日本の教育を変える「AI×人」の未来型教材「atama+」とは?―atama plus株式会社代表・稲田大輔氏インタビュー

atama plus代表稲田氏インタビューのアイキャッチ
2017年4月創業のatama plus株式会社が開発する中学高校生向けのAI教材「atama+ (アタマプラス)」は、創業2年で塾・予備校へのサービス導入実績500教室を突破。

この教材を使った「AI×人」がコンセプトの新しい学習法により、導入先では短時間の学習で飛躍的に学力が向上する塾生が続々と現れ始めており、今塾業界でも大注目の学習教材です。

そんな話題の「atama+ 」のカリキュラムや活用状況、そして日本の教育環境の現況とこれからについて、代表取締役の稲田大輔氏にお話を伺いました。

社会で生きる力を伸ばす時間を生み出すための次世代AI教材

―革新的なAI教材「atama+ (アタマプラス)」とは、どのような教材でしょうか。

atama plus株式会社代表の稲田大輔氏

atama plus株式会社代表の稲田大輔氏


「atama+ 」を一言でいうと、「アタマ先生」と呼ばれるAIが、生徒一人ひとりに最適な教材を作るというラーニングシステムです。

生徒が学習過程で経験する「得意」「苦手」「つまずき」「集中状態」「忘却度」といったデータをAIが分析し、各生徒に合わせた「自分専用レッスン」を自動的に作り、学習を効率化することで基礎学力を最短・最速で修得することができます。

最短化することで増えた余剰時間で、社会で生きる上で本当に必要な力を伸ばしてほしい。それが、「atama+ 」という事業を通して、「教育に、人に、社会に、次の可能性を。」をミッションに掲げる弊社が作りたい理想の社会です。

最短・最速という点については、学年や元々の学力を問わず、20時間前後の学習でセンター試験で8割の得点をとれる程に生徒の学力が上がったという結果が出ています。

また、ある塾ではセンター試験本番前の約2週間の冬期講習で「atama+ 」を使ったところ、1日約1時間、合計14時間勉強した生徒全員の平均点が、本番では冬期講習開始前の模擬試験の点数から1.5倍近く上がり、見事第一志望校に合格したという学習成果も生まれています。

atama plusの社員集合写真

atama plusの社員集合写真


塾と一緒にサービスを展開しており、2019年7月時点では高校生に数学、英文法、物理、化学、そして中学生には数学・英文法の教材を提供しています。今後、英文読解・英単語もスタートする予定です。現在、全国トップ100の塾のだいたい2割強、Z会や学研、駿台、栄光といった大手塾を中心に全国のいろいろな塾で「atama+ 」を導入いただいています。

―なぜ、最短・最速で基礎学力を修得できるのでしょうか。

よく聞かれるのですが理由は簡単で、勉強の仕方を大きく変えているからです。

日本の従来の学習は、教科書の順番通りに学び、テストの頻出パターンを暗記し、理解不十分でもそのまま次へ進むというパターン学習です。ですが私達が提供するのは、教科書順ではなくつまずいている根本単元からの学習、そしてパターン暗記ではなく基本概念を習得し、完全に理解してから次にすすむ学習なんです。

医療の世界で例えて言うなら、痛み止めの処方ではなく、生活習慣から改善しましょうという学習スタイルです。

一人ひとりに合わせたパーソナルな教育カリキュラム

―生徒一人ひとりに合った教材「自分専用レッスン」について教えてください。

例えば、Aという単元の学習が分からない場合、A単元の問題を繰り返し分かるまで学習するというのが従来の学習法ですが、これは非常に非効率なやり方です。

実は、A単元が分からないというのは、BやCといった他の単元でのつまずきが原因となっていることが大半です。そのつまずきをクリアしない限り、A単元をやり続けても何となく分かった感しか得られません。ですが、本当はどこに問題があるのだろうと見つけるのは、とても困難なことです。

atama plus株式会社代表の稲田氏

「atama+ 」は、つまずきの本当の原因を特定して必要な箇所を必要な教材で必要な量だけ学習する、という『さかのぼり学習』を強みとしています。本当の原因を探すにあたり、A単元に関係する単元はどこなのか、どういうことが分かっていないといけないかというのをAIで瞬時に計算します。つまずきに関連する単元は複数あるので、その中でどこに問題があるのかをさらにAIが診断します。

診断は、A単元に関連する診断テストをタブレット上で生徒に受けてもらいます。各個人によって問題量や難易度が変わる診断テストを受けてもらうことで、どの単元をどれくらい理解しているかの習熟度を計ります。その習熟度のデータから関連単元に対する生徒の理解度を計り、生徒個人に合った問題の内容、量、学習する順序を決めていきます。

atama plusのデモ画面

atama+ のデモ画面


このようにしてできた、人によって勉強するべき単元、教材、分量、難易度も違う、一人ひとりに合わせたパーソナルな教育カリキュラムが「自分専用レッスン」です。

自分専用レッスンを生徒の数だけ作るにあたり、先程の習熟度に加えて、生徒に関するいろいろなデータをとっています。学校の学習進度や本人の目標、学習履歴、回答時間、忘却度や集中度などのデータをとりながら、一人ひとりに合った自分専用レッスンを作成しています。

―学校や一般的な塾のカリキュラムとの違いは何でしょうか。

学校のカリキュラムは教科書に従って進めていくだけなので、カリキュラムは1パターンしかありません。
集団塾はレベル分けされるので数パターン、個人指導塾では教室長の方針にはよるものの何十パターン位はできます。ですが、私達のカリキュラムは10^3807パターン以上なので、生徒にぴったり合ったものを作ることができる、「究極の個別指導」だと思っています。

また、自分専用レッスンには診断テスト、講義動画、演習問題といったいろいろな教材が出てきます。さらに問題1問を解くごとにデータが変わるので、カリキュラムは常にアップデートされます。通常の個別指導だと、一人ひとりのカリキュラムを作成するにしても最初に作って終わることが多いです。生徒の状態は変わり続けるので、問題を解くごとにカリキュラムが書き換わっていくのが「atama+ 」の自分専用レッスンの特徴です。

―「atama+ 」を使う生徒や保護者、また導入先の塾からの反響はいかがですか。

「atama+ 」を使っている生徒に満足度調査を行ったところ、95%が満足で不満足は0%という結果でした。

満足の理由については、さかのぼり学習による効果やパーソナルなカリキュラムに魅力を感じている、それからAIの人情お構いなしの冷静な判断と指示というのも評価が高いようです。人間の指導では、「これぐらいでいいよね」ということで前に進みますが、AIはそれをさせてくれません。できるようになるまでひたすらやり続けることになるので結果的に成績が上がり、その結果に生徒が満足するんです。

そうした成果が生徒間の口コミで伝わって入塾者が増えたり、塾長の各先生のスケジュール調整に割く時間が大幅に減り、本来やるべきことに時間を使えるようになった等、塾の運営面でもメリットが生まれています。

「AI×人」という新しい教育モデル

―「atama+ 」は、実際の授業ではどのように活用されていますか。

atama+導入塾の授業の様子

atama+ 導入塾の授業の様子(Z会プレアデス教室)


私達は、人の役割というのをとても大事に思っていて、AI×人で新しい教育を作ることに取り組んでいます。従来の個別指導塾では、教える「ティーチング」と褒めたり励ましたりする「コーチング」という両方が先生の役割でしたが、私達が提供する新しい教育モデルは、その2つの役割をAIと人で分担するというものです。

得意なところも苦手なところも異なる塾の生徒一人ひとりにつきっきりで教えるのは大変です。そこで、生徒一人ひとりにAIの先生がついてティーチングすることによって、人間の先生はコーチングにフォーカスすることができます。

それをサポートするアプリも提供しています。生徒の学習状況や目標に向けての進捗度などをAIがリアルタイムで解析し、コーチングに最適なタイミングや生徒へのメッセージ提案を先生に通知します。その通知を参考にしながら、先生が生徒を実際に褒めたり、指導を行うといったコーチングを実践しています。

―「atama+ 」を導入する塾の差別化はできるのでしょうか。

塾が提供するのは、「AI×人」の新しい教育です。私達はAIの教育を作っていますが、それに人がどのように関与するのかは塾によって全く異なります。

通う生徒の学力層にもよりますが、例えば学力が低めの生徒が集まる塾では、できるだけかまってあげるようなコーチングをしたり、学校の試験対策のために「atama+ 」を使いたい生徒がいれば目標設定に注力するという塾もあります。

「atama+ 」というツールを導入しても、活用の仕方が塾によって全然違うんですよ。先生がAIの力を上手に活用している塾は、成績が大きく伸びる生徒が続出している気がします。

これからの日本の教育について

―日本の教育業界の現況は、いかがでしょうか。

atama+を使って学習する子どもの様子

テクノロジーの活用という意味では、世界的にみて日本は非常に遅れていると思います。いろいろな国のエドテック(教育×IT分野)を見てきましたが、世界の教育現場が大きく進化していく中、日本だけは昔と同じようなことをやっているというのが現状です。

教育全体のマーケットとしては日本は世界3位です。ですが、エドテックの領域ですと、日本は後進国で、直近3年間で10億円以上資金調達したスタートアップは、世界で30社ある内の大半がアメリカや中国、インドで、日本は弊社しかいません。

それほどに日本の教育業界ではテクノロジーを活用した流れは生れてきていません。

―今後、日本の教育はどのように変化していくと思われますか。

今、大きく変わるタイミングだと考えています。遅れてはいますが、そこは私達が頑張ればいいと思っています。

そもそもエドテックは日本の方が可能性があるんです。日本には、塾という大きなマーケットがありますが、他国では塾があまりないんです。塾は民間領域なので、イノベーションが起こりやすい。日本人は6、7割の方が塾に通うので、塾業界が変われば日本の教育が大きく変わると考えています。

現在、公共の教育機関からも話をいただきますが、リソースが限られているのでサービス展開は塾に絞っています。これから塾で当たり前にテクノロジーやAIを活用して勉強する時代になると思うので、そうなった時に学校も自然と変わっていくのではないでしょうか。

「これからの社会で活躍する人材をたくさん生み出していくような教育を作りたい」と語る稲田氏

「これからの社会で活躍する人材をたくさん生み出していくような教育を作りたい」と語る稲田氏


―稲田さんにとって、伸ばすべき「社会で生きる力」とは?

これまでの自身の経験から、日本人は自己表現力が弱いと感じています。考えていることを言葉にして人に伝える力が弱いので、それを鍛えるという経験を幼少期から積み重ねてほしいなと思います。

ですが、そもそも日本の子どもたちは社会で生きる力を身につけなければいけないとはあまり思っていなくて、なぜかと言うと、子ども達が社会に出ることを楽しいと思っていない、社会に出ることにワクワクしていないんですね。

中高生の話を聞いていると、社会人はお金を稼ぐために満員電車に乗って、苦手な上司にいろいろ言われて嫌な感じなんでしょ、というイメージがあるようなんです。そんなことを思っている子どもに社会で生きる力を見つけようと言っても、そもそも嫌ですと言われてしまいます。

なので、まずは社会に出て楽しく生きている大人とふれあうことで、社会に出るのは楽しいという感覚を持ってもらえるのではないかなと。そこからやらないと、社会に出る力を身につけましょうと言っても、先程の自己表現力を鍛えるようなところまで行きつかないと思いますね。

―稲田さん、ありがとうございました!
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