もじぴったん元プロデューサーが解説!子どもたちが夢中になるゲームデザインとは|じゃんけん鬼ゲームで学ぶワークショップレポート
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今回お話を伺った方
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東京工芸大学 芸術学部ゲーム学科 教授
中村 隆之氏ゲームデザイン教育研究者。東京工芸大学 芸術学部 ゲーム学科 教授。神奈川工科大学 情報メディア学科 客員教授、宮城大学 非常勤講師を兼務。1995年ソニー入社。携帯電話ソフトウェア開発に従事。1997年ナムコ入社。代表作はシリーズ通算100万本を売り上げた「ことばのパズル もじぴったん」シリーズ。エンジニアからディレクター、プロデューサーとして「もじぴったん」シリーズに関わる。2010年バンダイナムコゲームス退社。2012年から神奈川工科大学 情報メディア学科 特任准教授を経て2023年4月より現職。
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一般社団法人マナベル 代表理事
小笠原 一磨氏ゲームクリエイター。2019年にはマイクラプログラミング教材を開発し、全国・海外で展開中。
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一般社団法人マナベル 代表理事
生島 久也フリースクール運営。全国のプログラミング教室運営のアドバイザーも務めている。
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ゲームクリエイターを目指す子どもたちから注目を集めている「ゲームデザイン」。
小中学生男子の「将来なりたい職業ランキング」でゲームクリエイターは上位* にランクインしており、関心の高さがうかがえます。
今回は、2026年3月8日に実施された一般社団法人マナベルによるゲームデザインワークショップの様子をレポートします。
講師は、「もじぴったん」の元プロデューサーで、現在は東京工芸大学ゲーム学科の教授を務める中村隆之氏です。
「もじぴったん」は、ひらがなの「もじブロック」を並べて言葉を作り、空白のマスを埋めていくパズルゲームで、知的好奇心をくすぐるゲームとして知られています。

一般社団法人マナベルのスタッフと中村教授
ワークショップの内容はもちろん、ゲームのおもしろさや参加した子どもたちの気付き、中村教授のコメントなどを紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ワークショップと使用教材の概要|選んだ理由や狙いとは?
ワークショップでは、対戦型ゲーム開発コンテスト「Tokyo esports Game Development Contest 2026」で優秀賞を受賞した「Hand Heads(ハンドヘッズ)」が、教材として使用されていました。
「Hand Heads」は、じゃんけんの結果によって鬼ごっこの勝敗が決まる、シンプルな仕組みの2対2の対戦ゲームです。
プログラミングの知識がなくてもゲームのルールを自由に変更でき、誰でもプレイヤーとして参加できます。
プレイヤーはもちろん、観戦者も楽しめる対戦型eスポーツゲームです。
ワークショップで使用された「Hand Heads」は、東京工芸大学ゲーム学科の授業でゲームデザインを教えるために、中村研究室で独自に開発された教材です。
本ワークショップでは、「Hand Heads」のチーム対戦を通じて、ルール変更がゲーム性に与える影響や、ゲームのおもしろさを設計する考え方を体験的に学びます。
中村教授によると、「ルールやパラメータを変更してすぐに試せる教育用ゲームは、現時点ではほとんど存在していない」とのこと。
学生向けの授業だけでなく、プロ向けのゲームデザイン研修にも採用実績がある一方で、子ども向けのワークショップで使用するのは今回が初めてだったといいます。
今回の取り組みには、「子どもたちにもこの体験を届けてみたい」という思いが込められていました。
▶じゃんけん鬼eスポーツ 「Hand Heads(ハンドヘッズ)」公式
ゲームの「おもしろさ」はルールが決める|基本ルールの確認
ワークショップは、中村教授の挨拶と自己紹介、教材「Hand Heads」の動画視聴とルール説明から始まりました。
子どもたちに説明する中村教授
簡単な操作説明をして、中村教授から大切な一言。
ゲームデザインをする際は話し合いに時間をかけがちです。
しかし、本来は話し合いに時間をかけるよりも設定を変えてすぐにプレイした方が、効率的です。
とにかく試してみてどのような変化があるかを確認することが大事で、今日実際にプレイしていくうちに皆さんも実感するでしょう。
いざプレイ開始!

約2分でゲームは終了。その後、中村教授からあらためてルールの説明が行われ、再度ゲームをプレイします。
実際に体験してから説明を受けることで、「なぜそうなるのか」「どこがポイントなのか」をより深く理解できる構成となっていました。
受賞作「Hand Heads」で体験するゲーム設計の思考|遊びながらゲームデザイン
ゲームの基本操作・ルールがわかったところで、設定変更とゲームプレイを繰り返し、おもしろいゲームをつくってみることに。ゲームの設定を変更後すぐにゲームをプレイして、おもしろさや難しさを確認できるのが、「Hand Heads」ならではの魅力です。

設定を変えながらよりおもしろいゲームづくりを行う様子
今日のチャレンジの目標は、「何度も遊べて競えるおもしろさをつくる」ことです。意識してほしいのは、「何度も遊べるゲーム」という点です。
「1回遊んでみておもしろかった」で終わるのではなく、何度も遊びたくなるゲーム設定を目指してください。
どのようなルールにすれば、よりおもしろくなるのか——その視点を持って試行錯誤することが、このワークショップの重要なテーマです。
中村教授は、eスポーツとして成立するゲームに必要な要素として、以下のポイントを挙げます。
「Hand Heads」には多くの設定項目がありますが、すべてを一度に変更して検証するのは難しいため、今回は中村教授が推奨する変更から試していくことに。
まずはチュートリアルとして、プレイヤーキャラクターの移動速度を倍(1000)に変更し、カメラ設定を「TopView」に変更します。
移動速度を変えただけで、まったく違うゲームのように感じたと思います。2回目の変更では、カメラの操作が必要なくなり、キャラクター操作や戦略に集中できるようになったでしょう。
設定変更による影響は言葉だけでは伝わりにくいものですが、実際にプレイすることで直感的に理解できるのが特徴です。

設定を変えながらゲームをプレイする様子
さらに中村教授は、おもしろいゲームづくりのコツとして、「一度に大きく変えるのではなく、複数の要素を少しずつ調整しながら検証していくこと」の重要性を伝えていました。
話し合いに時間をかけすぎるのではなく、アイデアが出たらすぐに試す。そのサイクルを繰り返すことで、限られた時間の中でも多くのパターンを検証できるといいます。
「設定を変えながら検証していく」と聞くと、退屈な作業をイメージするかもしれません。
しかし、終始、声を出して仲間と連携したり盛り上がったりする姿が見られ、楽しみながらゲーム設計やゲームデザインの本質・おもしろさを学んでいました。
ゲームをプレイする中で自然と気付いた「作る」と「設計する」

2チームがそれぞれおもしろいと感じたゲーム設定を作った後は、他チームの設定でプレイを実施します。
プレイ後のフィードバックでは、「展開が速すぎる」「テクニック面での難しさがあった」「相手との距離感がちょうどよい」など、さまざまな意見が挙がりました。
展開が速くておもしろい部分もあったけど、速すぎてコミュニケーションが取りづらかったので、もう少し遅くてもいいかもしれません。
テクニック面での難しさも感じました。
相手との距離感がちょうどよかったです。ローリングが使えなくなっていたので、実力に左右されすぎずほどよい難しさでした。
また、初心者でもやりやすいと思います。障害物が高く、逃げやすかったです。
さらに、「何度も設定を変えて試すのは大変だが、完成したときに達成感がある」といった感想も聞かれました。
中村教授は、今回子どもたちが体験した内容について、「まさにゲームデザインの仕事そのもの」だと語ります。
特に、「速さ」に関する意見について、中村教授はプレイヤーの移動速度がゲーム体験に大きく影響すると説明します。
移動速度が速いほどプレイヤーの操作技術が反映されやすくなる一方で、速すぎるとコントロールが難しくなり、ゲームバランスが崩れる可能性があります。
実際に今回は、eスポーツとしての成立も意識する中で、「観戦者が状況を理解しやすいか」という視点から、プレイヤー速度の細かな調整が行われていました。
ゲームデザインは本来とても楽しいプロセスですが、その体験に触れる機会はまだ限られています。
すでに人気職業の1つである「ゲームクリエイター」ですが、もっと多くの方がゲームデザインを体験できるようになれば、さらに人気が加速しそうですね。
子どもたちに負けない白熱した展開となり、会場には再び熱気が広がります。プレイ後には、各チームに対して具体的なフィードバックが伝えられていました。
もじぴったんが生まれた現場から―中村教授が語るゲームデザインの本質

中村 隆之教授
――今回のワークショップでは、「作る」と「設計する」の違いをどう伝えましたか?
中村教授:本ワークショップ内では、明確に「作る(実装する)」と「設計する(デザインする)」を分けて伝えてはいません。
なぜなら、Hand Headsはゲーム内の設定変更自体がデザイン変更であり、即実装であるからです。
通常、ゲームを開発する上では、デザイン変更の後にプログラミングによる実装が必要となります。
しかし、「Hand Heads」では、プログラミングは必要ありません。
これにより参加者は、ゲームのパラメータやルール変更と、ゲームへどのような影響があるかの確認を、高速に繰り返せます。

――「もじぴったん」の開発経験が、今回の内容に活きている点はありますか?
中村教授:Hand Headsの開発には、私自身のこれまでのゲーム開発経験やゲーム教育経験のすべてが活きているといっても過言ではありません。
「ことばのパズル もじぴったん」シリーズの開発では、私自身は実装を担当するエンジニアであり、チームをひっぱるディレクターでもありました。
しかし、企画もプログラムも両方やって開発した経験により、ゲーム開発で大事なことをバランスよく理解していると自身では考えています。
プログラミングなしでゲームデザインを変えるというアイデアは、そういう両方の立場をよく知っていることから生まれてきたと言えると思います。
純粋にプログラマの発想であれば、ノード型のプログラミングでのルール実装もできました。
しかし、それをしなかったのは、プログラマーでないと理解できない仕組みが問題だと理解していたからです。
――その他に、参加した子どもたちの反応で印象に残ったことを教えてください。
中村教授:ゲーム慣れしている子どもたちですので、3時間あるワークショップにおいて、一つのゲームを飽きずにプレイし続けること自体が、実は非常に難しいことであると認識していました。
「開始前も途中で飽きてしまわないだろうか」と思っていましたが、実際には最初から最後まで楽しんでプレイしている様子でしたし、ゲームのパラメータやルール変更の都度に、真剣に議論して試していました。

一瞬でゲームに引き込まれる子どもたち
プレイする時の楽しんでいる顔と、ルール変更で話し合う時の真剣な顔との、両方が見られたのが印象的でした。
――これからの時代において、ゲームデザインはどのように変化していくとお考えですか?
中村教授:AIが当たり前になる世の中で、これから先ゲームデザインをするということは一部の限られた人がやることではなく、多くの人が目的にあったゲームをデザインする時代が来るであろうと予測しています。
ゲームクリエイターになるのは、その意味では特別なことはなく、今よりずっと多くの人がゲームをデザインする時代になるでしょう。
また同時に、ゲームデザインそのものが「楽しい」プロセスであり、AIではなく人間にしかできないことになるだろうとも考えています。
そういった時代に先駆けてゲームデザインの楽しさを伝えるのは、我々の使命です。

――ゲームクリエイターを目指す子どもたちへメッセージをお願いします。
中村教授:ゲームクリエイターを目指す人には、人間がどのようなことを「楽しい」や「おもしろい」と感じるのか、日々真剣に考えてみることをおすすめしたいです。
なぜなら、少なくとも今のAIには「楽しい」「おもしろい」は理解できておらず、感覚的な価値を生み出すのは最後は人間にしかできないことだと考えるからです。
今回のワークショップを通じて見えてきたのは、「おもしろいゲームは偶然ではなく設計されている」という事実です。
ルールを少し変えるだけで遊びの体験が大きく変わる。その変化を自ら試し、考え、言語化していくプロセスこそが、ゲームデザインの本質といえるでしょう。
こうした体験を支えているのが、主催の一般社団法人マナベルです。
一般社団法人マナベルとは

一般社団法人マナベルは、「将来子どもたちが社会に出て困らないよう、活きる知識や経験を友達と共にまなべる居場所を作りたい」という想いから設立された団体です。
現在は、マインクラフトやRobloxを活用したプログラミング学習やフリースクールの運営などを行っています。
2024年には、全国規模のマインクラフト建築コンテスト「アンプロカップ」を創設するなど、子どもたちの学びの機会を広げる取り組みを展開しています。
ワークショップの開催情報や今後のイベント予定などは、公式サイトで随時公開されていますので、ぜひ下記からチェックしてみてください。
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「Hand Heads」は、ゲームを楽しみながらゲームデザインを学べる本格的なツールといえるでしょう。