今回は、2018年6月の第1次提言を基に、全国の教育現場で実施した23の実証事業の成果を踏まえ、初等中等教育分野に絞ったという。
『未来の教室』の実現に向けて必要な3つの改革の柱
今回の提言では、「未来の教室」実現に向けて、『学びのSTEAM化』『学びの自立化、個別最適化』『新しい環境づくり』の3つの改革の柱を起き、実現に向け乗り越えるべき9つの課題とそれに対応するアクションについて発表した。『学びのSTEAM化』
まず1つ目の柱『学びのSTEAM化』に関しては、教科知識や専門知識の習得(知る)と探究型プロジェクト(創る)が循環させることで、未知の課題やその解決策を見出すことを実現していくもの。ただ、実現のためには、現在の一方向型の授業形式が定着している学校現場が多く、興味や趣向が1人ひとり異なる子どもたちに合わせたSTEAM学習プログラムの不足。
また、学校現場では、『学びのSTEAM化』に不可欠な探求・プロジェクト型学習(PBL)に割く時間の不足。PBLに必要な情動対処やコミュニケーション能力といった基礎力が不足している子どもが少なくないといった課題がある。
それに対するアクションに関しては、まず、政府が主導し、教師や民間教育サービス、企業のエンジニアなどの協力を集め、STEAM学習プログラムの開発とデジタルコンテンツ化の推進が挙げられた。
また、開発されたコンテンツを学ぶ子どもたちが学校間の壁を超えて協同で学習やコンテンツの改良にも参加できるような、「STEAMライブラリー」をインターネット上に構築することや、オンライン上だけでなく、STEAMライブラリーを通じて得た知識を実際に創造する場として、地域に「STEAM学習センター」を構築すること。
さらに、教科知識のインプットをEdtechを活用して効率的にすることで、探求・プロジェクト型学習(PBL)に費やす時間を増やすこと。
また、探求・プロジェクト型学習(PBL)に必須である「他社との協働」に必要なスキルを幼児期や学齢期にかけて身につけていくことが挙げられた。
『学びの自立化、個別最適化』
教育は「人の自立」が目的であるため、学校においては子どもたちを「自立に向かう人格」とみなし、それを促すための様々な工夫が必要だと提言している。興味関心や学習の到達度など、1人ひとり異なっているということを前提に、各個人が自分に適した学び方を模索し、自分で選択し、組み立てるような学習環境づくりを進める必要がある。
ただし、現在の学校現場においては
・一方向型の授業を採用している学校が多い
・1人ひとりの発達状況や学習記録などが蓄積されていない
・EdTechなどの技術革新による学び方・コミュニケーションの多様化が教育現場で生かされていない
という課題があるという。
それに対しての解決策としては、まずはEdTechを活用した自学自習の導入による学習の効率化を進める必要があるという。また、幼少期から公教育・民間教育を横断した「学習ログ」を蓄積し、個別学習計画の策定、それを活用した入試の多様化なども検討すべきである。
さらに、従来の「履修時間」に重点を置く授業のあり方ではなく、1人ひとりの理解度や到達度に合わせた授業編成を認めるべきだとしている。
また、技術発展により「オンラインコミュニケーション」も可能となってきていることから、ネットとリアルの融合など新たな選択肢にも踏み込んでいる。
『新しい環境づくり』
こうした施策を可能にするためには、学校における学習基盤づくりが必要になるという。しかし、EdTechなどの新しい技術を活用していくためには、学校現場においてのICT環境整備が必須だが、「1人1台パソコン」に向けての目標や手法も未定だという。
また、子どもたちの学び方改革を進めるには、教職員の働き方改革を進め、学校全体に余裕を生み出すことが大きな課題であるが、取り組みが進んでいない。
企業や大学、研究機関、地域社会との連携も課題だという。
そうした課題に対しては、生徒が自ら所有する端末を用いること(BYOD)も見据えてのICT環境の整備や、BPRの手法を用いての事務作業のデジタル化といった学校改革への取り組みが求められる。
さらに、教師自身がチェンジメーカーであることが必要となるため、教師向けのリカレント教育プログラムの開発と実証を進めている。
今回の提言は「すべて政策として実行していく」
今回提言に加え、「超短期」「短期(~2022年)」「中長期」の3つの期間においての工程表も公開された。超短期においては、「現行法令の合理的な解釈の範囲で実現可能なことはすぐにはじめる」とし、中長期のビジョンのもとでは全てが連携する「一体的変化」を目指していく。
参考資料
「未来の教室」ビジョン 経済産業省 「未来の教室」と EdTech 研究会 第2次提言