2017年には日本でも発売が始まり、先日、マイクロソフトを中心としたPCメーカーなどからなるコンソーシアム『WDLC』が、小学校100校にmicro:bit を無償提供するという「MakeCode × micro:bit 100プロジェクト」を発表したばかりです(詳細はこちらから)。
micro:bitは約2000円という手ごろな価格でありながら、多彩な機能と拡張性を秘めているのが特徴です。プログラミングが初めてというお子さんでもすぐに使えるほどシンプルでありながら、プログラミングに手慣れた大人までも唸らせるその魅力を、今回はたっぷりご紹介します。
えっ?プログラミングって、こんなにカンタンなの!?
micro:bitの使い方はとにかく簡単です。まずmicro:bitを入手します。
お近くに適当なお店がない場合は、アマゾンなど通販でも手に入ります。接続にはデータ通信可能なマイクロUSBケーブルが必要です。ケーブルでPCとつないだら、こちらのサイトの『はじめましょう』にそってトライしてみましょう。
日本語でビジュアルプログラミングができるので、とにかくわかりやすい!ウェブ・ブラウザ上でプログラミングをする方法ではWi-Fiなどのオンライン環境で行う必要がありますが、5分もかからずに次のような作品ができました。
micro:bitには次のような機能が内蔵されています。
• 個々にプログラムできる25個のLED
• プログラム可能な2個のボタン
• 物理的に接続するための端子
• 光と 温度のセンサー
• 動きセンサー (加速度計とコンパス)
• 無線機とBluetoothを通した無線通信
• USBインターフェース
• ビジュアル言語の他、Javascript、MicroPython、(環境によってはC++も)によるプログラミングが可能
(参考・詳細)micro:bit HP
みなさんなら、これらの機能を組み合わせてどんな作品を作りますか?
室温が30度以上になったらアラームが鳴る、夕方になって部屋が暗くなったらLEDが点灯する、お留守番のお子さんにメッセージを伝える…、アイデア次第で使い方の幅はいくらでも広がります。
micro:bitでロボットカーを作ろう!
さらに、micro:bitに別売りの拡張コネクタをはめれば、外部の機器とのやり取りも可能です。
モータードライバーを組み合わせればモーターを動かすこともできます。micro:bitを使って『ロボットカー』を作る教室が大阪にあるというので、さっそくお邪魔しました。
大阪日本橋にある『でんでんタウン』は西日本最大の電気店街です。その中にある『電子工作教室』は、でんでんタウン協栄会と日本橋筋商店街振興組合の皆さんによって運営されており、なんと講習費は無料です。
その恵まれた立地から、移り変わりの激しい家電や電子部品などの流行りをいち早く取り入れ、長年にわたって好奇心いっぱいの子どもたちのモノづくりを支えてきました。代表の吉谷達嗣さんにお話をうかがいました。
「日本橋商店街の町おこしの一環として始まったこの電子工作教室では、お子さんたちは『お客さま』なんですよ。定員オーバーになるときは講座回数を増やして、できるだけご要望に応えられるようにしています。2005年にロボカップ世界大会が大阪で開かれ、大阪市は次世代ロボット産業の振興に力を入れはじめました。
日本橋に本社を置く『株式会社ダイセン電子工業』が教育用ロボット『TJ3B』を作ったのもその頃で、いまや学校の授業やロボカップジュニアを中心に全国で広く使われています。電子工作教室が始まったのもその頃です。ラジオ作りから始まったこの教室も、時代の流れとともに最近はプログラミングを取り入れたモノづくりが主流になっています」。
この日は地元大阪だけではなく、滋賀や兵庫、奈良など遠方からもたくさんの子どもたちが集まりました。講師を務める岩崎清三先生は、現役時代はエンジニアとして活躍されていたそうです。
電子工作教室では、元エンジニアやプログラマーなど、プロの先生方に直接教えてもらうことができるのも大きな魅力です。
まずはみんなで、ロボットカー作りに必要なものを挙げていきます。「モーター!」「タイヤ!」「ギア!」など子どもたちの声が上がるたびに、先生が模式図を書きながら説明してくれました。
「電気を流せばロボットは動くし、電気を止めればロボットも止まるわけです。たくさん電気を流せば速く動くし、壁にぶつかったら止まるようにすることもできます。プログラミングとは、このように自分の思い通りの動きをさせるためにロボットに与える『命令』のことです」と、おっしゃる吉谷さん。
「プログラミングで思い通りに動かすには、なによりもロボットの本体が安定していなければなりません。まずは工夫して、バランスのよいロボットを作りましょう」。
お手本として岩崎先生が作ったロボットカーが以下の動画です。ギアボックスを立てたスマートな作りにもかかわらず、安定して動いていることがわかります。
部品は西日本一の電気店街『でんでんタウン』に買いに行こう!
さて、いよいよロボットを作ろう!と思ったら、肝心の部品がありません。部品はどうするのですか??「基本的に必要な部品は各自で用意していただきます。足りない物があっても大丈夫。
ここは『でんでんタウン』ですから、近くの電子パーツの専門店へすぐに買いに行くことができます」。吉谷さんがおっしゃるには、あらかじめ教室で用意されたものではなく、子どもたち自身で選んで買った部品で作るからこそ、作品への愛着もわき、またモノの価値も身につくそうです。
必要な部品がそろったら、まずはギアボックスから組み立てます。お母さんやお父さんに手伝ってもらいながら、みんな楽しそうに作り始めます。
「この教室では、こちらから教えるというのではなく、基本的にはお手伝いをするという姿勢をとっています。必要であればノコギリやはんだごて等も使います。子どもたちには試行錯誤しながら、モノづくりの楽しさを味わってほしいと思っています」。
定期的にこちらの教室に通われている小学校4年生の女の子は、この教室で作ったロボットでロボカップジュニア2018和歌山大会に出場し、NIPPONリーグオンステージ(ダンス部門)でベストチームワーク賞を受賞したそうです。
お母さまがお話ししてくれました。「娘はもともと工作が好きだったので、この教室に通い始めました。わたし自身はそれほど知識もなかったのですが、今では子どもと一緒に電子工作やプログラミングの勉強をしています。工作教室は家族みんなで取り組めるのがいいですね」。
車体が完成した子はパソコンを開いて、いよいよプログラミングにとりかかります。みんなScratchでビジュアルプログラミングに親しんでいるのか、戸惑いもなくスラスラと操作しています。
この日はタブレットからプログラミングして、リモコンのようにロボットを動かすことにも挑戦していました。
上手にモーターを動かしていた生徒さんに、プログラムの一部を説明してもらいました。
ほとんどのお子さんの車体が出来上がったところで本日は時間切れ。次回からは、より複雑なプログラムで、ロボットカーを動かす方法を学びます。
みんな満足げな顔で、自作のロボットカーを大事に持って帰っているのが印象的でした。手軽にプログラミングが楽しめるmicro:bitで、自分で作ったロボットを思い通りに動かせるよう、みんながんばってくださいね
編集部より
Scratchのようなビジュアル言語で電子工作ができるmicro:bit。さまざまなセンサーを内蔵していることから、いろんな実験を気軽に行うことができます。また一歩進んでMicroPython言語によるプログラミングもできるので、ビジュアル言語ではものたりないという方でも、きっと満足されることでしょう。
micro:bit にはArm社のマイコンが使われており、Mbed開発環境にも対応しています。これだけ高機能なのに2000円程度という価格も魅力で、今後、学校などでの利用が多くなることも期待されます。
micro:bitを使ったワークショップや電子工作教室は、少しずつですが増えてきており、以下はその一例です。ご興味のある方は、ぜひお近くの発明クラブやプログラミング教室などに問い合わせてみてください。
大阪府大阪市 『電子工作教室』
http://www.geocities.jp/dendendenshi/kyoushitsu.html
熊本県熊本市 『ロボファーム』
問い合わせ先:master@robofarm.jp
http://www.robofarm.jp/contents/introsemi/index.html
滋賀県栗東市 『栗東市少年少女発明クラブ』
http://www.jiii-shiga.jp/club/