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「腕に職の時代」母の教え今も。日本屈指のCGクリエイター、その生い立ちに迫る

「CGクリエイター」。それは今や、日本の子どもたちの憧れの存在です。

CGとは「3D映像」のことで、CGクリエイターは、特殊な技術をつかって、想像の世界をまるで本物であるかのような立体映像に仕上げます。

MORIE Inc.代表の森江康太(もりえ・こうた)さんは、日本のCG業界をけん引するひとりです。これまでに手がけた作品は、国民的アニメや有名アーティストのミュージックビデオなど多岐にわたり、2017年には「映像作家100人」にも選ばれました。

画像提供:MORIE Inc.


日本屈指のCGクリエイターである森江さんは、なぜCGの世界に足を踏み入れたのでしょうか。幼少期の記憶や、7歳の息子さんへの想いも踏まえ、その軌跡をうかがいました。

GReeeeN、ヨルシカ、ドラえもん…数々の有名作品を手がけたCG監督

映画ドラえもん『のび太の新恐竜』、NHK連続テレビ小説『ひよっこ2』……森江さんがCG監督をつとめた作品は数知れません。映画やドラマはもちろん、ヨルシカYOASOBIケツメイシGReeeeNといった人気アーティストのミュージックビデオも手がけます。

たとえば『のび太の新恐竜』では、映画に登場する「恐竜」をデザイン。GReeeeNの『星影のエール』では、その歌詞に溶け込むようなCGアニメーションを、森江さん率いるクリエイターチームが制作しました。

引用元:GReeeeN 『星影のエール』


引用元:ヨルシカ 『春泥棒』


ヨルシカの『春泥棒』は、YouTubeでの再生数が、公開から約1年で5000万再生に迫る勢い。SNSを中心に、ファンから熱い視線が注がれました。

森江さんは今、「監督」としてかかわることが大半です。CGクリエイターとひとくちにいっても、ほとんどのCG映像は、何人ものクリエイターが分業で制作しています。

たとえばあるミュージックビデオは、
  • デジタルアーティスト:映像にかかわるCG全般を制作する人
  • キャラクターアニメーター:絵コンテをもとにCGのキャラクターを動かす人。「CGアニメーター」とも呼ばれる
  • リギングアーティスト:CGキャラクターを動かすための骨組みをつくる人
  • コンポジター:各CG素材を合成し、最適な映像にととのえる人
が実際に手を動かし、森江さんは監督として、それを統括します。

そう、「CGクリエイター」とは、森江さんのような監督を含めた、CG映像の制作にかかわるメンバーの総称なのです。

島根生まれ、島根そだち。夕陽のうつくしい町で、大自然を駆けずりまわった

そんな森江さんは1985年、島根県の港町・松江市に生まれました。

「実家が農家で、CGとは無縁の環境で育ったんですよ。父がサラリーマンで母が専業主婦の、兼業農家だったんです。小さいころはパソコンに触れたこともなく、山や川を駆けずり回っていた気がしますね」

大きな湖沿いにある松江は、別名「水の都」。湖面に夕陽が反射した風景がうつくしく、「日本夕陽百選」にも選ばれています。森江さんはこの、湖と山に囲まれた環境で、18歳までを過ごしました。

CGに触れたきっかけは、母が借りてきた「あるもの」

デジタルとは無縁だった森江さんがCGに触れたのは、お母様が好きなあるものがきっかけでした。

森江さんのお母様は大の映画好きで、家でよく、レンタルショップで借りた映画を観ていたといいます。まだ幼かった森江さんも、それを一緒になって鑑賞していました。

写真はイメージです


「母はちょっと変わった人で、いわゆる子どもが見ちゃいけないようなシーンが含まれる映画も、僕にガンガン観せてきたんですよ(笑)。作品を観る中で、意味のわからない言葉やシーンが出てくると『これってどういうこと?』と聞いて。母が都度、答えてくれていました」

そういって笑う森江さんは、お母様のことを「好きなことは何でもやらせるタイプ」と話します。

「じつはCGって、1990年代が過渡期なんです。CG界の歴史に名を刻むような作品、たとえばターミネーター2、ジュラシックパーク、トイ・ストーリー、タイタニック、マトリックスといったCGがふんだんに使われた映画が、この時期に多く作られたんです。ちょうどそのころ僕は小中学生で、熱を出して学校を休むと、母がこうした映画を2〜3本借りてきてくれて。CGをみると、すごくワクワクしましたね」

サッカー部×読書家。周囲の視線は気にしない

小学校を卒業し、中学・高校とも、地元の公立校へ進んだ森江さん。高校は「松江東高校」という進学校でしたが、「そもそも島根には高校が少なくて、家からの距離を考えると、そこしかなかった」と笑顔で謙遜されます。

「読書家の母の影響で本が好きだった」という森江さんですが、高校までの12年間はサッカー部に所属。読書好きなサッカー部員はめずらしかったようで、「あ!康ちゃんまた本読んでる〜」と口にする同級生もいました。

周りの声は気にしませんでした。鈍感だっただけかもしれないんですけど(笑)。友達グループには属さず、目立つタイプの同級生と学園祭でバンドを組んだり、教室で本を読んでる子に『何読んでんの?』と声をかけたり、自分のやりたいように動いていましたね」

部活の練習に精を出しつつ、隙あらば文庫本のページをめくる文学少年。それが、高校時代の森江さんでした。

画像提供:MORIE Inc.

「腕に職の時代よ」母のなにげない一言、ずっと胸に

そんな森江さんですが、あいかわらずCGにも目がなく、寅(とら)年を迎えた年に「虎のCG」がテレビCMで流れたときには、じっと見つめて動けなくなったほどだったと言います。

当時はYouTubeのように「観たいものを好きなときに観る」術はなく、「あのCMをまた見たい」と思っても、偶然流れるのを待つしかありません。学生の森江さんは、ひたすらテレビの前で「虎のCG」を待ちつづけたといい、その執念に驚かされます。

大好きな故郷・島根を出たのは、2004年。進学校だけあり、大学へ行く同級生がほとんどでしたが、森江さんが選んだのはCGを極める道でした。

「まだ僕が小さいころ、母が車を運転しながら、『康太。あんたね、これからは腕に職の時代だから。技術をもっていないと生きていけないよ』と言ったんです。今となっては本人も記憶にないようなんですけど、子どもって不思議なもので、親のなにげない一言を覚えてるんですよね。そんなわけで、進路選択のときに『やっぱり腕に職だよな』と思って。東京の専門学校に進むことにしました」

ご両親は、森江さんの選択を反対しなかったといいます。森江さんいわく、「母は自分の好きなものをわかってくれていた」とのことですが、きっと心配もあったはず。お母様はどのような思いで、息子の門出を見送ったのでしょうか?それは、押しはかるほかありません。

名前の載らないクリエイター時代。悔しさバネに「監督」に挑む

さて、2006年に東京マルチメディア専門学校を卒業された後、森江さんは都内の映像制作会社「株式会社トランジスタ・スタジオ」に就職します。専門学校の2年間で身につけたスキルが活き、入社後すぐに、CGクリエイターとして頭角をあらわしました。

たとえば、NHKスペシャル『恐竜VSほ乳類 1億5千万年の戦い』。これは当時、森江さんが手がけ、その後の『のび太の新恐竜』への抜擢につながった作品です。

NHKスペシャル『列島誕生ジオ・ジャパン』。同シリーズを2006年から森江さんが担当


着々とキャリアの階段を駆けのぼっていた森江さんですが、一方で、時折もどかしさも感じていました。それは、いくら制作に携わっても、世間からみると作品をつくったのはあくまで「監督」であり、クリエイターである自分の存在は認識されない、ということ。

森江さんは「お恥ずかしいんですけど」と前置きしつつも、一種のジェラシーを感じていたと明かしました。自分のつくった作品が大きな賞をとっても授賞式にすら呼ばれないことがあり、悔しい思いもしたといいます。

転機は、ある作曲家からの依頼でした。

「当時ルームシェアしていた姉が、僕がテレビを観ている隣で、パソコンで音楽を聴いてたんです。その曲がすっごく良くて、『そのアーティスト誰?』って聞いたら、Hidetake Takayamaさんという方で。リサーチするうちに大ファンになって、都内のライブすべてに足を運びました。今は『ひでやん』と呼べるほど仲良くなったんですが、ひでやんは当時、僕のことを『どこに行ってもライブに来る、変な子だな』と思っていたらしいです」

2012年、入社6年目のある日。驚くことにHidetake Takayamaさんご本人から、「森江くん、1本お願いできる?」と、ミュージックビデオの依頼がきたのです。

そのとき、森江さんの心に火がつきました。「俺が監督をやる。ぜったいに自分でつくってやる」

憧れのアーティストからの依頼。これこそが、CGクリエイターからCG監督への第一歩となりました。

引用元:Hidetake Takayama『Express feat. Silla (mum)』


変化は続きます。この作品は、世界最大のCGの学会「SIGGRAPH」で入賞したのです

「10年も前の作品ですが、今見てもグッとくるものがあります」

森江さんは感情をこめて、当時の思いを振り返ります。そのうえ、これを機に、「この作品を見た」という人や企業から、CMやミュージックビデオのCG制作依頼がくるようになったのだとか。「なんだかんだでそれが10年ぐらい続いて、今に至ります」

かつて、自分の名前が載らないことにフラストレーションを抱えた森江さん。代表となった今では、ホームページに載せる作品に、かかわったスタッフ一人ひとりの名前を載せることにしています。

「実績がゼロだと、なかなか制作依頼は来ません。でも、ひとつでも大きな実績をつくれば見てくれる人がいます。監督という立場上、僕が表にでることがどうしても多くなってしまうんですが、いま隣の席で仕事してくれているスタッフも、ひとりのクリエイターとしてしっかり売り出したいんです」

教育は正解がわからないからおもしろい。7歳の息子は“紙”に絵を描く

生まれ育った故郷を離れて、CGの世界に飛び込んだ森江さん。15年目の今、いつかのお母様のセリフ「腕に職」は無事に叶ったと言えるでしょう。今では森江さんご自身も親となり、7歳になる息子さんを子育て中だそうですが、やはり息子さんもCGに触れているのでしょうか?

「いえ、息子にはまだパソコンを与えていません。どちらかというと、紙とペンで絵を描くような、アナログな遊び方をしていますね。じつは僕自身、リアルな体験から得たものがかなり大きかったので、今はアナログの体験を大切にさせています。教育って、正解がわからないからこそおもしろいですよ」

「作れるか作れないかで言えば、体験したことがなくても、知識をつけてツールの使い方を覚えればCGは作れます。でも、たとえば人が感動する景色や、没入して見入ってしまうような動きは、過去に見た景色や出会った人、実際に自分の手で触れた経験があったからこそ表現できているのではないかと思うのです」

引用元:ヨルシカ 『ノーチラス』。『Express feat. Silla (mum)』がきっかけとなり、ヨルシカご本人から声がかかって作ることとなった作品。


「もちろん、これは個人的な意見ですよ。僕も早くからパソコンに触れて、小さな頃から高度な技術を使いこなしていれば、今ごろもっと大物になっていたかもしれません。ただ、人を懐かしい気持ちにさせる映像ってどんなだろう? と考えてみて、思い浮かぶのは島根時代に見た光景なんです。サッカー部の練習帰りにみた夕陽とか……そういう原体験が作品に活かされることも、やはりあるのではないかと思うんですね」

「パソコンやツールに精通するのも、もちろん素晴らしいことです。ただ、息子にはそれと同じくらい、いろんなものに実際に触れて、見て、楽しいことも嫌なことも経験してほしいですね。もちろん失恋も。フラれて凹んでどうしようもなくなる…そうした経験が人生を豊かにするんだぞ(笑)、というのは、息子に伝えようと思います」

20代で年収4ケタも。全産業を横断して活きる、CGのスキル

CGクリエイターの年収について、森江さんがこんな事実を聞かせてくれました。

「CGが使われる分野はCMや映画、アニメやゲームのほかに、建築や医療、パチンコなどの遊戯機業界まで多岐にわたります。つまりCGのスキルは、あらゆる産業を横断できるんです。働き口に困ることは、現時点ではまずないでしょう」

森江さんいわくCGクリエイターの仕事は、「年収◯億」とまではいかないものの、「極貧にはならない」。たとえば新卒で年収300〜400万円からスタートし、20代のうちに500万円、600万円、1000万円……と上がっていくケースもめずらしくないのだとか。もちろん、それに見合った努力が必要なことは疑うべくもありませんが、実力に応じた報酬が得られる点では、夢のある業界と言えるのかもしれません。

子どもたちの発想力「僕よりもはるかに柔らかい」

森江さんによると、“いい作品をつくる”CGクリエイターの特徴は、受け手(視聴者)の気持ちを汲みとる力があること。

「人は悲しいときにこんなふうに泣く、こうやって笑う。それを身をもって知っている人のほうが、作品に深みが出ます。一度だけお会いしたことがあるんですが、宮崎駿さんもそんなふうに純粋な方でした」

そして、この力はまさに、森江さんが息子さんにさせたいような経験……悲しいこと、嫌なことも含め、さまざまな出来事に触れる経験を通して得られるといいます。

「僕の好きな作家さんのお言葉を借りると、子どもってそれぞれ、もって生まれた“センス・オブ・ワンダー”があるといいます。つまり、その子の心の琴線に触れるなにかが、それぞれにある。それに出会えて、『やってみたい』という衝動があれば、子どもはどこまでも伸びていきます。僕はそれが、たまたまCGでした。もしも僕と同じように、CGに関心を持ってくれた子がいたら、ぜひトライして欲しいですね。小学生の子どもたちの空想力や妄想力は、僕みたいなおっさんよりもはるかに柔軟なので(笑)。きっといい作品になると思います」

CGに触れるための唯一のハードルは「インフラ面」だと語る森江さん。

「パソコンとインターネット環境。これだけが、CGを始めるために必要なものです。かつてはこれが子ども達の足かせとなり、なかなか気軽に始められない実態がありました。しかし今なら、パソコンも10万円前後で買える。決して安くはありませんが、出せなくはない金額です。しかも、その10万円が彼・彼女らの能力を高めて、将来の生業にするきっかけになるのなら、それは価値のある10万円ではないでしょうか。子どもが本当にやりたいことをサポートするお金の使い方が、親として一番いいお金の使い方だと僕は思います」

保護者である私たちは、パソコンを使った作品制作に馴染みがなく、子どもにデジタル機器を使わせる行為を“よくないもの”と思いがちです。しかしもしかすると、パソコンとの出会いをとおして、わが子が「心の琴線」に触れる何かを見つけるかもしれません。

森江さんのおっしゃるとおり、今はパソコンがそれなりの値段で手に入ります。その1台がわが子の才能を開花させ、未来のクリエイターを生むかもしれない———そう考えると、決して高い買い物ではない、と思えてきませんか。

いつかわが子が、有名アーティストのミュージックビデオをつくる未来がくるかもしれません。CGにかぎらず、プログラミングや動画制作に興味をもつ可能性もあります。保護者の私たちも一歩踏み出し、「まずはやらせてみるか」の精神で、生きたお金の使い方をしていきたいですね。
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