『ロボッチャ®ジャパンカップ2024』大会レポート|ボッチャ×ロボット!STEAM力を育てるスポーツ競技の魅力を探る
今回はたくさんの写真と共に、2025年3月16日に行われたジャパンカップの熱闘をレポートします。
ロボットや工作が好きな子どもたち、スポーツは好きだしやってみたいけど「運動はあまり自信がないからなぁ」なんて思っている子どもたち。「なんか面白いことに挑戦してみたい」そんな気持ちがあったら、ロボッチャ®に挑戦してみませんか?
「ロボットでボッチャをやるってどういうこと!?」と気になったら、ぜひぜひ大会の様子をご覧ください。きっとあなたもやってみたくなりますよ!
ロボッチャ®を知って、一緒に楽しもう!

「ロボッチャ®」を、まだご存じない方のために、この魅力的な競技を簡単に紹介しますね!
今、子どもたちに必要といわれるSTEAM力を鍛えながら、障がいの有無や国籍、年齢、性別などに関わらず互いを認め合い尊重する心、ダイバーシティやインクルーシブについて、その体験を通じて自然と育んでいける素敵な競技、それが「ロボッチャ®」です。

競技のベースは「ボッチャ」と同じです。白いジャックボールを目標にして、自チームのボール(赤か青)を投げて、ジャックボールに最も近づけた方が勝ちという、とってもシンプルなルール。各チーム6球ずつ投げることができ、エンドが変わるとスローイングのエリアを交代します。
もちろん、細かいルールはありますが、本質はシンプル。いかに自分たちのボールを白いジャックボールに近づけるかが勝負の決め手です。
こちらは、「ボッチャ」の様子です。

「ボッチャ」競技中の様子
ボッチャとロボッチャ®には2つの大きな違いがあります。
まず1つ目はサイズ。ロボッチャ®では通常の10分の1というミニチュアサイズのコートを使用し、ボールもすべて10分の1サイズ。比較的小さなスペースでもコートを作れるので、たとえば学校の教室やスクールの一室などでも行えるサイズ感です。

そして2つ目が最大の特徴。投げるのが人間ではなく、ロボットであること!ロボットが小さなボールをコートに投げ入れる様子は圧巻。ロボットはレゴ®ブロックを使用します。会場には、長いアームを持つロボットや、ギヤをいくつも組み合わせたロボットなど、個性豊かなロボットがずらりと並んで壮観でした!

ロボッチャ®のロボットはレゴで製作、それをプログラムして動かす
プレイ自体はシンプルですが、戦略面も実はとても奥深いのです。相手のボールをジャックボールに近づけないよう妨害したり、他のボールに当てて動かしたり……カーリングに似た駆け引きも楽しめます。
技術と技能、戦略と瞬時の判断力が問われる、単なる運任せではない「スポーツとテクノロジーの融合」それがロボッチャ®の魅力です。

さぁ一緒に、会場の熱気を感じてみましょう。たくさんの写真と共に、大会の様子をレポートします。
小学生も高校生も大人もみんな一緒に『ロボッチャ®ジャパンカップ2024』

時折強い雨がふり、風も冷たく、コートの襟をあわせ身を縮こませてやってきたコエテコ取材班。到着したのは、麹町学園女子中学校・高等学校。雨粒をはらって足を踏み入れると、奥から「わー!」という歓声が響いてきて、ビックリしました。
すでに競技は始まっている様子。
急いで試合会場となっている大築ホールに向かうと、女の子がロボットを抱えて何やら話し込んでいます。トレーナー姿の小学生は兄妹でしょうか、お兄ちゃんの言葉に納得していないのか、小さい女の子が一生懸命に語っています。腰に手をあてて余裕にも見えるのは、どうやら先生方のチームのようです。

笑顔が素敵すぎる!聖学院女子チームの3人。女の子たちも奮闘していましたよ!

小学生vs大人の戦いが見られるのもロボッチャ®ならでは。

真剣な表情でスコアをつける審判。この大会ではスタッフ・ボランティアが大勢活躍。
青いベストを着用したスタッフも大勢います。
会場に設けられたチームベースは、いわば参加チームのピット。ここで作戦を練り直し、ロボットを再調整し、次の試合に臨みます。

チームベースは、参加チームの基地!

仲間と作戦会議をしたりロボットを調整したり、それぞれ忙しい!

ロボット教室や公立小学校、私立中学高校のほか兄弟姉妹のグループなどさまざまなチームが出場。

ロボットをコートにセッティング。慎重に丁寧に行っている。
予選リーグを勝ち抜いた1位、2位のチームに加え、敗者復活戦も行われ、第1から第3まで各ブロックから1チームずつが選出され、いよいよ決勝トーナメントへ!

ミリ単位の差が勝敗を決めることも!審判もコンパス片手に必死です!
会場の空気は、外の冷たい雨風とは打って変わって熱気に満ちあふれていました。 私たち取材班も、いつの間にか上着を手に持ったまま、各コートで繰り広げられる熱戦に釘付けです。
ロボットたちの繊細な動きと、操作する子どもたちの真剣な眼差し。歓声と溜息が入り交じる会場の空気感は、まるで心臓の鼓動のように会場全体に響き渡っていました!
ポスター展示や画像解析ロボッチャ®コーナーも!

さて、白熱の決勝戦前にひと息いれましょう。
『ロボッチャ®ジャパンカップ2024』では、競技だけでなくポスターセッションも魅力のひとつ!

ポスターもそれぞれ工夫されていて、じっくり見ていくととても興味深い。

写真やイラストも入り、プレゼンテーション力が問われるポスターセッション。
各チームが自慢のロボットについてカラフルなポスターでアピールしていて、会場の一角には個性豊かなプレゼンテーションがずらりと並んでいました。
展示ブースも見どころ満載です。

こちらは5分の1サイズのロボッチャ®のロボット。間近で見ると迫力がある。
通常のボッチャの5分の1サイズ(ロボッチャ®は10分の1サイズ)のロボットが実際に動く様子を間近で見られるんですよ。さらに今回は特別展示として、画像解析を駆使した高性能ロボッチャ®ロボットも登場!

一方で画像分析を行いプログラムで動くロボットは小さいが精密なギミックが詰め込まれている。

子どもたちが集まるとスタッフがプログラムをみせながら解説。
スタッフによるデモンストレーションも行われていて、試合の合間に訪れる子どもたちは目を輝かせて見入っていました。興味深そうな表情で足を止め、ロボットの動きを熱心に見守る保護者や先生方の姿も。
競技だけでなく、こうした交流や学びの場も、ロボッチャ®の大会の醍醐味ですね!
敗者復活戦から下剋上!?エキサイティングな決勝戦

ここからは怒涛の決勝トーナメントの模様をお伝えします!決勝トーナメントは、リーグ1位の13チームと敗者復活戦から勝ち上がってきた3チームの合計16チームで行います。
「こんな戦いも見られるんだ!」と思わず感動したのが、準決勝での「聖学院 物理部員の集い」vs「聖学院 二刀流」の対決。
なんと同じ学校同士の対決です!高校生チームと中学生チームによる真剣勝負。見守る先生はなんとも複雑な思いだったかも!? 結果は、さすがの経験と技術で高校生チームが勝利。

先輩たちの優しい笑顔。後輩たちはその背中を追いかけていく。
でも、試合後の光景こそが最高の感動を呼びました。
高校生たちが後輩の肩を優しくたたき、固く握手をかわし、笑顔で励まし合う姿。その表情には「もっと追いかけてこいよ!こっちまでくるんだぞ!」という最高のエールが込められていました。
真剣勝負だからこその「勝ち負け」。でも試合が終われば自然と生まれる「共に戦った絆」。技術を競うだけでなく、心と心がつながる、それこそロボッチャ®がスポーツの本質を体現している瞬間ではないでしょうか。
この温かな光景は、私たちにロボッチャ®が「技術を競う大会」だけではない、深い意義があることを示してくれました。
そして、決勝戦は聖学院 二刀流(東京)と、RDS:version3900(千葉)の戦いとなりました。今度は、高校生と小学生の決戦です!

試合前には必ず、しっかりと挨拶をかわす。みなぎる意欲が2チームから感じられますね!

第1エンドはRDS:version3900が1点を勝ち取り、第2エンドも点を追加しそうでしたが、聖学院 二刀流の第5投目で形勢が逆転!
とにかく、この決勝戦は本当にすごかった。一方がジャックボールにピタリとボールをつけて優位に立ったかと思えば、相手がそのボールを弾き出す展開の連続。
聖学院 二刀流の戦略はかなり高度で計算されていました。対する「RDS:version3900」は神様に祈りつつも見事な集中力で、その戦略を打ち破りにかかり、そして成功させるのです!
次の一手をどこに打つか、相手の動きをどう封じるか。それぞれのチームからは湯気が出てきそうなほど、頭脳と技術を駆使した激しい攻防が続きました。

2エンドマッチで「1:1」の同点の為、決勝戦はタイブレークに突入!頭を思わず抱える高校生と祈る小学生の姿が印象的。

とにかくずっと「祈っていた」小学生チーム。気持ちが伝わってきます。

タイブレークの末、見事に聖学院 二刀流が優勝!
ちなみに、この2チームとも、実は敗者復活戦からこの決勝まで進んできたのです。それだけに、タイブレークの末、勝利を獲得したチームの喜びもひとしお。肩を落とし膝に手をついていた小学生の男の子たち、その悔しさもきっと大きな糧となることでしょう。次に向かって、がんばれ!
『ロボッチャ®ジャパンカップ2024』結果発表

優勝は聖学院 二刀流チーム!

聖学院 二刀流チーム。抜群の戦略とチームワークで敗者復活から下剋上!
「最初のリーグで負けて、敗者復活から勝ち抜いてきたので、本当に優勝できてうれしいです!」
開口一番、答えてくれた聖学院 二刀流チーム。高校2年生のチームです。
今回の出場では、ロボットがボールを投げる「安定性」にこだわったそう。「ボールって実は個体差がある。それを把握し、使い分けて、きちんと狙いたいところに投げるのが難しかった。何ヶ月もプログラムの微調整を続けてきました」その結果の優勝だったのですね!

「動いてくれるのはロボットだけど、判断したり考えたりするのは人間。結局、ロボットもプログラムも人が操作するし、戦略を練るのも自分たちです」
「よくサッカーではボールと友だちになると表現しますが、僕らはロボットと友だちになる感覚でやってきました。ロボットだけがすごくてもうまくいかないし、人とロボットのバランスが大事だと思います」
人とロボットの関係をしっかり理解し、分析力と戦略を兼ね備えた、最強のチームでした。優勝おめでとう!
入賞者発表!
準優勝:RDS:version3900(千葉)

がんばった小学生チーム。試合が始まると手をあわせ勝利を願う姿が印象的でした。
3位: カバおブラザーズ(茨城)、WAKUSPO★ROBO(千葉)

WAKUSPO★ROBOとカバおブラザース。両チームとも3位おめでとう!
特別賞:GKC チームD(京都)
育伸社賞:3S(千葉)
ポスター賞:みかんCompany(鳥取)
熱戦を終えて「その先にあるものを見据えてほしい」

一般社団法人ロボッチャ協会の岡本弘毅代表理事
大会の最後には、一般社団法人ロボッチャ協会の岡本弘毅代表理事から講評がありました。
理事長からは「勝ち負けだけではありません。そこから次につながるものを学んでほしい。プログラミングスキルもそうですが、課題解決力や、友だちと一緒に乗り越えていくプロセスで得た力を大切にし、その先に何があるのかも考えてください」という言葉がありました。
岡本理事長は「教育」に対する熱い思いを持ち、常に学びを追い求める情熱に満ちあふれています。取材の合間に姿を見かけると、すぐに私たちに気づいて、「見てください!みんな、がんばっているでしょう?」と目を輝かせながら声をかけてくださいました。
引率の先生方や保護者の方々にも気さくに話しかけ、ロボッチャ®の素晴らしさや学びの意味、そして子どもも大人も共に成長し続けることの大切さを熱心に語る姿が、会場のあちこちで見られました。
その姿からは教育者としての深い愛情と使命感が伝わってきて、ロボッチャ®がただの競技ではなく、未来を担う子どもたちの成長の場として大切に育まれていることがよくわかります。
実はコエテコでは、昨年の「プレ大会」も取材しています。
2023年3月17日、麹町学園女子中学校・高等学校の大築アリーナにて「ロボッチャ®ジャパンカップ2023」が開催されました。ロボッチャ®は、ロボット×STEAM×ダイバーシティが学べる、新しいテクノロジースポーツ。 本記事ではたくさんの写真と共に大会の様子をレポートします。
2024/11/06 10:16
1年後の今年は、全国から52チーム、参加者数は150名以上と拡大。仙台から鳥取まで、多くのプレイヤーが参加してくれたそう。ロボットとスポーツ、そして戦略性の高い頭脳戦も楽しめるロボッチャ®。これから、ますますプレイ人口が増えそうな勢いです。
子どもたちはもちろん、大人も楽しめる点にも注目ですね。親子で一緒にロボッチャ®に挑戦してみるのもいいかも!
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