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「夢は宇宙」!追手門学院大手前中・高のロボット教育

 輝かしい成績を収める「ロボットサイエンス部」だけでなく、正課の授業にもロボット教育を取り入れる追手門学院大手前中・高等学校。スペースシャトル・チャレンジャー号の事故で亡くなった乗組員、クリスタ・マコーリフさんの遺志を継ぎ、宇宙をテーマにユニークな活動を展開されています。

そんな追手門学院大手前中・高等学校はなんと、本年度(2018年)のファースト・レゴ・リーグで世界1位の座を手にしたとのこと!

今回は、同校にロボット教育を導入し、熱意ある指導で生徒たちと共に歩む福田哲也先生にお話をお伺いし、世界1位を育てた環境について取材しました。


生徒さんたちに囲まれる福田先生。世界大会中のお写真をいち早くいただきました!

「ものをつくる」ことは、価値あること


—本日はよろしくお願いいたします。さっそくですが、追手門学院大手前中・高等学校にロボット教育を導入された背景について教えていただけますでしょうか。

まず前提として言っておきたいのが、「あくまでもロボットやプログラミングは教材のひとつであり、子どもたちが学ぶべきことはその先にある」ということです。

私は、プログラミングやロボットの教育を一生懸命しておりますが、日本ではまだまだ少ないのが現状です。だから世界大会にいくと、日本チームは決して強いとはいえません。その根底には、座学優先の「おぼえる」という教育が根強く残っています。もちろん、知識は必要です。しかし、もっと「考える」ということを重要視しなければならない。そのような機会を提供してくれるのが、ロボット教育であると思うのです。

日本は科学技術立国といわれました。いろいろな方がいろいろなものをつくることで発展してきた国だと思います。しかし、そのようなものをつくってきた技術者や職人さんたちに対して、高い評価を与えてきたでしょうか。

私は、「ものをつくる仕事」よりも「ものをつくらない仕事」に目が向いているような現状を危惧しています。そして、少しでも多くの子どもたちに「ものをつくる」ことの素晴らしさを感じてもらいたい、そのような思いでロボット教育に励んでいます。

チャレンジャー号の爆発、遺志を継いだ教育基金


—なるほど。それで、「ものをつくる」教育実践の一例として、ロボット教育を選ばれたというわけですね。

私も、最初からロボット教育をしていたわけではありません。もともとは体育会系の人間で、若いころは水泳部の顧問をしていました。きっかけとなったのは、個人的に交流のあったアメリカの教師・イバーラ氏。「NASAのクリスタ・マコーリフの教育基金が立ち上がっている。一緒にやらないか?」と声をかけてくれたんですね。

今からもう30年ほど前になりますが、1986年、アメリカのスペースシャトル・チャレンジャー号が爆発し、乗組員全員が亡くなるという痛ましい事故がありました。その乗組員の中に、唯一、民間人がいました。それが、クリスタ・マコーリフという女性だったんです。

彼女はもともと社会科の教師で、1万人以上の応募者の中から選ばれて、民間人としてはじめてチャレンジャー号に搭乗するという夢をつかんだ人です。しかし、悲しい事故が起きて亡くなってしまいました。そこで、NASAは、彼女の「宇宙の素晴らしさを子供達に伝えたい」という思いを継いで、宇宙関係の教育に使える基金を立ち上げたのです。

そして、2003年、イバーラ氏と一緒にこの基金に挑戦したというわけなんです。ちょうど火星探査機が火星に到着した頃でしたので、「日米の中学生で、火星探査機をつくろう」と。NASAのエンジニアは、探査機の設計を考えるときに、レゴを利用してアイディアを練るらしい。それなら中学生にでも扱えるから、一緒に火星探査機のモデルをレゴで製作しよう!ということになりました。

—簡単に組み替えられるレゴは、試行錯誤にはもってこいですよね。

そうです。正直なところ、ロボット教育においてレゴという教材が果たす役割はかなり大きいですね。

探査機の製作は日本とアメリカで各自に行いました。レゴマインドストーム (レゴ社が開発したロボット教材)を使ったのですが、これにはカメラもついていて、お互いの映像を送り合うことができました。それだけでなく、日本のロボットをアメリカから操作することもできるようになっていました。NASAの教育基金ですから、ロボットを動かすソフトは世界惑星協会が支援してくれました。

当時はインターネットの回線もそれほどではなく、送られて来る映像の質もそこまでよくなかったのですが、かえってリアリティがありました。まるで本物のコックピットから見ているような気持ちで、お互いのロボットを動かせるというわけです。生徒たちが興奮しながらロボットを動かしていたのが、今も目に焼き付いています。

日米共同では行いましたが、「どちらが勝ち」というのはなく、お互いにどのような点を工夫したかのディスカッションを行い、高め合うことが目的。それが盛り上がるうちに、「生徒たちを会わせたいなあ」という話になりました。

そうはいっても、ただお金を使って会いに行くだけではおもしろくない。それならば、世界的に有名なロボットコンテストである「ファースト・レゴ・リーグ」に出場し、世界の頂点で会おう!と。これが、ロボット関係の大会に出場し始めたきっかけですね。

ロボット製作だけでなく、幅広い能力が求められる大会


—大会などについて、詳しくお伺いできますか。

「ファースト・レゴ・リーグ」は世界で最も大きなレゴのコンテストで、毎年30万人以上の小中高生が参加しています。2005年から挑戦し、去年も日本代表として世界大会にも進出いたしました。

このコンテストのユニークなところは、ロボット競技を5回行うだけでなく、研究発表もすることです。去年のテーマは「動物保護」だったため、それに関して調べ学習をし、英語でプレゼンテーションを行いました。

また、世界で2番目に大きなコンテストである「ワールド・ロボット・オリンピアード」でも世界大会に出場し、活躍しています。

「ファースト・レゴ・リーグ」は、トロフィーまでレゴでできている

「日陰にいるタイプの子」が輝ける場を


—「ロボットサイエンス部」はすごい成績を収めていらっしゃるとのことですが、部員の皆さんも、かなりやる気にあふれたタイプの子が多いのでしょうか。

いえいえ。正直なところ、ロボットサイエンス部に入ってくる生徒の中には、はじめからロボット製作がやりたくて入ってきた、というわけではない子もいます。どちらかというと教室の中では目立たない、スポーツが苦手で気弱な子が、ロボットサイエンス部を選んで入ってくることが多いです。

真剣な顔でそれぞれの課題に取り組む生徒たち。ロボット本体をつくる生徒、プログラムを書く生徒など、役割分担がされている。

でも、そんな風に引っ込み思案で無口だった生徒たちが、あれこれ試行錯誤してロボットをつくったり、「ファースト・レゴ・リーグ」に出場し、世界を相手に堂々と、しかも英語でプレゼンテーションをしたりするのです。その姿には、教師としてじーん、とくるものがあります。

—目立たないタイプの子が活躍できる場所をつくった、ということですね。作品はかなり高度ですが、技術的な指導もされているのでしょうか。

ここまで生徒たちが活躍すると、「どうせ、陰で顧問(福田)がつくっているのだろう」と思われる方がいるかもしれません。実際に世界大会に行ってみると、明らかに大人がつくったロボットもたくさん見かけるのが事実です。

でも、私はロボットは一切つくりませんし、コンピュータも一切触りません。そもそも、技術的にも生徒のほうが全然上なんです。

じゃあの役目は何なのか?というと、「科学的な手順を教えること」なんですね。たとえば、目の前のロボットがうまく動かないという状況があったとします。それに対して、2つも3つも一気にパーツを変えてしまうと、何が原因だったのか分からなくなってしまいます。そうではなくて、1つずつパーツを変えてみて、原因を探る……。そういう科学的な手法を教えることが、教師の役割なんです。格好良く言うと「問題をいかにして科学的に解き明かしていくか」を意識して指導しています。



写真が追いつかないほど高速で動き、ステージに用意された課題をクリアしていくロボット。この場面では、壊れた水道管(ロボットがつかんでいる黄色のアイテム)を交換しつつ、花(中央の紫色のアイテム)に水をあげている。「ひとつずつクリアしていると時間が足りないので、いくつかの課題を同時にクリアできるような設計にしています」とのこと。

水をもらい、花が咲いた!

有名な中国の哲学者、老師の言葉にこういうものがあります。「魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ」。おなかが空いている人に魚を与えたら、そのときだけは満たされます。でも、釣り方を教えたら、その人は一生飢えることはない。

ロボット製作もそれと同じなんですね。課題があるとき、答えを与えるのではなくて、「どうやったらこの課題をクリアできるんだろう?」という方法を教える。そういう発想ですね。

それから、本校は確かに、さまざまな大会で素晴らしい成績を収めてはいますが、大会に出ることを第一としているわけではありません。むしろ、簡単には大会チャレンジを認めていません。

うれしいことに、今年も世界大会に出場させていただくことにはなったのですが、昨年4月には「水」というテーマが発表されていたにも関わらず、生徒たちは8月まで何も準備をしてこなかったんですね。ですから生徒たちとは、出場をめぐって大喧嘩になりました。大会は「出ればいい」というものではありません。しっかりと準備をしない人間は、最後までやりきることもできません。ですから、そういう点では生徒たちを叱責するのも役割です。

部活動だけでなく、正課の授業でもロボットを導入


—ここまでは部活動のお話でしたが、追手門学院大手前では、普通の授業としてもロボット教育を取り入れていらっしゃいますね。詳しく内容をお伺いできますか。

一年生は、「ロボットをつくる」ということを意識した授業をしています。小さなロボットにペットボトルを載せて、なるべく多く山の上に運ぶのが目的です。基礎となる部分はすでに出来上がっているものを使い、そこから、レゴを使って自由に形を工夫します。こっぱみじんになるロボットもある一方で、何個も運べるロボットも出てきます。

私は大学生を対象に、まったく同じ授業を行ったこともあるのですが、平均は1、2個でした。うまく動かない、運べないのが普通でしたが、一方で中学生は、最大で5個運べるロボットをつくった子がいました。驚きますよね。

二年生では、「ロボットを動かす」ということを意識して、プログラミングの基礎に触れます。クリスタ・マコーリフさんがきっかけだったこともあって、授業のテーマも「宇宙」です。ロボットが火星の岩石をキャッチして帰れるようなプログラムを書くのが目標になります。

そして三年生では、ロボットを通して物理を学びます。たとえば「1メートル」と言われたらどのくらいの長さかイメージできますよね。「1キログラム」もなんとなく分かります。では、「1ジュール」ではどうでしょうか?
おそらく、だいたいの方が正確にイメージできないと思います。そこでロボットを使うのです。

手回し発電機で5ジュールを発電し、ロボットに注入します。そうすると、ロボットの動く距離で「だいたいこのくらいの大きさなんや」と理解できる。
次に、ロボットを改良し、同じ5ジュールでもより長く進める「エコカー」にしていきます。タイヤの形状を変えたほうがいいのか、重くすればいいのか、軽くすればいいのか。

「エネルギーは摩擦などによって失われる」と教科書で学ぶよりも、「摩擦を減らしたら遠くまで進んだ!」という経験の方が、体感的に理解できますよね。「嫌いな教科」の筆頭に上がりやすい物理ですが、ロボットを使うことによって楽しく学ぶことができるのです。

—なるほど。目の前にモノがあるからこそ理解しやすくなるわけですね。他にも、授業にロボットを取り入れるメリットはありますか?

ロボットの魅力は、基本が「失敗の連続」という点にあると思います。うまく行かないのが普通だから、そこから「では、どうやったらいいんだろう?」と考えを広げやすい。


段差を乗り越えるロボット。残念ながら、取材当日はうまく動かなかったのだが、「ここのギアがあかんのちゃうか」「ここは変えたらあかんって」と活発な議論が行われていた。

また、私のロボット授業では、私が教壇に立つことはありません。誰が立つのかというと、生徒自身です。あらかじめリーダーの生徒と授業の進め方について話し合い、生徒が生徒を教え、教師はサポート役にまわる、そのような授業形態をとっています。

学んだ知識の定着を示す資料として、「ラーニングピラミッド」というものがあります。座って講義を受けるだけだと、知識は5%しか定着しない。一方で、学んだことを人に教えると、90%の内容が頭に入るというんですね。

ロボットをつくるためには、コミュニケーションが欠かせません。考えたことを表現し、人と協力してつくり上げていく必要があります。失敗を犯し、試行錯誤をすること。人と協力し、考えを表現すること。いずれも、現代の教育に求められていることだと思います。


大きな課題となる予算面


—良いことずくめのロボット教育ですが、一方でいくつかの課題も指摘されています。福田先生としては、どのような点が課題になると感じられますか。

やはり課題としては、金銭面が挙げられます。ロボットを使って何かしようとすると、当然、お金が必要になります。ロボットサイエンス部の活動には、年間約100万円が必要になるのですが、部活動の予算として生徒会から支給されるのはこのうちの約20万円。残り80万円は、なんとか外部から獲得しなければなりません。

幸いなことに、昨年は、「武田科学振興財団」による理科教育振興助成をはじめとして、いくつかの助成金を獲得することができました。ただ、今年度もそれが獲得できるとは限りませんので、大きな課題となっています。

ロボットづくりで大切なことは「しつこさ」


—では最後のご質問です。ずばり、ロボット製作において最も大切なことは何だとお考えでしょうか。

「ロボット製作において何が必要か」と聞かれると、だいたいの方がイメージするのが、才能、手先の器用さ、プログラミングの知識であったりするのではないでしょうか。

でも、私は最も大事なのは「しつこさ」だと思っています。別の言葉で言い直すと、「最後まで食らいつき、やり抜く力」。

体感ですが、この力の有無は学力とも連動しているように思います。「ロボットばかりつくっていたら、勉強の時間がなくなるのでは?」と心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、何かに打ち込める子は、勉強にも集中することができると思うのです。

人間、誰しも練習や勉強はめんどうです。でも、何か目標があれば、めんどうなこと、つらいことでも頑張れる。私たち教師がやるべきことは、子供達の心に火をつけて、頑張るためのステージを用意することだと思っています。

—ありがとうございました。

コスタリカで行われた世界大会に出場した手話ロボット。「こんにちは」と話しかけると、「こ」「ん」「に」「ち」「は」と手話で表現する。この手話ロボットのように、技術は人を幸せにするものであってほしい。

追手門学院大手前中・高等学校
〒540-0008 大阪府大阪市中央区大手前1-3-20
http://www.otemon-js.ed.jp/
1888年の設立以来、こども園から大学・大学院までを擁する追手門学院。
総合学園として発展を重ね、伝統と実績を活かし、学力だけではない“本物の人間教育”を実践しています。

公開日:2018.06.04

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