長の辻氏、株式会社私塾界 代表取締役の山田氏、エデュケーショナル・デザイン株式会社 CEOの脇田氏が登壇し、それぞれの立場から意見や事例が共有されました。
当日のアジェンダ
セミナーでは、Robloxの最新状況の紹介に続き、小中学生向けプログラミング教材「デジタネ」の概要説明やパネルディスカッション、質疑応答がおこなわれました。- 「Roblox」の最新状況の紹介
- 小中学生向けプログラミング教材「デジタネ」の紹介
- パネルディスカッション
- テーマ① Robloxが子どもたちを熱狂させる理由と教育界へどのような影響を与えるか?
- テーマ② Robloxを使ったプログラミング教材が生み出す学習効果とは?
- 質疑応答
パネルディスカッションでは、「Robloxが子どもたちを惹きつける理由」や「教育分野に与える影響」、「Robloxを活用した教材がもたらす学習効果」などをテーマに、教育現場や教室運営の視点から意見が交わされました。
以下では、セミナーの中でとくに印象的だった内容について、テーマごとに整理して紹介します。
Roblox教育が注目を集める理由

セミナーでは、まずRobloxというプラットフォームの特徴や世界的な広がりについて整理されたうえで、なぜ今「教育活用」が注目されているのかが共有されました。
以下では、当日語られた主なポイントをテーマごとに紹介します。
創造性教育との親和性が高い
辻氏によれば、Robloxは世界で1日あたり1億人以上が利用し、平均滞在時間は2時間半に及ぶ巨大プラットフォームです。190カ国で展開され、ゲームを制作するクリエイターは700万人を超えています。
Robloxはもともと、子どもたちが3D空間でプログラミングを学ぶための教育ソフトウェアとして開発された経緯を持ちます。現在は、統合開発環境「Roblox Studio」を通じて、誰でもプログラミング、3Dデザイン、ゲームデザインを無料で学べる環境が整っています。
小学生でも直感的にゲーム制作ができる点は、創造性教育との親和性が高いとされています。
Robloxコースの導入が国内で増加している
デジタネでは、2021年からRobloxを活用したコースを提供しており、現在は全国約300拠点の学習塾・学童・各種スクールと連携しています。
脇田氏は、同コースの入会者数が従来のマインクラフトコースを上回る伸び率を示していると述べ、「子どもが先に知り、先に遊び、後から大人が知る」というマインクラフトと同様の普及パターンが日本でも始まっていると話します。
また、辻氏からも、日本の成長率は世界最高水準にあり、先行する韓国(普及率90%)と同様の流れが起きる可能性が示唆されました。

韓国のRobloxクリエイターが集まるイベントの様子。
普及率増加の動きから、Robloxは単なる流行ではなく、教育サービスとして定着し始めている状況がうかがえます。
Roblox教育によって複合的な学びを提供できる
セミナーでは、Robloxが単なるプログラミング学習にとどまらず、以下のような複合的な学びを提供する点が強調されました。創造性とマーケティング思考
デジタネの生徒である小学生の女子児童は、自作ゲームの訪問者数が20万人を超えています。彼女は「ユーザー視点」を意識してゲームを改善しており、制作を通じてマーケティング的思考やデザイン的要素を自然に身につけました。手段としての学習
海外ユーザーを増やすため、自発的に英語の情報を調べるようになったケースについても言及がありました。「英語を勉強しなければならないから学ぶ」のではなく、「やりたいことを実現するための手段として学ぶ」という流れが、学習への関わり方に影響している点が紹介されています。STEAM教育との親和性
さらに、竜巻に興味を持った青年が、Roblox上で科学的にシミュレートしたゲームを制作し、大ヒットした事例も紹介されました。自分の興味を題材にしたゲーム制作が、STEAM教育につながる可能性があると考えられます。
アバターを作成し収益化をすることで、デザイン的要素の学びにもなる。
Roblox導入事例や教室運営への影響
ここからは、Robloxの具体的な導入事例や、教室運営への影響について、セミナーで話された内容を整理していきます。デジタネでの導入事例
デジタネでは、映像教材とアバター先生による自走型学習を採用しています。
教室側の講師は高度なIT知識を必要とせず、「モチベーター」や「ガイド」として子どもの意欲を支える役割に特化できる点が特徴です。
低学年向けコース

小学1年生から対応可能なコース「ロブロックスジュニア」では、ビジュアルプログラミングでRoblox開発を学べます。
また、「ロブロックスジュニア」の教材は、日本で初めてビジュアル言語でRoblox開発を学べる教材として位置づけられており、低学年でも取り組みやすい点が特徴です。
3年生以上向けコース

デジタネでは、テキストコーディング(Lua言語)を使った本格的なゲーム制作を進める3年生以上向けのコースも用意しています。
Robloxを使ってゲームを作成することで、より高度で、自分の想像に近いものを創作できるようになっています。
教室運営への影響(集客・差別化・継続率)
ロブロックスコースの導入が、教室運営にどのような影響を与えているのかについても、具体的な観点から共有されました。ここでは集客・差別化・継続率の3つの視点についてご紹介します。
集客面への影響
子どもたちの間でRobloxの認知度は非常に高く、Robloxでゲームを作れること自体が訴求力につながっていると説明されました。子ども側の関心をきっかけに、問い合わせや体験参加につながっていく可能性があることが示唆されています。
差別化への影響
差別化の観点では、マインクラフトに続く新しいプラットフォームとして、他教室との差別化につながる点が挙げられました。継続率への影響
コンテストや検定による成果の可視化、制作物の公開による達成感が、継続的な学習意欲を支えている点も話題に挙がりました。また、学童事業者からの質問に関連して、学童内のプログラムとして組み込む形と、習い事として提供する形の両方で導入されているケースがあることにも言及がありました。いずれの形態においても、子どもたちの参加や定着を意識した運用がおこなわれているとのことです。
パネルディスカッションで語られた示唆
パネルディスカッションでは、導入を検討する教育事業者が感じやすい懸念や、実際の運用上の工夫について意見が交わされました。Robloxを導入するうえで教育事業者が懸念する課題
辻氏は「オンラインゲームにおける安全性で世界をリードすることが目標」と述べ、Robloxは2025年1月から145以上の安全機能を実装したことを紹介。年齢別のチャット制限、2人きりの空間ではチャットができない仕様が施されており、これらの技術はオープンソース化されていると述べました。
また、脇田氏は「遊ぶというインプットもプラスの要素として捉えている」と説明。時間を区切り、遊ぶ時間と制作時間をメリハリを持って切り替える運用方法で対応していると答えました。
カリキュラムに落とし込む際のポイント
議論では、効果的なカリキュラム設計について以下が共通した視点として挙げられました。・年代別にカリキュラムの深度を変える:小学校低学年はビジュアルプログラミング、高学年以降はテキストコーディングへ
・初心者でも達成感を得やすい課題設計が重要:最初のハードルを下げ、段階的にスキルを積み上げる
・成果物を共有する機会がモチベーションを高める:発表会やコンテストが継続意欲につながる

プログラミング検定や発表の場を定期的に設けることで、学習の成果を可視化できるだけでなく、保護者とのコミュニケーションも促進されるとのこと。
また、教材コンテンツは4〜5年分のボリュームが用意されており、進度の早い生徒は先の内容に進みながら、実際のRobloxの世界で作品を公開することも可能です。
その際、訪問者数やプレイ地域といったデータを確認できる点が、学習への関わり方やモチベーションに影響しているという説明もありました。
保護者・子どもの反応から見える可能性
子どもたちは「やりたいこと」を実現するために必要な知識を吸収しているため、勉強という感覚を持たず、意欲的かつ自主的に学びます。子どもたちの学び方が、学習全体に広がる波及効果を生み出している点は注目すべきポイントのひとつです。また、デジタネの直営校でおこなわれたコンテストでは、子どもたちが自ら作り上げた作品を形にし、アウトプットする場を大切にしています。成果を可視化して評価することで、成長の過程が明確になり、保護者からも前向きな反応が見られていると説明されました。
参加者の質疑応答で見えた関心領域
参加者アンケートからは、Roblox導入を検討する際に重視されているポイントが浮かび上がりました。PC環境
推奨スペックはあるものの、一般的なオフィス用ノートPCでも動作可能であり、導入のハードルは比較的低いことが示されました。一方で、Roblox Studioはタブレットでは動作しないため、制作学習にはPC環境が必要です。Lua言語の効果
辻氏は、「Luaは構文がシンプルで入門に最適」と示したうえで、基礎を固めることでPythonやJavaへの移行がスムーズになると説明しました。
始めからテキスト言語で学習すると挫折してしまう子どもが多いが、RobloxはLua構文から学べるので移行がスムーズ。
「どの言語から学ばせるべきか」「途中で挫折しないか」といった懸念点においては、Luaを中間的なステップとして位置づけられる点に注目が集まるでしょう。
保護者への説明
デジタルリテラシー教育を並行することで、セキュリティや著作権といった必須知識を学べる点も、保護者への大きな訴求力になっていると説明されました。Roblox教育は"マインクラフト以後"の新たな選択肢になり得るか
今回のセミナーを通じて明らかになったのは、Robloxが単なる「ゲームプラットフォーム」ではなく、プログラミング、デザイン、マーケティング、語学など、複合的に学べる教育環境として機能している点です。マインクラフトが「プログラミング教育の入り口」として定着した一方で、Robloxは、より本格的なゲーム開発・収益化まで視野に入れた学びを提供します。
一方で、導入にあたっては、保護者への安全性説明、カリキュラムへの組み込み方、講師のサポート体制など、運用面での工夫が欠かせません。デジタネのような教材提供事業者との連携や、デジタルリテラシー教育との併用が、現実的な解決策となりそうです。
Robloxの自由度の高さは、適切な設計と運用によって、従来の教材では実現できなかった「主体的な学び」を可能にします。教育事業者にとってはRobloxが「次の柱」を検討する際の有力な選択肢になり得るでしょう。
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単に「ゲームを使う学習」ではなく、インターネット社会で必要となる基礎知識を含めて説明できることが、保護者の理解を得るうえで重要なポイントになりそうです。