その代表を務めるのは、芸術工学博士であり、平成30年度 福岡市文化賞を受賞されるなど実力派クリエイターで知られる中村俊介(なかむら・しゅんすけ)さんです。
そんな中村さんが力を入れるのが、デジタルネイティブ世代へのクリエイティブ教育。
最近ではビジュアルプログラミングアプリ「Springin'(スプリンギン)」を発表し、「絵日記感覚でプログラミングができる!」と評判です。
中村さんの描く未来の学びとは、一体どのような形なのでしょうか?
この前編では、しくみデザインのこれまでの歩みについてお伺いします。
プログラミング教育の分野では、ビジュアルプログラミングアプリ「Springin'」を開発し、子ども達の表現の一つとしてプログラミングを普及させる活動をしている。
しくみデザインのビジュアルプログラミングアプリ「Springin'」はこちら(iOSのみ、無料)
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この記事をapps.apple.com で読む >デジタルサイネージの先駆者として
—中村さんは「芸術工学」の博士でいらっしゃるそうですが、ズバリ、「芸術工学」とはどのような学問なのでしょうか。
芸術と工学、どちらも学ぶ分野という説明がもっとも分かりやすいですね。
たとえば、僕の博士論文のテーマはユニバーサルデザインでした。
ユニバーサルデザインとは、あらゆる人に便利なデザインのことです。
健常者/障がい者 という括りでは「バリアフリー」という言葉もありますが、これは健常者/障がい者の間にバリア(壁)があることを前提としていますよね。
そうではなくて、健常者も障がいのある方も、大人も子どもも、みんなにとって分かりやすく、便利で楽しいデザインを考えよう、がユニバーサルデザインです。
それをテクノロジー(工学)で可能にするから、芸術工学というわけです。
—具体的にはどのような作品を手がけられたのですか。
身体の動きで音を生み出し、目の見えない方でも空間を把握するシステムとか、触ったら音が出る地図とか。
あらゆる人が楽しめる情報の出し方ってなんだろう?を研究してきました。
—その研究が「デジタルサイネージを利用した参加型広告」という現在のお仕事につながっているんですね。
会社を作った当時(15年前)はまだ「デジタルサイネージ」という言葉すらありませんでした。
でも僕は「これから先、街中の広告は紙からディスプレイに変わっていく」と直感していました。
とはいえ、ディスプレイから一方的に情報を発信するだけではテレビと変わりません。
そうではなくて、自分がディスプレイに写って、画面の世界に入っていける。
そんな双方向性を生み出すことができたら、広告は次のステップに行けるんじゃないかと思ったんです。
—広告のメッセージも変わってきていますよね。紙媒体中心のときは、どこか押し付けがましいというか……「こうあるべきだ!」と言われるようなメッセージが多かったように思います。
最近の広告はSNSの声を反映させるなど、メッセージがインタラクティブ(相互的)ですよね。
そうなんです。今でこそインタラクティブな広告が主流になってきましたが、僕が会社を作った当時はなかなか理解されなかったんですよ。
甲子園でもインタラクティブに!
—しくみデザインさんは多くの制作物を手がけていらっしゃいますが、とくに記憶に残っているものはありますか。会社が大きく評判になったきっかけは甲子園球場のディスプレイ広告です。
大きな画面にお客さんを映して、顔認識の技術を使ってトラのかぶりものをしてもらうんです(笑)。
—私も最近、Bリーグ* の決勝戦で体験しました!お客さん側も楽しめる広告スタイルですよね。
アサヒビールさんの広告だったのですが、ビールの宣伝をただ流すのではなく、遊びでお客さんを引きつけたのがポイントです。
「何あれ!」「映ってるよ!」と盛り上げてから広告を流したんです。
売り上げにもつながりましたし、スタジアムのような大きな場所でもインタラクティブな広告が使えるとアピールでき、大きく成功した事例ですね。
地方拠点をプラスに捉える
—しくみデザインの公式サイトには「福岡においで!」というメッセージがありますよね(笑)。「東京一極集中」が問題視される中、福岡に拠点を構えられている理由は何でしょうか。
はじめから能動的な理由があったわけではないんです。
九州の大学院を出てそのまま会社を作ったのと、他の仕事との兼ね合いで福岡に拠点を設けた……という程度でした。
—「東京でやらないの?」と言われませんでしたか?
「いつ東京に来るの?」とは散々言われました(笑)。
—でも、行かなかったんですね。
東京に行けば、仕事は確実に増えます。でも、それってどんな意味があるの?って思ったんです。
仕事が10倍に増えたからって、労働量も10倍に増えたらあまり意味がない。全然豊かになっていないじゃないかと。
僕たちみたいな仕事は、場所を選びません。
東京へは仕事を取りに来ればいいのであって、作業自体は福岡でやればいい。同じ報酬をもらうんだったら福岡に住む方がよほど豊かな生活ができます。
—福岡といえば「LINE」や「メルカリ」など、元気のあるIT企業も多いですね。
高島宗一郎さん(福岡市長)が市政を担われ、福岡をスタートアップ都市に!と旗揚げされてからどんどん福岡が元気になってきています。
東京にいたら「何社かあるうちの一社」だけど、福岡ではうちしかない。
それが少しずつ奏功して、福岡でプロジェクトが立ち上がると高確率で「しくみデザイン」の名前を挙げていただけるようになりました。
「福岡のプロジェクトだから、地元の会社に入ってほしい」というケースも多く、選んでいただける機会が増えたんです。それでだんだんと地方拠点をプラスに捉えるようになりました。
加えて、しくみデザインの制作物は言語を使わないものが多く、海外でもスムーズに使えるんです。だったら、海外に目を向けた方がいいですよね。
海外から見れば、福岡か東京かなんてどうでもいい(笑)。東京にこだわる必要がなくなってきたんです。
—福岡から東京へ、じゃなく、福岡から海外へ。まさに現代の会社ですね。
インタビュー後編へ続く
大学院で芸術工学を学び、あらゆる人が楽しめる情報の出し方を研究されてきた中村さん。スクリーン広告がもたらすコミュニケーションの変化をいち早く見抜き、ビジネスへと昇華するセンスは「うらやましい」の一言です。
インタビュー後半では中村さんがプログラミング教育に情熱を注ぐ理由と、大注目のビジュアルプログラミングアプリ「Springin'」についてお話を伺います!
インタビュー後半へはこちらから。
みんなが「作る側」になれば世の中はもっと面白くなる ― 株式会社しくみデザイン 中村俊介
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