今回は、さまざまな問題を抱えている子どもたちを従来の支援のみならず、自立し社会の一員として活躍できる未来までを見据えたサポートを行っている、ウィズ・ユー世田谷駒沢の代表社員 高橋南央也(たかはし なおや)さんにお話を伺いました。
社会へ踏み出す一歩には、親子ともに勇気がいります。このインタビューが、そんな方達の小さな助けとなれば幸いです。
児童発達支援・放課後等デイサービスとは?
——そもそも、放課後等デイサービスとは、どういった福祉支援事業なのでしょうか。
高橋さん:
放課後等デイサービスとは、発達障害のある、またはその心配や不安のある子どもたち(18歳まで)を対象に、お子さまをお預かりし、様々な活動を通して生活能力やコミュニケーション能力を高めるために必要な訓練をする児童福祉法に基づく指定障害児通所支援事業所です。
放課後等デイサービス引用:障害児支援施策について/こども家庭庁支援局障害児支援課
授業の終了後又は休校日に、児童発達支援センター等の施設に通わせ、生活能力向上のた めの必要な訓練、社会との交流促進などの支援を行う
——そもそも、なぜ児童発達支援、放課後等デイサービスを立ち上げたのでしょうか?
高橋さん:
私の子どもが自閉スペクトラム症の診断を受けたことが一番大きなきっかけではありますが、原体験として、幼馴染との関わりがありました。
その子は耳が聞こえなかったため、ろう学校に通い、生活力をつけました。そこでプログラミングを習得し、今では大手企業の障がい者枠で活躍しています。
世の中には障がい者が働ける作業所などもありますが、個性や才能を活かせば、もっと社会で自立して生きていく道や選択肢があるのだと、幼馴染のライフスタイルを見て強く感じました。そうした未来につながる支援を行いたいと思い、放課後等デイサービスを立ち上げました。
社会への一歩を踏み出す力を育む「放課後等デイサービス」
——発達障害などのお子さまは、たとえばウィズ・ユーのような福祉・支援サービスで社会への扉を開いていく機会がないと、難しい面があるということでしょうか。
高橋さん:
そのような一面があることは否めません。支援を受ける機会がないまま難しさを抱えた状態でいると、お子さまがなかなかコミュニティに溶け込めないことがあるんです。学校になじめず、学習にも遅れが出た状態が続くと、「あれもできない、これもできない」と失敗体験が積み上がってしまいます。
すると不登校になってしまうなど、二次的な困り事も増える傾向があります。その結果、社会に出ていく機会を失ってしまうのが、一番の問題です。
放課後等デイサービスの支援を受けると、生活、社会、学習の苦手をカバーしていけます。
そのうえで個性を伸ばして、自立した生活を営めるように、スモールステップで成功体験を積み上げていく。お子さまそれぞれに難しさや生きづらさはあるでしょうが、正しい支援を受ければ、失敗と成功を繰り返しながら、未来につながる成長が期待できます。
——放課後等デイサービスを行っているウィズ・ユー世田谷駒沢では、どのようなお子さまを対象に、どのような福祉サービスを行っているのでしょう?
高橋さん:
ウィズ・ユー世田谷駒沢は「障害児通所支援事業」にあたるため、支援を受けるには、世田谷区から「通所受給者証」の交付を受ける必要があります。
交付の対象となるのは、いわゆるグレーゾーンとよばれる発達に何らかの課題があるお子さまや、不登校のお子さまなどです。こうしたお子さまに対して、生活、社会、学習という3つの柱を基本に、将来的に自立し社会の中で生きていくための力をつけるための支援を行うのが我々の役目です。
——施設に通う頻度はどう決まるのでしょうか?
高橋さん:
受給者証には、支援施設に通える上限日数が定められています。基本的にはその上限日数をもとに、ひとつの施設に通うのか、複数の施設を組み合わせるのかなどを相談しながら、通所ペースを決めていくことになります。
ただし、施設が受け入れられる定員は決まっていますので、お近くにあまり施設がなかった場合は通所を断られてしまい、上限ぴったりまで利用できない可能性もあるのが実情です。
——いわゆる「学童」とはなにか違うのですか?
高橋さん:
放課後等デイサービスは、放課後に過ごす場として「障がい児の学童」と呼ばれることがあります。しかし、発達の課題に合わせて療育のプログラムを提供する点で、一般的な学童とは違います。
放課後等デイサービスの施設には児童発達管理責任者がいます。この責任者が療育計画をたてて、児童指導員、スタッフとお預かりするお子さまの情報を共有。そのうえでサービス担当者会議を定期的に行い、認識を合わせて、プランを実施していきます。
お子さまひとりひとりが抱えている課題や難しいと思われることを把握し、解決や改善するための教育計画をたててアセスメントを行います。お子さまの過ごす様子をしっかりとモニタリングをして、フィードバックをしながら、より良い方向に向かうようにしています。
——お子さまの成長について段階を追いながら、それぞれの困りごとを解決する、乗り越えていくようなイメージですね。
高橋さん:
たとえばADHDのお子さまだと注意欠如や多動衝動性からくる特性があり、買い物時に並ばないといけないレジ待ちの場面で動き回ってしまうとか、忘れ物が多く目の前のことに集中すると周りの状況が見えずに約束の時間に遅れてしまうといった課題があります。
お金とか時間の管理とか、電車やバスに乗るとか、ひとつずつ、少しずつ、生活スキルを身に着けていきます。
——基本となる生活スキルはトレーニングで少しずつ身につくわけですね。では、「他人と共存する」などの対人スキルに関しては、どのように支援する、あるいは教えていくのでしょう?
高橋さん:
対人関係については、「集団療育」といって、小さなグループの中でルールを覚えるようなトレーニングがあります。
机を並べて、5分程度の短い時間を決め、「この時間帯は、座っていましょう」というルールをまず守れるようにしていきます。先生もグループに入ってロールプレイをすることが多いですね。先生と一緒に具体的な場面を演じることで、社会生活で必要なスキルを学びます。
たとえ5分でも、ルールを守れた経験を積めれば、それがひとつの成功体験となっていきます。
このように、成功体験を積み上げながら、基本となる生活スキルを身につけていくのです。
同時に、個性や才能を伸ばしていくことも重視しています。画一的な「みんなで一緒に歌をうたいましょう」といったやり方ではなく、ひとりひとりの興味や関心を重視して、無理強いをすることなく活動をしています。
お子さまと保護者に寄り添うケア
——放課後等デイサービスを必要とするご家庭は、どのような流れでこちらのようなデイサービスや施設にたどり着くのでしょう?
高橋さん:
一番多いのは、自治体が実施する検診などで発達の遅延を指摘され、発達検査を経て、相談窓口から施設を案内されるケースです。保育園・幼稚園・小学校と連携している相談支援から「こういう施設がありますよ」と紹介されていらっしゃることも多いですね。
いわゆるグレーゾーンですと、「普通に学校にも通っているのだけど、いろいろと大変で困っている」というパターンも少なからずあります。ですから、私自身が直接学校に出向いて、このようにサポートさせていただきますよとお話して、アプローチすることもあります。
——座っていることが難しい、じっとしていられない、実際にそういうお子さまに対して不安を抱える保護者としては、相談という最初の一歩こそ、なかなかハードルが高いように思うのですが……。
高橋さん:
ええ、そうですよね。冒頭でお話したように、私の子どもも自閉スペクトラム症です。私自身にも経験がありますが、初めての子育てですと、障がいに対する知識もないわけです。
それでも皆さん、わが子のためにいろいろ調べて、何かしらの相談窓口にたどり着くのですが、正直なところ学校や自治体の相談窓口だけでは受け止められないこともあります。
そこで私たちは、保護者のお話をじっくり聞き、何かしらの答えを導き出せるよう一緒に考えます。お子さまを支援するのと同じくらい、保護者に寄り添い、気持ちを共有することも大切だからです。
放課後等デイサービスに通うメリットはお子さまだけではなく、保護者へのレスパイトケア* にもなるのです。
参考:放課後等デイサービスガイドラインを用いたサービス提供の実態把握の為の調査/厚生労働省
発達障害や難しさを抱える子どもたちの居場所を作るのは社会課題
——放課後等デイサービスを行っている施設数が少ないというお話でしたが、それは社会全体の問題でもありますね。高橋さん:
施設数とニーズのミスマッチには、診断基準が変わったことも影響しています。たとえば、ひと昔前は「自閉症」と呼ばれていた「自閉スペクトラム症」は、精神的な病気から脳機能障害として認知されるようになりました。その結果、行動特性なども含めて早期から療育をしましょうという方針になり、受給者証の交付も増えました。
この変化により、これまでであれば支援対象になってこなかったお子さまも対象となり、需要が増えました。しかし、それに対応できる施設は足りておらず、いわゆる「待機児童」のようなお子さまが出てしまっているのです。
施設はそれぞれ、運動や聴覚、言語など特化した療育を行っていますが、100人待ちも当たり前のような状況で、わが子にぴったりの施設を選ぶ余裕がないこともあります。そのため、子どもの特性に合った施設に通えないことは、業界の大きな課題です。
——相談をしてデイサービス等の施設に通い始めたものの、内容に納得がいかないという話も耳にしますが……。
高橋さん:
そうですね。残念ながら、「ずっと動画を流しているだけ」「インターネットで遊んでいるだけ」といった施設もないわけではありません。
しかし、これを防止するために、最近では国が3年に1回、きちんと療育のカリキュラムを提供しているかをチェックするようになりました。この基準は大変厳しく、実際に閉鎖した施設もあります。今のところ監査はきちんと機能しているので、淘汰はされていくでしょう。
(デイサービス)ウィズ・ユー世田谷駒沢の強みとプログラミング教育
——ウィズ・ユー世田谷駒沢について、詳しくお話を伺いたいのですが、どのような流れで過ごすのでしょうか?高橋さん:
お子さまの通所としては、おおむね上記のような流れになります。ときには社会見学や動物園に行っったり、買い物を体験したり、さまざまなレクリエーションも行います。
たとえば、みんなでファミレスに行って食事をすることもありますよ。社会性を身につけるために、経験や体験を積んでいくことも大切です。
——ウィズ・ユー世田谷駒沢の強みを教えてください。
高橋さん:
当施設に関して言えば、送迎がある点は保護者さまからも非常にありがたいという声をいただいています。
保育園や小学校にお迎えに行き、ご自宅まで送り届けます。安全にお子さまをお預かりして、安全に過ごして、安全におうちまでお届けする。送迎があることで時間も手間も減り、保護者の方が休める時間を少しでも確保できます。
保護者の方に時間的・精神的な余裕がないと、お子さまについ強くあたってしまうということもあります。その後に自己嫌悪に陥ってしまう……それは親として、とても苦しいことです。
少しでも気持ちに余裕ができれば、帰宅したお子さまとゆっくり話すような時間もできるかもしれません。先ほどお話ししたように、レスパイトケアも大変重要であり、それが私どもの強みでもあります。
もう一つ重要な強みとして療育計画を元に支援を実施するために、多様な経験をもったスタッフが在籍しています。
運動療育を得意とするスタッフがいることで体幹が弱いお子さんには体の適切な使い方を教える機会を増やすこともできますし、作業療法士がいることで生活に必要な基本・応用の動作の習得や専門的なアプローチも実施します。
また様々な子どもと向き合ってきた保育士や児童養護施設職員の経験を持つ児童指導員もいることで、独自の視点や子どもたち1人1人に寄り添った支援の提供が可能です。
今後は言語聴覚士の先生にもスポットで月数回ほど療育や研修に来ていただく機会を増やし、発語や言語コミュニケーションを苦手とする子どもたちへのアプローチを学ぶことでスタッフも共に成長していける環境が一番の強みと考えています。
——強みといえば、ウィズ・ユー世田谷駒沢ではプログラミング学習も取り入れているそうですね。
高橋さん:
ウィズ・ユー世田谷駒沢に通う子ども等には、得意な部分である“凸”と、苦手な部分である“凹”があります。当施設では、凹んでいる部分はトレーニングで補い、才能である凸の部分を大きく伸ばすことを目指しています。
お子さまによっては、集中力が高かったり、数字に強いこだわりを持っていたりすることがあります。
タブレットやパソコンを通じたプログラミングは、一部の子ども達にはとてもフィットするのです。
プログラミングを習得すれば、コミュニケーションが苦手でも、チャットなどのやり取りを中心に仕事をすることが可能です。自宅で受託開発もできるでしょうし、私の幼馴染のように、大手企業に勤務する選択肢も広がります。
プログラミングだけではありません。タブレット学習は学習障害のあるお子さまにもフィットしやすく、支援との相性が良いと考えています。
——社会で自立していくためにも、強みを伸ばすことが大事なのですね。
高橋さん:
無理をして苦手なことをやり続ける訓練よりも、得意なところや興味のあることを伸ばしていければ、世界が広がります。そのひとつとして、プログラミングは非常に相性の良い学びです。今後はさらに注力していきたいです。
そして、ひとりでも多くのお子さまの未来を大きく広げていくことが、私たちの願いです。
児童発達支援事業・放課後等デイサービス「ウィズ・ユー世田谷駒沢」とは
対象 |
児童発達支援 0歳〜6歳 受給者証をお持ちの方 ※受給者証は自治体で発行 |
放課後等デイサービス 7歳〜18歳 受給者証をお持ちの方 | |
サービス提供時間 |
児童発達支援 10:00〜12:00 |
放課後等デイサービス 14:00〜17:00(平日) 10:00〜16:00(休校日) | |
自立支援 |
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特色 |
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料金 ※おやつ代等の実費は別途 |
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運営/法人 | ゴーストノートスティングレイ合同会社 |
放課後等デイサービスについて、厚生労働省の定義は次のとおりです。