世界中で使われている教育用ロボット「Krypton 6」が教材
家電だけでなく、オモチャやパソコンの販売でもおなじみの「株式会社エディオン」。北海道から九州、沖縄まで直営、フランチャイズ店あわせて全国に1186店舗を構える大手家電量販店です。そのエディオンがこの度、ロボットプログラミング教室「EDION ROBOT ACADEMY(エディオンロボットアカデミー)」を開校します。同社上席執行役員で新規事業開発に携わる西本孝さんに、詳しいお話をうかがいました。――どうしてお子さん向けの教室を始めることにしたのですか?
もともとわが社の久保允誉(くぼ まさたか)社長が、STEM教育にたいへん興味をもっておりまして、このような機会を探しておりました。発端は昨年、ドイツのベルリンで行われたショーに参加した時のことです。ロボットを扱うコーナーの中に、たくさんのお子さんたちでにぎわっている展示ブースがありました。それが中国の上海に本社を置くロボットメーカー「Partner X(パートナー・エックス)」社のブースだったんです。
「これはおもしろそうだ!」と詳しいお話を聞いてみると、同社のロボットが教育用の教材として、たいへんよくできていることがわかりました。Partner X社のロボット教材は世界50カ国以上で使われているんですよ。
また、この会社は20年以上前から教育用ロボットを手がけているということで、カリキュラムやテキスト、教育のノウハウまでたいへんしっかりしていることにも感銘を受けました。これをぜひ日本の子どもたちのSTEM教育に役立てたいという願いから、この度、あらたに教育事業を立ち上げました。
――どのような教材なのですか?
Partner X社のプログラミングロボット「Abilix(アビリックス)」シリーズの中から、教育用に開発された「Krypton 6」を、エディオンロボットアカデミー用にカスタマイズしたものを使用します。
「Krypton 6」のキットには800以上ものパーツが含まれています。教室では、毎回出される課題に応じて、パーツを自由に組み合わせてロボットを作ります。「Krypton 6」の頭脳に相当するCPUは、4コアCortex-A7で1.3ギガヘルツという、教育用ロボットとしてはたいへん高機能なものです。
入力ポートが8つ、出力が4つ備わっており、タッチセンサーやカラーセンサーはもちろんのこと、超音波センサーやジャイロセンサー、電子コンパスも内蔵しています。マイクやWi-Fi機能もついており、アイデア次第でたくさんのことができる本格的教材なんですよ。
これだけ高機能なロボットですが、プログラミングは、タブレットやパソコンなどの画面で、「チャート」とよばれるPartner X社が開発したC言語ベースのビジュアルプログラミングで行います。操作はすべて日本語で行うことができますから、小さいお子さんでも簡単に行っていただけます。
長年の教育実績をもつPartner X社とは、日本におけるロボットプログラミング教育事業の独占契約を結んでいます。今回、日本で開校するにあたってPartner X社のテキストを日本語に直すと同時に、日本向けにさらに内容を充実させたエディオン独自のテキスト、およびカリキュラムを用意しました。
50万人以上が参加する世界大会「WER」は学習成果のアウトプットの場
――Partner X社のロボットを使った世界大会があるそうですが、どんな大会ですか?教育というからには、子どもたちががんばって習得した成果をアピールする場が必要です。それが「World Educational Robot Contest(ワールド エデュケーショナル ロボット コンテスト:WER)」です。これはPartner X社が独占スポンサーとしてプラットフォームを提供している世界的なロボットコンテストで、毎年、世界50カ国から1万人以上の子どもたちが参加しています。
日本ではまだあまり知られていない大会ですが、中国各地はもちろんのこと、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど、世界の約20の地域で予選が行われ、地方大会も合わせると、世界の約50万人もの子どもたちが参加する大きな大会なんですよ。
世界各国から集まった4歳から18歳までの子どもたちが、さまざまなタスクに挑戦し、毎年、レベルの高い戦いが繰り広げられています。子どもたちにとっては、この世界大会に出場することがひとつの目標にもなり、学習のモチベーションになると思います。
来年の末には国内の大会「エディオンカップ」を開催し、翌年のWERには日本から初参加をしたいと考えています。
――ふだんの授業は、どのようなことを行うのですか?
ロボットアカデミーのカリキュラムは「ベーシック」、「スタンダード」、「アドバンス」の3つのステップからなります。
「ベーシックステップ」ではまず、ロボットを組み立てるのに必要な基本的な構造設計と、様々なセンサーの仕組みを学びます。「スタンダードステップ」になると、物理の原理や法則にもとづいた、効率的な構造や設計を学習します。そして「アドバンスステップ」では、難しいミッションに対応したロボットの設計から制御までの全てを、自分でできるようになることを目指します。
1回の授業は70分で、月3回、または月6回のコースがあります。各ステップは1年で終了するのが目安ですが、お子さんの進度によって同じ課題を繰り返すこともできますし、また先に進むこともできます。
ロボットプログラミング学習はお子さん自身がどこを目指して、どこまでがんばるかが大きいと思います。たとえば世界大会を目指そうと思うと、テキストの通りに組み立てているだけではまったく通用しないでしょう。
世界大会では7から8つの課題が与えられ、このうち半分は事前に公開されるので、あらかじめ準備することができます。しかし、残り半分の課題は当日になってから発表され、準備時間はたったの2時間しかありません。その間にロボットを組み立て、プログラミングを行わなければなければならないのです。
このような世界大会のレベルに近づけるよう、ふだんの授業では様々な課題に取り組みながら、自分の頭で考え、また考えたことをロボットやプログラミングに生かす力を育みます。
質の高い授業を提供するために独自のプログラムで講師を養成
――世界大会レベルに達するような指導を行うには、教える先生の質も大切になりますね。その通りです。どなたにでも講師をお任せできるわけではなく、講師の選定にはかなり気を配っております。基本的にはすでにプログラミングやITなどの基礎知識がある方で、採用後、当社独自で準備した研修を受けていただきます。
――2020年から始まる小学校のプログミング教育必修化については、どのようにお考えでしょうか?
当社の教育事業は以前から進めていたもので、たまたま教室開校が必修化のタイミングと重なりましたが、ロボットプログラミングに興味を持っていただくには、よいきっかけになると思いますね。小学校でプログラミング教育が必修になるということで、興味を持たれている親御さんも増えています。
教室で用いるのは教育用に開発されたロボット教材ですが、実は同シリーズの市販用ロボットはエディオンの店舗でも販売しているんです。店舗に来られたお客さまから、「このロボットで勉強したら、学校の成績もあがりますかね?」と聞かれることがあります。
算数や理科の知識がなければ、ロボットを思い通りに制御することはできませんから、「きっと学校の成績にも結びつきますよ」、とお答えしています。
このロボットはオモチャ売り場ではなく、「情報家電コーナー」で販売しています。プログラミングしないと動きませんから、オモチャというよりも情報機器に近いものであるということです。
しかし、ロボットキットを購入していただいてマニュアル通りに作っているだけでは、世界大会レベルにまで上達するには時間がかかると思います。ロボットアカデミーの教室では、答えそのものを与えるのではなく、「どのように考えればいいのか」といったヒントを与えることで、自分で考える力を養うお手伝いをします。
まとめ
エディオンロボットアカデミーで扱うのは、すでに世界50カ国以上で使われているロボット教材「Krypton6」。エディオンを訪れるお客様の中にはITリテラシーの高い方も多く、子どもではなく「自分でやってみたい!」と、言われる大人の方もたくさんおられるそうです。エディオンロボットアカデミーの対象は小学3年生から中学3年生まで、平成30年12月に兵庫県西宮市に直営教室を開校するのを皮切りに、来年6月にはエディオン広島本店(広島市)にも開校する予定です。
今後は関西を中心に、全国規模で教室を展開していくとのことですので、「エディオンロボットアカデミー」または「Krypton6」について詳しく知りたい!という方は、エディオンロボットアカデミー事務局まで、ぜひお問い合わせください。
エディオンロボットアカデミー事務局
TEL:0120-023-890
(火曜~土曜日:10:00~19:00)
MAIL:info@robot.edion.co.jp
取材協力 エディオンロボットアカデミー