(レポート)「未来の笹塚小学校をつくろう 最終成果発表会」GMOインターネットグループと渋谷区による問題解決学習・教育版マインクラフトを使った
半年にわたった探求学習は、先生方と共にGMOインターネットグループの開発者がカリキュラム開発から参加、ゲストティーチャーとして授業も行ってきました。

学校と共に、地域・企業・教育委員会・NPO団体など、さまざまな「おとなの力」が結集した実験授業。そのすべてを吸収し、おとなの想像を超えた「成果」を見せてくれた子どもたちには驚かされるばかりです。みんなで子どもの成長を促す素晴らしい取り組みをぜひ多くの教育関係者、あるいは保護者に知っていただきたく思います。
KidsVALLEY 未来の学びプロジェクト

KidsVALLEY 未来の学びプロジェクトとは
渋谷に拠点を構えるGMOインターネットグループ株式会社、東急株式会社、株式会社サイバーエージェント、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社MIXIの5社は、渋谷区教育委員会と連携し、これまでも区立の小中学校でさまざまなプログラミング教育支援を行ってきました。この活動の一環としてGMOインターネットグループでは
- プログラミングスキル
- 創造性
- コラボレーション力
- 問題解決能力

10月から翌年3月まで続いた探求学習の成果を発表!
それが「未来の笹塚小学校をつくろう~より多くの人が幸せな社会を目指して~」です。以降ではこの実験授業について、さらに詳しく解説します。
未来の笹塚小学校をつくろう~より多くの人が幸せな社会を目指して~
実験授業がスタートしたのは2022年10月からですが、それ以前から担当者であるGMOインターネットグループシステム統括本部アプリケーション開発本部 ホスティング・クラウド開発部 成瀬 允宣さんが、笹塚小学校の先生方とカリキュラム開発に携わってきました。カリキュラムをごく簡潔にご紹介すると次のとおりです。
単元の活動計画
① 15年後の笹塚の街の中心となる新しい学校のアイデアを考える |
② 子ども・地域・SDGs 3つの視点からニーズをまとめる |
③ 地域の方々にアンケートをし、「子ども視点」「SDGs視点」の情報を集め、整理・分析していく |
④ 子どもの願いと社会の願いを満たした未来の学校の企画書を作る |
⑤ 企画書を発表し合い、互いにフィードバックをする未来会議を行う |
⑥ 修正した企画書をもとに、コンセプトを練り直し最終形にする |
⑦ コンセプトを実現する未来の学校を作る
|
⑧ 発表(プレゼンテーション)の練習 |
⑨ 未来の学校を考える活動を通じて学んだことの振り返り |
教育版マインクラフトを用いた問題解決型学習・探求学習に期待できる効果
実践体験型PBLでは、企業や地域などと連携しながら「問題を見つけ、情報を集め、解決策を考える」ことで、コミュニケーション力や自ら考える思考力が育まれ、情報リテラシーが身につくことが期待されています。さらには体験を通じて学ぶことでずっと記憶に残り、得たスキルや経験値が定着しやすいと言われています。また、今回の授業では子ども達に人気のマインクラフトを活用し、ITスキルに楽しく触れることでプログラミングへの興味を促し、次世代に必要な資質や能力を身につけるための「入口」となることも目的のひとつとなっています。
現役エンジニアから学べる「さまざまなスキル」は大きな財産に
プロジェクト制作のプロセスを通じて「協働する」コラボレーション力が身につく

互いのタブレットを確認しながら、額をあわせるようにして会議中!
成瀬さんをはじめとしたGMOインターネットグループのスタッフは、授業や発表にさまざまな「エンジニアのスキル・思考」を組み込むカリキュラムを、笹塚小学校の先生方と共に作りました。
そのひとつが、未来の学校のアイデアをよりわかりやすく発表する手法としてマインクラフト教育版を取り入れたこと。マインクラフトは子どもたちに人気のゲームで、3Dの立方体ブロックを組み立てるようにして建物や家具、街などが作れる創造性の高さが教育現場になじみやすいメリットがあります。
さらに教育版はクラスメイトと共同作業ができるので、他者と協働しながら難しい課題の解決をさぐり、プロジェクトを作り上げていく過程を体験できます。コミュニケーションやコラボレーションの力はチームのパフォーマンスを向上させることから、IT業界に限らず、多くの企業が「重要なスキル」としているところです。また、成瀬さんは、こうしたプロセスはソフトウエア開発と多くの共通点があると指摘しています。
プログラミングスキルを実践的に学べる

GMOインターネットグループ・成瀬さんによるプログラミング授業
マインクラフトによるプログラミングは、子ども達にとって未知の挑戦です。専用のコードビルダーを使用しながら、成瀬さんは「プログラムをうまく活用すれば、より効率的に作業ができること」を指導してきたそう。
初めてプログラミングに挑戦する子どもも多い中、指示ブロックを組み合わせるビジュアルプログラミングに対する関心は高く、意欲的に学んでくれたそうです。

マインクラフトの世界観をうまく活用して「自分たちが考えた未来の学校」をいかに表現できるかがポイント
「クリックひとつで、作り上げた未来の学校内を移動できるようなプログラミングを行っているので、発表もスムーズに進む」と成瀬さん。マインクラフトのバーチャルな映像は、まるで学校の中をのぞいているような感覚があり、発表の内容がよりリアルに伝わってきました。
ライトニングトークで伝える力を磨く

壇上で発表をするチーム。見ている5・6年生たちもタブレットを使い、Teamsでコメントを投稿!
発表には、IT技術者の発表でよく用いられる「ライトニングトーク」形式(ごく短い時間でテンポよくまとめる形式)での発表を取り入れました。各チームの持ち時間は5分、終了1分前には鐘がなります。大人でも苦労するような短時間でしたが、子ども達は見事にプレゼンをまとめあげ、これまで何度も練習を繰り返してきたことが伺えました。

コメントを投稿しているのか、発表前の最後の打ち合わせなのか?真剣な表情でタブレットを見つめている生徒さん!
発表に関するコメントは、会場内にある大きなモニターにリアルタイムで映し出され、さながらYouTubeの実況中継のよう!臨場感あふれる演出によって、とても活気あふれる発表会になりました。
さぁ、前置きが長くなりましたが、ここからは笹塚小学校の生徒さんたちによる、「未来の笹塚小学校 成果発表会」の様子をレポートしましょう!
「未来の笹塚小学校 成果発表会」は力作揃い

渋谷区教育委員会教育長の五十嵐俊子さん
当日は笹塚小学校6年生計57名が、63名の5年生や笹塚小学校の先生方、渋谷区教育委員会の方、さらにはメディアを目の前にして堂々たる発表を行いました。
冒頭では渋谷区教育委員会教育長の五十嵐俊子氏が、「『未来の学校をつくる』をテーマに子どもや地域の目線、SDGsの観点から問いを見つけそれを探究し、プログラミングで表現し提言することは「未来の学び」です。私たちもこれからの学校づくりに活かしていきたいと考えています」と子どもたちに向けて、メッセージを送りました。
司会進行は前述の成瀬さんです。成瀬さんはとてもフランクで、まるで子どもたちの大きなお兄さんのよう!そのせいか、子どもたちは緊張した様子もなく、壇上に登ってものびのびとしていました。

GMOインターネットグループシステム統括本部アプリケーション開発本部 ホスティング・クラウド開発部 成瀬 允宣さん
今回の発表で印象に残ったが、「コンセプト」と「まとめのことば」です。SDGsの課題を取り上げたり、子どもたちが日頃から思っていた「こんな学校だったらいいのに」という気持ちだったり、「地域の人とどう交流できるか」だったり、さまざまな視点から練り上げられたコンセプトは非常に興味深いものでした。
何より、コンセプトに対する「子どもたちが見つけた答え」が素晴らしいのです!たとえば……。
【子どもたちが描いた未来】地球の環境と共にある学校
学校で廃棄される食品の量に触れ、そこから「地球の環境と共にある学校」というコンセプトを発表したチームは、生ゴミの処理に大量のエネルギーが使われていること、そして発電の資源を外国に頼っていることに言及し、未来の笹塚小学校では「屋上で発電をする」といったプレゼンを行いました。「ひとつの学校が行っても、あまり意味がないかもしれません。でも誰かが最初の一歩を踏み出すことで、世界に広がっていく一歩になります」
環境とエネルギー問題に踏み込み、笹塚小学校から「未来に向かって取り組んでいく」という強い意思が感じられる内容です。たとえ最初は広がらなくても「誰かが始めることが大切なんだ」という気づきが素晴らしいですね。
【子どもたちが描いた未来】みんなが楽しく学べて個性を最大限に活かせるように育てる学校
「みんなが楽しく学べて個性を最大限に活かせるように育てる学校」では、楽しい!行きたい!学校をめざし、いろいろなスポーツにチャレンジできるよう道具が置かれたスペースを作ることや、自習教室、生徒が受けたい授業を受ける選択授業スタイルのアイデアを提案。「自分で選ぶことで、『やらされている感』のない授業にしたい。未来の子どもたちが『明日が楽しみ』と思える学校を作りたい」
このことばには、多くの教育関係者、そして保護者も思わずハッとするものがあるのではないでしょうか。

他のチーム発表を見つめる子どもたちのまなざし。未来を見据える「まなざし」でもあります。
【子どもたちが描いた未来】災害に強い学校をつくろう
「災害に強い学校を作ろう」では、床発電や災害用トイレの設置を紹介し、「僕たちは災害による被害を少なくできると信じています」と語っただけでなく、「いや、僕たちが少なくするんです!」
と力強く宣言していました。最後に「僕たちがやるんだ」という気持ちを強調した点がプレゼンテーションとしても素晴らしいところでした。
【子どもたちが描いた未来】地域との交流をしながら国際的な問題にも取り組む学校
世界的な課題に目を向け「地域との交流をしながら国際的な問題にも取り組む学校」をコンセプトにしたグループは、日本にいると実感はないけれど、難民を受け入れる施設も学校に作り、いろいろな国の本がある図書館や絶滅危惧種を保護する施設も作ることで、「世界の問題を実感できる、実感してこそ解決につなげていける」
とまとめました。実感しないと「本気で解決しようという気持ちになれない」と考えた子ども達の思考に感銘を受けました。

渋谷区教育委員会・指導主事の柳田 俊さん
14チームすべての発表が終わると、総評として渋谷区教育委員会・指導主事の柳田 俊氏が登壇。「6年生の皆さんの発表にワクワクしました。最先端の学びを通じて得た、0から1を生み出す力で社会は動かせます」と未来への展望を語り、最後に全員で記念撮影をして無事に成果発表会は終了しました。
(ライターコメント)実際のまち・会社を「見て・感じて・気づく」学びもある

みんなが楽しく学べる学校をコンセプトにした発表の中で、具体案として「社会科見学を増やす」というものもありました。「『自分の目で見る・実際に触れる』そこから得られる学びこそ必要ではないか」と訴えているのが印象に残りました。
それを強く感じたのが休憩時間。子どもたちは一斉に大きなガラス窓のもとに集まり、渋谷の街を見下ろします。
「すごいよね、なんか、すごいよね」
と、興奮した面持ちで隣の子と肩を組んで、眼下に広がる風景を見つめます。改めて「自分たちが暮らす街」を俯瞰することで、もしかしたら「気づき」があったかもしれません。
今回の会場は、社食やフリースペースを兼ねた「GMO Yours・フクラス」をパーティションで区切って作られた場所でした。出入りの際には、ノートパソコンを広げてひとり黙々と作業をする人や、資料を広げて打ち合わせをしているグループがいるスペースを通り抜けます。
円形のコーナーで数人の女性がスナックとコーヒー片手に談笑している姿もあり、「なんか食べてる」「ここ会社でしょ?」「食堂だよ」なんて話している微笑ましい子ども達。そびえたつビルの中に何百人という人がいて、ひとりひとりが何らかの役割を果たし、仕事をし、社会を支えていることの一端に「触れた」子ども達はどのような発見をしたのでしょうか?
この発表会がGMOインターネットグループの社内スペースで開催されたことによって、子どもたちはまさに「学校を出て、社会の場で見て、触れて」たくさんの発見・気づきがあったとしたら、とても嬉しいことですね。
子どもたちは「未来」を見つめている!
「未来社会」を支えるのは、子どもたちです。この日子どもたちが発表した「未来の笹塚小学校」は最初の一歩です。学校づくりから、街づくりへ。持続可能な社会の実現へ。授業と発表会を通じて、子どもたちは「自分たちがが通う小学校」「自分たちが暮らす街」に対する愛着や誇りが芽生えたのではないでしょうか。その思いが積み重なって、未来が広がっていきます。
この先、さまざまな難題や課題にぶつかることがあっても、テクノロジーと人の力を合わせて解決していくに違いありません。何かと暗い話題の多い時代にあっても、子どもたちは元気いっぱい、未来への展望が広がる、素晴らしい成果発表会でした!
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