プログラミング教育で、北海道の地域格差に立ち向かう 株式会社シーラクンス代表の藤澤義博氏インタビュ―

プログラミング教育で、北海道の地域格差に立ち向かう 株式会社シーラクンス代表の藤澤義博氏インタビュ―
『北海道と世界を「教育」と「テクノロジー」で繋ぐ!』をビジョンに掲げ、プログラミングスクール「D-SCHOOL北海道」の運営をはじめとする教育関連事業を行う株式会社シーラクンス。

2018年11月には、北海道を中心に展開するドラッグストアチェーン「サツドラ」を運営するサツドラホールディングス株式会社の傘下に入り、今後の事業拡大が期待されている注目企業だ。

今回は、道内のプログラミング学習環境の現況や今後の事業展開について、代表取締役の藤澤義博氏にお話を伺った。

株式会社シーラクンス代表取締役の藤澤義博氏

D-SCHOOL北海道とは?


D-SCHOOLは、小学校1年生から中学生の子ども達が、プログラミングを通してデジタル上のものづくりを”楽しみながら”学ぶ教室。
楽しみながら学べる1年間の独自カリキュラムを通して、子ども達はこれからの社会に求められる「思考力」・「創造力」・「想像力」・「集中力」を自然に身につけていくことができる。

―まずは、D-SCHOOLのカリキュラムの特長について教えてください。

子どもが飽きずに楽しく学べるエンタメ性のあるカリキュラムが魅力


コースは、マイクラ(Minecraft)好きな子供たちが楽しく学べる「マイクラッチコース」とスクラッチを使った「ゲーム制作コース」いう2つのコースがあり、1回90分、月2回の授業の中で、D-SCHOOL本部が開発・提供するコンテンツを教材に、パソコンを使って学んでいきます。

長くおつきあいをさせていただきたかったので、年間を通じて段階を踏んで難しくなるカリキュラムを組み、小学校1年生から中学生までが1年間学べるカリキュラムを24回、その内の半年に1回は発表会を実施しています。

カリキュラムの開発には、現役エンジニア、教員有資格者、外資系企業出身者など多才なバックグラウンドを持つメンバーが関わり、子ども達が楽しみながら学べるエンターテイメント性も取り入れた内容になっているのが特長です。

楽しみながら学べるエンタメ性が魅力のカリキュラム

生徒には、マイクラをずっとやってきた子ども達が多い「マイクラッチコース」


北海道はどうしても所得格差があるので、塾に子どもを行かせたいけど行かせられないという世帯が多いんです。できるだけ費用コストをかけずに、一人でも多くの子ども達や保護者の皆さんに学ぶ機会を提供していきたいという想いから、パソコンの中でできることがいいなということで、このようなカリキュラムを開発しました。

―指導については、どういったことを大切にされていますか。

「新しいことを知ることは楽しいこと」という意識を子ども達に伝える指導を実践


スクールでは、“ともに学び合うこと”を前提に、先生達の持っている知識を子ども達に一方的に与えるという発想ではなく、子ども達が自立して学習できるようにサポートし、自ら進んで取り組んでいくような環境作りに力を入れています

学校の授業での90分、集中力を発揮して教科書を読むなんて無理な話ですが、うちのスクール生達は、こちらが「休まなくていいの?」と思ってしまう位めちゃめちゃ集中します。

学生講師にとっても、スクールでの講師経験は学ぶ所が大きい


それから、これは私のポリシーなんですが、うちの先生方はほぼ9割大学生です。大学でプログラミングを履修している工学系の学生や将来プログラミングを教えることになる教員を目指す文系学生が中心となり、子ども達の指導にあたっています。

私も教えることはできますが、子どもに教えるのは学生が一番有効的だと思います。子どもの立場からすると、大学生ってちょっと年の離れたお兄ちゃんお姉ちゃんの意識なので、素直に心を開いてくれるんですよ。

また、そうした若い先生達をしっかり管理している大人の社員がいることで、さらに保護者との信頼関係も築きやすいと考えています。

―他の教室と異なる点やD-SCHOOLに通うメリットは、何ですか。


まず、スクール形式である点です。個人でやっているプログラミング教室、あとはeラーニングさんなど、うち以外にもロボットプログラミングをやっている所はありますが、スクールとしてやっている所はほとんどありません。

それから、保護者向けのEdTechエドテック)セミナー・勉強会* を2,3か月に1回無料で実施しています。私がたまたま最新の情報が集積する地元の大学院で教育工学を研究していたり、仕事を通じて海外に行く機会もあるので、情報格差を埋めるためにも教育に関する最新情報を保護者の方々にフィードバックしています。こうした活動も他の教室とは異なる点かもしれません。

* EdTechエドテック)とは、Educational(教育)とTechnology(ITテクノロジー)を融合し、新しいイノベーションを起こすビジネス領域を指します。 

北海道の未来のために。まずは地元の教育格差を解消

―今、プログラミング教育市場に参入された理由は、何だったのでしょうか。

スクールを始めた大きなきっかけは、ビジネスの観点よりも地域格差をこれ以上拡げたくないという想いからです。

藤澤さんが、自身の経験や学び、出会いを通じて行きついたのが「地元・北海道の地域格差の解消」


私は昨年9月まで東京の航空会社で働き、仕事を通じてシリコンバレーや深センなどの情報通信産業の最先端エリアに行く機会がある一方で、自身のライフワークとしては、衰退する地域を観光でどう活性化させるかという地域活性化について大学で研究してきました。

また、娘が2人いるので、約15年間PTA活動に参加し、今でも学校評議員や運営委員をさせていただくなど学校に近い所にいたので、そうした仕事とライフワークの中で、プログラミング教育が来年から必須化になる情報をいち早く知っていました。

一昨年位から東京でもプログラミング教室は増えていますが、特に地方にはプログラミング教室がありません。地域の教育とこれからを考えて、まずは私の地元の函館市でやってみようかと思い、航空会社を昨年9月末で退職し、10月に函館市でプログラミングスクールをスタートさせました。


すると、全道各地から問い合わせが殺到しまして。この状況を見て、プログラミング教育の環境がないというのが函館だけの問題ではなく、北海道全体における問題であることを実感したんです。

実際に、文部科学省の全国のプログラミング教育の実態に関する資料でも、北海道が一番遅れているという数字も公表されていたので、これはちょっと問題だなと。それで2018年12月に、航空会社勤務時代にご縁があったサツドラホールディングス株式会社さんと資本提携、完全子会社となり、2019年4月に札幌に2校立ち上げました。

―サツドラホールディングス株式会社とのつながりは?

航空会社勤務時代にご縁があったことと、サツドラさんは流通産業のみならず、AI事業やプラットフォーム作りなどの新規事業を展開していく中で教育事業は不可欠と考え、事業を自社でやるかもしくはどこかと一緒にやるかを検討されていたタイミングでした。

そんな時、我々がスクールを始めたということで、お声掛けをいただいたというのが経緯です。

―「プログラミング教育」によって、子どもたちの未来はどのように変化すると考えられますか。

スピーディーな時代変化についていける人材を育てることを目標としているスクール


開校から半年経ちましたが、保護者からは「もっとやりたい」と言う子どもの変化を聞いたり、学校では目立たないけれどプログラミングではすごい力を発揮する子も出てきています。

恐らく普段学校では発揮していない一面が、スクールに来ると出るのではないでしょうか。こういった所で本当に学ぶ楽しさを感じてくれれば、他の教科にもいい影響がでるかなと期待しています。

スクールでは、子ども達から将来「D-SCHOOLに行っててよかった」と思ってもらえるような学びを提供


また、教室を敢えてスクール形式にしたのは、多様性を身に着けることが重要なグローバル化社会において、スクールの中で自分と違う作品に触れることで新しい創造や発想が生まれると思っているからです。一緒に同じ場所で同じものを作ったとしても、できるものはみんなバラバラです。「それでいいんだよ」ということを理解して、お互いが学び合える環境が大事だなと。

単にスクラッチなどを使って何かを教えるということではなく、いろいろなものを掛け合わせて子どもの可能性を引き出し、成長を伸ばしてあげることができればなと思っています。

2022年までに、全道150拠点を目指す

―今後の教室・授業展開について伺えますか。

道内179市町村あって、どこの地域にも子どもはいます。村や町に小学生や中学生がいるうちは、みんながプログラミングを身に着けてもらいたいですし、生まれ育った場所に拘わらず、教育はできるだけ同じ教育を受けてもらいたいという想いがあります。

そのためには、携わる人間、講師がキーになります。北海道には講師が極端に少なく、プログラミングについて分からない人の方が圧倒的に多いんです。

それを知っているのが、工業高校や高専、情報系や工学系の高等教育機関です。道内で高専があるのは、函館と苫小牧、旭川、釧路の4地域しかありません。加えて、工学系や情報系がある大学や専門学校があるのは、函館や室蘭、登別、帯広、北見、札幌圏くらいです。

これらのエリアは、こうした高等教育機関があるので、連携しながら直営校でもやれると思います。問題はそれ以外の地域です。実際誰が教えるのかという、チューターを育てながら展開をしていく必要があるのです。

北海道の教育業界を底上げする、モデルケースとなるプログラミングスクールを目指す


今、北海道では各市町村が地元の人材育成と人材雇用を確保するために予算立てをしているのですが、我々も自治体と連携をして出前授業を始めることになりました。

今年の夏と冬、我々が各街に行って子ども達に短期のプログラミング教育を行い、そこに地元の大人も来てもらって教え方も知識もすべて地元の方達に教えるんです。そうして地元の人材を育成しつつ、来年からは独立して我々がFC形式で展開していく。そういった形で、小さい町村においても、子ども達にしっかりプログラミングを教える仕組みとシステムを合わせて提案していく予定です。

地方におけるプログラミング教育の啓蒙もスクールとしての任務のひとつ


プログラミング教育事業委託の話も出ましたが、我々はそれを望んではいません。カリキュラムはうちのものを使ってくれれば、遠隔でサポートもフォローもできるので、そういったツールを使いながら地元でタイムリーに子ども達に教えていただきたい。そうした環境を作るお手伝いが地域、街のためにもなりますし、この一連の我々の活動が北海道全体のモデルになればいいなと思っています。

今後は2022年、つまり3年以内に北海道を網羅したいという目標を立ててやっていますので、各地から問い合わせいただいていることもありますし、まだ100%確定ではないですが、北見と苫小牧には年内にスクールを展開するための準備をしています。

―最後に、プログラミング教育を考えている保護者の方、および子ども達にメッセージをお願いします。

まずは、一歩踏み出してみることが大事だと思います。お父さんお母さん、そして先生方もみんなが未経験のことにこれからチャレンジしていかなければなりませんが、新しいことを知るのは楽しいことですので、是非プログラミングを通じて新しい世界にみんなで楽しんで飛び出していきましょう。

そして子ども達には、自分の可能性を信じて、どんどんチャレンジしていってほしいです。プログラミングの良さは、失敗がないことです。失敗だと思ったらそれは気づきなので、失敗したら修正すればいい。一人一人の可能性は、いつどこで開くか分かりません。

小学生の時にできなくても中学生でできることもあるし、決してあきらめることなく自分自身の可能性を信じて、一人ひとりが活躍できる社会になればいいなと思います。


そういう人材をうちのスクールから輩出し、どんどん世界に羽ばたいてもらえたらうれしいなと。これが「社会で通用する18歳、世界で活躍する22歳」という、うちのスクールのテーマでもあります。


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