でも、そんな中でなんとなく取り残されているのがお母さんたち…。「いったい何が行われるの?」と思いながらも、ご自身が体験できる機会はそれほど多くありません。
今回は、そんな迷えるお母さんたちの願いをかなえてくれる『ITな女子会』をご紹介します。
今日プログラミングを習うのは、お母さん!
『ITな女子会』はIT(Information Technology)に興味がある女性の交流の場として、奈良県にある畿央大学の西端律子先生が2016年から主催されています。西端先生にお話を伺いました。
「初等教育でのプログラミング教育必修化に向けて、子どもさんたちの教室が増える反面、お母さんたちが情報を得る場は少ないのが現状です。親子を対象にしたプログラミングイベントでも、どちらかというとお父さんのほうが積極的で、『わたしにはよくわからないから…』と、しり込みするお母さん方を多く見かけます。そのような方たちが気軽に参加していただけるような場を設けたいと思い、この会を企画しました」。
今回で第4回(キックオフも含めると5回目)を迎える『ITな女子会』には、毎回、IT初心者の方たちが参加されるのはもちろんのこと、IT関連のお仕事で活躍している女性も多く来られるのが特徴です。
「私自身も経験があるのですが、IT業種の女性の割合はまだまだ多いとは言えず、女性ならではの悩みを人知れずかかえている方もおられます。そんな女性の方たちが、会社の枠を超えて同じ業種の人たちと情報交換したり、気軽におしゃべりしたりできる息抜きの場になれば、とも思っています。」と、先生はお話してくれました。
女子会だもん!やっぱり食べる物がなくっちゃ!
多彩なプログラムが用意されている『ITな女子会』。毎回、会場を提供してくださる『ハルカス大学』は、大阪にある『あべのハルカス』23階という絶好のロケーションで、お買い物やお食事も兼ねて気軽に来られるのも女子には嬉しいところ。
会費は無料で、参加者は個別包装された市販のお菓子300円分を持ち寄ります。眼下に広がる大阪の街を眺めながらお菓子を食べつつ、女子トークに花を咲かせる、まさに女子会なのです。
今回はエンジニアやウェブデザイナー、プログラマーなどITに携わる女性はもちろんのこと、介護士さんやイラストレーターさん、学生さんなど、ふだんはあまりITそのものを職業としていないという方も多く参加しておられました。
ある参加者の方は、「まわりのお友達でも、義務教育でプログラミング教育が必修化することを知っている人は多くありません。ここで学んだことを生かして、ワークショップなどを企画して、お母さんたちとITを結ぶ懸け橋になりたいですね。」と語ってくれました。
絵が苦手でも大丈夫!グラフィック・ファシリテーションに挑戦!
今回の1つ目の課題は『グラフィック・ファシリテーション』です。聞いたことがないという方も多いようですが、要するにプレゼンテーションの資料や会議録など、文字ではなくグラフィック(絵)で表そうということです。高校で情報の教員をされている村上友香先生に教えてもらいながら、まずは練習です。白い紙に太めのフエルトペンで線をまっすぐ描くことから始めて、丸や三角など簡単な図形を丁寧に描く練習をしました。
そしてペンに慣れたところで二人一組になって、相手の自己紹介をグラフィックで表しました。
村上先生が教えてくれました。「普段あまり絵を描く機会はないかもしれませんが、絵は上手に使うことで文字以上の情報を伝えることができます。広い意味での『情報』という分野ではコミュニケーションも大切な課題の一つで、グラフィック・ファシリテーションは自分の表現したいことを伝えるにはたいへん効果的な手法です。直接コンピューターを使うわけではありませんが、多くの人にわかりやすく情報を伝えることができ、プレゼンテーションなどで役に立つことも多いですよ」。
からだでプログラミング!?
さて、『ITな女子会』とはいいながら、まだまだコンピューターは使いません。次の課題は『からだでプログラミング』です。『からだでプログラミング』はBSフジで放送されていた「ポンキッキーズ」のコーナーの1つで、コマンドの描かれたダンボールを並べて、体の動きをプログラミングするというものです。
お子さんと一緒に番組をご覧になっていたという方もおられるのではないでしょうか。
西端先生の指示に従って、みんなイスから立ち上がると、スクリーンに映し出された動画にあわせて立ったりしゃかんだり…。簡単な動きですが、続けるとけっこうしんどいです。
micro:bitでサイコロのプログラムを作ろう!
さて、次は皆さんお待ちかねの『micro:bit』です。『micro:bit(マイクロビット)』はイギリスの放送局BBCで開発された教育用のマイコンボードで、イギリスでは11歳から12歳のすべての生徒に無償配布されたというもの。現在では40か国を超える国々で利用されていて、日本でも広まりつつあるプログラミング教材です。プロのエンジニアでも触るのは初めてという方も多く、皆さん興味津々です。
『子供とネットを考える会』 の山口あゆみ先生に教えていただき、まずはLEDでいろいろな図形を表示することからスタート。コマンドの使い方を学んだら、次はサイコロづくりに挑戦です。
山口先生はエンジニアとしてご活躍しながら、ネットやセキュリティなどのITに関する講演をあちこちで行っているそうです。
「micro:bitはScratchのようにブロックをつなげるだけで簡単にプログラミングができるのが魅力です。日本語が使えるから初めての方にもわかりやすいと思います。また、コンピューターの画面上だけではなく、動きを加えたいろいろな使い方ができるのもいいですね」。
初めてだから新鮮!プログラミングは脳トレにも!
プログラミングをするのは初めてで、ふだんは介護士をされているという方は、こうお話してくれました。「仕事でプレゼンテーションをする機会があり、コンピューターにもっと精通したいと思い参加しました。プログラミングはやったことがないので、ふだん使わない部分の脳を動かすことができ、いい脳トレになりました。今日習ったことを生かして、いろんなことに挑戦してみたいですね」。
小学生のお子さんと一緒に参加されていたお母様にもお話をお聞きしました。
「子どもたちはプログラミングの体験教室などには行ったことがありますが、継続して通うにはやはり楽しくないと続きませんね。今は家で子どもと一緒に、いろんなプログラミング教材などを楽しんでいます。プログラミング教育の必修化は、自治体ごとに温度差があるのが気になりますね。小学校でも、すべての先生がかならずしもプログラミング教育の導入に積極的とは限らないでしょうから、まわりに遅れをとらないよう家でも取り組みたいと思います」。
また、「子ども向けのプログラミングの講座を企画したいと思っているので、こういう会でいろいろな教材を体験させてもらえると、とても参考になります」と、おっしゃる方もおられました。
女性にもプレゼンテーションの場を
『ITな女子会』の最後のプログラムは、参加者によるプレゼンテーションです。「女性にプレゼンテーションの場を提供する」というのも、西端先生が『ITな女子会』を企画されている目的の一つです。
男性の多い会社でなかなかプレゼンテーションの機会が回ってこないという女性エンジニアの方や、人前であらたまって話す機会が少ないという主婦の方などに、好きなテーマで気軽にプレゼンテーションしてもらおうというのがその狙いです。
今回は、素敵な夏着物で参加されたエンジニアさんが『和装のススメ』というテーマで、また、小学校で栄養教諭をされているという方はパワーポイントを効果的に使った『ITな食育』の授業に関するお話をしてくれました。
そして、メーカーで長年エンジニアをされている方は『女性エンジニアの日常』というテーマで、1カ月のご自身の詳しい行動分析を交えて、わかりやすくお話してくれました。
ふだんあまり触れることのない世界のお話も多く、皆さん熱心に聞き入っていました。
最後に今日の感想をそれぞれがグラフィックで表して、会は終了しました。
お開きになった後も、あちこちで連絡先を交換したり、お菓子をほお張ったりしながら、尽きないおしゃべりに花が咲いていました。
『ITな女子会』は半年に1度くらいのペースで、これからもITに興味のある女性の情報交換の場として催されるとのことです。
ご興味のある方はぜひ、西端先生(r.nishibata@kio.ac.jp)、またはFacebook『ITな女子会』(https://www.facebook.com/itnajoshi/)、西端先生のブログ(https://rlab.hatenablog.jp/entry/2018/08/06/133039)をチェックしてみてくださいね。