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名前はかわいく、ボディは頑丈?今後ますます注目される『ラズベリーパイ』の魅力

2012年にカード型サイズの教育用パソコンとして登場した『ラズベリーパイ(Raspberry Pi)』。イギリスのラズベリーパイ財団(Raspberry Pi Foundation)によって開発され、35ドルという低価格ながら多くの機能を搭載し、その汎用性の高さから日本でも通称「ラズパイ」と呼ばれ、親しまれています。
今回は、Japanese raspberry pi users groupの主宰である太田昌文さんにお話を伺いました。

子どもがかんしゃくをおこして投げても壊れない!?

――『ラズベリーパイ』は日本においてどのような広がりを見せていますか?現在の状況についてお聞かせください。


ラズパイが登場した2012年ごろは、基本的にMaker(メイカー)と呼ばれる、いわゆるものづくりの人たちから広まっていったんです。もともと教育用として開発されたものなので、その後は一部の学校でトライアルが始まっていきました。現在は幅広い分野に、広く浸透しています。今のところ、ものづくり系の方々が市場を引っ張っているんですが、彼らの中にはラズパイを使ってスタートアップ系のビジネスを始める方もいます。

一方、教育用途ではまだそこまで広まっているわけではありませんが、プログラミングに熱心な先生がいる学校で授業に取り入れられたり、『マインクラフト』という子どもにとって取っ付きやすいアプリケーションもあるので、そういうゲームでプログラミングを学ぶというケースも増えています。
工業高校や高専(高等専門学校)で使われているケースもあります。以前、ある工業専門学校でラズパイ導入の支援をさせていただいたんですが、その際に「とにかく壊していいものが欲しい」という話がありました。聞くと、学生さんは普段の授業でもパソコンの仕組みを知るために解体して壊してしまうんだそうです。ラズパイなら壊しても3,500円だから、という理由で導入を検討される場合も多いですね。
余談ですが、ラズパイは子どもが鞄にいれて雑な使い方をしても壊れない、子どもが使っててうまくいかなくなってかんしゃくをおこして投げても壊れないことを想定して作られているんです(もちろん子供の力なので、大人とは違いますからご注意を)。


他にも退職後にプログラミングやハードウェア工作をもう一度やってみたいというシニアエンジニアの方から、本当に小さな10歳くらいの子どもまで、日本でのラズパイの対象年齢はすごく幅広いです。また、 IoTトイレなどビジネスユースもだいぶ増えています。
メイカーの人はスタートアップを目指したり、教育目的の人は子どもを『スクラッチ』や『マインクラフト』で遊ばせてみたり、工業高校や高専の生徒は壊してもいい頑丈なパソコンとして使ったり・・・それぞれの立場でトライしたい方向へ進んでいるのが現状です。

――そもそも太田さんが『ラズベリーパイ』に注目されたキッカケは?


2011年の後半くらいからラズパイの噂は聞いてたんですが、その時はまったく興味がありませんでした。「こんなの売れない」って思ってたんです(笑)。
ただリリースされたらやっぱり欲しくなって、試しに買ってみようとしたんです。ところが、販売と同時に納期が半年先とか一年先とか恐ろしいことになっていました。
Eben(『ラズベリーパイ』の生みの親であり、ラズベリーパイ財団設立者であるEben Upton氏)も色々なところで話していますが、中国で初期ロットを作ってみたらすごく話題になってしまって、予想と一桁違うオーダーが来たそうです。
手に入るまでは「3,500円だし、いらなかったら捨てよう」くらいの気持ちだったんですけど、いざ電源を入れたら「面白いじゃんこれ!」「いろいろ使える!」となりました。その時、同じように「ラズパイって面白いこといろいろできるよね」となった仲間と作ったのがいまのコミュニティ(Japanese Raspberry Pi Users Group)なんです。

ちなみにEbenがラズパイの価格を35ドルに決めたのは、学校で教材(本)を買った時にどれくらいお金がかかるのかを考え、それと同程度の額にしたかったからだそうです。ラズパイは、ある意味価格から逆算してるんですよ。子ども向けとして高くない製品であること、学校の教材費並みで済むこと。そのうえでいろいろな機能が搭載されていて、いろいろな使い方ができる。それによって子どもが多くの発想を詰め込めることをEbenは期待しています。

――現在はその期待通りに使われているのでしょうか?

昨年、ケンブリッジに行ってラズパイの子ども向けイベントに出たんですが、子どもへのプログラミング教育がだいぶ浸透していました。『スクラッチ』で遊ぶだけでなく、もう少し進化した『Python(パイソン)』など、色々な言語を自主的に学ぶようになっています。
また、それを教える先生方もすごく工夫をしているんです。日本では、先生1人に対して子どもは20人くらいですが、海外は先生1人に対して子どもは5人くらいですね。先生は子どもが興味を持つように身振り手振りで表現したり、楽しめるような環境を作って教育しています。それによって子どもが自ら動くということがだいぶ増えてきたように感じました。
日本でも一部の子どもたちが熱心にプログラミングと向き合う姿を見ることはできますが、やはり海外に比べるとまだまだですね。

必要なのは官民一体となって進めること

――その理由はどういった点にあると思われますか?

海外では、ある意味官民一体になってやっているんですよね。ラズパイが、なぜ最初の段階でなかなか手に入れられなかったと思いますか?実はイギリスの小中学校からオーダーがかかっていたんです。イギリスで教育するならこれを使いなさい、ということをどうやら政策的に行ってるらしいんですね。アメリカも一部でそういうことを行っているので、イギリスやアメリカの学校からどんどんオーダーが入り、そちらを優先的に出荷していたんです。
ラズパイのホームページを見ていただければわかるんですが、ロイヤルファミリーが一番大きなスポンサーになってるんです。王室や政府などが絡んで政策的に進めていることで、どんどん浸透しているわけです。

一方、日本は2020年のプログラミング教育必修化に関して、新学習指導要領で定めたくらいしかしてないんですよね。これではまた英語と同じパターンになるんじゃないでしょうか。国としてこの違いは大きいと思います。

――日本での『ラズベリーパイ』の普及に関してどのような施策を予定していますか?


日本での普及に関してはこれからチャージをかけていこうと思っています。ラズベリーパイ財団に限らず外資系はみんなそうなんですけども、英語版さえやっておけばどうにかなるという所が多くて、各国語に翻訳するというのがあまり浸透していないんです。この翻訳という点は、今後特に力を入れていきたいですね。

あとはやはりコンテンツの拡充ですね。まず、ラズベリーパイ財団が普段何をやっているのかをご説明しましょう。ラズベリーパイ財団の構成員ってほとんど学校の先生なんですよ。小学校から中学、高校などの先生が会議室に集まって、「こういう使い方をすると子どもは興味を持ってくれる」「ラズパイを使ったらこういうことできる」って教育手法をひたすら研究しているんです。朝から晩までディスカッションをしてるんですよ。

イギリスでも先生不足という問題は顕著化してきていて、現在はひたすらオンラインコンテンツの開発をやっています。いま公式サイト(https://www.raspberrypi.org/)を見るとYouTubeにリンクされていたり、財団側でつくったコンテンツがいくつか掲載されていますが、それらはどれも子どもが興味を持つような書き方をしています。今後はそれらを日本語に翻訳していくことも考えています。

子どもたちが楽しんで使えるおもちゃになってほしい

――これからプログラミング教育が普及していく日本において、『ラズベリーパイ』はどんな役割を果たすと思われますか?

今後のプログラミング教育において、ひとつのツールになっていくと思っています。手軽に動かすことができるし、コンテンツが色々入っているので、とっつきやすいんですよね。子どもがプログラミングを学ぶものとして、いろいろ楽しめるおもちゃになってくれたらいいですね。
小学生くらいのお子さんがラズパイを使うなら、まず最初は『マインクラフト』がおすすめです。子どもにとって一番わかりやすいのって、いわゆるマンガ型教育といいますが、図形認識的なものの考え方なので、『スクラッチ』や『マインクラフト』がとっかかりになるんじゃないでしょうか。
日本の子どもも外国の子どもも同じなんですが、やっぱり子どもってすごく飽きやすい。保護者の方もこの点はすごく悩まれてると思います。子どもって好いては飽きる、好いては飽きるの繰り返しなので、面白がってもらえるネタをどんどんこちらから作ってあげるのがいいのかな、思っています。

――プログラミング教育によって、子どもたちの未来はどのように変化していくでしょうか?

僕が思うに、日本人ってもともと根本的に論理的思考がすごく苦手なんですね。これまで海外の色々なカンファレンスなどを経験してきたんですが、外国人はきちんと論理的思考を行っています。もともと英語もそういう言語としてできあがってますからね。日本語はだらだらと主語から述語に向かう言葉なので、ある意味論理性がなくても話ができます。プログラミングは一定の論理性を求められるので、学ぶことで子どもたちが論理的思考を身につけるいい機会になると思います。

プログラミングのコードを覚えるのではなく、プログラミングがどういう手続きでできあがっているかを覚えてくれたほうがいいんです。その手続きのなかで、どういう論理的思考が自分たちに要求されるのか。それを考えるいいチャンスですよね。やがて日本も詰め込み型の受験教育から、論理的思考が要求される海外と同じような教育体系になっていくんじゃないでしょうか。

――最後に保護者の皆さんにメッセージをお願いします。

「ブームだからプログラミングをやらなきゃ!」という理由でやるならちょっと考えてほしいんです。これは日本人の悪い癖なんですが、何か起きると「やらなきゃ!」しかないんですよね。そうではなくて、どういう風にやったら自分の子どもの役に立ってくれるのかというのをすごく考えてほしいと思います。
これは英語も同じです。実を言うと僕は英語って2010年以前はまったく喋れなかったんですよ。今はもうEbenと会話するのもほとんど英語ですし、日常の半分くらい英語で喋っています。自分がちゃんと興味を持ってどういうふうにやらなきゃいけないか、を考えた末に勉強したことで身につけることができました。

プログラミングコンテストや色々なセミナーの様子を見てると思うんですが、子どもに考える余裕を与えている親御さんと子どもの代わりに自分がやってしまう親御さんがいるんですよね。自分がやってしまう親御さんは、子どもを自慢したいために自分がやっちゃうんですけど、それでは子どものためになりません。子どもはすごい勢いで考えて自分がやりたいこともあるんだけど、親が言ってしまうとそれに従ってしまうんです。

最初は一緒に走っていく部分も必要だと思いますが、ある程度まで行ったら子どもに任せるという教育をやってほしい。そうしないと子どもの発想が伸びていかないし、子どもは一緒に走る状態をいつまでも続けたら飽きてしまうと思います。
受験だから、試験が近付いたからなんていう理由でプログラミングの勉強をすることになったら、きっとつまらないはずです。だから僕としては、ぜひ子どもに考えるチャンスを与えてほしい。子どもの考え方を認めつつ、プログラミング教育やその他の教育を進めていっていただきたいなと思います。
子どもがひとりでやった場合、ある程度のものしかできないこともあります。でもそれはそれで認めてあげていかないと先に進みません。子どもがもっと楽しめるようにやっていってほしいですね。

編集部コメント

かわいらしい名前とは裏腹(?)に、頑丈でお手ごろ価格の『ラズベリーパイ』。その汎用性の高さから、日本でも着実に注目を集めています。搭載されたいろいろな機能は、これからプログラミング教育と向き合う子どもたちの可能性を広げてくれることでしょう。
「やらなきゃ!」ではなく「やりたい!」と引き出してくれるツールとして、子どもたちの興味や好奇心をどんどん高めてくれる楽しいおもちゃとして、これからの普及が楽しみですね。

プロフィール
太田昌文(おおた まさふみ)
Japanese Raspberry Pi Users Group 主宰、および公式サイト(raspberrypi.org)のモデレータの一人として日本語カテゴリの管理を行っている。
2013年にRaspberry Pi Users Groupとして初の書籍となる『Raspberry Pi[実用]入門――手のひらサイズのARM/Linuxコンピュータを満喫! (Software Design plus)』の監修とJava部分の執筆を担当。

Raspberry Pi Foundation
https://www.raspberrypi.org/

日本語版公式Facebook
https://www.facebook.com/officialRaspberryPijp

(取材・文/冨岡美穂 撮影/コエテコ編集部)

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