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(インタビュー)いとうまい子さん|介護ロボット「ロコピョン」とは?異色キャリアの女優が拓くテクノロジーの未来

80年代アイドルとして一世を風靡し、今も女優として活躍し続けるいとうまい子さん。多数のドラマやバラエティ番組にも出演され、明るいトークで場を盛り上げるベテラン芸能人として、その名を知らない人はいないでしょう。

そんないとうさんが現在、抗老化学 × ロボット工学の道に進んでおられることはご存知でしょうか。

かねてよりITに関心があり、みずから公式サイトを作成・運営するなど、テクノロジーに強いいとうさん。芸能活動と並行して取り組むのは、お年寄りの健康を保ち、いつかやってくる寿命までを楽しく過ごすための研究です。

今回、コエテコではいとうまい子さんに独占インタビュー
  • 早稲田大学入学のきっかけは?
  • どんなロボットを開発されている?
  • ロボット × 介護の課題と現状
  • コロナ時代を幸せに生き抜くコツ
……などなどについて、詳しくお話を伺いました。



いとうさんご自身が運営する公式ホームページ(画像をクリックすると開きます)

街ゆくすべての人に恩返しをしたかった

—本日はありがとうございます。さっそくご質問なのですが、芸能界で成功されているいとうさんが、あえて大学進学を選んだのはなぜでしょうか。

これまでお世話になってきたすべての人に恩返しをするためです。

1983年に芸能界に入ってから現在まで、継続してお仕事をいただけていることに、私はすごく恩義を感じていて。

決して安定した世界ではない中で、こうして活動を続けていられるのは、あらゆる方のおかげだなと思うんです。

たとえば、私をキャスティングしてくださる方。それから、番組のスポンサーになってくださる企業様の存在がなければ、私のギャランティは生まれません。

もっと言うならば、スポンサー企業の製品を購入して、経済を回しているのは街ゆく方々です。

こんな風に、すべての人のおかげで私は働けているんだなと思うと、何らかの形で恩返しがしたかったんです。でも私には学もないし、今のままではできることが見つからないなと……。悩んだのちに、大学進学の道を選びました。45歳のときでした。

進学先は、早稲田大学人間科学部のeスクールに決めました。当時としては先進的なオンライン授業を全面的に取り入れておられ、芸能活動との両立がしやすかったためです。私は10期生なので、20年くらい前からオンライン授業に取り組んでいらっしゃることになりますね。

(早稲田大学人間科学部eスクール公式サイト)

早稲田のeスクールはけっこう厳格で「1週間以内に授業動画を視聴し、フィードバックを書かなければ欠席扱い」というルールでした。なかなかタイトで、忙しい時期にはキツかったな〜(笑)。

でも、あまり自由でもモチベーションが続かなかったでしょうから、私には合っていたと思います。うんと年下の同級生や先生方にお尻を叩かれながらも、日々の勉強を続けていくことができました。


—専門をロボット工学に決められたのは?

大学では3年次に所属するゼミを決めるのですが、もともと師事しようと考えていた先生がご退官されて、計画が変わってしまったんですね。そこで同級生に相談したら、「ロボット工学のゼミがすごいらしいよ」と。

もともと理系の教科には抵抗がなかったし、詳しい知り合いもたくさんいるので「困ったら助けてもらおう!」なんて思いながらそのゼミに所属しました。

そこで2年間卒業研究を行ったのですが、やりたいことを100%は成し遂げられなくて。志半ばのままでは終われないと、大学院へ進学しました。

—大学で学んだことのうち、とくに印象に残っているものはありますか。

大学三年生の頃に、四国で働いておられる現役のお医者さんが編入して来られたんです。その方は過疎地で医療に従事されていたのですが、もう高齢化がすごくて。しかも、ほぼ全員がロコモ*という、非常に危機的な状況なんだそうです。

* ロコモティブシンドローム。運動器の機能低下により、寝たきりリスクが高まった状態。

これまでには知り得なかった過疎地の現実を知る機会になりましたし、予防医学の重要性を考え直すきっかけにもなり、印象深かったですね。

eスクールにはさまざまなバックグラウンドをお持ちの方が入学して来られるので、先生からの指導や、論文から得る知識はもちろんのこと、”同級生”のみなさんから学ぶことも多かったです。

—いとうさんは現在でも芸能活動を続けられていますが、研究との両立が難しいと感じたことはありますか。

ないです。芸能活動も研究も、すべてが私の生活の一部に組み込まれているという感じで。

国際ロボット展に出展されたいとうさん。自身がプロデュースする介護ロボット「Locopyon(ロコピョン)」を展示された。(画像はいとうさんご提供)


たとえばですけど、『半沢直樹』を見るのと「ポケモンgo」で遊ぶのを”両立する”って言わないじゃないですか?それに近い感じです。

振り返ってみるとアイドルの頃は本当に忙しくて、睡眠も満足に取れず、朝から深夜まで仕事がパンパンに詰まっている日も珍しくありませんでした。ランチタイムにまでインタビューの仕事とかが入っていたし……。

あの頃に比べたら、ぜんぜん大変じゃありません。むしろ、ちっとも頑張っていない気がしちゃうくらい。できればもうひとつくらい、プロジェクトを起こしてみたいですね。

技術はあっても…不足する"現場との橋渡し"

—日本は少子高齢化社会ですが、介護とテクノロジーの関わりについて、現状はどうなっているのでしょう。

技術の側面から言うと、すばらしい技術はすでにたくさん存在します。でも、実際に困っている高齢者の方にリーチできているかと言われると、まだまだ道半ばです。

そもそも、福祉の現場で活躍するロボットは開発が難しいんです。入浴やトイレのように、介助者が1人いれば可能な行為であっても、ロボットに任せようとすると5台も6台も必要になる。
体を起こすロボット、車椅子に載せるロボット、車椅子を押していくロボット……みたいにね。


そのうえ、開発者と現場の橋渡しも不足しています。両方の分野の知識を持っている人がまだ少ないことで、ミスマッチが起こっているのが現状かもしれません。

だから私は、できれば両方の分野に詳しくなって、架け橋のような存在になりたい。そう思って、研究活動を続けています。

「寝たきり」を防げ!介護ロボット「ロコピョン」とは

—いとうさんはエクサウィザーズの「フェロー」を務められていますね。初歩的な質問で恐縮ですが、「フェロー」とはどのような立場なのでしょうか。

「共同研究者」といえば分かりやすいでしょうか。「週に○回出社する」という感じではなくて、プロジェクトごとに参加させていただいて、お互いの知見を持ち寄るイメージです。

—なるほど。ズバリ、やりがいはありますか?

ええ、もちろん!エクサウィザーズさんって本当にすごい会社で、大手企業でキャリアを積んでから転職された方が非常に多いんです。

一流企業でバリバリやってきた”頭脳集団”でありながら、単に企業戦士として戦うぞ!というのではなく、人の役に立ちたい、社会をもっとよくしていきたいと働いておられる。

その心意気に感動しますし、みなさん、どことなく幸せそうなんです。こんなにいい企業さまとご縁を持つことができて、私もとても幸せです。


—ではいよいよ、現在開発されている介護ロボット「ロコピョン」(LocoPyon)について詳しく教えてください。

「ロコピョン」は、高齢者のロコモ(ロコモティブシンドローム)を予防する介護ロボットです。


私たちのいのちには、生き物としての寿命のほかに、元気に自立して過ごせる寿命=「健康寿命」という考え方があります。

現在、男性の平均寿命は約80歳。健康寿命は約72歳なので、多くの方は8年もの間、寝たきりに近い状態で人生を過ごすことになります。女性の場合は平均寿命が長いですから、その差はさらに広がって、約12年以上にも及びます。

「人生100年時代」と言われるけれど、健康寿命自体は実はそこまで伸びていません。せっかく平均寿命が伸びても、寝たきりの期間が伸びるだけではつらいですよね。

健康寿命を伸ばすには、ロコモ予防が欠かせません。そこで、日本整形外科学会さんが啓発されているのが「ロコトレ」という、「片脚立ち」や「スクワット」をすることで筋力の低下を防ぎ、運動機能を維持するためのトレーニングです。

日本整形外科学会 ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト
「ロコモONLINE」で公開されている「ロコトレ」
(出典:https://locomo-joa.jp/check/locotre/

ところが、実際に高齢者の方にお願いしても、多くの方は面倒くさがって全然やらない。その結果、どんどん筋力が弱ってしまう。

これはいけないということで、家族や介護士が電話を掛けてトレーニングを促す「ロコモコール」という取り組みが始まりました。けっこう効果があるらしく、週に2〜3回、高齢者がロコトレに取り組んでくれるそうです。

「ロコモコール」紹介ムービー

でも、日本は少子高齢化社会。近い将来には3人に1人が高齢者になると言われる中、毎日のように「ロコモコール」を掛けるのって、あまり現実的ではないですよね?きっと、コールセンターくらいの人数が必要になっちゃう。

それならば、ロボットが「ロコトレ」を促す役目を担えないかなと。それが「ロコピョン」の基本コンセプトです。


—「ロコピョン」の具体的な機能は。

ロコピョンは1日に3回、高齢者に声をかけて一緒にスクワットしてくれます。

スクワットには正しい角度があって、ヒザを90度以上曲げないようにしなければいけないのですが、多くの高齢者はヒザを深く曲げすぎてしまう。

ロコピョンを見ながら取り組んでいただければ、必要以上に負担のかからない正しいフォームでスクワットに取り組めます。

スクワットの結果はメールで通知されるようになっており、お医者さんや自治体、遠く離れた家族に無事を伝える役割も担います。ロコモ対策と合わせ、”見守り”機能も持たせているのがポイントです。

—開発中にこだわったポイントはありますか?

顔を認識できるカメラをつけなかったことです。

カメラって恐怖の対象なんです。「何を撮影されているんだろう?」「その映像は誰に見られるの?」と不安を与えてしまう。

おうちでリラックスしている中、すっぴんで髪もボサボサの映像を撮られるなんてものすごいストレスでしょう?エクサウィザーズさんとの会議でも「絶対にカメラはつけちゃダメです」と強く提案させてもらいました。


とはいえ、お年寄りが正しいフォームでスクワットをしているかどうかの判定は必要になります。そこでエクサウィザーズさんが導入してくださったのは、骨格筋だけを画像認識するシステムでした。これなら、顔は映らないから安心して使えますよね。

「ロコピョン」は今後も改善を続けていく予定ですので、気になる方はぜひ、ニュースをチェックしてみてくださいね。

「2019国際ロボット展」での「ロコピョン」展示の様子(画像はエクサウィザーズ提供)

コロナ時代を自分らしく、幸せに生きるコツ

—新型コロナウィルスの影響により、未来にほんのりとした不安を抱えている人は少なくないと思います。新聞やSNSでも「新しい時代についていけない」と悩む人の声が目立ちますが、いとうさんはどう思われますか。

あえて強い言葉を使うなら、技術者側の怠慢だと思います。つまり、そんなふうに取り残される人が出てきてしまうなら……という意味です。

テレビが世の中に登場したとき、「つけ方がわからない」人はほぼいませんでした。チャンネルを回せば、ポンと映像が見られた。今はリモコンスイッチに変わりましたけど、それでも「どうやって見ればいいの?」と思い悩む人は少ないと思うんです。

技術というのは、詳しくない人が迷わず使えるようになって初めて「浸透した」と言えると思うんですね。ところが最近は技術の進化がとにかく早くて、操作が簡単になる前に次々新しいのが出てきちゃう。だから、取り残されたと感じる人が多いのも仕方のないことだと思います。

けれども、本当に大切な技術であれば、必ずもっと簡単に使えるようになる日が来ます。「ポンとスイッチを押せばオンライン会議に参加できる」みたいなね。そこまで進化させるのが、技術者の仕事。自分を卑下しなくてもいいと思いますよ。

—非常に前向きですね。勇気づけられます。仕事に研究にとエネルギッシュないとうさんが考える、コロナ時代を生き抜くコツはなんでしょうか。

今年は本当にイレギュラーな状況で、不安な気持ちで過ごされた方も多いと思います。でも、そんなときだからこそ「楽しく過ごす」ことをおすすめしたい。

どよーんと暗い顔をしていようが、なんとかなるさ!と明るく過ごそうが、流れる時間は同じです。それならば、今ある幸せを大切に、楽しく過ごしたほうがいいでしょう?

今の若い子を見ていると、私たちの若い頃よりずっと立派だなって思います。「人のためになりたい」と考えている子が本当に多くて、素敵だなと。

それなのに私たちが暗い顔をして、「日本はダメだ」「未来はお先真っ暗だ」なんてメッセージを発していたら、彼らの心をくじいちゃう。未来を考えるのは大切だけど、必要以上にネガティブになる必要はないんじゃないでしょうか。


「楽しく過ごそう」と決めていると、ふしぎと素敵なご縁がめぐってきます。不安な出来事はいつだってあるけれど、今ある幸せを大切に、「何か楽しいことはないかな?」とアンテナを張って過ごしてみる。それが、私のモットーと言えるかもしれません。

—ありがとうございました。

関連リンク

いとうさんがフェローを務めるAIベンチャー、株式会社エクサウィザーズへはこちらからどうぞ。


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