児童は熱心に話し合いながら試行錯誤しながら協力し、普段とは異なった授業を楽しんでいました。この記事ではコエテコ取材班が密着した様子をお伝えしていきます。公立小学校でのドローンを用いたプログラミング教育について知りたい方はぜひご覧ください。
STEAM教育の一環でドローン教室を開講
番町小学校は国が最初に作った6つの学校のうちの1つ。明治4年に開校し、創立から150年以上の歴史をもつ由緒正しい学校です。
「親子3代で番町小学校出身というご家庭もあります。『来年はこんなことをしますよ』と報告すると、楽しみにしてくださるんです」とお話してくださったのは傳田学 校長です。今回のドローンプログラミング教室にかける思いをお聞きしました。
ーー番町小学校ではSTEAM教育* を取り入れているそうですね。導入のきっかけを教えてください。
時代に合わせて、児童が多くの選択肢を持てるようにカリキュラムを組みたいと考え、今年からSTEAM教育を始めました。
今回のドローンをはじめ、音楽会社と連携した音楽制作体験、テレビにご出演されるような方を呼んでの自然観察会など、児童が幅広い体験をできるように心がけています。初年度なので児童たちにも新鮮なようで、前向きに取り組んでくれています。来年も継続できるよう、今年は試行段階です。
ーー今回ドローンプログラミング教室を開校したねらいは何ですか?
プログラミングをして実際にドローンが飛ぶまでの工程から、社会の仕組みを感じてもらえればと考えました。3・4年生でマニュアルを理解して、5・6年生で実生活に活かす方法を学んでくれればいいなと思っています。
ーー児童たちもうれしいでしょうね!
そうですね、すごく楽しそうにしてくれています。普段の授業と違い、タブレットに触れながらドローンが実際に飛ぶのが児童たちはうれしいのでしょう。その気持ちをきっかけにプログラミングや技術工学への興味が少しでもわいてくれればと思います。
また、このような体験型学習が、学校に来たいと思ってもらえるきっかけになればいいなという思いもあります。学校に意識が向く施策の一つとして、今後も積極的に取り組んでいきたいです。
ドローンプログラミング教室開始!
チャイムが鳴り、一人一台のタブレットを持った小学6年生の児童たちが続々と体育館に集まってきました。跳び箱やカラーコーンが並んだ様子をみて「なんだこれ?」「なにするんだろう?」と疑問の声をあげています。
整列してから、インストラクターの説明が始まります。
今回の課題は以下の通り。
- ドローンを離陸させ、カラーコーンの下を潜る
- 潜った先で選択した図形を描く
- 再度カラーコーンの下を潜る
- 最後に跳び箱を跳び越えてゴール
なかなか難易度が高そうな課題ですが、児童たちはクリアできるのでしょうか?
「では班に分かれて実際にスタートしてみましょう!」という声をきっかけに作業が始まりました。まずは、描く図形を「星型・八の字型・六角形・五角形・正三角形」から、みんなで話し合って選びます。
立ったまま話し合う班、座って小さくなって相談する班、とさまざまです。
ーー児童の様子をご覧になって、いかがですか?
担任の先生:
そもそも児童はタブレットをいじるのが大好きなので、積極的に取り組んでいる子が多いです。運動よりも、プログラミングのように考えて手を動かす作業が得意な子もいるので、普段と違った長所が見られるのもいいですね。
最初の打ち合わせを終えて、ドローンがカラーコーンを潜るのに必要な高さと距離を測っていきます。
「ただ進んだだけだとカラーコーンにぶつかっちゃうから、回転させなきゃいけないよ」などと、事前に念入りに打ち合わせをする班もありました。
早速、プログラムを組み始めている班も。一人ひとりが自分のタブレットを見ながら、スクラッチでプログラミングしていきます。
プログラムを組み終わり実際にドローンを飛ばしてみますが、カラーコーンにぶつかるシーンがチラホラ。墜落してひっくり返ってしまったドローンもありました。
どの班も、失敗してもめげずに試行錯誤していきます。
数十分にわたり試行錯誤を繰り返して徐々にうまくいくようになり、ドローンが進むたびに喜ぶ児童たち。
みんなで様子を見守る中…。
ドローンが跳び箱をこえました!
最後のゴールまで到達したときは、みんなで拍手喝采でした。
ーー今回のドローンプログラミング教室はいかがでしたか?
担任の先生:
すごく楽しそうでした!成功した班もあったのでよかったです。普段の授業とは児童の目の輝きが違いました。みんな前のめりでしたね。
企画・運営を行ったドローンネットのインストラクターにインタビュー
ドローンインストラクター 宮城 黎氏
ーー児童たちの様子はいかがでしたか?
前回の教室が夏休み前で3カ月たってしまったんですが、思いのほか内容を覚えていてくれている子が多かったです。本当は1カ月ごとに取り組んで、プログラミングの方法や思考を根付かせたいところです。
スクラッチは前回も取り組みましたが、今回はドローン用のコマンドが初めてなので苦戦している子が多かったです。ドローンの接続時間などは、児童にとってはもどかしかったでしょう。
今回のコースは難しめに作ったのですが、対応できていて驚いています。大人が強制するのではなく、児童が自ら積極的に楽しんで取り組んでくれるような教室にしたいですね。
児童たちが楽しめるよう、念入りに準備をしてらっしゃいました
ーー御社では、通常は大人向けのドローン教室をしてらっしゃいますよね。大人と児童で教えるにあたって違いはありますか?
大人は「ドローンの資格を取りたい」という目標があって教室に来ますが、児童の場合はドローンだけでなく、プログラミングなどを通した『思考力の育成』が目的になります。児童向けだと言葉をできるだけかみくだいたり、プログラミング以前の説明が必要だったりという難しさもありますが、ドローンの枠組みにとらわれる必要がないので大人向けとは違う取り組みができ、楽しいです。
ーー今回が初の児童向けのドローンプログラミング教室ということですが、どのようなところにやりがいを感じますか?
児童たちの将来の選択肢を広げるきっかけになっていると思うとやりがいがあります。今の大人たちが引退した後の未来を担う児童たちに、何をどう教えたらいいのかを考えるのは楽しいです。
プログラミングやロボットに1%でも興味を持ってもらうことで、児童たちの将来にポジティブな影響を与えられたらと考えています。どう活かしていくかは児童たち次第ですが、どんな分野でも必要な「思考力」を身につけるお手伝いができればうれしいですね。
ーー今後の展開を教えてください!
今回の番町小学校のプログラムをきっかけに、色々な教育機関向けの教室を開講していきたいと考えています。
小学3年生は小型ドローンの操縦から始めて、成長とともにプログラミング要素を加えていく。そうして、児童たちのプログラミング的思考を強化していければと思います。
番町小学校には、ドローンを数台ご購入いただいています。貸し出し用のボールと同じように、学校の備品としていつでも遊べる環境を作ってくださいました。多くの児童に触れてもらって、ドローンやプログラミングがより身近な存在になるとうれしいです。
ーーお昼休みにドローンやプログラミングで遊ぶ児童が現れる時代も近そうですね。楽しみです。本日はありがとうございました!
番町小学校でいつでも遊べるドローン
番町小学校で行われたドローンプログラミング教室。熱心に取り組む児童たちの姿が印象的でした。思考力だけでなく、話し合って協力して取り組む姿勢や一つのものを作り上げる達成感なども得られたのではないでしょうか。
ドローンを活用したプログラミング教育は、今後ますます広がりを見せていきそうです。