プログラミングとの出会いをきっかけに、すばらしい才能を開花させたお子さんたちが、あちこちで活躍しはじめています。
そんな「プログラミング大好き!」というお子さん、そしてお家の方のお話を通して、プログラミングの魅力をお伝えします。
今回お話をうかがったのは、大阪府堺市のロボ団『なかもず本校』に通う小学5年生、石井柊(しゅう)くんと、お母様の石井利佳さんです。
ブロック好きが転じて、プログラミングの道へ
石井柊(しゅう)くんは大阪府堺市の公立小学校に通う5年生。学校では算数や体育が大得意という、元気な男の子です。― 石井君がプログラミング教室に通い始めたのは、まだ小学1年生のとき。その頃はどんな遊びが好きでしたか?
「以前、バンダイから『もじバケる』というお菓子付きの玩具が売られていたのですが、そのシリーズを集めて夢中で遊んでいました。
電車など、男の子が好きそうな遊びに夢中になったという記憶は特にはないのですが、『もじバケる』にはハマりましたね。いくつものパーツを組み合わせてオリジナルを作っては、よく見せてくれていました」と笑うのは、お母さんの石井利佳さんです。
ご自身はプログラミング経験はないという利佳さんに、お子さんが教室に通い始めることになったきっかけをお聞きしました。
― どうしてプログラミング教室に通わせようと思ったのですか?
「習い事として水泳には通っていたのですが、それは体づくりが目的で親が勧めたものでした。先ほどの『もじバケる』のようなものを組み立てるのが好きだったので、そのように夢中になれるような習い事はないかと探していた時に、インターネットで見つけたのが『ロボ団』でした。
当時はまだロボ団も開校されたばかりで、この子は最も初期の生徒のひとりです。体験会ではそれほど反応がよくなかったので、『楽しくなかったのかな?』と思っていたのですが、ロボ団代表の重見彰則先生から『お母さん、この子、筋がいいですよ!』と言われて(笑)。きっと楽しくて無我夢中だったんでしょうね」。
― この教室に決めたのはどうしてですか?
「家から通いやすかったことが一番の決め手です。まだ小さかったですし、遠いところでは通い続けられなかったと思います。それから、『ロボ団』ではロボットキットやパソコンなどは教室にあるものを使うので自前でそろえる必要がなく、初期投資が少なかったことも魅力でしたね」。
― 学校のお友達にもロボ団仲間はいるのですか?
「ロボットプログラミングを習っていることはみんな知っていますが、同じ学校から習いに来ているお友達はいません。話し相手がいなくて、ちょっとかわいそうだなと思うこともあります。うちにはもう一人女の子がいるのですが、ロボットにはまったく興味を示しませんから、家でも話が通じないんです(笑)」。
柊くんはロボ団の中でも上位クラスに在籍し、何度もコンテストや大会に出場しているそうです。現在は、中学生と一緒に『micro:bit』を使ってPython言語を習っています。
――プログラミングを習っていてたいへんだったことはありますか?
「通い始めた頃はまだ小1で、漢字も計算も学校では習っていないことのほうが多かったので、なかなかたいへんでしたね。最初の頃は3時間のクラスだったので、集中力が続くのかと心配しましたが、いつも楽しそうに最後まで熱中して取り組んでいました。
今は毎週1回、1時間半のクラスに通っています。家ではパソコンやタブレットを使って、習ったことを応用してゲームを作ったり、プログラムしたりしています。この前の授業ではmicro:bitでインベーダーゲームを作ったそうで、『それ知ってるよ!』と言ったら、とても驚いてました(笑)」。
よし!プログラムを100個作ろう!
おっとりした雰囲気の柊くんですが、実はたいへん意志の固いお子さんだそうで、夏休みの自由研究ではスゴいアイデアで、利佳さんをびっくりさせたそうです。「プログラムを100個作ると言い出しまして」。
大好きなプログラミング技術を生かした自由研究ができないかと考えた末に、今まで習ったことを出し尽くしてプログラムを100個作ろうと決めたそうです。
「それが意外とたいへんで…。なかなか100のネタを思いつくのは簡単ではありませんでした。いろいろな図形を作ったり、絵を描いたり、計算したり。それに、作品を研究として、どうやってまとめるのかも悩みました」、と話す利佳さんの横で、柊くんもうなずきます。
「パソコンをそのまま学校に持っていくわけにもいかないので、プログラムを効果的に見せるにはどうしたらよいかなど、ロボ団の太田純先生からも、たくさんアドバイスをいただきました。
なんとか100個達成するために、夏休みの後半になると残り日数から逆算して、1日に何個も作っていましたよ」。
100個のプログラム集は、なんと厚さ10センチのファイルになるほどの大作に。各プログラムにはコードだけでなく、工夫した点や苦労した点などが丁寧に書いてあり、とてもわかりやすく、きれいにまとめられています。
「親が手伝うと言っても、わたし自身はプログラムそのものはわからないので、たとえば色を英語で書くときなどにスペルを教えたりしましたね。
さすがに、100個のプログラムを夏休みの間だけで作るのはたいへんだったと思いますが、一度も『もうやめたい』と言ったことはありませんでした。この子は本当にプログラミングが好きなんだなあ!と、感心しましたね」。
苦労の甲斐あって、柊くんの作品は大阪府堺市学校理科展覧会の優秀賞に輝き、さらに大阪府の学生科学賞でも表彰されました。
「メダルや景品をいただいたことよりも、がんばったことが認められたのがなによりも嬉しかったのではないかと思います。一生懸命努力したことが、こうやって形になって認められるという成功体験は、プログラミングを習っていたからこそ味わえたものです。そう思うと、プログラミングに出会えて本当によかったですね」。
チームだからこそ学べることもある
柊くんは、昨年『WRO(World Robot Olympiad)』にも出場したそうです。試合ではレベルの違う人とチームを組まなければならないこともあり、「思い通りにいかないことも多い」と言う柊くんですが、利佳さんはこう言います。「チームだからできることもあるけれど、反対に、自分ひとりのほうがうまくいくのにと思えるときもありますよね。でも、そういうときこそ、他人との関わり方を学ぶよい機会なのだと思います。そういった経験は大人になってからも必ず役に立ちますよね」。
― 今後はどのようにプログラミングと関わっていってほしいですか?
「来年はWROの世界大会をめざすと言っていますから、ぜひがんばってほしいですね。あと、せっかくここまで長くプログラミング学習を続けているので、習ったことをさらに活かせるような機会があるといいと思います。
ロボットの大会だけではなく、たとえばプログラミングの大会などにも出られるといいですね。そういう機会を教室からも発信していただけるといいと思います。今はPython を習い始めたばかりなのですが、さらに上達してからもなんらかの形でプログラミングを続けて、将来につながるといいですね」。
柊くんは、将来、ロボットを開発する仕事に就きたいそうです。
「ロボ団ではロボットを動かしながらプログラミングを学びます。自分のプログラムしたことがロボットの動きになって表れるので、理解しやすいようです。そうやって試行錯誤を繰り返しながらロボットを作る過程が、この子は大好きなんでしょうね」。
最後に利佳さんに、将来、柊くんにどんな人になってほしいかをお聞きしました。
「ロボットでもプログラミングでも、自分が好きなことのためなら、それを成功させるために算数でも英語でもがんばるのだと思います。そういう意味でも、こうやって自分の夢中になれることに10歳前後で出会えたことは大きいですね。今後は、『自分はこういう人になりたい』という将来像をしっかり描いて、そこに向かってあきらめずにがんばる人になってほしいと願っています」。
編集部から
まだ小学生ながら、並外れたプログラミングのスキルだけでなく、自分で一度決めたことは弱音を吐かずに貫く根性を兼ね備えた、柊くん。ロボット開発者という夢に向かって、着々と自分の道を突き進んでいく姿は頼もしい限りです。来年は世界大会めざしてロボット作りもがんばるとのことで、より大きな舞台での活躍を楽しみにしています。
柊くん、利佳さん、どうもありがとうございました!