そして、そんなembotで学べるオフィシャルスクールこそが、東京・代官山にある「embot creative lab(エムボット クリエイティブ ラボ)」です。教室の外にはオリジナルに改造されたembotがズラリと並び、子どもの「やってみたい」を刺激する空間。しかも、授業では開発者であるMaster Nu(マスターヌー)こと額田さんがじきじきにロボット制作をレクチャー!あまりにも豪華な環境に、子どもが羨ましくなってしまうほどです。
今回、コエテコではembotの生みの親である株式会社e-Craft代表 額田一利(ぬかだ・かずとし)さんにインタビュー。NTTドコモからの独立についてや、自身の体験から生まれたというembotの魅力、embot creative labがめざすプログラミング教育のあり方についてくわしく語っていただきました。
自身が感じた、これからのビジネスのあり方
——額田さんは、今年(2021年)の8月にNTTドコモから独立され、株式会社e-Craftを立ち上げ* られました。そして、さっそくオープンされたのが小学生向けプログラミング教室であるembot creative labですが、なぜ今、NTTドコモから独立し、教室をつくろうと考えられたのでしょうか?(イベントレポート)embotの世界がさらに広がる!「e-Craft事業発表会 with よしもとパパ芸人」
ダンボール製の可愛らしいロボットプログラミング教材、「embot(エムボット)」。先日、開発者の額田一利氏が新会社「株式会社e-Craft」のCEOに就任しました。本イベントでは、e-Craftのパートナー企業と額田さんによる対談のほか、お笑い芸人の麒麟の田村さん、エハラマサヒロさん、パンサーの尾形さんがembotのプログラミングに挑戦。会場は終始、笑いに包まれました。
この記事をcoeteco.jp で読む >embot、そしてembot creative labは、エンジニアであり、会社員でもあった僕自身の体験から生まれました。少し長くなりますが、株式会社e-Creftが誕生した理由でもあるので、僕のこれまでの歩みについてお話しさせてください。
僕はもともと大学で通信技術に関する研究をしていました。その後、株式会社NTTドコモに就職し、そこでも通信技術に関するさまざまな研究を行いました。
研究は社会を下支えする大切な営みですが、あくまでも事業の面から見ると、結果が出るまでに数十年かかることも珍しくありません。それゆえに、周りからはなかなか理解が得られず、奥さんからも「何をやっているのか全然分からない」と言われる始末(笑)。そんな日々を過ごすうちに、「できれば、人に喜んでもらえるものを作れないかな」「ロボットなんてどうだろう」と考えるようになったんです。
だけど、僕は会社員です。就業時間に勝手なことをするわけにはいかないし、たとえ会社が許してくれても、「事業として成り立つのか?」ときびしく言われる可能性があるなと思いました。そこで、あくまでも趣味として、休日を利用して開発することにしました。
開発は、同じくエンジニアの仲間たちと行いました。モチベーションが続くように、ひとまず、とあるコンテストへの応募をマイルストーン(目標)に据えました。
そうしたら、なんと賞をいただいてしまって。そのうえ、とある大手企業のスタートアップ支援プロジェクトに選ばれたんです。ゴージャスな施設を無償で使わせていただけて、本当にありがたかったですね。相変わらず会社員ではありましたが、いただいたチャンスを活かしながら、プロジェクトの方向性を模索していきました。
その中で生まれたのが、プログラミング教材としてのembotです。embotははじめから教材だったわけではなく、かつては「感情お届けロボット」というコンセプトで、テレビCMと連動して動くように開発したこともありました。でも、ワークショップなどでもっとも評価されたのは、教材としてのembotだったんです。
当時はまだ、プログラミング教育の必修化が決定していない時期でした。それでも、保護者から「プログラミング教育は、これからの基礎教養になる」「embotは、きっと子どもたちのよきパートナーになるはず」と背中を押していただき、現在のembotへつながる道を歩み始めました。
——二足のわらじを履きこなした額田さんと、勤務先であるNTTドコモ、他社にも門戸を開いたスタートアップ支援事業。柔軟な姿勢を持つ三者がそろって生まれたロボットこそが、embotだったわけですね。
そうかもしれません。ただ、こうしたビジネスのあり方は、今後主流になっていくのではないかと思っています。
よく言われることですが、これまでの日本は、メンバーシップ型雇用というシステムで動いていました。つまり、先に組織があって、ポジションがあって、そこに人を当てはめる形です。
もちろん、メンバーシップ型雇用にも“安定感”などのメリットはあります。でも、少子高齢化を迎え、ドンドン人が減っていくこれからの日本においては、このシステムが充分に機能しないかもしれません。そうなると、一人の人が、それぞれの得意分野を活かして、さまざまな組織で横断的に働くようなあり方にチェンジしていくのではないかと考えています。
——NTTドコモから独立し、株式会社e-Creftを立ち上げたのも、そうした問題意識からだったのでしょうか?
そうなんです。NTTドコモはとても良い会社ですが、大きな会社ゆえ、自由に動きづらい面があるのも事実でした。たとえば、新製品ひとつ作るにも、開発部は、「マーケティング部に聞かないと着手できない」と考える。一方のマーケティング部では、「こういうアイディアがあるけれども、可能かどうか、開発部に聞かないと判断できない」と考えるわけです。
NTTドコモは大きな会社ですから、部署を分け、スペシャリストを集結させておくことには一定の合理性があります。しかし、どうしても判断スピードが鈍ってしまうのは事実でした。それなのに、プログラミング教育の必修化は刻一刻と迫ってくる。「これは、小さな会社を作ってやっていくしかないな」。そう考え、NTTドコモから出資を受ける形で、株式会社e-Craftを立ち上げました。
embotの3つの魅力|教室ならチームワークも学べる!
——額田さんの理想がめいっぱい詰め込まれたembot creative labは、非常に魅力的なプログラミング教室になりそうですね。そうなってくれたら嬉しいですね。僕たちのembot creative labは、embotという教材の魅力をフルに活かしつつ、チームビルディングや課題解決を体験的に学んでいただく教室として構想しました。くわしくご説明しましょう。
教材であるembotの魅力は、大きく分けて3つあります。1つ目は、電子工作(ロボット製作)へのハードルがとても低いこと。2つ目は、親しみやすいキャラクターがいること。そして3つ目は、チーム内での役割分担をしやすいことです。具体的に見てみましょう。
電子工作のハードルの低さ|自身の苦い体験を糧に
embotを通してもっとも強く意識したのは、電子工作へのハードルを下げることでした。これには、私自身が苦労した経験が色濃く反映されています。というのも、電子工作って、最初のハードルが本当に高いんです。専門店に行ってパーツを選ぶのがまず大変ですし、プログラムを作るにも、英語のWebサイトを読み込んで、場合によっては各種の許可申請などもしなくてはいけません。そのうえ、はんだ付けのように危険を伴う作業もあることを考慮すると、到底お子さまが安心してトライできる環境ではないと考えました。
そのためembotでは、基盤の部分を可愛らしくケーシング(ケースで包装)した上で、ガイドに従ってケーブルを挿入するだけでサーボモーターとLEDランプが点灯するように設計しました。かつ、外装は段ボールにして、おうちにある材料などで気軽に工作に取り組めるように。お子さまが安全・手軽にロボット工作にチャレンジしていただくには、embotが最適ではないかと自負しています。
可愛らしいクマのキャラクター|クワガタやオットセイも
このように電子工作のハードルを下げたものの、依然として課題だったのが、心理的なハードルでした。どれだけ手軽に工作ができるようにしても、コアとサーボモーターをポンと渡されただけで、「面白そう!」と飛びつく子は決して多くありません。先生や保護者様も、「一体、何ができる教材なの?」と疑問に思われることでしょう。
そこでembotのスターターキットには、可愛らしいクマの外装を作れるダンボールキットを同梱しました。まず初めにクマちゃんを組み立ててもらうことで、「サーボモーターで手を動かせるんだ」「それなら、耳も動かせるのかな?」などと、アイディアを広げてもらえるかなと考えたんです。
発売後は、おかげさまでクマのイメージが定着してきましたので、現在では「クワガタ」「オットセイ」「宝箱」など他の外装を作れる「とっておきキット」も展開しています。
外装は段ボール素材だから、塗装も、改造も自由自在。これまでロボット制作になじみのなかったお子さまにも、きっと楽しんで取り組んでいただけるのではないでしょうか。
チーム開発ができる|得意分野を活かして役割分担!
embotの最後の特長が、役割分担のしやすさです。Scratchのように、画面の中で完結するプログラミングアプリでは、たいていの場合「ゲームが作れる」ことをアピールされています。子ども達はゲームが大好きなので、こうしたアプローチもむろん素晴らしいと思います。ただ、ひとつだけ“弱点”だと思うのが、チーム開発のしにくさです。こうしたアプリは、ひとつの画面内で完結することが多いので、複数人でチームを組んで開発することが比較的難しいのです。
その点、embotなら、工作が得意な子とプログラミングが得意な子でチームを組み、それぞれのスキルを活かして開発することが可能です。プログラムに関しても、レベル2以降では「ファンクション(function)」という、目的ごとにプログラムをまとめる機能が使えるようになりますので、「この機能は私が作るね。こっちの機能はあなたが作ってね」という進め方が可能になります。少し長くなりましたが、この3点こそが、embotという教材の魅力であると考えています。
embotでプログラミングを学ぼうの一覧|embot WOW!|embot(エムボット)
プログラミング玩具「embot(エムボット)」で、楽しく工作&プログラミング技術を習得しよう。YouTubeチャンネルも更新中!
この記事をwww.embot.jp で読む >——電子工作のハードルを下げ、普通の工作と同じように、友達とチームで取り組めるのがembotの魅力であると。そして、その魅力を体感できるのが、embot creative labなのですね。
はい。まさにそう考えています。
さらに付け加えますと、僕は、embot creative labを「スキルを学ぶためだけの場」にしたくないんです。
英語教育だってそうですよね。確かに、文法を覚えることは大切だけれど、英語で話す機会がなければせっかくの知識も活かせません。
プログラミングもそれと同じです。もちろんプログラムを書くスキルは必要だけれども、実践の機会も大切にしてほしい。
だからこそ、僕たちのembot creative labが、子ども達が安心して、楽しく、何度でもチャレンジできる場になってくれれば嬉しいですね。
教室ならではのメリットも多数。こだわりのカリキュラムも
——embot自体は市販もされていますが、あえて教室で学ぶメリットは?僕たち大人がお子さまの学びに介入するメリットは2つあります。1つは、当たり前かもしれませんが、お子さまが困ったときにアシストしてあげること。そしてもう1つが、じょうずに「制限」を作って、クリエイティビティを刺激することです。
確かに、embotは市販もされており、自分ひとりでも充分クリエイティビティを発揮できるお子さまもおられるでしょう。しかし、中には、「基本のクマちゃんを作る以外に、アイディアが思い浮かばない」と感じるお子さまもおられると思います。
これって、スポーツでも同じですよね。ただボールを渡して「お好きにどうぞ」と言うだけで、めいっぱい楽しめる子がどれくらいいるでしょうか?たとえばサッカーみたいに、「使えるのは足だけ」「ゴールに入れたら1点」のような制約があってこそ、チームでの役割分担だったり、戦略だったりを考える余地が出てくるのではないでしょうか。
そこでembot creative labでは、何かひとつのテーマに向かって工夫することで、ロボット制作やプログラミングの奥深さを体感してもらえるようなカリキュラムづくりをしています。
たとえば、第1回のテーマは「ボールを飛ばす」。使えるのはサーボモーター2つだけで、いかに遠くまでボールを飛ばせるかを競います。単純なようですが、プログラムはもちろん、工作部分にも工夫の余地があり、盛り上がります。
こうした課題を通じて、お子さまがプログラミングに親しみ、いずれは自由自在にロボット制作を楽しんでくれたら嬉しいです。毎年、夏には「embot アイデアコンテスト」も開催していますので、我こそはと思うお子さまにはぜひ、こうしたコンテストにも挑戦していただければと思います。
(取材)「embotアイデアコンテスト」2年連続で入賞者を輩出、TENTO枚方教室のキッズに制作秘話を聞きました!
2019年・2020年と開催されたembotアイデアコンテストにおいて、2年連続で複数の入賞者を出しているTENTO(テント)枚方教室。 今回、コエテコではTENTO枚方教室の生徒さん達に、embot制作のアイデアや作り方のコツ、制作期間などについて詳しく聞いてみました!
この記事をcoeteco.jp で読む >(大人が挑戦)embotを使って自由工作にチャレンジ!旅行の思い出をロボットにして残そう
コエテコではこれまで、各ワークショップや開発者・額田さんへのインタビューなど、さまざまな角度からembotの魅力をお伝えしてきました。創作意欲を刺激されたライターが今回取り組むのは、「embotを使った自由工作」!果たして、プログラミング・工作初心者でもロボット工作はできるのでしょうか?失敗過程も正直にレポートしちゃいます!
この記事をcoeteco.jp で読む >embotは女の子にも大人気。クマの外装が保護者も和ませる
——ちなみにembotは、一般的に「ロボットに興味を持ってもらうのが難しい」とされる女の子の生徒さんからも人気だそうですね。ありがたいことに、そうなんです。
僕は、プログラミングって、これからの社会において、お金と同じくらい「当たり前」の存在になっていくと思うんです。
お金だって、原始時代には存在しなかったけれど、社会の発展に伴って登場したものじゃないですか。それなのに、もしも、「男の子だけがお金の存在・使い方を知っていて、女の子は触ったこともない」なんて状況だったら、どうでしょう?おかしなことだと思いませんか。
でも、プログラミング教育で起こっているのは、まさにそういうことなんです。これからの社会に必須のスキルなのに、「男の子向け」というイメージがついてしまっているせいで、なぜか偏りが生じている。embotではこれをなんとか是正したいと考えていますし、事実として女の子の生徒さんからも支持をいただいていることを喜ばしく思っています。
クマちゃんの可愛らしい外装が、プログラミングの仰々しさや「男の子向け」イメージの払拭に一役買ってくれているのかもしれませんね。「結局、キャラクターか」と言われてしまうかもしれませんが、「ロボット制作」と言われると身構えてしまう保護者・お子さまの心を和ませてくれているのは事実だと思います。
プログラミング=「作業」じゃない。本来の楽しさをぜひ体感して
——最後に、embot creative labでの学びに興味のある保護者・お子さまに向けてメッセージをお願いいたします。現在のプログラミング教育は、どちらかというと「キャリアにつながる」面を重視しているように思います。ありていに言えば、「エンジニアになれば、高収入を得られる」のようなメッセージを発信している教室も珍しくありません。
もちろん、学習の動機は人それぞれですから、こうしたモチベーションを否定するわけではありません。でも、実際のところ、それこそ“稼げる”エンジニアになるために必要なスキルって、アイディアを考えて、実現する力だと思うんです。
今の日本社会を見てみると、エンジニアをただの作業員とみなし、創造性を奪っている会社もあります。このような状況では、プログラムのコードを速く、たくさん書けるとか、専門的な知識をたくさん暗記していることがスキルのように考える人も少なくないでしょう。
しかし最近では、プログラムのライブラリ(便利ツール集)などが充実することで、バリバリとコードを書く必要がなくなってきています。すると、求められる力も変わってくる。つまり、アイディアを出す力や、実現するスピードが大切になってくると思います。
embotはまさに、こうした力を養うための教材として開発しました。実際にembotアイデアコンテストなどでは、あっと驚くような作品も多数登場しています。embot creative labなら、お子さまの意外な才能が花開くかもしれません。ぜひお気軽に、遊びに来るような感覚で足を運んでいただければ幸いです。
——ありがとうございました!
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embot creative labは、NTTドコモが企画・研究・開発などを担い、タカラトミーが開発・製造・販売を担当するプログラミング教育ロボット、embotを教材にした唯一のオフィシャルスクールです。対象年齢は小学1年生〜6年生で、授業は各回45分。オンラインでの受講も可能なので、教室が遠い方や、まだ習い事に慣れていない低学年のお子さまでも安心して受講できます。
embot creative labの魅力は、なんといってもembot開発者であり、株式会社e-Craft代表でもあるMaster Nu(マスターヌー)こと額田さん自らが講師を務めること!教材のすべてを知り尽くしたMaster Nuとの時間は、お子さまの創造性をめいっぱい引き出してくれるはず。
毎年夏には、豪華賞品がもらえるembotアイデアコンテストも開催中ですので、工作が大好きなお子さまはぜひ入賞を狙ってみてください!
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