「高校生でも簡単に使えることに驚いた」プログラミング未経験の高校生4人組 たった2カ月でCO₂濃度をLINEに通知できた | Ledge.ai
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この記事をledge.ai で読む >ICT教育支援に大きな貢献を果たしている岡谷エレクトロニクスは、ノーコードでも使える点に着目し、「Gravio」を岐阜工業高校の授業で活用できるよう全面協力。その結果実現したのが、「高校生によるAI×IoT開発」だったのです。
高校での情報Ⅰでは、データサイエンス分野やAIについても学びます。しかし、データ解析やシステム開発を楽しく体験できる教材は残念ながらそう多くありません。
複雑なコード(プログラム)を書かずともAI/IoTの構築や開発が可能なGravioは、中高生のプログラミング学習にぴったりです。この記事では実際に研究授業を行った岐阜工業高校の山口先生にお話をうかがうことで、
- 情報Ⅰで活用できる実践的な教材やツールを探している
- コーディングに詳しくない教師でもレクチャーしやすい学習ツールが欲しい
- 初心者の中高生でも簡単に扱えて、AIやIoTに触れられるICT教材は?
- スクールの中高生向けに新たな教材のカリキュラムを始めたい
- システム開発の面白さを生徒たちに体験してほしい
このような疑問にお答えしていきます!
ICT教育支援の実績豊富な岡谷エレクトロニクス
岡谷エレクトロニクスはIT技術のノウハウを活かし、教育現場にICT機器や遠隔教育用機器を導入するなど、幅広い文教ソリューションを提供してきました。小学校でのプログラミング教育の必修化により、キッズ向けプログラミング教材の裾野が少しずつ広がる中で、より高度な体験を求める中学生・高校生が使える汎用性の広いICT学習教材はなかなかありません。
「情報Ⅰ」の教科書を見ると、AI、IoT、ビッグデータといった言葉が頻出していますが、実際に授業でこうしたITスキルを実践しながら学べる環境が整っている学校は少なく、指導する先生も「何か良い教材やツールはないか」と試行錯誤しているようです。
そこで岡谷エレクトロニクスでは、ノーコードで使用できるGravioに着目。コードを書かなくてもAI/IoTを構築できるミドルウェア「Gravio(グラヴィオ)」であれば、プログラミング経験のない生徒たちでも簡単に操作できるのではないか?と考え、岐阜工業高校へ提案したと言います。なおかつ提案にとどまらず、実際に岐阜工業高校の生徒さん達とも交流しながら、彼らの開発をプロフェッショナルな立場から支えてきました。
以降では教育現場や高校生向けのカリキュラムに活用できるGravioをご紹介すると共に、岐阜工業高校・設備システム研究部顧問の山口先生から、どのように授業を進めていったのか詳しくお話を伺いました。
教育現場でも「情報Ⅰ」「AI/IoT」教材として活用できるGravioとは
- ノーコードでカメラや各種センサーによるデータとシステムを連携
- IoTを簡単に実現できるエッジウェア
- データを収集・管理し、データに基づいたアクションを自動的に実行できる
- 無償貸出のデバイス
Gravioは、アステリア社が提供するエッジコンピューティング型のIoT統合ソフトウェアです。 誰もが「作れて使える」、簡単に「変更、改良」できる仕組みで、費用も年額26.4万円(税込)からと導入しやすいメリットがあります。さまざまなセンサーを使用でき、応用範囲も広いことから、すでに多くの企業でも実際に使用されています。
プログラミング言語を習得していなくてもシステムの開発を体験できるツールとして、今後は学校教材としての活用も期待されるところです。
それでは、実際にGravioを使い研究授業を行った岐阜工業高校・設備システム工学科の山口教諭にお話を伺いましょう!
岐阜工業高校・設備システム研究部の顧問の山口 剛正教諭に伺いました!
――まず、岐阜工業高校はどのような特色を持つ高校でしょうか?
岐阜工業高等学校は、もともと県の工業試験場があった地に設立され、もうすぐ創立100年を迎える歴史ある工業高校です。当校には、電気・電子情報系、科学関連、航空・機械、建築関連、デザイン関係など、幅広く産業に関わるコースがあり、在籍生徒数は1,000名を超えています。
研究授業に参加したのは、設備システム工学科の生徒たちで、主に空調など設備システムについて学んでいます。この後お話をしますが、CO₂センサーやLINE通知のシステムを開発したのは、「設備システム研究部」部活動のメンバーです。
岡谷エレクトロニクスと共同で研究授業を公開
——今回、Gravioをはじめ3種類のツールを使用した研究授業を公開していますが、その意図について教えていただけますか?
工業高校の教諭として指導にあたる中で、他校の先生から「情報Ⅰのプログラミング分野における授業に関して、なかなか魅力的かつ適切な材料が見つからない」という相談を多くいただいていました。特に普通校さんですと「Excelをちょっといじったことがある」くらいの生徒さんが多く、どのように指導すればよいのか分からないとのことでした。そこで研究授業を公開することで、工業高校のみならず普通校の先生にも参考にしていただけるのではと考えたことがオンライン公開のきっかけです。
知識をただ詰め込むのではなく、自分の手を動かして学ぶ体験はとても重要です。生徒が自ら研究し、プロトタイプ(試作品)を作って、うまく動くかどうかを評価しながら改善していける実践的な授業には大きな価値があります。とはいえ授業時間数も限られるなかでは、「すぐに作れて、結果がわかる」題材を選ぶ必要がありました。そこで研究授業には、短期間で行えるラピッドプロトタイピングの形式を取り入れることにしました。
——研究授業の内容について、概要を教えてください。
今回は岡谷エレクトロニクスさんと共同で、「CO₂濃度を測定し、Gravioのマトリックス(LEDパネル)に表示させるシステムを開発しよう」というテーマで授業を行いました。このテーマを選んだのは、新型コロナウイルス感染症の流行によって「換気」の重要性が強く説かれてきたことから、生徒たちにも馴染みの深いテーマだと考えたためです。
授業ではまず、「システムを開発するには、データをインプットし、必要な形に加工してからアウトプットする必要があります。その『加工』をするのがプログラムです」と説明しました。そこから実際にシステムを開発する流れを体験してもらったのですが、ここでは、プログラミング言語自体の学習自体はあえて省略しました。
高校の授業時間数には限りがあり、プログラミング言語を本格的に学習する余裕はないからです。何より、難しい説明ばかりでは生徒のモチベーションも上がりません。便利なツールを使用してすばやくアウトプットし、結果を見て改良していくサイクルを短期間で繰り返すほうが、システム開発の本質を学べると考えました。
コーディングの必要がないGravioなら、CO₂センサーで「CO₂濃度」というデータをインプットし、「条件に応じて換気をうながす」アウトプットをすぐに実現できます。このサイクルを1回の授業で体験してもらうことで、システム開発のベースとなる考えが具体的に理解できるわけです。
「すぐに作れてすぐに結果がわかる」Gravioを活用しラピッドプロトタイピングを授業で実践
——Gravioを授業に導入して良かった点や印象に残っている生徒さんたちの様子などについて、ぜひお聞かせください。プログラミング授業を通して、生徒たちは「自分が作ったモノは実社会でも役立つんだ」と感じたようです。この成功体験をきっかけにものづくりへの積極性を発揮するようになった生徒もおり、授業の成果を実感しています。
最近では授業のほか、部活動でもGravioを使用しており、そちらではチームでプロダクトを作る「チーム開発」も体験できました。それぞれの個性や特性を活かし、より良い製品を生み出す体験を学生のうちにしておくことは生徒たちの将来に向けて意義深いことだと考えています。
——Gravio本体の良さについてはどう感じられましたか?
Gravioの良さは、Gravioを中心にどんどんアイディアが広がっていくことです。たとえば、「CO₂の測定データを保健室でも見られるといいな」と思いつけば、すぐに試すことができます。CO₂以外にもさまざまなセンサーがあり、アイディア次第でどんどん展開していける点が生徒たちの好奇心や創造性を刺激してくれていると感じました。
しかもそうしたチャレンジがノーコードで行えるのが良いところです。難しいコーディングでつまずいてしまい、システム開発の面白さを知る前に「二度とやりたくない」と苦手意識を持たれるのは残念なことです。まずは手を動かしてアイディアを形にしていく体験を経て、開発の面白さや達成感を知ってもらえるのが嬉しいですね。
なおかつ、「難しいことを実現するならばコーディングはできた方が良いな」という流れで、やがてコーディングの重要さにも気づく面があるのも、教育としては大事なポイントだと感じました。
——Gravioが授業の教材として使いやすい点、優れている点についてはいかがでしょう?
まずシステムが極めて安定している点です。どのような環境でも確実に安定して動くのは、教育現場としては非常に助かります。
もうひとつは操作がとてもしやすいこと。インターフェースが英語だと、それだけで生徒にとってはハードルが上がってしまうのですが、国産のソフトウェアはとてもわかりやすいので、高校生にとっても扱いやすいです。
さらに拡張性が高いところも魅力です。いろいろなデバイスで活用できますので、意欲のある生徒なら、ブログなどを参考にして、自ら新たな開発ができる余地があります。ちなみに当校では、生徒の創造性を後押しすべく、いつでもGravioに触れられる環境を整えました。
——非常に領域の広いAIやIoTについて、初心者の生徒さん達に楽しく、しかもわかりやすく授業をするためのポイントを教えていただけますか?
AIやIoTがどのようなものであるかを理解するためには、ごく簡単なものでもよいので、実際に開発をしてみることが近道だと思います。
たとえばAIを本当に理解するためには、統計やロジスティック関数の知識が必要です。しかしこれらは、解説を聞いているだけではピンと来ないものです。実際に手を動かしながら「閾値をどこに定めるか」などと悩んだほうが、初めから「閾値」の説明をするよりも実感を持って統計の知識が身につきやすいです。
最初は見よう見まねでも、自分が作ったものが実際に機能すると、生徒たちは「できた!すごい!」と喜び、もっともっと学ぼうとします。「プログラミングを学ぶなら当然、コーディングから学ぶべき」という意見もありますが、あえてハードルを低く設定し、自ら体験しながら知識を吸収していくことで、楽しさを原動力に学びを高めていける面もあるのではないでしょうか。
生徒たちが社会的な使命感を持った技術者として活躍できるように
——今後、さらに予定しているカリキュラムや授業の計画はありますか?
まだ固まっているものはありませんが、これまでに実施してきた「プロジェクションマッピング」とGravioを組み合わせて、よりインタラクティブなプロダクトを開発することはできそうです。たとえば、Gravioには人感センサーもあるので、人が入ってきたら自動的にプロジェクションマッピングが始まるような仕組みが実現できたら面白いでしょうね。生徒たちはワイワイ言いながら、日々新しいアイディアを出し合っています。
AI/IoTといった専門分野に関する授業は、岡谷エレクトロニクスさんのようなIT関連のノウハウを持つ企業さんに支援していただくことでかなり充実します。今後も岡谷エレクトロニクスさんのサポートをいただきながら、生徒たちにたくさんの経験をさせてあげたいですね。
工業高校の教育ポリシーは、社会に貢献する技術者の育成です。生徒たちには、授業や部活動を通じて得た体験を糧に、使命感を持った技術者として活躍してほしいと願っています。