東京23区、子育て世帯は「世帯年収1,000万円」が平均?データと家庭のリアルから考える
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SNSやメディアでは「23区で教育にお金をかけるなら年収1,000万円は必須」といった声も目にします。実際のところ、年収1,000万円は子育て世帯の“標準”と言えるのでしょうか。
本記事では、公的データと3つの家庭への取材をもとに実態を探ります。
先に結論を言うと、大切なのは平均や中央値という数字に振り回されることではなく、家庭ごとの価値観に合った教育費・お金の使い方を選ぶことです。数字はひとつの目安として、まずは実際のデータから見ていきましょう。
統計で見る23区の子育て世帯の年収

東京都の調査を見ると、子育て世帯で年収1,000万円は決して珍しくないものの、当たり前とまでは言い切れません。
「令和4年度 東京の子供と家庭」では、共働きの両親世帯の38.5%が世帯年収1,000万円以上でしたが、逆にいえば6割超はそこに届いていません。
さらに、東京都全体の子育て世帯でも最も多いのは「600~800万円未満」で、1,000万円以上はあくまで一部です。
23区では高収入世帯が目につきやすい一方、データで見ると“1,000万円=普通”と断定するのは少し早い、というのが実態に近そうです。
先輩ママたちが明かす「わが家の家計と教育費」

統計だけでは見えてこない家計事情を知るために、東京23区在住の3家庭に、世帯年収・教育費の内訳・お金をかけているところ・節約しているポイントを聞きました。
①「子どもはひとりと決めている」
Tさん(34歳・出版社子会社勤務)夫(40歳・機械メーカー勤務) 長女(小1)
| 世帯年収 | 約1,200万円(夫800万円・妻400万円) |
| 教育費 | くもん 約16,000円(2教科)/スイミング 約10,000円 |
| お金をかけていること | 旅行・キャンプ・洋服など、子どもの体験や身の回りのもの |
| 節約していること | 子どもがひとりであること/帰省の回数(お正月のみに) |
——お金をかけていること、逆に節約していることを教えてください。
Tさん:ひとり娘なので、子ども関連にはお金をかけていますし、これからもかけていくと思います。
旅行は年に何回か行っていますね。小学生のうちにいろいろな体験をさせたくて、北海道や沖縄、今年はマレーシアも検討中です。

節約で最近大きかったのは、帰省を年2回から1回に減らしたこと。鳥取と広島なので、1回の帰省でなんだかんだと25万くらいはかかるので。それを1回にしたのは大きいですね。
でも本当の意味での節約は「子どもはひとりと決めていること」。
子どもふたりは年収1,000万円じゃ無理ですよ。それだけ子育てって、特に東京ではお金がかかるので。節約という言い方は正しくはないかもですが、子どもはひとりと決めたことが、いちばんの「節約方法」というのが本音です。
——23区内で子育てするなら年収1,000万円は必要?
Tさん:実家の援助や持ち家があれば別だけど、一般的には必要だと思います。年収1,000万円って話はよく出ますが、それと手取り額は違いますから。
うちは手取りは夫婦合わせて月65万円ほどで、住宅と車のローン、共働きなんでついつい外食したり、デパ地下で惣菜買ったりで、生活費はけっこうかかっていて、貯蓄は月々ではそこまでできていません。夫のボーナスはそれなりの金額なので、年払いの保険代とか旅行代、その他もろもろを帳尻合わせている感じです。
うちの子どもは公立小学校ですけど、知り合いは小学校から私立に行かせていて、しかも子どもはふたり。何気なく話を聞いていて思ったのは、年収2,000万以上はないと、そういうのは無理だなってこと。
年収1,000万円で、ギリギリ、中学受験とかして私立に子どもひとり通わせられるくらいだと思いますよ。
——あなたの家計で満足する暮らしはできている?
Tさん:中学受験も考えているので教育費はこれからどんどん上がっていくでしょうし、車の買い替えもあるし、食費とかも増えていくでしょうね。だけど、夫の年収が大きく上がる見込みはないので、微妙ですね。
余裕はないけど苦しいわけでもない。満足かと聞かれたら、いいえと答えますが、ただ、家族3人なら、それなりにやっていけそうかなという感じです。
②SNSで見る優雅なママたちが羨ましいかも
Eさん(41歳・パート)夫(45歳・映像会社役員) 長女(中2) 次女(年長)
| 世帯年収 | 約860万円(夫750万円・妻110万円) |
| 教育費 | 塾(長女)約28,000円/月 スイミング(次女) 約10,000円/月 |
| お金をかけていること | 夫のマラソン遠征 妻の美容費 (これからは)長女の塾代などもっと増やす |
| 節約していること | 車を手放した |
——お金をかけていること、逆に節約していることを教えてください。
Eさん:夫はマラソンが趣味で仲間と年に2回ほど泊りがけで大会に出ていて、これが合わせて20万円くらいかかっているのかな。私は美容オタクで、韓国コスメについ手が伸びてしまうんですけど、まぁたいした金額ではないです。
上の子は個別指導塾に通っていて、これがいちばん大きな出費。下の子は幼稚園だけど、幼児教育無償化のおかげで思ったよりかからない。
お金をかけているというか、やはり中学生にもなると教育費はガンガン上がってくるというのが実感で、お金をかけざるを得ないという感じ。
最大の節約は、下の子が生まれてしばらくして車を手放したこと。23区内なら車なしでも困らないし、維持費がかからなくなったのが大きいですね。年間にしたら、かなりの節約になっているんじゃないかな。
——23区内で子育てするなら年収1,000万円は必要?
Eさん:普通に暮らすだけなら1,000万円は必須ではないと思う。
でも、いるとこには普通にいますよ、贅沢キラキラ系のライフスタイルの人。私は中央区出身なんですが、地元の子で、親の援助で9,000万円のマンションを買ったなんていうのを聞いて、心底羨ましかったですよ!

彼女は専業主婦で、ご主人の給料だけでやっているけど、持っているもの、バッグとかファッションとかからも裕福なのがわかる。親に買ってもらっているのか、ご主人が五大商社でも勤めているんですかね。
そうかと思えば、家族経営の自営業で、世帯年収でほんと、たぶん600万とかそんな感じの家もあるし。港区だとか中央区とかでも高年収の人ばかりじゃないから、別に暮らし方次第では年収はもっと低くてもやってはいけるでしょう。
——あなたの家計で満足する暮らしはできている?
Eさん:満足ではないですね。長女の教育費がこれから本格化するし、下の子の分も貯めないといけない。
SNSで同世代の友人がコストコで好きなだけ買い出ししていたり、ピラティスに通っていたり、毎週ネイルしてもらってたり、家族でプチ韓国旅行していたり、なんていうのを見ると「いいなあ〜」って思いますよ。
だってコストコだって、好き放題かごに入れてたら、すぐ2〜3万円いくでしょう。ピラティスのプライベートレッスンだって高いはずだし。要するに年収1,000万円、都内在住・住宅ローン持ちで子どもがいたら、それぐらいの贅沢だって、難しいんじゃないですか。
そういう暮らしには年収2,000万円くらい必要だと思う。
まぁ、でも、ピラティスやネイルサロンに行けないからって、ああ不幸せだ、とも思いませんけど。ただ、見た時は正直「私もそんな生活したいなぁ〜」って思うのは思います。
とりあえず、わが家的には下の子が小学校に入ったら、私がフルタイムで働く、それで世帯年収をガッとあげて、まずはそれこそ、年収1,000万円がひとつの目標ですね。
③都内23区はあきらめて郊外で暮らすのもいいかも?
Kさん(42歳・管理栄養士/契約社員(社会保険あり・賞与なし・週4日8時間勤務)夫(44歳・飲食店勤務) 長男(小5)
| 世帯年収 | 740万円(夫480万円・妻260万円) |
| 教育費 | 塾・習い事なし |
| お金をかけていること | 健康管理(サプリ・水など) 年1〜2回の旅行 |
| 節約していること | 自炊中心・外食なし 全体に細かく節約 |
——お金をかけていること、逆に節約していることを教えてください。
Kさん:仕事が不規則で疲れが取れにくい夫のために、サプリや整体などの体調管理には多少お金をかけていますね。
普通はやはり子どもがいると、習い事とかのお金が大変だと思うんですけど、息子はどういうわけか勉強が好きで、本も大好きで、成績がずっと良くて。おかげで塾とか習い事とかこれまでまったくしてないので助かっています。
このまま、公立中、都立高、国立と進んでくれたら!と願うばかりです。大学は、できれば優秀な成績で、給付型の奨学金で行ってほしいんですが、どうでしょうか。
全体に生活は質素というか、節約生活ですけど、息子がお城が大好きで、城巡りを計画するんですね。しかもちゃんと安い交通手段とか、キャンペーンとか見つけて、うまいこと計画してくれるんですよ。
それくらいは叶えてあげたいし、どのみち、夫の仕事の都合上、長い休みは取りづらいので、一泊二日のお城見学旅行は、年に1〜2回ですが、行っています。浪費というか、遊びのお金といったら、それくらいですね。
うちは貧乏だとは思いませんが、「お父さんもお母さんも働いて、でもけっこう生活は大変なんだよ」とは話しています。
できること・できないことが、子どもの成長にしたがって出てくると思うので、一生懸命やっているけど、なんでも好きなものを買ってあげられるわけじゃないんだ、ということは話していますね。
——23区内で子育てするなら年収1,000万円は必要?
Kさん:結局は価値観と暮らしのレベル次第だと思います。
子どもが3人いても公立に通い、節約生活をすれば年収600〜700万円くらいでもやっていけると思います。23区もいろいろですから、少しは物価も安いエリアもあるわけですし。
逆に高級スーパーで買い物、エステして、海外旅行も行って、中学受験は当たり前、なんなら小学校受験から、みたいな生活なら、それこそ年収2,000万円、3,000万円でも足りないでしょうから。
うちのように習い事なし・外食なしの家庭なら1,000万円に届かなくても、困窮しているとは思いません。
ただ、まだあまり深く考えてはいませんが、老後のことを考えると、この年収で子育てしながら老後資金まで貯められるのだろうか、という不安はあります。
——あなたの家計で満足する暮らしはできている?
Kさん:夫婦合わせて年収700万円ちょっとで、店の近くにということで豊島区の賃貸に暮らしています。家賃が高い上に更新の負担も大きく、夫婦で郊外への引っ越しも真剣に検討中です。
夫は店長になり、さらにエリアマネジャーになれば多少給料は上がりますが、本人はけっこう疲れていて、たまに転職したいとも言っています。
昼夜逆転みたいな勤務で客商売、アルバイトを使うのも大変で、ストレスを家族にぶつけるような人ではないのですが、疲れ切っている姿を見るのも辛いので……。
実際、埼玉とか千葉で東京からちょっと離れたところで、もう少し、のんびり暮らした方がいいのではないか、と思っています。
お金や家計という面では、満足というより「仕方ない」という感覚に近いけれど、家族との暮らしそのものには満足しています。
年収1,000万円「平均」「中央値」だけでは見えないもの

年収という、ひとつの数字だけでは、家庭の本当の暮らし向きは見えてきません。
Eさんが語っていたのは、SNSで見かける同世代の暮らしへの羨望です。コストコでの買い物、週末のピラティス、親子での海外旅行。「1,000万どころか2,000万くらいないと」という感覚は、周囲との比較の中で生まれています。
Kさんも、実家の援助を受けて高額なマンションを購入した幼馴染との差を感じる場面がありました。
ですが、両家庭に共通するのは「年収そのもの」だけが暮らし向きを決めているわけではないという点です。
子どもの人数はTさんのように教育費の総額を大きく左右しますし、義理の親への仕送りや将来の住まい選びなど、年収に含まれない支出や事情も家計を左右します。実家からの援助の有無、23区内に住み続けるか近郊に引っ越すかといった選択も、生活の実感に直結します。
「世帯年収1,000万円」という数字だけが独り歩きすると、家庭ごとの事情や価値観の違いが見えづらくなるなと感じました。
自分の家庭に合った教育・お金の使い方を考える視点

3世帯それぞれの考え方がありますが、結局は、各家庭にあった教育方針やお金の使い方を見つけられるかどうかが、大事なポイントのようです。
Tさんは子どもがひとりという条件を活かして体験や旅行にお金をかけ、Kさんは塾に頼らず公立ルートと奨学金を軸に据えています。
教育費をどこにかけるか、塾や私立を選ぶか、公立と奨学金を組み合わせるか、体験を重視するか堅実さを優先するかは、家庭ごとの選択で構わないというメッセージがそこにはあります。
進路と教育費「都内で中学受験をするなら年収1,000万円が最低ライン?」

年収1,000万円というと、中学受験ができるかどうかのギリギリのラインとよく言われます。
小学6年生の1年間だけで塾代が100万円近くかかることも珍しくなく、高校授業料の実質無償化があるとはいえ、私立中高に進めば授業料や制服代、行事費用などまとまった支出が続きます。
Tさんも「年収1,000万円で、ギリギリ、中学受験をして私立に子どもひとり通わせられるくらい」と語っていたように、1,000万円という数字はひとつの目安として意識されている金額と言えそうです。
だからこそ本当に見つめ直したいのは、金額そのものより「わが家は(あるいはわが子は)中学受験をしたいのか」という土台の部分です。
進路を含めた教育費の使い道は、大まかでも家庭であらかじめ決めておくことが欠かせません。周囲の空気に流されると、年収1,000万円があっても教育費が足りなくなったり、借金を抱えたりする可能性すらあります。
「うちはうち」で選ぶ、お金の使い道
お金のかけ方は家庭によってさまざまです。洋服にはこだわらないけれど旅行には力を入れる家庭、習い事はたくさんさせても海外旅行は控える家庭、毎日の食卓にはお金を惜しまないけれど美容院代は節約するという家庭など、価値観は家庭の数だけあります。
大切なのは、その価値観を家庭内ですり合わせておくことです。
子どもの成長、親の仕事(昇進や転職)、親世代の介護など、状況は年月とともに変わっていくもの。夫婦で、子どもが成長すれば子どもも交えて「わが家が大事にしていること」や「子どもの進路」を話し合っていくことも必要かもしれません。
「世帯年収1,000万円」は確かにわかりやすい数字ですが、暮らし向きは人によって大きく異なります。
年収3,000万円でも足りないと感じる家庭もあれば、23区内で年収500万円台で子ども3人を育てている家庭もあるはずです。
何が正解か、あるいは何がトレンドかに踊らされず、自分の家庭が本当に何を求めているのかを時々見直しながら、「うちはうち、よそはよそ」の姿勢でわが家らしいお金の使い方を見つけていけるといいですね。
数字やまわりに振り回されずに“わが家基準”が大事
「世帯年収1,000万円」はひとつの目安にすぎず、実態は家庭ごとに大きく異なります。共働き世帯に限っても1,000万円以上は38.5%、6割以上はそこに届いていません。そして年収が同じくらいの家庭でも、子どもの人数や住まい、親からの援助の有無によって、教育費のかけ方もお金の使い方もまったく違います。
平均や中央値、あるいはSNSで目にする誰かの暮らしに振り回される必要はありません。大切なのは、自分の家庭の状況と価値観に合わせて、教育やお金の使い方を選んでいくことではないでしょうか。
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