LITALICOワンダー×コエテコbyGMO プログラミングワークショップレポート
東京・渋谷のセルリアンタワーにて、IT×ものづくり教室『LITALICOワンダー』と、『コエテコbyGMO』によるプログラミングワークショップが開催されました。
参加した子どもたちは年齢ごちゃまぜ!?
参加したお子さんの年齢は、年長(5歳)から中学3年生。カリキュラムは、年長~小学3年生までの『ロボットコース』と、小学2年生~中学生までの『ゲームコース』に分かれます。小学生までは少し女の子のほうが多いかな?という印象で、中学生からはぐんと男の子が増えます。未就学のお子さんは、お姉さんやお兄さんとの兄弟参加が多いようでした。
『ロボットチーム』の教材は、『レゴ®WeDo2.0』。センサーやモーターを使用し、組み立てたブロックを動かします。
大きなテーブルに大量のレゴブロックが広げられ、とっても鮮やか!大人でもわくわくする光景なので、当然お子さんたちは待ちきれない様子。
初めての場所でも緊張している様子はなく、「はやく作りたい~!」という声が聞こえてきます。

『ゲームコース』は、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボが開発したビジュアルプログラミング言語『Scratch(スクラッチ)』を使い、テキストに従ってゲームを完成させていくコースです。
小学生の班は、講師とわいわいお喋りを楽しんでいる様子。中学生中心の班には、パソコンを使い慣れているお子さんもいるようです。もくもくとテキストを読み、どのようなゲームを作るのか、じっくり考えている様子でした。
また、今回の講座で特徴的だったのは、『保護者向けコース」です。プログラミング教育に興味はあっても、「実際のところ、何をするのか」がピンときていない……という保護者の方は少なくありません。
そんな方に向け、ビジュアルプログラミング言語『Viscuit(ビスケット)』を使ったワークショップが同時開催されました。
なにはともあれ作ってみよう!
開始時刻となる13時、お子さん側の教室では、講師代表の佐久本さん(愛称・もっちゃん)から挨拶がありました。「こんにちは!今日、自分のテーブルにいるお兄さんやお姉さんは、『先生』ではなくて、『一緒に考える仲間』です!名札に書いてあるあだ名で呼んでください!」
「作ったロボットやゲームは、あとでお父さんやお母さんに見てもらいます。自慢できるような、かっこいいロボットやゲームを作ってみましょう!それでは、始めてください!」
コンピュータとは何か、プログラミングとは何か?…そんな小難しい話はナシ!わくわくしよう、楽しく作ろう!という気持ちでいっぱいの、フランクな雰囲気でワークショップが始まりました。
ロボットコース参加者は15人。テキストに描かれた順番に従ってブロックを組み立て、動かすロボットを作っていきます。しかし、目の前にあるのは、大量の『レゴ』。せっかくだから、テキストと違うものを作ってみたくなってしまうお子さんもいます。


自由に造形を始めたお子さんたちを、講師たちは止めません。「これも足してみたらどう?」「おおー、いいね~!」など、楽しそうな声をかけ、お子さんの興味をどんどん広げているようです。
思いもよらないロボットが、あちこちで誕生していきました。
ゲームコースの参加者は18人。テキストに従って、どんどんプログラムを組んでいきます。画面に真剣に向きあう横顔が、とても大人びて見えます。
講師に質問し、真剣に話を聞いている姿は、一人前の開発者のようでした。
保護者向けコースで使用された『Viscuit』は、国産のビジュアルプログラミング言語です。キーボードを使わず、文字や数字の入力も不要、スマートフォンやタブレット端末でもプログラミングを学ぶことができます。
講師の案内に従って、一人ひとりが自分の端末で魚の絵を描くと、会場のモニタに全員のイラストがまとめて映し出されました。皆さん、「とても簡単」という印象を受けた様子です。

体験のあとに、講師の和田さんから、LITALICOワンダーの考えるプログラミング教育についての説明がありました。
「プログラミングは、『まず作ってみる』ことから始めます。作っていくうちに『わかる』ようになる。次に、質を追求する『こだわる』。そして、作ったものを人に『伝える』。そして『活かす』……この要素で経験することが大切だと考えています。
ただプログラミングの技術・知識を習得するのではなく、学びを通して得られる経験を大切にするのが、LITALICOワンダーのIT教育です。
お披露目タイム!

ワークショップの開始から1時間が過ぎる頃、保護者の皆さんがお子さんの教室に戻ってきました。
ロボットコースでは、お母さん・お父さんが来たことで、嬉しそうに作品を披露するお子さんもいれば、親御さんに見守られて落ち着いたのか、さらに集中力を増して作業を続けるお子さんもいます。
ゲームコースでは、どんなものを作ったのか説明しているお子さんや、親御さんがお子さんのプログラムを触りたくなっている様子も。
どちらのコースでも、どのお子さんも、とても楽しそうです。ものを作る喜びでいっぱいの教室に、胸が熱くなりました。
ワークショップ主催、LITALICOワンダーの担当者に『LITALICOワンダーの考えるプログラミング教育』をインタビュー
最後に、今回のイベント主催、LITALICOワンダーのお二人にお話を伺いました!
右:サービス開発グループ 和田沙央里さん
--1時間のワークショップのあいだ、ずっとわいわい楽しそうでしたね
イベントのなかで一番大切にしているのが、『好きなこと、楽しいことから始める』ということです。初めてのプログラミングで、最初が難しいと躓(つまづ)いてしまいますから。楽しい雰囲気作りは、とくに意識しています。
学校ではないため、通常の授業でも講師のことは『先生』ではなく、あだ名で呼んでいます。教えてもらうのではなくて、一緒に考え、一緒に作る仲間という関係をつくることを目指しています。
また、普段の教室のなかでも、お子さんの自由度をかなり許容しています。ゆるやかなカリキュラムはあるのですが、「絶対にこれをしなければいけない、今日はこれを終わらせなければいけない」といった決まりごとはありません。
周囲と違うことを始めてしまうお子さんを認めて、その子がやりたいことや、本人のペースを尊重します。型にはめず、日々の関係性のなかで、お子さんが本当にやりたいことをくみ取っていくよう心がけています。
--今回のゲームコースでも、一人ひとりのお子さんが作っているゲームがあまりにも違うので、全員違うテキストを使っているのかと思いました...
そうですね(笑)ワークショップではとくに、そのときにお子さんが作っているものを講師が見て、そのお子さんがより楽しめそうな方向性を示してあげるようにしています。お子さんが、より楽しめるものを提案していきたいですね。
--今回、お子さんの年齢層の幅広さにも驚きました
普段の授業でも、年齢や学年で教室を区切ることはありません。高度なロボットプログラミングや3Dプリンタを使ったものづくりのコース、コードを書くようなプログラミングのコースも、すべて同じ時間、同じ教室で進めます。
小さなお子さんにとっては、お兄さん・お姉さんたちのやっているコードプログラミングは憧れの対象になるようです。
教室でハッカソン(少人数でチームを組み、決められた時間内でひとつのプログラムやゲームを仕上げること)を開催すると、お子さんどうしが年齢を超えて対等に話す場面も見られます。
小学生が体の大きな中学生に「もっとこうしたほうがいいよ!」などと話している姿は、良いですね。
--講師とお子さんの間にも、お子さん同士の間にも上下関係がないのですね。学びの環境としてはかなり珍しい気がします。これはLITALICOワンダーのポリシーでしょうか?
もともと運営会社のLITALICO(りたりこ)は、発達障害のお子さんに向けた学習支援や、ソーシャルスキルのトレーニング事業などをしています。
LITALICOワンダーはそのなかで『苦手なことを頑張るだけではなく、好きなこと・得意なことを伸ばす』ということをコンセプトのもとに生まれた教室なのです。
障害のあるなしに関わらず、フラットな環境で学びたいことを学び、少しくらい苦手なことがあっても、それだけにとらわれずに得意なことを伸ばしていこうという考えを大切にしています。
--たしかに、講師の皆様の声かけがとても療育的だと感じました。講師の方は、児童発達心理について学ばれているのですか?
全員ではありませんが、教育の知識のある講師もいます。情報系に詳しい講師もいて、チームを組んでお子さんに接しています。個性的なお子さんは、すごく集中して思いもよらないものを作り上げたりするので、面白いですね。
最初のハードルを下げて、まず『作ってみる』ことから始める
--保護者さん向けのワークショップというのは珍しいですよね
学校でプログラミング教育が必修化するにあたって、「どんなことが始まるのか」「先取りでやっておくべきことは何か」と気にされている保護者の方は多いようです。
しかし、実際のところ、何をするのかがピンと来ずに戸惑っているという声はよく聞かれます。
そこで、今回はただの座学ではなく、『Viscuit』を実際に触っていただくことで、お子さんがプログラミングをしていく過程でどのような発見があり、どんなことを身につけることができるのかを体験してもらうようにしました。
--ロボットコースで『レゴ®WeDo2.0』,ゲームコースで『Scratch』、保護者コースで『Viscuit』を選んだ理由は?
お子さんたちに向けては『プログラミングに触れる、最初のハードルを下げる』ことを重視して、普段教室で使っているもののなかから、とくに初心者向けのものを選びました。少し触ればわかること、身近なおもちゃである『レゴ』が動くという喜びを大事にしています。
『Viscuit(ビスケット)』はパソコンが不要で、お手持ちの端末でも扱えることから採用しました。
最近は、通常授業でも保護者様がご自分でやってみたいというご意見を聞くことが増えていまして、親子で一緒に学ぶワークショップを開催しています。通塾されている方の中でも、お子さんと一緒にご自身のパソコンでゲームを作っている方がいらっしゃいます。
プログラミングを通して自己肯定感を持ち、社会とつながる場所に
--イベントや、普段の授業で印象的なことを教えてください
お子さんの、プログラミング以外での成長が、とても印象深いです。保護者様からは、「前よりも喋るようになった」というお話を聞くことがあります。
通い始めの頃はとてもおとなしく、「パーツ探しを手伝ってほしい」ということも言えなかったお子さんが、実際にものを作っていくなかで「もっとこうしたい、ああしたい」と伝えてくれるようになる……そんな変化が、プログラミング能力以外の成長として感じられるのが、とても嬉しいです。
学校では一言二言しか話さない子が、教室ではとてもお喋りで、イキイキとものつくりをしているとか……そんな話を聞くと、本当に嬉しく思います。
--お子さんたちの居場所になっているんですね
お子さんたちの自信になる、自己肯定感につながることを大切にしたいと思っています。
学校の勉強やスポーツが苦手でも、ゲームやプログラミングができるということが認められる場所をつくってあげられる、そんな場所になっていきたいです。
また、プログラミングによって、お子さん自身を社会につなげていくことも我々の役目だと思っています。年に一度、発表会(ワンダーメイクフェス)を開催しています。
そこで自分の好きなプログラムやロボットについて大舞台で語り、それを企業の方に聞いてもらって、お子さんの作品について講評をいただきます。
いま自分がやっていることが社会につながるのだという実感をあたえて、その自信を広げていってあげたいと思っています。プログラミングは、大人の世界に直接つながれるものですから。
--ありがとうございました。
編集部より
とても和やかな雰囲気のなか、お子さんたち全員がのびのびとものを作っている姿に「本当にこれは学習の場なのか?」と疑問に思ってしまう瞬間すらあった、今回のワークショップ。学ぶこと、成長するということは、本来とても楽しいものなのだということを、あらためて感じました。
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