クリエイティブロボティクスコンテスト2025レポート|中高生25名のロボット創造力
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監修者
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GMOインターネットグループ デベロッパーエキスパート(プロダクトマネージャー)
沼田 直之GMOメディア株式会社に2009年に入社。大規模BtoCサービスの開発・運用を担当した後、2017年よりプログラミング教育ポータル「コエテコ」の編集長として教育全般に関する幅広い知識と実績を蓄積。プログラミングやIT教育、キャリア支援、教育の現場取材を通じて、教育分野の課題解決に貢献している。 現在は、教育事業におけるPdMとして、プロダクト設計からマーケティング、広報活動まで幅広く対応。教育に携わる家庭人として、子どもの学びにも力を注ぐ。
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予選を通過した25名の中高生が、テーマパフォーマンス部門またはタイムアタックレース部門に出場。ロボット工学の第一人者である古田貴之先生(千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長・学校法人千葉工業大学 常任理事)をはじめとする審査員の前で、自ら設計・制作したロボットの技術力とアイデアを競い合いました。
この記事では、競技の内容や会場の雰囲気、審査員からのコメント、今年ならではの特徴などをお伝えします。基本的な情報はもちろん、実際に会場で感じた観客の盛り上がりや、その場にいたからこそわかったリアルな様子もレポートしています。
クリエイティブロボティクスコンテスト2025とは

予選を勝ち抜いた中高生25名が集結
クリエイティブロボティクスコンテストは、一般社団法人未来創生STREAM教育総合研究所(RISE)とヒューマンアカデミー株式会社が共催するロボット工学コンテストです。全国から予選を勝ち抜いた満18歳以下の中高生が、自ら設計・制作したロボットで技術とアイデアを競います。
今回の本戦には、テーマパフォーマンス部門に11名、タイムアタックレース部門に14名、合計25名の選手が出場しました。
2部門で競うロボット競技大会
大会は2つの部門で構成されています。テーマパフォーマンス部門

- 「世の中の人々の中にあるロボット」がテーマ
- マイコンを搭載しプログラミングで制御された作品
- 5分間のプレゼンテーション形式で作品とコンセプトを発表
タイムアタックレース部門
- 自作ロボットで規定コースを走行
- 完走タイムを競う
審査委員長は千葉工業大学・古田貴之先生
審査委員長を務めるのは、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長で学校法人千葉工業大学 常任理事でもある古田貴之先生です。
ユカイ工学株式会社代表の青木俊介氏、ヒューマンアカデミー株式会社代表取締役の今堀健治氏、神山まるごと高専教授の竹迫良範氏、千葉工業大学からは上席研究員の奥村悠先生、そして過去のMVP受賞者である山本蒼也氏らが審査を担当しました。
賞金総額100万円以上、MVP賞金は10万円
大会では、MVP賞(賞金10万円)を筆頭に、クリエイティブ最優秀賞、クリエイティブ優秀賞、タイムアタックレース金メダル(賞金5万円)、銀メダル、銅メダルのほか、アイデア賞など、多彩な賞が用意されています。文部科学省後援である本大会は、大会初となる文部科学大臣賞も新設されました。賞金総額は100万円以上に上り、各企業からの協賛賞も設けられています。
会場には協賛企業等によるブースもあり、さまざまなロボットが展示され、多くの関心を集めていました。
タイムアタックレース部門がスタート
自作ロボットで規定コースを走破
コンテストは、タイムアタックレース部門からスタートしました。選手たちは自作したロボットで、カーブや直線が組み合わされた規定コースを走行し、完走タイムを競います。コースは白いブロック塀(発泡スチロール)に囲まれ、途中にポイントとなる色のシートが敷かれています。超音波センサーやカラーセンサーを使って壁や床の色を検知しながら走行。各選手には2回の走行機会があり、良い方のタイムが記録されます。
ギリギリまで調整を続ける参加選手
エキシビションとして順天高等学校も参加
なんといってもドキドキなのが、コース設定が「当日発表」であること。そのため、選手たちは競技前の試走で状況を判断し、短い時間内で微調整をして本番に突入します。
床の状態やライトの当たり方によって、ロボットの挙動が変わることもあります。調整は1回目の走行後にも行う姿が多く見られました。
完走をめざしつつスピードを競う
タイムアタックレースで難しいのは、完走とスピードの両立です。しっかり調整してきても、本番では思い通りに動かないケースが続出しました。
コーナーを曲がりきれず壁にぶつかったまま止まってしまうロボット、その場でくるくると旋回を続けるロボット。回転したままで(ダメかな)と思うと、スッと後ろに下がって方向転換することもあり、会場からは「がんばれ!」という声が飛びます。
壁にぶつかったまま、時間だけがすぎていくことも…
直角に曲がるコーナーがポイントになった
そんな中で応援団も熱が入ります!
壁に引っかかったまま時間切れとなった瞬間には、「あ〜…」という残念そうな声が響きました。
ほぼゴール直前まで進みながら、くるりと踵を返してスタート地点まで逆戻りしてしまったロボットも!スタート地点に、きちんと戻っていくロボットに、選手もびっくり、思わず苦笑いを浮かべる場面もありました。
12.69秒!驚異の早さで会場を沸かせた小池さんのロボットが金メダル!
難易度の高い中、唯一2回とも完走した我妻さんとロボット
完走したロボットには割れんばかりの拍手が起こり、完走できなかったロボットにも、その挑戦を讃える温かい拍手が送られていました。
コーナリング技術が勝敗を分けた!
ロボットがコーナーへ差しかかる。曲がりきれるか?選手も観客も固唾をのんで見守った
完走しているロボットに共通していたのは、ガイドやローラーなどの保護機構がうまく機能していたことです。コーナーをうまくクリアーできたロボットが完走しているケースが多く、コーナリング技術の重要性が浮き彫りになりました。
思い通りに動かない悔しさも、完走できた喜びも、すべてを共有する会場の温かさ。ロボットと選手が織りなす真剣勝負に、ものづくりの本質が詰まっていました。
テーマパフォーマンス部門
テーマは「世の中の人々の中にあるロボット」
テーマパフォーマンス部門は、午後13時35分からスタートしました。今年のテーマは「世の中の人々の中にあるロボット」。日常生活の中でロボットがどのように人々の役に立つか、自由な発想で作品を制作することが求められました。福島在住の橋本さんは燃料デプリを原子炉から取り出すアーム型ロボットを制作
この部門では、マイコンを搭載しプログラミングで制御されていれば、その他の要素は自由に構成できます。3Dプリンターで筐体を作る、レーザーカット素材を使う、市販のパーツと組み合わせるなど、アプローチは選手それぞれです。
審査では、アイデアの独創性、技術的な実現度、プレゼンテーションの説得力など、総合的な観点から評価が行われます。
プレゼンテーション形式で作品を紹介
プレゼンテーションにも力が入る!
選手たちは5分間のプレゼンテーションで、作品のコンセプト、制作の動機、技術的な工夫、実演などを発表します。スライドを使って説明する選手、実際に動かしながら機能を紹介する選手など、プレゼンテーションのスタイルも多彩でした。

クリエイティブ最優秀賞を受賞した「こども専用舌下免疫療法薬箱」。舌下免疫療法を毎日行う自身の経験から生み出されたロボットは、遊び心と工夫が光っていた。

クリエイティブ優秀賞を受賞した「魔法の杖で文字を描くロボット」は、魔法の世界をロボットで表現!見ていて楽しい発表でデザイン性も優れていた。

文部科学大臣賞を受賞した「SketchBot」は、デジタルとアナログの融合を実現。あたたかみのあるロボットに会場も和やかな雰囲気に包まれた。
渾身のロボットが続々と登場し、審査員も思わず前のめりに!
スケッチボット、飲食店の配膳をテーブルまで運ぶ配膳ロボット、近視予防のためのブロックロボット、間取り作成をアシストするロボット、魔法の杖で文字を描くロボットなど、11名の出場者がそれぞれ独自のアイデアを披露しました。
動作トラブルにも冷静に対応、試行錯誤のプロセスを評価
今年のテーマパフォーマンス部門で特に目立ったのは、例年よりもキットにプラスアルファした高機能でデザイン性の高い作品が増えたことです。一方で、高度な設計のためか、本番では、意図した通りに動かないトラブルも発生しました。なかなかうまく本がはさまらず、パーツが落ちるハプニングも。焦らず話を続けた竹澤さん
近視予防のための「近視ブロックロボット」を制作した竹澤さんは、途中でロボットのデモを行おうとしました。しかし、うまく動かず……。「ちょっと動かないので後回しにします」と冷静に判断し、機構の説明に切り替えました。
古田先生のアドバイスも熱が入る!
古田先生からは、サーボモーターの制御ができていること自体が素晴らしいと評価されたうえで、「力を伝える部分と構造的な部分を分離すると良い」という具体的な技術アドバイスが送られました。
西日の影響を指摘され、やり直した永瀬さん。うまく動かなくても一生懸命に機能を解説
永瀬さんの間取り作成ロボットは動くものの、うまく間取り図を描いてくれません。
古田先生が「太陽光が入ってカラーセンサーがうまくいかなかったのかも」と原因を指摘し、照明を落として再挑戦しましたが、それでも動作せず。
しかし古田先生からは「建築現場の墨出しロボットとして、このアイデアは現場で求められている。それに自力でたどり着いたのは視点がすごい」と、アイデアの価値が高く評価されました。
テーブルに料理を置くところまで行う配膳ロボット。下アームの料理がテーブルに置くと次には上アームの料理がおりてくる。会場からどよめきが。
配膳ロボットを制作した西川さんへは、「細かいところに苦労の跡が見える。ネジ山が突き出ていて、はめるようにしてずれないようにしている。何回も調整した後が見受けられる」とのコメントが寄せられ、試行錯誤を重ねたプロセスそのものが評価されていました。
今回、「あやつり人形ロボ」でプレゼンテーションを行った檜垣さん。
実は昨年の大会、ロボットが制御できない中で最後の最後までねばり、調整を続けた選手です。その様子は昨年のレポート記事にもありますが、今年、彼の勇姿がふたたび見られました。彼はアイデア賞を受賞しています。
ひたむきに挑戦をし続ける気持ちの強さが、彼をここまで歩ませてきたのでしょう。
完璧に動かなくても、そこに至るまでの思考とプロセスにこそ価値がある。審査員の温かく的確なアドバイスと、それを真剣に受け止める選手たちの姿に、技術を超えた学びの場としての深さがありました。
なお、昨年のレポートは下記記事からご覧いただけます!
笑い、驚き、感嘆した昨年度大会の様子や参加者達の成長が気になる方は、あわせてチェックしてみてくださいね。
クリエイティブロボティクスコンテスト2024レポート|新たにスケールアップした大会の様子をたっぷりお伝えします!
審査委員長・古田貴之先生の講評から見えた大会レベル
表彰式後の総括で、古田先生は今大会のレベルの高さについて語りました。
「毎年レベルが上がっています。今回、MVPはすぐに決まりましたが、それ以外の賞については非常に迷いました」
レベルの高い作品が多数あり、審査が難航したとのこと。
「これまではデザインが優れているとかメカがすごいということが多かったのですが、今年はトータルに全部できている人がとても増えて、しかも標準のキット以上のことを行っている人が多かった」
キットをベースとしながらも、3Dプリンターで独自パーツを作る、異なるマイコンモジュールを組み込むなど、標準を超えるチャレンジが当たり前になってきている様子がうかがえます。
最後に古田先生は「本当にレベルの高い大会でした。僕も来年はもっと頑張っていいロボットを見せられるように努力します」と締めくくり、会場から笑いと拍手が起こりました。
受賞者の皆さんについては記事の最後に載せています。惜しくも受賞に届かなかった人も、また、次をめざして進んでくださいね!
クリエイティブロボティクスコンテスト2025は、参加者全員の記念撮影で幕を閉じました。
RISE代表が語る大会の意義と今後の展望

一般社団法人未来創生STREAM教育総合研究所 須藤冬暁代表理事
今年の大会では、初めて高校生チームが参加しました。これは大変意義深いことだと考えています。というのも、ロボット制作に励む子どもたちは、民間の習い事に通っている子ばかりではないからです。
順天高等学校から参加してくれた選手の皆さん
公教育の中で頑張っている子たちも数多くいます。そうした方たちにも、ぜひコンテストに参加してもらい、力を試す場を提供したいと思っています。
このコンテストは技術力を競うだけでなく、プレゼンテーション能力を育む場でもあります。大規模なイベントで大勢の前に立ち、自分の作品を発表する。この経験は、子どもたちにとってかけがえのない財産になるはずです。
今後は、さらなる規模の拡大とともに、「出口」の明確化をめざしていきます。子どもたちが今取り組んでいるロボット制作が、将来どのような仕事やキャリアにつながるのか。その道筋を示すことで、より多くの子どもたちがロボット工学やエンジニアリングに興味を持ち、挑戦を続けられる環境を整えてまいりたいと考えています。
子どもたちの創造性と技術力がぶつかる場
クリエイティブロボティクスコンテスト2025は、単なる競技会ではなく、STREAM教育の実践的な学びの場でした。1回目の走行で失敗し、2回目に向けて必死に調整する姿。動かなかった作品について審査員から技術的なアドバイスを受ける姿。これらは、正解のない課題に向き合い、試行錯誤を重ねるエンジニアリングの本質を体験する貴重な機会です。
会場で見た25名の中高生たちの真剣な眼差しと、動いた瞬間の笑顔、悔しさをにじませながらも次に向かう姿勢。彼らが今ここで体験している失敗と挑戦のすべてが、まだ見ぬ未来を創る力になっていくのだと、強く感じさせられた一日でした。
クリエイティブロボティクスコンテスト2025 受賞者
- クリエイティブ最優秀賞(MVP) 愛知・豊田駒場教室 加藤 歩夢 (中1)
- クリエイティブ優秀賞(準MVP) 京都・上桂駅前教室 蔭山 優輝(高1)
- タイムアタックレース部門金メダル 山梨・甲府南教室 小池 楓(高2)
- タイムアタックレース部門銀メダル 東京・江戸川大杉教室 加藤 優真(中2)
- タイムアタックレース部門銅メダル 滋賀・彦根インター教室 我妻 賢弥(中3)
- 新人賞 愛知・清須西枇杷島教室 西川 育志(中3)
- 初出場教室賞 茨木・研究学園教室 竹澤 奎志郎(中2)
- アイデア賞 大阪・鶴見公園前教室 檜垣 葉多(高1)
- デザイン賞 福島・福島森合教室 飯田 空大(高2)
- 技術賞 愛知・西尾寺津教室 土谷 亘(中3)
- プレゼン賞 茨木・研究学園教室 竹澤 孝志郎(高2)
- 文部科学大臣賞 福岡・小倉北教室 桑村 悠太郎(高2)
- ユカイ工学賞 京都・上桂駅前教室 蔭山 優輝(高1)
- fuRo賞 福島・福島森合教室 飯田 空大(高2)
- 神山まるごと高専賞 愛知・豊田駒場教室 加藤 歩夢 (中1)
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